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(2022年4月19日)東吉野村紀行(堺市友好都市)木立ちをぬけて、私設図書館ルチャ・リブロを訪ねて

更新日:2022年7月28日

私設図書館ルチャ・リブロ

山笑う、やわらかい新緑が、心を撫ぜる道。

東吉野村まで、車の窓は開けたまま。

 

昼ごはんは、名前に惹かれて「きのこの館」へ。

順番待ちする人々はあたりをプラプラ歩いています。

お店の人が大声で名前を呼んでくれるので、

目の前の川を渡って

苔むした切り株やベンチ、お墓を眺めます。

天誅組の碑や戦争で亡くなった人の墓があり、

世界で、今また戦争で命を落とす人たちのことを思いました。

 

今回、東吉野村を訪ねたのは

私設図書館ルチャ・リブロ(以下、リブロ)の運営者・青木さんご夫妻に会いたくてです。

友人知人から、リブロのことをよく聞いていました。

週に3日程度、開かれる自宅兼図書館。

パブリック・スペースで、研究センターで、人文系私設図書館。

「手づくりのアジール」という本の著者。

アジールとは、避難所、聖地といった場のこと。

また、大きな権力の統治に抵抗するような場であったり、過渡的な現象をさすこともあります。

 

車を停めて、高見川にかかる小さな橋を歩いて渡ると、天誅組終焉の地。

寅太郎の碑は、山の懐に抱かれるようにして、苔の時間を刻んでいます。

シダ植物の湿った匂いと杉木立ちをぬけて、蛇行する小径。

裸電球がぽっと灯る物語の一軒家の入り口には、

白い花の木蓮と、赤紫のハナズオウが満開です。

 

古い木枠の玄関の扉を開けると、毛足の長い猫が迎えてくれました。

館長のかぼすです、と紹介されました。

 

こたつ、ゆったりとした緑のソファ。

使いこまれたミシン台はテーブルになり、木箱が本棚になり。

ぎっしりと並んでいる本。

リズムよく並べられた本。

 

はじめて会った気がしない青木さん夫妻と話しこんでいると

館長が足元にやってきてごろごろしていきます。

「わたしたち、生きのびるために逃げて、

青木さんたちは木立ちの中に、わたしは都市の人間の中にいるのね」と口にすると、

三人で笑いました。

 

時おり、静かにお客さんが入ってきて、

しばらくすると、ありがとうございます、と挨拶をして

静かに立ち去っていきます。

 

すこし陽が傾きはじめ、いっしょに河原に出ました。

「あの魚、ハヤね」

「食べれる?」

「食べれる」

すばしこい動きの魚を目で追いかけます。

ここでは、野草や魚、生きていくためのものを自分たちで採ることもできます。

わたしも都市の中で、井戸を掘ったり、手づくりやブリコラージュ(※)で生きることをしようとしています。

 

いとまを告げて、夜には大阪の街中に戻ると、一軒家が幻のように思えてきます。

 

記憶のなかでは、

木蓮の花が、白い鳥のようになって

なんども飛び立ってゆくのです。

 

2022年4月19日


プログラム・ディレクター上田假奈代


 

 

私設図書館ルチャ・リブロ

https://lucha-libro.net/

 

※ ブリコラージュ そこにある物を寄せ集めて試行錯誤して作ること。

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