本願寺堺別院 本堂・山門・鐘楼・太鼓楼・経蔵・御成門・手水舎・蓮如堂・蓮如堂拝殿
更新日:2019年6月13日
指定区分
堺市指定有形文化財
説明
当寺の創立は、文明年間に建立された御坊に始まります。文明2年(1470)に樫木屋道顕(かたぎやどうけん)が堂宇の再興を志し、蓮如を請うて慶讃法要を勤め、また同8年(1476)には境内にて堂宇を営み、信証院と名付けたと言われ、この際の堂宇が、堺御坊(堺別院)の起こりです。
その後、幾度かの戦乱により荒廃が進んでいましたが、元和9年(1623)に本堂の再建が行われました。正徳5年(1715)には、本堂の再建工事に取りかかり、享保13年(1728)に竣工したものの、この本堂は寛政10年(1798)の火災で焼失しました。境内の近世遺構のうち、山門と鐘楼はこの火災を免れたもので、現在の本堂は、その後、文政5年(1822)に再建されたものです。
なお、当寺は明治4年(1871)から同14年(1881)まで堺県庁の庁舎にあてられており、「堺県庁跡」として大阪府の史跡に指定されています。
本願寺堺別院 遠景
本堂
本願寺堺別院 本堂
本堂は、棟札によると、文政5年(1822)の上棟で、大工棟梁は水口初太藤原朝臣宗勝です。享保13年(1728)建築の前身本堂の造営にも、水口伊豆守宗茂、水口若狭守公貞が見られます。水口一門は「本願寺御大工」で、本山に準ずる格式の造営であったことが窺われます。
桁行9間、梁間11間の規模の大きなもので、屋根は入母屋造、本瓦葺とし、正面には本山格に準ずる3間の向拝(こうはい)を設けます。
大阪府下でも屈指の規模を誇り、堺市内においては最大級の木造建築物で、堺環濠都市区域内にあってひときわ大きな屋根がそびえています。大型真宗本堂の完成された遺構として建築史的にも重要です。
山門
本願寺堺別院 山門
山門は、桁行1間の四脚門で、屋根は切妻造とし、本瓦葺です。
随所にみられる巧みな架構は、禅宗様の手法に影響されたものとみられ、技量の優れた大工によるものと思われます。
近年実施された保存修理工事に際して、小屋内に「宝暦二癸申六月」の墨書が確認されました。建築様式と合わせ、宝暦2年(1752)に建築されたものと考えられます。
鐘楼
本願寺堺別院 鐘楼
鐘楼は、近世に一般的な形式で、柱を内転びに立てた方1間の鐘楼です。
寛政10年(1798)の火災を免れた山門とともに、江戸中期の再建建物のひとつとして貴重です。
なお、この鐘楼にある梵鐘も堺市の有形文化財に指定されています。
太鼓楼
本願寺堺別院 太鼓楼
太鼓楼は、伽藍の北西隅に建ち、大阪府下では数少ない3階建ての太鼓楼で、特に外観を3層とするものは唯一です。
桁行梁間共に1階は4間、2階は3間、3階は2間とするもので、屋根は入母屋造、本瓦葺とします。
建立年代は明らかではありませんが、建築様式から江戸後期に再建されたものと考えられます。
一階の街路側では、石垣上に海鼠壁(なまこかべ)を設け、その外観は特徴的なものであり、堺の寺院景観を代表する貴重なものです。
経蔵
本願寺堺別院 経蔵
経蔵は、桁行3間、梁間3間の平面を持ち、屋根は宝形造、本瓦葺とします。
やや建ちが高く、縦長のプロポーションをとっています。背面中央の柱間には宝輪を嵌めて西陽を採光し、後光を演出しています。建築様式から、建築年代は江戸後期であると考えられ、境内伽藍を構成する建物として貴重です。
御成門
本願寺堺別院 御成門
御成門は、狭山藩の大手門を移したものと伝わり、長屋門形式で、門の両脇に門番控室となる居室が付いています。
桁行6間、梁間3間で、屋根は入母屋造、本瓦葺とする長屋門で、軒は扇垂木とし、両脇には築地塀が付いています。
建立年代は明らかでありませんが、江戸後期の遺構を明治初年に移築したものと思われます。
また山門同様に、御成門の両脇には築地塀が南北に延び、屋根は本瓦葺とします。建築年代はその建築様式から江戸後期に建築されたものと考えられ、境内伽藍を構成する景観的要素としても貴重です。
手水舎
本願寺堺別院 手水舎
手水舎(ちょうずや)は、通常、桁行梁間ともに1間ですが、本例は桁行2間、梁間1間の長方形平面とする特色があります。延石を廻した低い基壇の上に、角柱を内転びに立てています。
建立年代は、手水鉢銘の寛政10年(1798)まで溯らず、江戸後期の遺構とみられます。
蓮如堂
本願寺堺別院 蓮如堂
この建物は、安永7年(1778)に大谷本廟を模して建立された蓮如堂の後身で、寛政10年(1798)の火災の後、江戸後期に再建された遺構です。
方一間の小さな建物ですが、蓮如堂に相応しく二重基壇に建っています。正面および側面のアルミ戸は後補ですが、境内伽藍を構成するうえで貴重な建物です。
蓮如堂拝殿
本願寺堺別院 蓮如堂拝殿
蓮如堂拝殿は、桁行3間、梁間2間の建物で、屋根は切妻造で本瓦葺とします。正面中央1間には軒唐破風を付けます。
正面と背面共に組高欄付の切目縁を付け、正面の石段側石には「施主 阿波屋吉兵衛」の刻字が見られます。
建築年代は江戸後期と比較的新しい建物ですが、伽藍を構成する建築物として貴重です。
所在地
堺区神明町東3丁1-10
所有者
宗教法人 本願寺堺別院
建物の構造と年代
- 本堂 桁行9間 梁間11間 入母屋造 本瓦葺 向拝3間付
文政5年(1822)
- 山門 1間1戸四脚門 切妻造 本瓦葺
宝暦2年(1752)
- 鐘楼 桁行1間 梁間1間 切妻造 本瓦葺
江戸中期
- 太鼓楼 3階建 1階4間四方 2階3間四方 3階2間四方 入母屋造 本瓦葺
江戸後期
- 経蔵 桁行3間 梁間3間 宝形造 本瓦葺
江戸後期
- 御成門 桁行6間 梁間3間 入母屋造 本瓦葺
江戸後期・明治初年移築
- 手水舎 桁行2間 梁間1間 切妻造 本瓦葺
江戸後期
- 蓮如堂 桁行1間 梁間1間 宝形造 銅板葺
江戸後期
- 蓮如堂拝殿 桁行3間 梁間2間 切妻造 本瓦葺 正面中央1間軒唐破風付
江戸後期
指定年月日
平成31年2月22日
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