ライフストーリー4 田中健太さん・彩さん
更新日:2023年3月7日
このストーリーは2019年に公開されたものです。
祖父母の家には小さい庭があった。梅の木があり、毎年やってくるメジロにみかんをあげる。うっすら残る幼少期の記憶。いつしか私も母親になり、家族でそんな暮らしがしたいと、大阪市内から引っ越すことを決めた。
学生時代、バックパックを背負い、親友と二人でヨーロッパを旅して回ったことがある。そこには、何百年も経った建物を大切に直しながら生活する、古いものを活かして暮らす人々の姿、文化があった。
そして昨年、私たちも築40年ほどになる家を買い、リノベーションして暮らし始めた。「泉北ニュータウン住宅リノベーション協議会」を通じて、希望の家にも出会え、耐震補助やローンの相談もできて、安心だった。
建築家でもある「西紋一級建築士事務所」の西さんも、協議会に紹介していただいた。ご自宅に伺ってお話を聞いて、直感で「この人にお願いしよう」と思った。西さんは私たちのわがままに、本当にたくさん応えてくれた。
新築するよりも安く済んだ分、日々の暮らしやすさや、子どもの未来のためにお金を使うことができる。息子がのびのび遊べる広さがあり、庭がある。木を植えて、野菜を育てる。いずれはデッキもつくりたい。
夫は、大阪市内のお義父さんが経営する整骨院で働いている。ゆくゆくは家の2階で、夫がカイロプラクティックのお店を、私がエステのお店を始め、「家族の時間を増やせるようにしたいね」と話している。
泉北のまちは、子どもが多かった時代につくられたため、今でも幼稚園や保育園がたくさんある。選べる上にみんなが入所できる。保育園の一時預かりすら断られた都会を思えば、なんていい環境なんだろうと思う。
駅と住宅をつなぐ「緑道」を散歩する。顔見知りとすれ違い、挨拶を交わす。子どもたちが草花を摘んで、「標本にしよう」と話している。車を気にせずゆっくり歩ける緑の道は、美しくて、安心で、優しい。
散歩していると、路地でふと新しいお店を見つけたりする。住んでまだ数ヶ月の私たちにとって、まちのすべてが新しく、毎日何かしらの発見がある。それがおもしろくて、休みの日はほとんど近場で過ごしている。
泉北は、いろんなことを「選べる」場所だと思う。農村かニュータウンか、新築かリノベーションか、幼稚園か保育園か、自宅で仕事をするかどこかに勤めに出るか。住み方も働き方も、教育も選択できる余白がある。
泉北にゆかりのなかった私たち。だけど、不思議なご縁に導かれて、素敵な出会いに恵まれていく。「このまちに住むことができてよかった」。どこかゆったりとした泉北の空気を感じるたびに、そう思う。