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「日本と世界が出会うまち・堺 2024」プロジェクト(終了)最終事業報告

更新日:2025年3月14日

中学生・高校生が歴史に迫る「日本と世界が出会うまち・堺 2024」研究発表会を開催しました【最終事業報告】

事業名

「日本と世界が出会うまち・堺 2024」研究発表会

日 時

2024年11月17日(日曜)12:45~17:45

場 所

大阪大学南部陽一郎ホール(Zoomとのハイブリット開催)

参加者数

会場参加者 102人、Zoom参加者31人、総計133人

プログラム

1)開会のあいさつ、開催にあたっての連絡事項
2)中学生・高校生12グループによる研究発表
3)審査結果発表、表彰式、講評、閉会のあいさつ

1)開会のあいさつ  堺市博物館 須藤健一 館長

須藤館長

みなさん、こんにちは。堺市博物館館長の須藤です。今日は「日本と世界が出会うまち・堺 2024」研究発表会のために、ここ大阪大学豊中キャンパスの大阪大学南部陽一郎ホールにお集まりくださり、誠にありがとうございます。それぞれの駅からかなり歩いたことと思います。私も迷子になりかけました。

さて、みなさんには6カ月前、5月から6月にかけて、堺のもの・ひと・ことなどに関するテーマをグループで話し合って選んで、この企画に応募してくださいましたね。そのテーマを調べて深め、夏の事前相談会で披露して、助言者の方々からいろいろなアドバイスやコメントをいただいて、この研究発表会の直前まで、フィールドワーク、文献調べ、情報のまとめなどを行い、グループで分析・解釈するなど、たいへんがんばられたことでしょう。

みなさんが当初考えていた構想・考え方・仮説を立証するために、議論して理解して発表に仕上げる力にしてくれたものと思います。今日、ここで、みなさんの研究の成果を聞けることを私は本当に楽しみにしています。どうか自信をもって堂々と発表してください。よろしくお願いします。

2)中学生・高校生12グループによる研究発表

【添付資料】当日配付資料(PDF)

3)審査結果発表

審査は次の3人の審査員により行いました。
◆古谷 大輔 大阪大学教授(審査委員長)
◆後藤 敦史 京都橘大学准教授
◆倉橋 昌之 堺市博物館学芸員
 審査基準は次の5項目で各審査員100点満点としました。
1)堺や対象地域の歴史の取り上げ方について  20点
2)世界史や国際交流の視点について      30点
3)研究内容の深さについて          20点
4)発表のたくみさについて          20点
5)総合的な評価点              10点
※審査結果と各賞、各グループの講評は次のとおりでした。

◎中学生の部

○最優秀賞(ルソン助左衛門賞)

関西大学中等部 フィールドワーク部 歴史班

テーマ カナダに渡った日本人移民

講 評

昨年の研究成果をベースに残された課題に取り組んだ、すばらしい発表でしたね。今年はカナダ・バンクーバへの修学旅行も体験でき、残された課題だったカナダが移民を受け入れたプル要因について、日本が移民を送り出したプッシュ要因との連関の研究が深化したと思います。現地博物館の視察で、当時のカナダの産業構造や、日本人移民への差別・排斥と「黄禍論」など、カナダ側の受入要因と排除の論理に対する実証的な研究を的確に反映できた内容でした。

関西大学中等部 フィールドワーク部

○優秀賞

雲雀丘学園中学校 華津紫果

テーマ 堺緞通

講 評

堺緞通と中国緞通・ペルシア絨毯などとの織り・材質・需要・販売などのグローバルな比較が適切にできていた発表でしたね。堺緞通の創設と繁栄の歴史から衰退の現状までをフィールドワークや文献調査で情報収集し、写真や図・表を使ったていねいな発表でした。堺緞通への提案「アート化で活路を」も興味深いものでした。本日の一番目の発表で緊張する部分があったと思うのですが、質疑応答も含めて、とてもわかりやすくてよい発表でした。

雲雀丘学園中学校 華津紫果

○奨励賞

帝塚山学院中学校 歴史研究部 A crystallite

テーマ 与謝野晶子と女性運動

講 評

与謝野晶子と平塚らいてうの「女性保護論争」について、ふたりの生活や実践を含む多面的な角度から考察できていました。仮説設定も適切で、考察から結論に至る道筋も理解しやすかったです。みなさんの説明も論理的でわかりやすいものでしたね。晶子の欧州体験の影響だけではなく、晶子が訳した『源氏物語』との関連にまで追求した点もよかったです。晶子の思想の時代的な背景や変遷などをもう少し深堀りすれば、優秀賞に届く発表になったと思います。

○奨励賞

雲雀丘学園中学校 まさるすけ

テーマ 堺の染め

講 評

和ざらしから注染に至るまでの歴史が的確にたどれているだけでなく、和ざらしの製造過程での工夫や注染の染めの特徴について、フィールドワークの成果がよく反映された発表でしたね。クイズもおもしろく勉強になりました。世界的な比較対象として、捺染を選んだこともよかったと思いますし、それぞれの技法について、いろいろと調べていることがわかります。比較項目をさらに深堀りして仕上げたならば、よりよい発表になったと感じます。

○奨励賞

大阪教育大学附属天王寺中学校 社会研究班

テーマ 堺打刃物

講 評

堺の伝統産業である打刃物を取り上げて、製造現場のフィールドワークの 成果について写真を使って わかりやすく発表できていました。イラストや図表などもうまく仕上げていて よかったですね。とりわけ、問屋の役割について考察した点も 優れていました。ドイツ・ゾーリンゲンやイギリス・シェフィールドといった外国の主要産地との国際的な比較は わかりやすかっただけに、各地についてもう少し深く比較考察すればもっと よかったかなと思いました。

○奨励賞

神戸大学附属中等教育学校 ボタン鍋(仮)

テーマ イタリアと堺の都市構造比較

講 評

多面的な都市比較というテーマ設定は よい着想でしたね。「水都」と呼ばれる堺とヴェネツィアの都市構造や統治体制などの共通点と相違点を ていねいに比較した わかりやすい研究発表だったと思います。なお、「東洋のベニス」(戦国期に日本に来た宣教師たちは「東洋」という表現は使っていない)や「えごうしゅう」(会合衆の読み方は「かいごうしゅう」が現在の定説)など、 先行研究の成果を広く調べれば、より よい発表になったと思います。

○奨励賞

堺市立三国丘中学校 郷土研究部

テーマ 古墳の使い道

講 評

古墳を研究発表するときの視点が「使い道」という今までにないもので斬新でした。築造された古代ではなく、中世の城、近世の灌漑用水、幕末の文久の修陵までを取り上げて くわしく報告した点が評価できます。クイズの内容、パワーポイントでの写真・図表・イラストは、なかなか工夫されたものであり すばらしかったです。ただ、盗掘については、「使い道」という視点とは少し違うので、別の角度からの考察ができれば よかったですね。

◎高校生の部

○最優秀賞(フランシスコ・ザビエル賞)

帝塚山学院高等学校 歴史研究部 行基ッズ!

テーマ 堺の土塔と行基

講 評

行基が堺の地に 造った土塔について、日本の 類似建造物だけでなく、インド、中国、東南アジア各地の類似仏塔を詳細に調査研究して、その成果を写真や地図を効果的に用いて わかりやすく伝えようとした 、すばらしい発表でしたね。北伝・大乗仏教と南伝・上座部仏教の比較、各地の仏塔の形態や建築構造の比較もよく研究できていたと思います。さらに、行基が組織した「知識」集団についても触れている点も よかったです。

帝塚山学院高校 行基ッズ!

○優秀賞

桃山学院高等学校 MOMOKIN

テーマ 金魚がつないだ堺と世界

講 評

16世紀に中国から堺へ輸入された金魚が大和郡山を経て 全国に広まっていく歴史を丹念に研究した、す ばらしい発表でした。江戸時代の大和郡山での養殖・品種改良・販売が当時の藩経営や町人文化の発展との関連で進んだことがよく理解できました。幕末から明治時代の欧州輸出と当時のジャポニズムや美術との関わり、文化大革命後の中国への輸出と日中の趣向比較などの考察も興味深かったです。数値的裏付けがあればさらに よい発表になったと思います。

桃山学院高校 MOMOKIN

○奨励賞

桃山学院高等学校 さかいめ研究部

テーマ 「堺幕府」は果たして幕府と言えるのか!?

講 評

まず、日本史学界でも様々な議論のある「堺幕府」を研究した点に敬意を表します。「堺幕府」に関する史料が少なく、先行研究を読み解きながらの研究はたいへんだったと推察します。パリ・コミューンを比較する対象に持ってきたこと、その観点はとても大胆でユニークでしたね。各時代の幕府の統治体制や特徴などを詳細に考察できているので、図表にまとめて明示したうえで比較検討すれば、さらにわかりやすい発表になったのではないでしょうか。

○奨励賞

箕面自由学園高等学校 チームT1

テーマ 堺と北摂の古墳の比較

○奨励賞

箕面自由学園高等学校 チームS4

テーマ 堺と北摂の発展の歴史の比較

※箕面自由学園高等学校の2グループは、研究発表会当日は不参加でしたが、研究を実施していたので奨励賞
 といたしました。

◎特別賞 堺ユネスコ協会賞

関西大学高等部 フィールドワーク部 歴史班・鉄道班

テーマ ハマデラソウと牧野富太郎

講 評

昨年春のNHK 連続テレビ小説でも取り上げられた牧野富太郎の関西での活躍や堺の地名が和名となった外来植物「ハマデラソウ」について、 丹念なフィールドワークと文献調査ができていた発表でしたね。研究上の位置付けだけでなく、地元コミュニティの 取組の成果や意義を学際的な研究視点で考察していることもこの発表会の趣旨を十分に理解した発表でした。高校生の部の最優秀賞や優秀賞と比べても遜色のない 、すばらしい出来ばえでした。

4)講評  大阪大学 古谷 大輔 教授

古谷審査委員長講評

 本当に長い時間、お疲れさまでした。私自身の高校時代と比べると、「すごくよい時代になったんだなあ。」と思いました。私は茨城県の水戸一高で学びましたが、二つの部活動に関わっていました。一つは社会科学研究部です。部長も務めました。昔の学生運動の延長線上でマルクス主義の研究もやりました。
 もう一つは史学研究部です。しかし、その当時はこのような発表会はありませんでしたので、いわばマニアックに活動していました。
みなさんが発表した内容に点数をつけざるを得ません。けれども私はこう思っています。私の大好きな哲学者にソクラテスという人がいます。「一つだけ真実というものがあるとするならば、モチベーションさえ持っていれば前へと進み続けられる」ということをいっています。「あのときこういう問題があった」「あのとき自分でわからなかった」…こういうことがあった方がむしろその先に進めるということです。だから、今日ここで賞をもらえなかったからといって、自分たちは精一杯がんばったという意識があれば、私はそれを評価したいと思います。今日、賞を取る取れないということは「たまたま」の話です。口惜しさというものがあるならば、むしろそっちの方が今後の飛躍につながるバネになると思います。
 個別の講評は、本当は話をしてあげたいと思いますが、長くなるので、後日、堺市博物館のホームページなどに載せます。ここでは、全体としての総評をお話ししたいと思います。全体的に非常にレベルの高い研究発表でした。これは大阪大学で歴史の教育をしている人間としての実感です。近年は大学でも探究学習を踏まえて、「自分なりの目線でどのような問題を見つけてくるのか」「その問題に対して、とのようにリサーチしていくのか」「リサーチした結果をどのようにわかりやすい発表にしていくのか」ということが大切になってきています。この点がどのグループもクリアだったと思います。私は、総合型選抜を重視するとよいと常々いっています。
 そして、とりわけ、私は大学で勉強するときに、三つ大事なことがあると考えています。
 まず一つ目は、事実に立脚すること。全てのグループがそれを意識していましたね。
 二つ目。論理整合性ということ。論理の飛躍がない。これもすべてのグループが論理の道筋を明示しようとしていましたね。
 そして三つ目。これが実は一番大切なことで、反証可能性ということ。実は、前の二つは、うさん臭い人間でもやろうとします。しかし、自分の手の内をさらして、「どうぞこの話を聞いてくれた方たちも検証してみてください。そうすれば、私たちが主張していることに客観性があるということがわかってもらえると思います」といえます。したがって、「手の内をさらす」ということが一番大事です。これもみなさんがしてくれましたね。
 何度でもいいますが、すべてのグループはクリアしています。
 高校生のグループは、やはり一段レベルが高いと思いました。それは、世界との関係性を念頭に置いたうえで、学問の垣根を越えていたからです。これが大事。「文理融合」という言葉があります。英語では、グローバルチャレンジという概念になります。文系と理系、それぞれの知識を融合したらどのような新しい可能性が生まれるのかという方向に世の中は動いています。質疑応答の中でも、地学や博物学などの知識についてお話しさせていただきましたね。それはみなさんのグローバルチャレンジに役立つと思うからです。

 長時間お付合いいただいた保護者のみなさんや学校の先生方にも感謝を申し上げたいと思います。最近の大学入試は、知識重視の一般入試だけではなく、11月ですからもう始まっているのですが、大阪大学をはじめ各地の大学の多くが、総合型選抜に重点を移し始めました。探究学習というものに注目しているからです。このよい季節の家族団らんで楽しめる日曜日になんで大阪大学でこんなことを、とも思いますが、今日のこの経験が総合型選抜に生きてくると思います。みなさんが自発的な問題への関心に寄り添いながらリサーチをしていくという取組、これが大事なのです。ですから、このような企画に対してもご理解とご支援をいただければと思います。
 最後に、ソクラテスは「産婆さんのところへ行きなさい」ともいっています。中学生高校生のみなさんは、まだまだわからないことがたくさんあると思います。そのときに先生や保護者のみなさんが常に対話をして、産婆さんが赤ちゃんを産む手助けをするように、彼ら彼女らが答えを見出せるようにしてあげてください。私たちも産婆さんの立場で寄り添っていきたいと思います。
 なお、高校生の部で最優秀賞となった帝塚山学院高等学校歴史研究部の「行基ッズ」のグループには、「全国社会科学郷土研究発表大会」が毎年開催されていまして、来年は7月30日と31日に栃木県宇都宮市でありますので、そこに本会からの代表として推薦したいと考えています。あくまでも「参加していただけるのであれば」というお話しです。詳細は全国大会の事務局から本会の事務局へ届くと思いますので、それから協議していきたいと考えています。どうかご検討のほど、よろしくお願いいたします。

 

5)閉会のあいさつ  堺市博物館 須藤 健一 館長

 今日は、12時45分からこの時間まで、長い長い発表会にお付き合いくださり、ありがとうございました。今日は11グループの発表がございました。どの発表も、本当に鋭い切口でした。そして自分たちが目標としたころまで追い求めてくれました。達成感があったのではないでしょうか。古谷先生もおっしゃっていたように、本当にレベルの高い発表ばかりでした。データを収集し、分析と解釈をして自分たちが理解したうえで、今日発表してくれたということですね。
 カナダに渡った人々をテーマにした発表で感心したのは、修学旅行に行って物見遊山に終わるのではなく、バンクーバーなどの現地をフィールドワークして、帰ってきてから、第二次世界大戦後、堺にいた進駐軍の通訳などにも調査の対象を伸ばして、堺と結びつけてくれて、とてもうれしかったです。
 堺緞通の発表に関しては、堺緞通は最盛期に170万枚をアメリカ合衆国に輸出した当時の日本の花形の輸出品でした。ロンドンの万国博覧会でもモテモテだったそうです。その繁栄の歴史がありますが、今では織り手・後継者が5人しかいなくなりました。このテーマを選んで堺緞通の重要性を指摘してくださり、ありがとうございました。
 ハマデラソウの発表は、これを守る人たちが堺にいるということに着目してくれました。堺にとってとてもうれしい発表でした。
 土塔の発表は、世界比較までしてくれましたので、今後とも、行基さんは自分の修業の場として土塔、大野寺を造った、その思いについても追及していただければうれしいです。
 来週から、堺市博物館で行基さんをテーマにした展覧会が始まります。行基、羅漢、役行者をテーマにした企画展です。いろいろなヒントが得られると思いますので、ぜひお越しください。
 金魚の発表で感じたのは、堺は中世の「黄金の日々」がありましたが、現在にまで残っている文物は多くありません。その一つが金魚でした。
 古墳の発表もありました。江戸時代まで、古墳は堺の人々にとって身近なものでしたが、明治時代になって遠い存在になってしまいました。しかし、古墳は「生きているお墓」なのです。皇室の方々の先祖をお祀りしている陵墓なのですね。ですから、考古学的な調査はなかなか全面的にはできません。
 みなさんは、これからも堺のことを忘れないで、堺の出来事に関心を持ち続けてくださいね。今日は本当にありがとう。

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文化観光局 歴史遺産活用部 博物館 学芸課

電話番号:072-245-6201

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〒590-0802 堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 大仙公園内 堺市博物館

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