(令和8年4月1日施行)父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました
更新日:2026年5月12日
令和8年4月1日に施行された親権・養育費・親子交流などに関する民法等改正のポイントを掲載しています。
目次
法改正の概要
父母が離婚後も適切な形でこどもの養育に関わりその責任を果たすことは、こどもの利益を確保するために重要です。2024年(令和6年)5月に成立した民法等改正法は、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直しています。
この法律は、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。
親の責務に関するルールの明確化
父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する義務を負うことなどが明確化されました。
【こどもの人格の尊重】
父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの心身の健全な発達を図るため、こどもを養育する義務を負います。その際には、こどもの意見に耳を傾け、その意見を適切な形で尊重することを含め、こどもの人格を尊重しなければなりません。
【こどもの扶養】
父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを扶養する責務を負います。この扶養の程度は、こどもが親と同程度の水準の生活を維持することができるようなもの(生活保持義務)でなければなりません。
【父母間の人格尊重・協力義務】
父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません。次のような行為は、この義務に違反する場合があります。
・父母の一方から他方への暴行、脅迫、暴言等の相手の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷、濫訴等
・父母の一方が、他方による日常的なこどもの監護に、不当に干渉すること
・父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居させること
・父母間で親子交流の取決めがされたにもかかわらず、その一方が、特段の理由なく、その実施を拒むこと
など
※DVや虐待から非難するために必要な場合などはこの義務に違反しません。
【こどもの利益のための親権行使】
親権(こどもの面倒をみたり、こどもの財産を管理したりすること)は、こどもの利益のために行使しなければなりません。
親権に関するルールの見直し
(1)父母の離婚後の親権者
父母の離婚後の親権者の定めの選択肢が広がり、離婚後の父母双方を親権者と定めることができるようになります。父母の婚姻中は父母双方が親権者ですが、これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした。今回の改正により、離婚後は、共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。
【親権者の定め方】
〇協議離婚の場合
父母が、その協議により、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。
〇父母の協議が調わない場合や裁判離婚の場合
家庭裁判所が、父母とこどもとの関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮した上で、こどもの利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定めます。この裁判手続では、家庭裁判所は、父母それぞれから意見を聴かなければならず、こどもの意思を把握するよう努めなければなりません。
次の場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
・虐待のおそれがあると認めらるとき
・DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
(2)親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)
父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されました。
(1)親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。
(2)次のような場合は、親権の単独行使ができます。
・監護教育に関する日常の行為をするとき
・こどもの利益のため急迫の事情があるとき
(3)特定の事項について、家庭裁判所の手続で親権行使者を定めることができます。
【監護教育に関する日常の行為】
日常の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、こどもに重大な影響をあたえないものをいいます。個別具体的な事情によりますが、例えば、日常の行為に当たる例、当たらない例としては、次のような場合があります。
| 日常の行為に当たる例(単独行使可) | 日常の行為に当たらない例(共同行使) |
|---|---|
・食事や服装の決定 | ・こどもの転居 |
【子どもの利益のため急迫の事情があるとき】
父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害する恐れがある場合をいいます。急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。
個別具体的な事情によりますが、例えば、急迫の事情の例としては、次のような場合があります。
・DVや虐待からの避難(こどもの転居などを含みます)をする必要がある場合(被害直後に限りません)
・こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
・入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合
など
【親権行使者の指定】
父母が共同して親権を行うべき特定の事項(例:急迫の事情があるとは言えない場面におけるこどもの転居や財産管理など)について、父母の意見が対立するときは、家庭裁判所が、父又は母の請求により、父母の一方を当該事項に係る親権行使者に指定することができます。親権行使者は、その事項について、単独で親権を行うことができます。
養育費の支払確保に向けた見直し
・養育費の取決めに基づく民事執行手続きが容易になり、取決めの実効性が向上します。
・養育費の取決めがない場合にも、暫定的な養育費(法定養育費)を請求することができる制度が新設されます。
・養育費に関する裁判手続の利便性が向上します。
【合意の実効性の向上】
これまでの民法では、父母間で養育費の支払の取決めをしていたとしても、養育費の支払がなかったときに、養育費の支払義務を負う親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書などの「債務名義」と呼ばれるものが必要でした。
しかし、今回の改正により、この「債務名義」がなくても、父母間で養育費の取決めにつき合意書などの文書が作成されていれば、その文書に基づいて、養育費の支払義務を負う親の財産を差し押さえるための申立てができるようになりました。民法等改正法の施行前(令和8年3月31日以前)に養育費の取決めがされていた場合には、施行後(令和8年4月1日以降)に生ずる養育費に限って差押えの申立てができます。
【暫定的に請求することができる養育費(法定養育費)の新設】
これまでの民法では、父母の協議や家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。
しかし、今回の改正により、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続きこどもの監護を主として行う父母は、他方に対して、暫定的に一定額の養育費を請求することができるようになります。その額は、子一人当たり月額2万円です。また、この暫定的な養育費の支払がされないときは、差押えの手続を申し立てることができます。なお、改正法の施行後に離婚した場合に、この暫定的な養育費を請求することができます。
この新設された制度は、あくまでも養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なものです。こどもの健やかな成長を支えるためには、父母の協議や家庭裁判所の手続により、各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費の取決めをしていただくことが重要です。
【裁判所手続の利便性向上】
・養育費に関する裁判手続では、各自の収入を基礎として、養育費の額を算定することとなります。そこで、今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が、当事者に対して収入情報の開示を命じることができることとしています。
・養育費を請求するための民事執行の手続においては、地方裁判所に対する1回の申立てで
(1)財産開示手続:養育費の支払義務者は、その保有する財産を開示しなければならない
(2)情報提供命令:市区町村に対し、養育費の支払義務者の給与情報の提供を命じる
(3)債権差押命令:判明した給与債権を差し押さえる
という一連の手続を申請することができるようになります。
安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
・家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が設けられています。
・婚姻中の父母が別居している場面の親子交流のルールが明確化されています。
・父母以外の親族(祖父母等)とこどもとの交流に関するルールが設けられています。
【親子交流の試行的実施】
家庭裁判所は、調停・審判において、こどもの利益を最優先に考慮して親子交流の定めをします。その際には、適切な親子交流を実現するため、資料を収集して調査をしたり、父母との間で様々な調整をします。こうした調査や調整に当たっては、手続中に親子交流を試行的に実施し、その状況や結果を把握することが望ましい場面があります。そこで、今回の改正では、親子交流の試行的実施に関する制度を設けています。
(1) 家庭裁判所は、こどもの心身の状況に照らして相当であるかや、親子交流の施行的実施の必要性があるかなどを考慮して、親子交流の試行的実施を促すか否かを検討します。
(2) 家庭裁判所は、(1)の検討を踏まえ、当事者に対して、親子交流の試行的実施を促すことができます。試行的実施を促す場合、家庭裁判所は、実施の条件(日時、場所、方法等)を決めたり、約束事項等を定めることができます。
(3) 当事者は、家庭裁判所からの促しに応じて、親子交流を試行的に実施します。
(4) 試行的実施の状況や結果は、家庭裁判所調査官による調査や、当事者である父母自身による報告を通じて、家庭裁判所と父母との間で共有されます。
(5) 家庭裁判所は、(4)の結果を踏まえ、調停の成立や審判に向けて、必要に応じて更に調整等を行います。
【婚姻中別居の場合の親子交流】
父母が婚姻中に、様々な理由により、こどもと別居することがありますが、これまではそのような場合の親子交流に関する規定がありませんでした。そこで、今回の改正では、婚姻中別居の場合の親子交流について、次のようなルールを明らかにしています。
(1) 婚姻中別居の場合の親子交流については父母の協議により定める。
(2) 協議が成立しない場合には、家庭裁判所の審判等により定める。
(3) (1)や(2)に当たっては、こどもの利益を最優先に考慮する。
【父母以外の親族とこどもの交流】
これまで民法には父母以外の親族(例えば、祖父母等)とこどもとの交流に関する規定はありませんでした。しかし、例えば、祖父母等とこどもとの間に親子関係に準ずるような親密な関係があったような場合には、父母の離婚後も、交流を継続することがこどもにとって望ましい場合があります。そこで、今回の改正では、こどもの利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所は、父母以外の親族とこどもとの交流を実施するよう定めることができることとしています。
また、こどもが父母以外の親族と交流をするかどうかを決めるのは、原則として父母ですが、例えば、父母の一方が死亡したり行方不明になったりした場合など、ほかに適当な方法がないときは、次の(1)~(3)の親族が、自ら、家庭裁判所に申立てをすることができるようになります。
(1) 祖父母
(2) 兄弟姉妹
(3) (1)(2)以外で過去にこどもを監護していた親族
財産分与に関するルールの見直し
・財産分与の請求期間が2年から5年に伸長されています。
・財産分与において考慮すべき要素が明確化されています。
・財産分与に関する裁判手続の利便性が向上します。
【財産分与の請求期間】
財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度です。財産分与は、まずは夫婦の協議によって決めますが、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をすることができます。
これまで、この財産分与の請求をすることができる期間が、離婚後2年に制限されていましたが、今回の改正により、離婚後5年を経過するまで請求できるようになります(民法等改正法の施行前(令和8年3月31日以前)に離婚した夫婦が財産分与の請求をすることができる期間は、離婚後2年となりますので御注意ください。)。
【財産分与の考慮要素】
これまで民法では、財産分与に当たってどのような事情を考慮すべきかが、明確に規定されていませんでした。そこで、今回の改正では、財産分与の目的が各自の財産上の衡平を図ることであることを明らかにした上で、以下の考慮要素を例示しています。
このうち「財産の取得又は維持についての各自の寄与の程度」については、直接収入を得るための就労だけではなく、家事労働や育児の分担など様々な性質のものが含まれることから、寄与の程度は、原則として夫婦対等(2分の1ずつ)とされています。
(例示された考慮要素)
・婚姻中に取得又は維持した財産の額
・財産の取得又は維持についての各自の寄与の程度→原則2分の1ずつ
・婚姻の期間
・婚姻中の生活水準
・婚姻中の協力及び扶助の状況
・各自の年齢、心身の状況、職業、収入
【裁判手続の利便性向上】
財産分与に関する裁判手続では、分与の対象となる財産の種類や金額を明らかにする必要があります。そこで、今回の改正では、手続をスムーズに進めるために、家庭裁判所が、当事者に対して財産情報の開示を命じることができることとしています。
養子縁組に関するルールの見直し
・養子縁組がされた後に、誰が親権者になるかが明確化されています。
・養子縁組についての父母の意見対立を調整する裁判手続が新設されています。
【養子縁組後の親権者】
未成年のこどもが養子になった場合には、養親がそのこどもの親権者となり、実親は親権を失います。複数回の養子縁組がされた場合には、最後に養子縁組をした養親のみが親権者となります。
離婚した実父母の一方の再婚相手を養親とする養子縁組(いわゆる連れ子養子)の場合には、養親(再婚相手)とその配偶者である実親が親権者となります。この場合には実父母の離婚後に共同親権の定めをしていたとしても、他方の親権者は親権を失います。
【養子縁組についての父母の意見調整の手続】
15歳未満のこどもが養子縁組をするときは、そのこどもの親権者が養子縁組の手続を行う必要があります。これまでの民法では、父母双方が親権者であるときに、その意見対立を調整するための規定がなく、父母の意見が一致しなければ養子縁組をすることができませんでした。
今回の改正では、養子縁組の手続に関する父母の意見対立を家庭裁判所が調整するための手続を新設しています。
家庭裁判所は、こどもの利益のため特に必要があると認めるときに限り、父母の一方を養子縁組についての親権行使者に指定することができるようになります。親権行使者は、単独で、養子縁組の手続を行うことができます。
その他の改正
(1)改正前は、夫婦の間で結んだ契約を、いつでも一方的に取り消すことができることとされていましたが、今回の改正では、この規定を削除しました。
(2)改正前は、強度の精神病にかかって回復の見込みがないことが、裁判離婚の事由の一つとされていましたが、今回の改正では、この規定を削除しました。
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