(2022年11月9日)小学校とアート、にぎやかな創発性←New!
更新日:2022年12月27日
新浅香山小学校の多目的室の扉を開けた廊下
大人になると、小学校に行くことはずいぶん少なくなります。
コロナ禍で、保護者でも小学校に訪れる機会が少なくなりました。
そんななか、この秋、堺市文化振興財団が子どもと芸術のであいをつくるために長年つづけている小中学校向け芸術事業〈さかいミーツアート〉の視察に訪れました。
今年からコミュニケーションに特化したプログラムを実施することになり、手をあげてくださったのが、新浅香山小学校。打ち合わせを重ね、一回だけの単発でなく、連続2コマの授業を3回行うことになりました。
事前に、講師が取り組みを共有するために数名のアシスタントに向けてワークショップを行い、準備をしてきました。
今回は授業の初回です。
校門を入ると、長い間子どもたちを見守るように大きな木が立っています。
スリッパに履き替え、廊下を歩きます。
手洗い場の蛇口は子どもにあわせた位置にあります。
はにかみながらも元気に「こんにちは」と挨拶をしてくれる子どもに、こちらも挨拶を返します。
廊下ですれちがった子どもに「トイレはどこですか」と尋ねると、「大人はこっち」と、わざわざ階の違う職員用トイレまで案内してくれました。小さい人に連れられる特別な体験でした。
コロナ禍で活動の制限のあった子どもたちは、今回大人たちがやってくることをとても楽しみにしてくれました。会場の多目的室に移動するのに、待ちきれなくて、チャイムが鳴る前に廊下で整列していたそうです。
講師の岩橋由莉さんは表現教育を専門とし、日本世界各地で長年さまざまな取り組みをされています。
「今日は遊びましょう」と岩橋さんが呼びかけると、子どもたちははちきれんばかりに元気いっぱい。岩橋さんも驚くほどでした。まわりの大人たちも全力で子どもたちと関わっています。
子どもたちの集中力は高まったり、ふいに拡散します。
それにともない子どもたちのエネルギーがうねり、空間が伸びたり縮んだりするように感じます。
1コマ目の授業の最後は、みんなでジャンケンです。負けた人が勝った人の肩をもって連なっていきます。とうとう2組の長い蛇のようになり、大盛り上がり。
休憩になっても、休んでいないで走り回っている子どももいます。
2コマ目の最初は絵本の読み聞かせです。
「もしも、〜〜だったら、どれがいい?」とページをめくる岩橋さんが尋ねます。色々な答えがありましたが、どれを選んでも、正解。めいめいに手をあげます。
多様な価値観があることがあげられた手から視覚でとらえることができます。
「どうしてそれを選んだの?」その子なりの理由に、岩橋さんはうなずきながら聞いてゆきます。
つぎに、ひとつの円になって、身体で形をあらわすワークです。
自分の身体で丸や三角を表します。お題は、四角、ひらがなの「ね」など、だんだん複雑になっていきます。すると自然に隣の人と協力しあって形がつくられていました。
そして、最後のワークは子ども4人と大人1人の5人のチームにわかれ、堺の名物を身体で形に表す、というものです。
5人でチームをつくり、話しあって形を考えます。
発表するチームのまわりにみんなが集まり、「これは、〜〜!」と当てていきます。
見立て遊びは想像力を刺激します。
「包丁」や「お抹茶」、「前方後円墳」などが形になり、小学生のときから地域のことをよく学んでいることがわかりました。
ふりかえりとして、チームで印象的だったことを話しあい、チームを代表して子どもがみんなの前で発表しました。
子どもたちはふだんの遊びとはまた違う、やったこともないような身体感覚や対話に取り組みました。
日常が、もし本ならば、こうした表現コミュニケーションの時間は、新しいページとなって、それぞれの物語をつむいでいくことでしょう。
2022年11月9日
プログラム・ディレクター上田假奈代
このページの作成担当
