「浪華本染め(注染)」が国の伝統的工芸品に指定されました
更新日:2019年12月19日
堺注染和晒興業会、協同組合オリセンの方々が市長を表敬訪問されました
注染の伝統的工芸品指定にご尽力された、堺注染和晒興業会と協同組合オリセンの方々が、11月27日(水曜)に指定の報告のため、市長を表敬訪問されました。伝統的工芸品の指定までにされたことや、注染について市民の方にぜひ伝えたいことなどを伺ってきました。
浪華本染めについて、簡単に説明をお願いします
浪華本染めは、模様手拭を量産化する目的で、明治時代に大阪で開発された日本固有の染色法です。一般に注染と呼ばれており、繊細な図柄や鮮明な発色が特徴で、この染色法を応用したゆかたが評判を呼び全国に広まりました。差し分けやぼかしなどの技法を用いて表裏両面から染めるので、風合いのある染め上がりになります。現在は、手ぬぐい、ゆかたのほか、日傘やアロハシャツ、コースターなど各種日用品に用途は広がっています。
伝統的工芸品の指定にあたって、どのようなことを行ってきましたか?
経済産業大臣に指定の申出をするにあたり、指定の要件を満たすための資料を集めることがとても大変でした。
国の伝統的工芸品として指定されるためには、5つの要件((1)日用品であること、(2)手工業的であること、(3)伝統的な技術・技法であること、(4)伝統的に使用された原材料であること、(5)一定の地域で産地形成がなされていること)を満たす必要があります。
伝統的な技術・技法であることの証明には「浪華本染め(注染)」で使われている技術・技法が100年以上前に大阪の地で行われていたことを現物および文献の両方で示さなければなりませんでした。
現物については、兵庫県にお住まいの方が明治時代に大阪で製作された手ぬぐいを所有しておられ、その方のところに伺わせていただいて手ぬぐいをお借りすることが出来ました。
文献については、大阪で生まれた100年以上前の技術・技法であることを証明するために大正時代以前に発刊された文献を探しあてるのが大変でした。たくさんの皆様のご支援・ご協力があったからこそ、伝統的工芸品指定の申出に至ることが出来ました。
堺の注染について市民の方にPRしたいことなどありますか?
堺市の人にもあまり知られていないかもしれませんが、毛穴・津久野地域は織物・染物に関して日本有数の産地であり、「晒の出荷シェアが日本全国で群を抜いて一番である」「織りから晒、染め、仕上げもできて問屋もある」「染物が市場に出回るまでの行程全てを一地域で完結できる」といったところで、こういうところは他にはなかなかありません。伝統的工芸品に指定はされていませんが、ロール捺染という技法で用いる非常に珍しい機械(日本全体で10機程度しかない)も持っています。
こういった織物・染物について最初から最後までできる素晴らしいところが地元にあるということをぜひとも知って、そして愛着を感じてほしいと思います。
今後の課題などなにかありますか?
我々だけではないと思いますが、伝統産業において担い手の不足は本当に深刻な問題です。この問題の解決のためには注染についてもっともっと多くの人にPRしていく必要があると感じています。
以前にも堺市産業振興センターに堺市から働きかけてもらい、堺注染職人養成道場など、後継者を増やす取組みを開催しており、講座を修了して職人として働いてくれている人たちは今、本当に頼りになる存在となっています。女性の方も多く応募してくれて、男性ばかりだった工場に新しい視点が生まれ、感心させられることも多くあります。
今後やっていきたいと考えていることなどありますか?
今回の伝統的工芸品指定によって、今後市内外から今まで以上に浪華本染めに注目が集まることが予想されます。
浪華本染めの魅力をより多くの方に知っていただくため、堺市と協力して注染の展示や染め体験などを行っていきたいと思います。また、学校などでも催しを行うことで若い世代にも伝統産業に興味や愛着を持ってもらい、できれば注染職人を将来の夢としてもらえればと考えています。