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(2026年3月16日)今回は3年をかけて、堺市社会福祉協議会と堺アーツカウンシル、福祉とアートが交差したふたつの事業について書きたいと思います。

更新日:2026年3月17日

⚫︎社会福祉協議会と堺アーツカウンシルのであい

 事の発端はさかのぼること4年前、2022年に堺市社会福祉協議会(以下、社協)からの相談で、地域の地縁組織だけでないネットワークをどのようにつくっていけるか、というものでした。なかなかの難問ですが、コミュニティデザイナーでもある堺アーツカウンシルのプログラム・オフィサー中脇POとわたしが一緒に取り組むことにしました。

 そこで2023年は堺市の南にある泉北の団地で先駆的な取り組みをしている活動をモデルとしようと、社協のメンバーとアーツカウンシルで泉北に何度か足を運び、意見交換の場を持ちました。中脇POはその団地での活動に以前から深く関わり、わたしも活動者と知り合いであったことで、再会を喜びながらお訪ねすることになりました。その団地では、民生委員や自治会の方に課題として届いていないこどもたちの厳しい状況に対して何ができるだろうかと模索が始まっていました。情報共有を重ねるうちに第三者が加わることで状況の整理が少し進んだり、別件で社協として取り組むことが見えてきたり、地域と社協の関わりが生まれました。アーツカウンシルとしてアーティストをコーディネートするというようなアクションはせずに、その話し合いの場に立ち会うことを選びました。こどもたちの集まりにワークショップを行うことも考えたのですが、節足な介入よりも地域の人たちの主体的な関わりのほうが大事だと感じたからです。そして一年がたち、社協の他の地域からの職員もまじえて報告会が開かれました。アーツカウンシルとしてはいわゆるアートなことをしていなかったのですが、一年の間に定期的に集まったことで、地域と社協、人々がつながる機会となっていたことが確認できました。その報告会の終了時に声をかけてきた社協の西区担当の職員が次年度の相談相手となりました。

⚫︎西区の社会福祉協議会からの相談

 次は、堺市西区からの相談でした。団地群は高齢化がすすみ、小学校のPTAも解散し、自治会活動も高齢の一部の方たちが担っています。この先のコミュニティは地縁組織だけではなくゆるやかなネットワークが必要なのでは、と考えた社協の職員はアーツカウンシルに相談してみようと考えたそうです。一通りの説明をうけたあと、中脇POとわたしは、まずは現場で地域の方たちと話す場に立ち合わせてもらうことにしました。日程調整をしていただき自治会館の一室で5人ほどの高齢女性たちと会いました。お話を伺うとさまざまな地域活動に取り組まれていました。例えば、小学生が学校であまり元気がないのは朝食を食べていないからと聞いて、月に一回小学校に行く前のこどもたちに朝食こども食堂(約50食)を開いています。地域活動の次の担い手がみつからないことで悩んでいると聞いていたのですが、はじめて会うわたしたちを前に「こどもたちの笑顔が大好きなんです」と、この活動への情熱を語ってくれました。

 そうであれば、地縁組織に加入しなくても地域活動に参加してくれる若い人に出会っていこう、という方向に進むことになりました。中脇POは、新しい企画をたちあげるのは大変だからこれまで取り組んできたことでやってみませんか、と提案し、これまでの活動を聞いていきました。すると、コロナ禍で止まっていた「もちつき大会」を復活する案にたどりつきました。「でも。重いし」と躊躇されたのですが、社協から近隣の福祉事業所や大学や高校のボランティアを呼びかけることになりました。

 その後、朝食こども食堂を視察させてもらうと、朝早くにもかかわらず小学校の先生、歯医者さんの歯磨き指導、福祉事業所の職員が助っ人に来ているなど、すでに地域との関わりが生まれていることも気づきました。そして、社協の奔走もあって、もちつき大会前の打ち合わせに20人を超える人たちが集まりました。

⚫︎地域の人たちといっしょに、もちつき大会
 当日は福祉車両に臼を乗せて運んだり、さまざまな立場の人たちが活躍しました。もちつきに挑戦するこどもたち、ひとりひとりに大人たちが「とってもいいね」と声をかけていたのが印象的です。その声に励まされ、最初は緊張していたこどもたちが自分の力をふりしぼることで自信をもった顔つきになります。まわりのこどもたちもいっしょに声をだして、もちをつくこどもを応援する場面もあり、ときどき謎の一体感に包まれました。

 もちつきの横で中脇POは「焚き火」の活動をしました。集まって来た人に薪割りや火守の役割を渡します。用意されたマシュマロを串にさして焼いて、「アツッアツッ」と食べているこどもたちの顔!知らない人同士が食べ物をわけあったり、黙っていてもいいし話しかけてもいい、その場でお互いの距離感を変えてゆくコミュニケーションがゆらめく火のまわりで繰り広げられました。

 福祉事業所からは高齢者の方が車椅子などでスタッフといっしょにやってきて、焚き火にあたり、こどもたちのもちつく様子に「懐かしい」と目を細めていました。小学校の校長先生は美術が専門で、焚き火の隣にこどもたちのために工作体験の場を用意してくれました。堺市の工作専門のシルバー人材も来てくれ、熱中するこどももいて木工作品がどんどん出来上がっていきました。

 体育館ではこどもも大人もおもちを食べたり、おしゃべりしたり。地域包括センターや福祉事業所のブースがあり、握力測定や千羽鶴折りなどがありました。千羽鶴は色とりどりの折り紙だけでなく、正方形に切った点字用紙が用意されていました。鶴の折り方を教え合いながら凸凹を指先に感じて点字や視覚障害に関心をもった人もいるかもしれません。視覚障害者の日常を支えている福祉事業所の視座を感じました。

 ボランティア参加の高校生・大学生もはじめてのもちつきだったそうですが、最初に体験しておいたことで、こどもたちに教える側にまわり頼もしい存在でした。

 そして昼過ぎに、もちつきも無事終了し、片付けもみんなで取り組むとあっという間です。最後に記念撮影をして、ふくひがフェスタの1回目が終わりました。

 翌月、当日の写真などを見ながらふりかえりの機会を持ちました。ふくひがフェスタでは今後地域でやってみたい企画や関わり方をよびかけていました。それに応えてくれた方がいた、ということで、ゆるやかなつながりが生まれるような企画を次年度持ちたい、と結ばれました。

⚫︎地域の人たちと、手持ち花火大会
 そして、その翌年2025年には、地域の人が中心となり地縁組織もともに関わり、小学校で「手持ち花火大会」へつながっていきました。

 地域の会議に参加して、花火大会のイメージを話し合い、段取り、マルシェのメニュー、駄菓子屋への要請、花火の本数を考えたり、買い出し、役割、タイムスケジュールなどを何度も話し合いました。

 当日、堺アーツカウンシルのメンバーは「焚き火」の係でもあり、薪割りをこどもたちに頼んだり、焼き芋のお世話をしながら、全体の様子を見守りました。地域の人たちとも顔馴染みになり、「花火をしましょう」と高齢の方に手招きされて花火の輪に入ったことも嬉しい思い出です。

 花火大会は事前の会議で心配をしてきたのが信じられないほど大盛況で、向いの団地の壁にこどもたちの歓声がこだましていました。小さい人も車椅子の高齢者も家族連れも販売されている食べ物を手に、花火や焚き火の火をみつめ、いつもと違う夕暮れを楽しんでいました。いつのまにかとっぷりと暗くなり花火大会が終了。門のそばでお菓子をもらってこどもたちが出ていく前には、夜道を照らす地域の人たちがガードマン係として出動しました。

⚫︎本番のあとが、大事
 実は、花火大会の開催そのものだけでなく、そのあとが大事、ということを社協の職員さんと話していました。

 花火大会の数ヶ月後、地域で「ふくひがカフェ」と称して、振りかえりとこれからの地域を話し合う会が設けられました。ワールドカフェ形式で、地域の人たちが率直に話をする場はありそうでなかったもの。テーブルにはアーツカウンシルのメンバーも入り、さりげなく進行をサポートしました。

 社協職員と地域の人が奮闘するそばで、堺アーツカウンシルは「いわゆるアート」を持ち出すことはせず、並走しています。地域の場に第三者が関心を寄せて通うことは地域の人たちが当たり前すぎて気づいていない価値の再発見につながっているように思います。「交流人口」の一形態かもしれませんが、こうした時間の積み重ねのなかに、地域の人が創造性を発揮し、地域内外の人との新たな出会いを生み出し、地域に生きる価値に出会うこともアートのはたらきだと考えます。

 

2026年3月16日


プログラム・ディレクター 上田假奈代

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文化観光局 文化国際部 文化課

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