新日本工機株式会社 | 企業の取組事例集
更新日:2025年12月24日
「いつかは働きたい」と考えていても、子育てなど家庭と仕事の両立が難しいと感じている女性は少なくありません。
堺市では、女性をはじめ、すべての人が自分らしく働き続けられる社会の実現をめざしています。働きたいという希望を持ちながら求職活動に至っていない女性、いわゆる「潜在求職者」の就労に向けた支援を実施し、堺市における女性の就業率の向上をめざし、女性活躍推進と中小企業の人材確保に取り組んでいます。
女性が活躍できる社会にする上では、企業の「女性の雇用促進の取組」も欠かせません。実際に、多くの企業が女性が働きやすく活躍できる職場環境整備をめざし、さまざまな取組をおこなっています。
今回は、南区に本社がある新日本工機株式会社 総務部 部長 黒川敏一さん、製造部 機械課 黒田彩香さんにお話を伺いました。
同社は、120年以上にわたり、大型工作機械を世界中に提供する会社です。工作機械は、金属などの材料を工具を使って不要な部分を削り取り、目的の形状に作り上げる機械で、工業製品の生産において欠かせないもの。多様な製造現場の課題に応えるため、「完全オーダーメイド」で工作機械を開発していることが特徴です。また、「30年間、お客様と一緒にものづくりの改善を続ける」ことをキーワードに、お客様の困りごとを解決する役割も担っています。
新たな商品を生み出す基盤とも言える工作機械を提供する新日本工機。世界中に工作機械を届けるためには、従業員の力が欠かせません。その中でポイントの一つとなるのが、女性の雇用促進。
では、女性の雇用促進のためにどのような取組をおこなっているのでしょうか。更に、どのような想いで取り組んでいるのか、今後どのような企業にしたいかなどもお伺いしました。
「子育てや家事との両立をしながらも働きやすい企業があるのか知りたい」という方、「女性雇用促進のために取り組むべきことがわからない」という企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください!
新日本工機株式会社
左から、黒川さん(総務部 部長)、黒田さん(製造部 機械課)
| 所在地 | 堺市南区高尾二丁500番地1 |
|---|---|
| 事業内容 | 工作機械(マシニングセンタ・旋盤・複合加工機・専用機)・産業機械・各種ソフトウエア・遠心力鋳造管の製造、販売 |
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女性の雇用促進のために取り組んでいること
― 黒川さん
工作機械をつくる「ものづくり」の会社である新日本工機で、これまで技術職の多くを男性が担っていました。一定数、女性社員も在籍していたのですが、当時は技術職ではなく事務職が中心でした。性別による区別を意図したものではなく、理系人材が求められる職種のため、技術職への応募が限られていたという背景もあり採用に至らない状況でした。
しかし、社会の変化も伴って「現状のままでは女性の従業員は増えない」と危機感を覚え、女性・総合職の採用を積極的に開始しました。また、現場で働く女性従業員の採用も拡大していくこととなります。
このような女性雇用促進の取組をはじめてから、結婚や出産などライフイベントを機に退職してしまう環境も見直さなければならないと、「一人ひとりの能力に応じた働きやすい環境」も整えていきました。
環境の再構築は、段階を重ねながら進めていきました。まずは、法律内容の周知。正しく制度が整備されているかを確認しました。現在は、法律で定められた最低限のラインを超える、+αの制度も展開できています。
例えば、短時間勤務制度における年齢制限の引き上げです。短時間勤務制度では、こどもが何歳まで制度を利用できるかという年齢制限があります。法律では「小学校就学前までの子」と設定※されていますが、弊社では「小学校3年生までの子」に設定しています。また、有給休暇制度も、一般従業員は付与された有給休暇のうち、半日単位で取得できるのは10日間までのところ、育児をおこなう従業員に対しては上限なく半日単位での取得が可能です。
「働きたくて、条件が合えば働けるのに、働けない」を減らし、働きやすくするためにどうすればいいのか、を考えて環境を整備した結果、ライフイベントを機に退職する方は少なくなっています。
また、育児休業後の復帰率も高くなっています。弊社では休業前と同じポジションで仕事をしていただくことが大前提。1年、1年半お休みされても同じポジションで働いていただけるので、復帰しやすい環境なのではないかと思います。
※育児・介護休業法では、小学校就学前の子を養育する労働者に対し、短時間勤務制度など5つの措置のうち2つ以上を導入することを事業主に義務づけています。
「一人ひとりが主人公」|それぞれが役割とやりがいを持って取り組めるのが特徴
― 黒川さん
弊社が提供する商品は、一品一様です。決まった作業を繰り返す業務はほとんどありません。どの部署でも一人ひとりが自分の役割をしっかり理解して、その役割を果たす必要があるため、やりがいある仕事をお任せできていると思います。
現在、女性はさまざまな部署で活躍しています。例えば、設計。男性と同じように技術者として、仕事に取り組んでいます。女性総合職の中には役職に就く方も増えてきましたし、本当に仕事内容は男性と変わりません。
育児休業後に復帰してくれる従業員が多いのは、やりたい仕事、そしてやりがいのある仕事に取り組めることもあるのかもしれません。
いつかは働きたいママの就活部「マミクリさかい」に参加した感想
― 黒川さん
コロナ渦が明けて女性従業員が増えないとき、堺市と株式会社マミー・クリスタルの協働プロジェクト「マミクリさかい」に参加させていただきました。具体的には、いつかは働きたいママと企業をマッチングする「おしゃべり交流会」と、実際に弊社に来ていただき仕事風景を見てもらう「企業見学ツアー」の2つです。
弊社は専門性の高い製品を扱っているためか、近所の方から「何を作っている会社かわからない」と言われることもあります。製造業という業種自体、認知度が低いんだなと感じていたんですよね。そこで、「おしゃべり交流会」・「企業見学ツアー」に参加する機会をいただけて。
おしゃべり交流会では、「子育てに合わせてキャリアを変えていくことができる」とお話しました。具体的には、お子さまが幼いときはパートタイムで仕事を覚えていき、こどもの手が離れるにつれて仕事のボリュームを増やしフルタイムで働くキャリアです。参加者の方から非常に好評の声をいただきました。
弊社が提供するのはお客様のニーズに合わせてカスタマイズする商品です。従業員の働き方もカスタマイズして、一人ひとりの従業員に対して、可能な限り働き方の希望を叶えることができるのではないかと考えました。
企業見学ツアーでは、「私にもできそう」「やってみたい」という声がありました。実際の工場を見てそう言っていただけたのは、すごく励みになりましたね。
現役ママ・黒田さまに聞く、新日本工機への応募に至った決め手と、働く環境について
― 黒田さん
育児休業中に「マミクリさかい」に参加したとき、新日本工機に出会いました。特に転職を急いでいたわけではないのですが、「マミクリさかい」を通して「どのように働きたいのか」を改めて考えたとき、新日本工機に惹かれたんです。
まず、工場見学でびっくりするくらい大きな機械を見たのが、惹かれた理由の一つです。これまで製造業とはご縁がなく、はじめて大きな機械を見たんです。また、社内の雰囲気がすごく良かったことも、魅力に感じた一つです。外から見ると何をしているかわからないけど、実際は開かれた会社なんだなと魅力を感じました。
企業見学後に、黒川さんが先ほどおっしゃっていたように働き方をカスタマイズできるとお話してくれました。私は、お母さんではない私を成長させたい、いろんなことに挑戦したい、正社員として働きたい、という気持ちがありました。新日本工機には、私たちに寄り添ってくれて、パート、正社員の働き方や短時間勤務の選択など、キャリアを変化させるチャンスがあります。そのことに大きな魅力を感じました。
面接の際も、子育ての現状を赤裸々に話すと、「正社員で時短勤務としての働き方はどうか」と提案してくださりました。これはご縁をいただけたなととても嬉しくありがたかったです。
入社後、配属された部署の女性は私一人で。どんな部署なんだろう…と未知数ではあったんですが、先輩方は子育てしている方も多く。「今日はこどもの行事だから休みます」「こどもが熱を出してお迎えに行きます」っていうのもよくあるんです。私一人だけ早退…なんてことがないので、働きやすい環境ですね。
現在、小学2年生、幼稚園年長、3歳のこどもがいるため、「ガンガン働く!」というよりも、知識や経験を蓄積する時期として仕事に取り組んでいます。とはいえ、結構大きな仕事を任せていただいてるんですよ。本当に私でいいの!?というくらい早い段階で(笑)やりがいはすごく感じています。
ゆくゆくは、こどもが受験するときに、「行きたいところに行ってこい!」と言えるような、こどもが巣立ったときには「いよいよ私の時代だ!」くらいに思えるように、成長したいですね!

こども3人を育てるママが考える、女性が働きやすい環境とは
― 黒田さん
私が考える女性が働きやすい環境は、「子育てする女性に対して理解がある」ことです。弊社は従業員の気持ちを汲み取ってさまざまな制度が充実しています。しかし、会社だけでは限界があります。
令和7年4月より段階的に施行されている「育児・介護休業法」で休みを取りやすくなったものの、まだまだ網羅できていませんよね。例えば、短時間勤務終了後にこどもがいきなり一人でお留守番はできないじゃないですか。
会社だけではなく行政のサポートなどもあれば、小さい会社でもよりよい環境整備に取り組めると思うんです。さまざまな状況に寄り添える、そんな社会になってほしいですね。
女性雇用促進を進める黒川さんが考える、女性が働きやすい環境とは
― 黒川さん
私が考える女性が働きやすい環境は、「誰もが働きやすい環境」です。子育てするのは男性も一緒ですから、お互い補完し合って復帰を待つ環境整備が必要です。例えば、多能工化。一人が休業に入っても、引き継げるような教育体制を整備しています。
補完し合うといっても仕事量を一定にコントロールできる環境なので、状況に合わせて調整しやすいんですよ。これも、休業の取りやすさにつながっていると感じています。
また、女性従業員が現場で増えてきたことによって、これまで自分たちが当たり前だと思っていた業務の進め方や環境について、改めて見直す機会が生まれました。
例えば、重い荷物を片手で持ちあげながらボルトを締める作業。男性でも大変な作業です。そこで、重い荷物を固定するアイデアを出そうとか、大きなボルトを締める力が足りない場合に使える大きな工具を取り入れようだとか。さまざまな取り組みを進めています。日頃の困り事については常にアンテナを立て、規定などの見直しも進めていく予定です。
私たちがめざすのは、「全員が活躍できる環境」です。女性はもちろん、定年を迎えて再雇用を希望する方、外国籍の方、私たちのものづくりに一緒になって働きたいと考えてくれる方を大切に、少しでも長く働き、活躍できる環境整備を一貫して頑張っていきたいと考えています。
「いつかは働きたいママ」に伝えたいこと
― 黒川さん
自分が選ぶ道は、自分が知っている範囲でしか選べません。知見のないところに行くのって難しいと思うんです。
いつかは働きたいママの就活部「マミクリさかい」などで新しい業界・職種に出会ってほしいなと思います。「ここまでしかできない」という壁を取っ払って、「新しい世界を見てみる」気持ちを持っていただくことが大切なんじゃないでしょうか。
実際に、黒田さんも自分の知らない分野で、大切にしたいことを大切にしながら活躍していますから。
今回のお話を通じて、少しでも多くの方に「一人ひとりが主人公」として働ける会社があると知ってもらえると嬉しいなと思います。
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