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4.会合衆の会所・書院跡

更新日:2012年12月19日

 SKT263(堺市堺区甲斐町東2丁)は、平成12年10月から平成13年4月にかけて現在の開口神社(あぐちじんじゃ)の南隣で約1000平方メートルを発掘調査しました。ここは江戸時代に再興した旧開口神社の境内地内にあたります。この開口神社は中世には堺南荘の鎮守として三村(みつむら)社と呼ばれ、その神宮寺である大念仏寺と共に大寺(おおでら)と呼ばれていました。堺衆の信仰は厚く、天文4年(1535)には築地塀修理に一貫文ずつ114人が寄進した文書がありますが、その中には武野紹鴎(たけのじょうおう)や千与四郎(利休)の名も見えます。15世紀後半頃以降には堺南荘の自治運営者であった会合衆(かいごうしゅう・えごうしゅう)はここの会所(かいしょ)〔「三村宮の拝殿」「大寺食堂」〕に集会し、祭礼・神事や自治政治・経済などについて話し合っていました。また、『天王寺屋会記』によると永禄7年(1564)8月に津田宗達が念仏寺で茶会を催した記事があり、天正7年(1579)12月には津田宗及は松井友閑と出座しており、おそらくこの会所が使用されたと考えられます。ここを現在風に言えば、議事堂兼迎賓館に相当する施設と言えます。
 発掘調査では、慶長20年(1615)に被災した会所・書院SB1、庭園、蔵SB3などが発見されました。このSB1は、国宝に指定されている滋賀県大津市園城寺光浄院客殿(1601年建築)・勧学院客殿(1600年建築)に類似した入母屋(いりもや)造りで北東角に玄関・東から南面に広縁が廻り、また建物南側には庭園を伴っていました。現在の境内地は焼失後に再建されましたが、場所からみても中世の場所と移転してないと考えられ、この出土した建物が歴史的な会所である可能性は非常に高いと思われます。
 さて、この会所・書院SB1と蔵SB3の焼土層中からはコンテナ約80箱分の遺物が出土しました。出土した陶磁器類はほぼ茶陶(ちゃとう)に限定され、またSKT39やSKT47で認められたような町衆の茶道具組成とは異なる特徴が認められます。まず、中国宋代青白磁梅瓶(めいぴん)や龍泉窯系青磁酒会壺(しゅかいこ)・盤・香炉・碗など骨董品(こっとうひん)〔アンティーク〕が数多く認められ、室町幕府足利将軍家の唐物品評と会所飾り法をまとめた『君台観左右記』に記されたような唐物嗜好(からものしこう)と床飾り(とこかざり)の伝統が色濃く残っています。そして、この伝統は地方の戦国大名に受け継がれ、京への憧れと威信財(いしんざい)〔ステータスシンホ゛ル〕の道具揃えとして定着していたことが各地の城館跡の発掘調査により判明しています。次に備前の湯桶(ゆおけ)・灰器(はいき)・木瓜(もっこう)形鉢や美濃四方水指、中国木葉形白磁皿など明らかに注文品と思われる茶陶が多く認められます。また、中国染付・白磁・赤絵などは懐石に使用する皿・鉢類が組物として多数出土しており、なかには20枚を数える物もありました。
 主な茶陶を産地別に見ると、朝鮮では斗々屋(ととや)碗・堅手(かたで)碗・青白磁皿・平皿など、東南アジアではタイの半練建水(はんねらけんすい)・宋胡録(すんころく)香合、ヴェトナムの縄簾(なわすだれ)水指・鉄絵皿・〆切建水(しめきりけんすい)、中国南部では茶壷として使用されたと思われる華南三彩壺〔トラディスカント〕・褐釉五耳壺、国産製品では唐津の黒唐津水指・鉄絵向付・花籠形鉢、備前は矢筈口(やはずぐち)水指・砂張(さはり)形水指、信楽は壺・鬼桶・伊賀の水指、丹波の四耳壺、美濃の一重口水指・黄瀬戸鉢・黄瀬戸茶入・黄瀬戸建水・灰釉肩衝(かたつき)茶入、志野の沓茶碗・向付・菓子器・茶入蓋、織部平皿・黒織部碗、樂系(軟質施釉)では碗・蓋置(ふたおき)・舟形容器・灰器などが出土しています。そして、発掘調査では初めて「天下一宗四郎」銘のある瓦質風炉(がしつふろ)が出土しました。江戸時代中期に書かれた図説百科辞書である『和漢三才図絵』には「奈良風炉也陶工称天下一宗四郎」として紹介されています。この宗四郎は現在の茶道千家十職の一つとして引き継がれている永楽善五郎家の先祖南都土器座西村家三代宗全(1623年没)の弟であり、豊臣秀吉より「天下一」の称号を賜りその後徳川秀忠に召され、江戸に赴いたと伝えられる人物です。また、奈良市春日大社の銅製釣燈篭に「奉寄進春日社、為現世後生諸願也、慶長十三年戌申九月吉日、西京天下一宗兵衛政次 敬白」の銘文が残り、宗四郎と同一人物であると考えられています。
 また、茶道具以外にも朝鮮半島の渭原石(いげんせき)で作られた美しい陽刻の施された梅竹文日月硯(にちげつけん)も出土しています。
 参考文献:「堺環濠都市遺跡(SKT263)発掘調査概要報告」『堺市文化財調査概要報告第103冊』堺市教育委員会 2004年2月

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