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Vol.1 「鷹の爪」文化を伝承しつづける 辻田浩之さん

更新日:2021年10月22日

堺で約120年にわたり栽培されてきた「堺鷹の爪」が、令和3年7月、大阪府から「なにわの伝統野菜」に認証されました
この「堺鷹の爪」を大切に守り続けているのが、和風香辛料の専門店「やまつ辻田」の辻田浩之さん
今回は、なにわの伝統野菜に認証されるまでの経緯や、和風香辛料への熱い思いを取材しました。

辻田さんの写真

地域団体申請による承認第一号!「なにわの伝統野菜」に認証されるまで

辻田さんが栽培する鷹の爪に注目した有志が、「鷹の爪純粋種保存会」を結成し、なにわの伝統野菜への認証を目指して普及活動をしてきました。なにわの伝統野菜の基準である「概ね100年前から大阪府内で栽培されてきた野菜」や、「苗、種子等の来歴が明らかで大阪独自の品目、品種」であることなどを証明するため、大阪府・堺市所蔵の書物・資料を集めることに苦労したそうです。堺市史によると、明治35年頃から唐辛子の栽培が盛んになってきたことが記載されており、東陶器(当時は福田も含む)が栽培の中心であったことが分かりました。

多くの方々の協力のもと、大阪府のなにわの伝統野菜の制度に承認を申請し、令和3年7月、19品目に認証されました。4 年ぶりの快挙です。
大阪府では、令和3年度から、府内の生産者団体等からの申請受付を始め、「堺鷹の爪」は申請による認証第一号となりました。
認証を受け、辻田さんは「これほど嬉しいことはない。日本に唯一残る純系品種(堺鷹の爪)の香りや美しさを、これからも伝えていきたい。」と話してくれました。

なにわの伝統野菜とは

  • 概ね100年前から大阪府内で栽培されてきた野菜。
  • 苗、種子等の来歴が明らかで大阪独自の品目、品種であり、栽培に供する苗、種子等の確保が可能な野菜。
  • 現在も府内で生産されている野菜。

なにわの伝統野菜について詳しくは、大阪府ホームページをご覧ください。

あれもこれもが鷹の爪にあらず

鷹の爪は唐辛子の一品種で、国内に流通しているもののほとんどが外国産や他の品種です。おおよそ1%の国内産唐辛子の中でも、一節に一つずつ実をつける堺鷹の爪は、日本に唯一残る純系品種です。 

鷹の爪は長さが3センチから4.5センチほどの小ぶりな赤唐辛子で、スーパーなどでよく見る天鷹(外国産)の約3倍の辛さがあり、香りが良いのが特長です。

鷹の爪の収穫

収穫時期は8月から11月。鷹の爪は、天を向いて一節に一つずつ着果することから、一本一本手間暇かけて収穫していきます。単純計算で一日2人で2時間作業しても、全てを収穫するのに2カ月程かかるそうです。猛暑の中でのこの作業は本当に重労働です。

その昔は鷹の爪の一大生産地

「堺市史」によると、堺市中区福田は、古く江戸時代から鷹の爪が栽培され、明治時代には東京ドーム18個分の畑が広がる一大生産地でした。収穫時期には、一帯が鷹の爪で赤く染まったように見え「赤いじゅうたん」のようだったといいます。 

鷹の爪の名は、他の種類の唐辛子と比べて実が小さく、先が尖った形をしていて、その形が鷹の爪に似ていることに由来するといいます。江戸時代の学者・平賀源内が72品種の唐辛子について解説している書籍の中で、「食するには、これを第一とすべし」と記述されており、当時から優れた品種として認識されていたことがうかがえます。

絶滅の危機に立ち向かう

唐辛子の流通には4つの条件があるそうです。
それは、辛さ、香り、収量、摘み取りやすさ
鷹の爪は、辛さ、香り、収量はクリアしているものの、摘み取りに大変な手間がかかるため、次第に農家が栽培をやめていってしまいました。現在では、辻田さんが扱わなくなれば、鷹の爪純粋種は消えてしまう危機に瀕しています
そこで、辻田さんは自家採種を続ける一方、国内の農家に栽培を依頼。現在は、大阪に10件程度、その他には奈良、和歌山、京都、長野、愛知、鹿児島など全国各所で栽培されています。交配されると品種が変わってしまうため、完璧に管理した畑でないと純粋種を守れないそうです。

鷹の爪だけではない 原材料への熱い思い

「ええ粉を作りたい」真剣な眼差しで語る辻田さんからは、原材料への熱い思いが伝わってきます。収穫期には、自ら現地に出向き、収穫を見届けるそうです。

  • 柚子:無農薬・無化学肥料で、種から育てられた「実生柚子」を使用。近年は、管理・収穫がしやすいように接ぎ木で栽培され、3年から4年で収穫できるものが多く出回る中、辻田さんが扱う実生柚子は、種から育て、自分の力で生長するのに任せるため、収穫までに18年から20年かかります。この長い年月を経て、柚子本来の高い香りがはぐくまれるそうです。
  • 山椒:新芽や若実の、みずみずしく華やかな香りを保ち続ける「山朝倉山椒」を使用。こだわりの石臼製法でじっくり挽くことで、山椒の香りを壊さず、口当たりがいい仕上がりになります。

和風香辛料のおすすめの味わい方

今回は、普段の食事の中で、和風香辛料を楽しめるおすすめの使い方を紹介いただきました。

「鷹の爪は主役ではなく、あくまで脇役。お料理にほんの少し添えることで、食材のうまみがさらに広がり深まる」と辻田さん。お料理の味を引き立てる、まさに"名脇役"と言えます

辻田さんの原点「ないたあかおに」

やまつ辻田を訪れてくれる人に、おもてなしをしたいとの思いで作られた「ゲストルーム道」の戸口の立て札には、童話「ないたあかおに」の一節が記されています。

ないたあかおに

著者である浜田広介さんが、高野山真言宗総本山 金剛峯寺で出会った、運慶作の童子像を元に描かれた作品。

辻田さんは、初めてこの物語を読んだ幼少期の頃、青鬼のやさしさに大変感動し、それからも読むたびに涙がこぼれる程、この物語に魅了されていると言います。
お大師様が、運慶が大切にされたやさしい思いが、赤鬼青鬼に込められていて、それがまた辻田さんの胸をうち、高野山へとつながる西高野街道沿いのお店「やまつ辻田」で「鷹の爪」文化を守り続けている…運命とも感じられる素敵なエピソードをお聞かせいただきました。

香辛料や剣道にかける“熱い思い“

辻田さんはもうひとつの顔を持ちます。それは剣道の先生。
日本一に何度か輝いた道場「東陶器春風館」の師範です。

学業との両立を理想としており、夜7時から剣道の指導が行われた後、英語や数学などの勉強会が行われます。道場には多くの絵本が並べられており、一生懸命稽古をした生徒達も、絵本の時間には、じっと集中して読み聞かせを聞くそうです。

「一振りに想いを込める。」香辛料作りにも、剣道にも共通する熱い思いを辻田さんはこう表現します。
辻田さんに今後の抱負についてお伺いすると、「今まで、これが好きだからやってきた。今後は、一つ一つの粉をこれ以上ないものにして、世界の頂点の粉を作りたい。そして、皆さんに恩返ししていきたい」と話してくれました。

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