平成24年度(2012年度)事業
更新日:2014年5月30日
無形文化遺産シンポジウム
アジア太平洋地域における無形文化遺産の現状と課題
日時
2013年2月17日(日曜) 午後1時から5時
会場
堺市博物館 地階視聴覚室
主催
堺市、独立行政法人国立文化財機構アジア太平洋無形文化遺産研究センター
実施概要
藤井知昭 アジア太平洋無形文化遺産研究センター所長による主催者挨拶の後、文化庁文化財部長 石野利和様からご挨拶を頂戴し、シンポジウムが始りました。
シンポジウムの概要は次のとおりです。
第1部 「無形文化遺産の調査の現場から」
◆ ミャンマー調査報告
土佐桂子 東京外国語大学大学院教授
「ミャンマーにおける無形文化遺産項目収集の現状と課題:伝統手工芸の観点から」(PDF:181KB)
田村克己 国立民族学博物館教授
「ミャンマーにおける文化政策と博物館―無形文化遺産に関わって」(PDF:162KB)
◆ パプアニューギニア調査報告
児玉茂昭 アジア太平洋無形文化遺産研究センターアソシエイトフェロー
「パプアニューギニア調査報告―口承伝承を中心に」
◆ インド調査報告
小笠原小枝 日本女子大学名誉教授
第2部 「無形文化遺産の今後の展望を考える」
◆ 福岡正太 国立民族学博物館准教授
◆ 岩井正浩 愛知淑徳大学大学院教授
◆ 吉本 忍 国立民族学博物館教授
「染織技術の継承に係わる問題と無形文化遺産」(PDF:168KB)
後半のパネルディスカッションでは、藤井知昭センター所長をコーディネーターに無形文化遺産の記録と伝承に関して熱心な議論が行われました。参考にご意見の一部をご紹介いたします。
○ 無形文化遺産は芸能、工芸技術、言語など多種多様であると同時に、その国、地域ごとに様々な背景を抱えている。日々少しずつ変化していく無形文化遺産を継承するために記録に残すことは有効であるが、いつ、誰が、何を、どのように記録するかで記録の意図するものが変わってくる。
○ 無形文化遺産の主体はそれを伝承する当事者であり、為政者やその他の者のおしつけがあってはならない。
○ 収集した記録を有効活用するためには記録を然るべき場所に集約すべきであり、調査研究の成果は無形文化遺産を継承してきた現地コミュニティと共有し、還元していく流れである。
○ 日本から出向いて行ってできることは限られている。対象となる無形文化遺産の近くに活動拠点(ネットワーク)が必要である。
○ 観光化により、無形文化遺産が本来の姿を失わないよう注意を払わなければならない。
○ 民間レベルにおいては、地域の古老や地元の伝承者による無形文化遺産の自然な伝承が行われている。公教育においても伝承に取組むのであれば、通常の授業でなく課外授業の中で地域の古老や地元の伝承者の協力を得て行う方がよい(教師が対応するのは難しい)。
○ 無形文化遺産は特別な人だけが継承するものではない。誰もが日本人として受け継いできた基本的な習慣や道具の使い方などを後世に伝えて行く義務がある。
最後に、パネリストから今後のセンターに対する提言や期待感が述べられ、シンポジウムは終了しました。
無形文化遺産シンポジウム「アジア太平洋地域における無形文化遺産の現状と課題」チラシ(PDF:3,081KB)
無形文化遺産理解セミナー
第4回 ことばと無形文化遺産
日時
11月23日(祝日) 午後2時~3時30分
会場
堺市博物館 地下視聴覚室
講師
児玉 茂昭
独立行政法人国立文化財機構 アジア太平洋無形文化遺産研究センター アソシエイト・フェロー
主催
堺市博物館・アジア太平洋無形文化遺産研究センター
内容
講師の児玉さんから映像や音声を交えたご説明があり、その後、質疑応答の時間が設けられました。講演概要は次の通りです。
ことばを語り継いでいく上で、口伝えで語り継ぐ「口承」は、非常に一般的かつ重要な行為です。現在証明できる限りで一番古くから語り継がれていると思われるのが、最も古い部分が紀元前15世紀頃に成立したと考えられているバラモン教の経典「ヴェーダ」やゾロアスター教の経典「アヴェスタ」です。
古いことばはかつて存在した出来事、文化、考え方を伝えるものとして非常に重要であるが、ことばは常に時間の経過とともに影響を受けて変化し、今、世界に存在している言語の半分以上が絶滅の危機に瀕しています。私達の身近でも、各地の方言をはじめ、琉球諸島のことば、アイヌ語など消滅の危機に瀕している言語は多いです。
古いことばが口承の中、記録された文書、方言の中に影をとどめている場合はまだ良いです。古代エジプト語やヒッタイト語は既に消えてしまったが、それらは文字を持っていたためにかろうじて記録が残っています。しかし、文字を残さず消えたことばは、ほとんどの場合その存在すらわかりません。
近年、テープレコーダー、ビデオカメラ、コンピュータなど様々な技術を駆使した記録方法が開発されています。しかし、ことばを記録するためには専門家の調査、記録方法の決定、記録技術の習得など長い時間を要します。従って、その重要性に鑑み、国及び地方行政の文化・教育政策の中に言語の復興、再生、継承を位置付け、時には国際的な支援を受けながら必要なプログラムを決定し、それらを体系的に進めていく必要があります。
多くの消滅の危機に瀕している言語を前に、正に、時間との勝負です。
無形文化遺産理解セミナー「ことばと無形文化遺産」チラシ(PDF:313KB)
第3回 東南アジアの人形芝居を楽しもう
日時
10月21日(日曜)、午後2時~4時
会場
堺市博物館 地下視聴覚室
講師
福岡正太さん 国立民族学博物館准教授
出演
ハナ★ジョス ジャワ芸能ユニット
主催
堺市
協力
アジア太平洋無形文化遺産研究センター
概要
東南アジア各地には、世界の人々を魅了してやまない多くの芸能が伝えられています。その中でも、重要な位置を占めている多様な人形芝居に焦点をあてて、今回のセミナーを開催しました。
この日は70人を超える参加がありました。まず、福岡先生がユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されているカンボジアのスバエク・トム、インドネシアのワヤンを中心に、東南アジアの人形芝居の種類、材料、上演スタイル、物語などについて講義をしてくださいました。
そして、ジャワ芸能ユニット「ハナ★ジョス」が、インドネシアのワヤンの影絵芝居であるワヤン・クリットをガムランの演奏と一緒に上演しました。演目は3世紀にインドで作られた長編叙事詩「ラーマーヤナ」から選んだ「シント・ボヨン(シント帰る)」の物語で、王子と魔王の戦いの場面は緊張感があふれていました。
ワークショップでは、参加者が人形の操り方を学んだり、ガムランを演奏してみたり、「お茶」の発音をもじったケチャを合唱したりして、ワヤン・クリットを楽しく体験しました。最後は参加者による影絵芝居「桃太郎」の上演もあり、ユーモアに満ちた芝居と参加者の笑いの中で、セミナーが終了しました。
無形文化遺産理解セミナー「東南アジアの人形芝居を楽しもう」チラシ(PDF:807KB)
- 「東南アジアの人形芝居を楽しもう」当日プログラム
※ 関連事業:スポット展示「東南アジアの人形芝居―舞台の小さな主役たち―」
第2回 雅楽を楽しもう~日本、アジア、世界との関わりの中で~
日時
7月15日(日曜)、午後2時から3時30分
会場
堺市博物館 地下視聴覚室
講師
寺内直子さん
神戸大学大学院国際文化学研究科教授、博士(文学)。専門は日本音楽史、民族音楽学。
主な著書に『雅楽を聴く~響きの庭へのいざない』(岩波新書)、『雅楽の〈近代〉と〈現代〉』(岩波書店)ほか。
主催
堺市
協力
アジア太平洋無形文化遺産研究センター
概要
日本の芸能史の中で最も古くから登場する「雅楽」をテーマに実施したセミナーでは、寺内先生から、現在に伝わる雅楽の主な種類、形態、使用される楽器や、伝承制度、学習方法の他、西洋現代音楽やポップスとの融合によって新たに創造される雅楽について、豊富な映像資料や音源、実演を交えてご紹介がありました。
歴史を辿れば、アジアから伝わった雅楽が日本人好みに変化し、また、明治以降、日本に輸入された西洋音楽という異文化との接触と融合により新しい雅楽作品が生まれてきた状況を踏まえ、伝統は、伝統として継続しつつ時代や環境に対応し少しずつ変化しており、高い質の文化を育む上で、多くの人が多元的な価値観を受容し、適切に判断する力が重要であるとのご説明がありました。
当日は約100人の参加者で会場が埋め尽くされ、雅楽を体系的に理解できましたとの感想が寄せられました。
無形文化遺産理解セミナー「雅楽を楽しもう」チラシ(PDF:647KB)
無形文化遺産パネル展示
博物館内にある無形文化遺産パネル室が10月にリニューアルしました。ユネスコ無形文化遺産保護に関するデータを更新したパネルの展示のほかに、堺市で行われた西暦2000年世界民族芸能祭などの映像資料が視聴できるコーナーを新設しました。
- パネルの内容(最新)は こちら へ
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文化観光局 歴史遺産活用部 博物館 学芸課
電話番号:072-245-6201
ファクス:072-245-6263
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