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泉北ニュータウンのこれからの10年を見据えて

更新日:2021年9月15日

SENBOKU New Design かつてのベッドタウンから、より豊かに暮らせるまちへ 泉北ニュータウンの価値を高め、次世代に引き継ぎ

SENBOKU New Design(駅前周辺エリア)

コミュニティデザイナー・山崎亮さんを進行役に、永藤英機・堺市長と増田昇・大阪府立大学名誉教授に、今後の泉北ニュータウンの期待や取組のポイントなどについて聞きました。

要旨

テーマ「泉北ニュータウンのこれからの10年を見据えて」

事務局

本日の鼎談は、令和3年5月に策定しました「SENBOKU New Design」を、市民の皆様をはじめ、内外に広く情報発信することを目的として開催するものです。
「SENBOKU New Design」の理念や将来像を発信することにより、泉北ニュータウンに対する市民や事業者の皆様などの期待感を醸成し、泉北ニュータウンのブランド構築に結びつけていきます。
鼎談テーマは「泉北ニュータウンのこれからの10年を見据えて」といたしまして、皆様のお考えや期待感について、お話しいただきたいと思います。
それでは、進行につきまして、山崎様よろしくお願いします。

山崎

では、よろしくお願いします。
まず、泉北ニュータウンの魅力や良さをお話しいただきたいと思います。永藤市長、いかがでしょうか。

永藤

私が泉北ニュータウンに住んでいたのは、小学2~4年生の時でした。子どもがとても多く、当時の私にとって、近隣センターは何でもあるような魅力的な場所で、その時の思い出が色鮮やかに残っています。また、緑道が隣の台へと通じていて、ロールプレイングゲームのように世界が広がっていく感じが、子ども心にすごく楽しかった印象です。
年齢構成や施設の老朽化などの課題はありますが、計画的に整備されたまちで緑が多く、魅力にあふれた素晴らしい地域だと思っています。

増田

泉北ニュータウンは、私が大学生の時に、泉北高速鉄道が泉ケ丘駅まで延びました。車がまだ通っていない泉北1号線を使って、駅まで自転車で行ったことが最初の思い出ですね。大学院卒業後は、泉北ニュータウンを計画設計している事務所に就職し、光明池地区の団地の設計を行いました。大学に戻ってから、その団地に住んだ経験もあり、泉北ニュータウンに関わって40年も経ちます。
泉北ニュータウンの良さとして、充実した道路や公園という都市基盤施設は特筆すべきところで、歩行者の専用空間である緑道が整備され、保育所や幼稚園、小学校、中学校、商業施設、近隣センターにつながっており、子どもが車を気にせず、安全に暮らせることが非常に大きな魅力だと思います。
また、泉北ニュータウンは千里ニュータウンと違い、丘陵地の緑を残してニュータウンを計画しました。その丘陵地の緑が緑道沿いに残されているため、緑の豊かさは建設当初から際立っており、それから50年を経て木が育ちましたので、非常に緑が豊かなことも大きな魅力ですね。

山崎

奥野健男さんの「文学における原風景」という本では、原風景(人の心の奥にある原初の風景のこと)ができるのは、大体9~10歳くらいだと書かれています。まさに泉北ニュータウンが、市長の原風景を作ってくれたのですね。

さて、ウィズコロナ時代がやってきましたが、この時代における泉北ニュータウンに対する思いを、市長からお話しいただけますか。

永藤

コロナは、私たちの生活や働き方、価値観を大きく変えました。コロナ禍では外出が制限されたり、働き方の変化でテレワークが進むなど、自分の身近な場所で暮らす時間の大切さを改めて感じることになりました。

住む場所と働く場所が別々であることが多かったのが泉北ニュータウンですが、これまでの考え方を見直して、緑豊かな自然の中で暮らしながら、その近くで働くことができる環境が、まさに今のコロナ禍で求められているのではないかと思います。

増田

昭和30年代、国は人口が急増する都心部の住宅難の解決策として、住宅供給と住環境の改善のために、郊外にニュータウンをつくりました。モデルとなったイギリスの田園都市は、食糧供給や働く場も備えた「自立都市」という思想でしたが、日本ではベッドタウン化したことにより、後世に大きな課題を残しました。

永藤

諸外国のニュータウンも当初の計画だけではなく、時代に合わせて変わってきました。泉北ニュータウンもベッドタウン化してしまったことは一つの課題ですが、そこに住む人たちがいかに充実して過ごせるかを念頭に置き、時代の変化に合わせて、まちの在り方も変わっていくことが必要と考えています。

増田

これからのまちづくりは、目標を決めてそれに一直線に向かっていくのではなく、可変性を持たないといけませんね。社会情勢が大きく変化するので、可変性を持って即応しながら展開できることが大切です。

永藤

それこそ、サスティナビリティという概念なのかも知れませんね。

山崎

当初なら、計画をつくり突き進んでいくこともある程度はできましたが、今の泉北ニュータウンは、お住まいの方がいらっしゃるので、まちの将来像を住民の方にも共感してもらえないと次へ移れないですね。

行政が決めて、後はそこに突き進むという形ではなく、今回の「SENBOKU New Design」でも、市民の方々が共感して「これ自分たちもやってみたい」と思ってもらわないと進んでいかないですね。

永藤

私たちは今の課題を注視しなくてはいけませんし、これからのビジョンを示して、イメージができるように、「ベッドタウンから豊かに暮らせるまちへ」ということをコンセプトに掲げました。これまでは、泉北ニュータウンの「再生」を掲げてきましたが、計画に基づいて整備されたまちがあるわけですから、それをどう生かして、どう変えていくかということをもう一度考える必要があります。50年前のまちをそのまま再生するのか、新しい価値観やこれから求められること、希望に合うように変えていくのかについて皆さんと一緒に考えていきたいという思いで「New Design」と名前を付けました。

増田

「SENBOKU New Design」策定の懇話会でも「New Design」という名前について、議論を行いました。「リボーン」や「リジェネラティブ」という「再生」を意味する言葉ではなく、今あるものをもう一度再編集して変えていく「リエディティット」という案もありました。「目標像を新たに共有する」「新たな価値を創出する」という意味での「New Design」という市長の思いを事務局からお聞きし、委員も納得してまとまりました。
伝統芸能を守るときの考え方で、「型」と「流行り」があります。「型」というのは、今までの伝統を基本的に守ることですが、「型」だけでは伝統芸能は廃れると言われています。必ずそれに「流行り」を入れないと、伝統芸能が維持できません。常に新しい流行り、新しい考え方を入れていきながら展開させていくというのは、歴史を守り、それを向上させていく一つの考え方なのでしょうね。

山崎

新しい流行、新しい概念を入れていくという意味では、今はインターネットの時代で、泉北ニュータウンができた時とは全然違うテクノロジーが入ってきています。スマートシティやICTと呼ばれるものを活用していく新しい概念も、これからの泉北ニュータウンの中に入れていかなければならないと思いますが、泉北ニュータウンのスマートシティの取組について、市長からお話しいただけますか。

永藤

スマートシティは課題解決の手段であると考えています。泉北ニュータウンは起伏があり、駅から離れた場所もあります。近隣センターでは福祉施設が増えていますが、商店が減り身近な場所で買い物もできず、高齢になった方は移動も難しくなっています。生活圏を維持するためにこれらの課題を解決できる可能性があるのがスマートシティの新しい技術やサービスであり、この新しい発想を積極的に取り入れながら、今住んでいる方たちにとって暮らしやすい新たな仕組みを創りたいと思います。
住民も行政も企業の皆さんも力を合わせながら新しくデザインしていくうえで、大きなポイントは2025年の大阪・関西万博だと思っています。これは未来を示す展覧会みたいなものなので、スマートシティをそれまでに何とか形にしたいですね。

増田

ICTが導入されてくると、それに伴って生活形態が変わるし、生活形態が変わってくると、それをフォローアップするためにICTが向上していくことになります。このような両輪で将来へ展開していって欲しいと思いますね。
今回のコロナでは、タブレットPCが小中学生に配られて、それに触れる機会が増えました。教育現場も、ICTをどう併用しながら展開していくのか、ということを考える必要が出てくると考えます。
また、高齢化の中で移動環境を確保するため、パーソナルモビリティをスマートシティの中で展開し、移動をしっかりと担保していくことも大切です。高齢者が外出して、社会的な場面に触れ、参加できるということは大事ですね。
ところで、千里ニュータウンと泉北ニュータウンは、兄弟のように整備されたニュータウンですが、50年が経過して大きく違いが見えてきました。千里ニュータウンでは、住宅再生が進んでいますが、周りに農村エリアがなく、都市の中に埋没してしまった感があります。泉北ニュータウンは、千里ニュータウンと比べると住宅需要があまり高くない状況ですが、周囲に大阪府内でも農業生産額が一番の農村エリアを持っていることは大きな特長であり、それを強みにしていくことが大事です。泉北ニュータウンでは、周囲の農村エリアのことをじっくりと考えながら、住宅施策も時間をかけて取組を展開していくことが大事ですね。そういった意味で、泉北ニュータウンは、日本のニュータウン再生の指針を示すことができるのではないかと思っています。

永藤

やはり農地があることは大きいと思います。大阪府内で農業産出額の1位は堺市です。その中でも最大の農地面積が南区にあり、地産地消をはじめとした緑と農に触れ合える生活ができます。これから新しく農業を営みながら生活される方もおられると思いますし、それにより生活がさらに充実するのではないかと考えます。

山崎

これまでは、泉北ニュータウンにお住まいでも、働く場所は堺や大阪の中心の方へ目を向けがちだったかもしれません。一方で、特に若い人たちは、農のある暮らしや土を触りながら暮らしていくことに対する価値をかなり見出していますから、すぐ近くに農地があることを再発見することで、そういう価値観を持った方々がちょっとずつ入ってくると良いですね。

日本の中でも、そのようなことを実現できるニュータウンはそんなに多くなく、いろんな価値観を体現できるような場所に、泉北ニュータウンがなっていって欲しいと思います。

増田

それができると、堺から発信する「堺発」になると思います。

永藤

堺市は隣に大阪市という西日本最大の都市があります。ですから、大阪市と同じことをめざすのではなくて、「大阪市にないものを堺市で創り出す」ことが重要です。

その意味でも、大阪市には少ない堺市の自然環境や豊かな住環境の魅力をさらに高めることによって、大阪市と堺市の違いを出しながら、共に発展させていくことができると考えています。

山崎

さて、今回の「SENBOKU New Design」の中でも、住民や事業者などの様々な主体が思いを共有して、共創することが重要だと書かれていますが、「共創」という点では、これからの泉北ニュータウンがどうなっていけば良いとお考えですか。

永藤

住民の皆さんや企業・団体が活動されていることを行政がサポートしながらつなぎ合わせ、ばちっと連携できたら良いですね。

山崎

行政の計画では、住民の方々と一緒に、ボランティアやサークルの人たちと何かやりましょうということはよく書かれますが、参加者の母数を増やすという意味では、思いを持っているけど一歩を踏み出せない方や、その思いを持ち始めている方をサポートすることが重要だと思います。どうすれば良いだろうと思っているところに、今回の「SENBOKU New Design」を読んでいただくと、「あ、これか」みたいなものが結構見つかるんじゃないかと感じますね。

永藤

活動される方や思いがある方に、こういう発想があるんだということを知っていただくことが重要です。「SENBOKU New Design」でも、今住んでおられる方や新しく移って来られる方など泉北ニュータウンでいろんな方たちが関わって、そこで新しい刺激やヒントを得て化学反応が起きることを期待しています。ぜひそのフィールドを行政が強力にサポートしたいと考えています。

増田

私は、緑地保全や里山保全で色々な方と活動していますが、緑好き、自然好きといった生態学を意識した人たちばかりが集まっていると、活動に限界が出てきます。そこに子育て層などの違った志向の方々が入ってくると、とたんに融合して活動が多様化して、継続していきます。テーマ型コミュニティでは限界があるため、そこに多様な視点が入り、それを受け入れられる仕組みを持つことが非常に大事ですね。

また、住民が活動するときに、中心となるコアメンバーやクラブメンバーだけでなく、周りのファン層を育てていく仕組みも大切です。ファン層を無視して、中心のメンバーだけに着目してしまうと、活動に限界が出てきます。

山崎

今日のお話を読んでいただいたら、コアメンバーで活動されている人たちが、ひょっとしたら、たまに参加するファン層の方にも価値があると改めて気付くかもしれませんね。泉北ニュータウンでは、それくらいの関わり方でも良いんだっていう、潜在的な方々が市民活動にもっと参加しやすくなりそうですね。

永藤

市民活動に対して、想いを持っておられる方は多いと思います。一方で、「どうやって関わっていくか」ということが分かりにくい。何らかの関心がある方が関わりやすい仕組みが求められていると考えます。

増田

懇話会でも、「SENBOKU New Design」を読んだ方が、「自分だったらこんな関わり方ができる」とか、「こんな接点がありそうだ」ということが分かってもらえるよう、泉北ニュータウンでの生活像を表現する形でとりまとめました。自分が一定関われることを読み取っていただき、ほんの少しでも関わってもらえるようになれば良いと思います。

また、最近は住民の方がサービスを受ける「ゲスト型」の考えから、自らサービスを提供する「ホスト型」の意識を持った方がかなり増えてきたと思います。

山崎

行政が、皆さんと一緒に考えたいという態度を見せていくことも、大事かもしれないですね。

永藤

これからの行政は、住民の皆さんや関わる方々と一緒につくり上げていかないと、住民の皆さんが求めているものにならないんじゃないかと考えます。さまざまな役割や立場はありますが、多くの皆さんに共感をいただきながら、「共創」という共に創る大きな方針を実践したいと思います。

そのためにも、色んな手段やルートがあると思いますが、「泉北ニュータウンでのより豊かな暮らし」という大きな目的を共有しながら取り組みたいですね。

山崎

ありがとうございました。最後のまとめとして、市長から、これからの泉北ニュータウン地域に対する意気込みをお願いします。

永藤

住民の皆さんと一緒に創っていくことが一番大事なことだと思っています。泉北ニュータウンは、時代の変化とともに変わっていくかもしれないけれども、どの時代も良かったねと思っていただきたい。これからも希望を感じる、未来が見えるような泉北ニュータウンになってほしいと思います。泉北ニュータウン地域の魅力や可能性を最大限発揮するために、多くの皆さんと協力しながら素晴らしいこれからを考えていきます。 

参考資料

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このページの作成担当

泉北ニューデザイン推進室

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ファクス:072-228-6824

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