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Vol.3 「堺焼」を伝承する陶芸家 昼馬和代さん

更新日:2022年10月28日

陶芸家・昼馬和代ひるまかずよさんは、中区で作陶を続け、作品の展示・販売や陶芸の体験教室を開催し、堺自由の泉大学などで陶芸の講座を担当するなど、幅広く活躍されています。
作陶を始めたきっかけや地元愛、陶芸への情熱などを伺いました。

昼馬さんの写真

陶芸を始めてから堺陶芸会を結成するまで

いつごろから陶芸の道に入られましたか

高校卒業後グラフィックデザインを2年間学び、グラフィックデザイナーとして8年間仕事をしていました。当時、職場の近くに陶器の問屋が多くあり、陶芸作品を見る機会が増えていく中、グラフィックのような平面ではなく、陶芸のように立体的なものを創作することに憧れを抱くようになりました。
やがて結婚し退職したことをきっかけに、水野清亀みずのすがき先生に師事し、作陶を始めました。
同時に児童画教室も始めていて、子育てとの両立は大変でしたが、おかげさまで3年後には堺市展で市長賞をいただき、他の公募展でも表彰されるようになりました。こうした経過もあり、堺美術協会をはじめ、複数の団体に会員として所属するようになりました。

昼馬和代さん

その後、堺陶芸会を結成されましたね

私は、近隣で活動する陶芸家に話をもちかけ、2002年(平成14年)に堺陶芸会を立ち上げました。
会結成のきっかけは、堺市の姉妹都市であるウェリントン市との交流にあります。ウェリントン市から「1998年(平成10年)にニュージーランド陶芸協会40周年記念大会を開くので、堺市から陶芸家を一人招待したい」とのお話があったようで、堺市を通じて私が招待されました。ウェリントンには多くの陶芸家や陶芸愛好家がいて、私は作品の出展と、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ大ホールでの講演を依頼されました。通訳付きではありましたが、300人ほどの聴衆の前で講演させていただきました。
この時にウェリントンの人たちから「私たちも陶芸家を連れて堺に行きたい」とのお話をいただきました。帰国後、堺市に相談して、2001年(平成13年)にようやく堺ウェリントン陶芸交流展を開催することができました。ウェリントンから14人、堺から22人が出品しました。この展覧会で出品した堺のメンバーで、私が中心となって堺陶芸会を結成しました。
当初は一回きりの実行委員会のつもりでしたが、皆さんのご希望で、交流展後も創作や展覧会の開催などの活動を、堺陶芸会として続けることになりました。

ウエリントンウエリントンの出品者と堺の出品者

『堺焼』の立ち上げ

堺陶芸会の結成が『堺焼』の創作につながったわけですね

堺は古くから須恵器が作られるなど、やきもののふるさとでもあります。私は中区に生まれ、住まい・工房ともこの地にずっとお世話になっています。そうした地元愛もあり、「堺の土を使った現代のやきものを立ち上げよう」と会の目標を定め、2014年(平成26年)に堺陶芸会のブランドとして『堺焼』を発表しました。
堺の土も場所によって違いますが、主に南区の開発現場や西区の病院建設時に出た赤土をいただき、精錬したものを用いています。高熱に弱いので、石の粉を混ぜるなど、試行錯誤しながら『堺焼』を作っています。まだまだ勉強中です。

『堺焼』にはどういった特色がありますか

『堺焼』は、堺の土で作ったやきもので、最近では抹茶碗や煎茶碗を作っています。
例えば、抹茶碗には堺の土を6割配合して作り、高台には『堺焼』のマークを押印しています。このマークは令和2年に商標登録されました。
『堺焼』の抹茶碗は楽焼らくやき茶碗と伊羅保釉いらぼゆうをかけた伊羅保茶碗の2種類に分かれます。
伊羅保は、堺の土を溶かして釉薬ゆうやくにしたものを本焼したもので、堺伊羅保茶碗と名付けました。ざらざらした表面に釉薬がかかっていて素朴な味わいがあります。
楽焼茶碗には、黒楽や赤楽などがあります。
黒楽は鉄系の石を粉にしたものを茶碗の表面に塗って炭窯すみがま等で焼きます。私は1100度くらいまで温度を上げ、釉が溶けたのを見計らって、窯の中から作品を引き出します。急冷することで黒く仕上がります。
赤楽も炭窯を使い、約800度で柔らかく焼き上げ、表面に茜色が出るよう土の配合も工夫しています。

昼馬さんの作品

昼馬さんの作品の個性・特長はどういったものですか

自然界の偉大さや美しい風景に魅了され、それを作品に表現しています。
40代の頃、アメリカのグランドキャニオンに旅行した時、日本にはない壮大な景色を観て感動しました。地殻変動で隆起した大地がそのまま現存しており、積層はその時代の出来事そのものを大地に刻んでいて、その厳しさや美しさは私の作品づくりに大きく影響しました。現地の乾いた空気も肌で感じ、地球の原点とも言うべきものを目の当たりにして「自然そのものを表現した陶芸作品をつくりたい」という意欲がわきました。こうしたことがきっかけで積層をモチーフにした陶芸に取り組むようになりました。今後も自分にしかできない作品づくりをしていきたいですね。

堺市の文化・芸術の振興にも貢献してくださっています

北区役所4階の北保健センターに、私が制作した陶板があります。平成12年(2000年)にコンペに臨み、「生命の旅」という縦2メートル・横4メートルの大きな陶板を採用していただきました。
平成24年(2012年)には、山口家住宅(現・堺市立町家歴史館)で個展を開かせていただきました。
令和3年(2021年)には、堺陶芸会としてさかい利晶の杜で出展させてもらいました。
堺市に活動の場をいただいていることを嬉しく思っています。

北区役所4階陶板作品「生命の旅」(北区役所4階)

映画『嘘八百』シリーズにも関わられていますね

平成30年(2018年)に公開された映画『嘘八百』は、堺が舞台だったこともあり、映画に登場する緑楽茶碗の制作者として私を選んでいただきました。また、令和2年(2020年)公開の2作目『嘘八百 京町ロワイヤル』に登場した織部黒茶碗も制作させていただきました。大変光栄です。オーダーは厳しかったのですが、何とかやり遂げることができました。出演されていた中井貴一さんや佐々木蔵之介さんにお目にかかりました。魅力あふれる、とても良い方でしたね。

昼馬さんの現在の活動

昼馬さんは、海外でも活躍されていますね

個人の作家活動として、堺、京都、ウェリントン、ニューヨークなどに出品・出展しています。
京都で日本のやきものが大好きな外国人のギャラリーに出会い、そのオーナーに私の作品が載った冊子を渡したことがきっかけです。その方には私の作品に感動していただき、工房を訪れて複数の作品を買ってくれました。その後、ニューヨークでギャラリーを持っている友人に、私の作品を推薦してくださり、その友人の方も私の作品を購入してくれました。こういう経緯で、ニューヨークの展覧会などで私の作品が出展されています。

ニューヨークニューヨーク個展の風景

創作家としての活動だけでなく、教育にも力をいれていらっしゃいますね

ハーベストの丘でも陶芸の講師を20年ほど務めました。堺自由の泉大学でも陶芸の講座を定期的に行っています。60歳を過ぎた学生の方もとても熱心で、良い刺激をいただいています。

40年以上も作陶を続けられる原動力を教えてください

40代の10年間は子育て・両親の介護などと多くのことを並行してやっていて、大変でした。
今は70歳を超えていますが、生涯現役でいたいと思っています。好きなことをできているのが元気の源ですね。
陶芸は難しいですが、困難だからこそやりがいがあります。出来上がった作品が思い描いたかたちにならず未完成であることこそが、次への原動力ですね。今後も求道心を大切にしていきたいです。

昼馬さんの作品はどこで見たり購入したりすることができますか

事前に電話か電子メールでご予約のうえ、私の工房「史乃和陶芸工房」にお越し下されば、作品を見学できますし、販売もさせていただきます。
一般の方や子どもたち向けに、陶芸のワークショップを開いています。
昼馬和代さんのホームページ(電話番号、電子メールアドレスなども記載されています)はこちら(外部リンク)

このページの作成担当

中区役所 企画総務課

電話番号:072-270-8181

ファクス:072-270-8101

〒599-8236 堺市中区深井沢町2470-7

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