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会議録(第4回堺市都心交通検討会議)

更新日:2014年2月26日

1 開催日時 平成25年5月17日(金曜)、午前10時から午前12時
2 開催場所 堺市役所 本館 地下1階大会議室
3 出席者

委員(50音順、敬称略)
 関西大学経済学部 教授 宇都宮 浄人
 神戸大学 副学長 正司 健一
 近畿大学総合社会学部 専任講師 田中 晃代
 大阪産業大学人間環境学部 教授 塚本 直幸
 大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所 特任研究員 弘本 由香里
堺市
 織田村技監、島田建築都市局長、窪園交通部長
その他
 事務局等

前回会議内容の確認

正司座長

 パーソントリップ調査についてはこの後、追加分析の結果を説明していただけるということなので、前回の議論をさらに深めていきたいと思う。

都心の移動実態について

正司座長

 パーソントリップ調査のデータを詳しく分析した結果を報告いただいた。これについて、質問、意見があればお願いしたいと思う。

塚本委員

 14ページについて、堺駅より堺東駅からのほうが臨海部への流動が多いのは、どういう理由が考えられるか。

事務局

 臨海部への交通手段は主にバスになるが、堺東駅発の場合と堺市駅発の場合のいずれも、堺駅に寄って臨海部に行くようなバスを皆さん利用されており、我々も日常的に堺東駅から乗っている。例えばJグリーンなどへの移動もそうで、そういった流動がこの中に出ているのではないかと思う。我々も堺駅より堺東駅の方が多いというのは想像していなかった。

正司座長

 国勢調査で通勤流動を見ると、南海高野線沿線から臨海部へ通勤している人が多いのではないかと思える。自由目的と通勤目的とで違うと思うが、国勢調査のデータと整合性があれば通勤なのかなと思う。

宇都宮委員

 18ページの東西交通流動で、都心と東西の移動に対して、交通手段が鉄道のケースがあるが、これはどういったケースか。

事務局

 少し遠くはなるが、南海高野線が東西方向を補足するような形で走っている。途中でどの経路を通っているかは見ていないが、南海高野線まで移動して東西に移動している方がおられると思う。例えば美原の方であれば、南海高野線まで行って、鉄道に乗り、都心に来られる。

宇都宮委員

 美原から来られる方はよくわかるのだが、都心内の東西を鉄道で移動されているケースが若干なりともあるというのはどういうことか。

事務局

 都心内についてはもう少し細かく見てみる必要があるかもしれない。さらに分析したいと思う。

正司座長

 23ページについて、川崎市の方が堺市より通勤目的が多い。また、堺市の場合はさらに細かく都心まで分析されているが、それを見ても、自由目的のほうが通勤目的より大きい。業務は通勤の半分ぐらいである。経年変化を見ると、通勤・通学の割合が減っている一方で、自由目的が増えているというのはいいのかなと思う。この話と、堺市内から車で来る人の割合がすごく高いということを、これから堺の都心のまちのあり方を考えていくときに、どう考えるのか。都市政策の話に関わってくると思うが、人にやさしい、歩きやすいまちをつくろうという方向性と、現状のデータがその方向になっていないということを考えていかないといけないのではないかと思う。
 自由目的が多いのは、買い物、通院等によるものかと思うが、この数字を見て、市の方では、最近はこんな感じだと思っていたのか、思ったよりこうだったということなのか。

事務局

 感覚的なことで申し上げると、堺市内は特にこの10年ぐらいは以前より車での移動がしやすくなっている。例えば大阪和泉泉南線という市役所前の道路の渋滞の状況も、10年、20年前から見ると、車で走りやすくなっているのではないかと思う。もしかしたら、そういったことから車の移動が思っていたより多くの割合を占めているのではないか。堺市外の周辺市、特に北のほうを車で移動しようとすると、我々も日常的に渋滞につかまる事も多いので、公共交通の差というよりは、むしろ自動車を利用できる環境の差ではないかと感じている。

正司座長

 前回も言ったが、道路容量に余裕がありすぎるといえるレベルに整備された結果だと思う。これから自転車等に力を入れていかれるのであれば、道路の空間配分をどう考えていくのかは議論していくポイントになるかと思う。特に都心の性格を考えていく必要があるのではないかと感じた。

塚本委員

 9ページの図では、大阪府内から2万4千トリップが都心Aに来ている。19ページの図では、南大阪地域から1万2千トリップが来ている。そうすると、北(大阪市内など)から来ているのが1万2千トリップ、南(南大阪地域)から来ているのが1万2千トリップで、大阪府内からとしては、合わせて2万4千トリップという見方でいいのか。

事務局

 それで概ね結構である。

塚本委員

 東西流動の分析について、例えば美原区の東側の松原市や羽曳野市、藤井寺市、千早赤阪村、富田林市、大阪狭山市ぐらいまでを含めた分析は検討されたか。

事務局

 これまでの会議等の流れの中で、東西交通軸の検討の方向性は都心の東西並びに堺市内であること、美原区の東側からはトリップ量がかなり落ちてくると考えられることから、今回はこの範囲に絞って検討した。

正司座長

 例えば南海高野線沿線では、南区や河内長野市など、ニュータウンをどんどん開発していった頃は多分通勤の目的が多かった。それがだんだんニュータウンの人たちの世代が変わってきて、通勤の発生が減ってきた経緯があるのではないか。そのような変化も分析されたほうがいいのではないか。南区が南大阪地域と同じようなトレンドになっているのか、そうでないのかというのは、多分堺市の全体を考えたときにも重要な論点になるのではないか。

宇都宮委員

 12、13ページの区域別の経年変化のところで、自由目的が増加していることと、通勤需要が減ってきていることの議論についてはそうかなと思うのだが、休日のトリップも平日以上に減っていて、堺市全体では平成12年から22年で17%減っている。都心部のトリップが相対的に減っている、あるいは平均的に減っているとしても、単に通勤や業務の問題だけではないのではないかと思う。休日も含めて考えると、やはり賑わいが減っている可能性があるのではないか。そこを念頭に置いて分析されたほうがいいのではないかと思う。また、大阪市に比べれば減り方は小さいのだが、北大阪は13%減で、堺市のほうが休日の減り方が大きいので、そのあたりも少し考えるべきことかと思う。

事務局

 前回調査のサンプリング数が少ないという課題はあるが、休日の経年変化については、もう少し分析する必要があるかと思う。
 今回の分析でわかったのだが、南の方からもかなり堺市もしくは都心に人が来ている。ただし、交通手段は自動車が多いということで、今回は河内長野方面も含めて広く南大阪ということで見たのだが、どこからどういう目的で堺市なり都心なりに人が来られているかということについて、都心交通の議論の上で参考とするには少し分析を追加する必要があると考えている。

正司座長

 絶対量の変化と相対量の変化でも見方が変わる。交通量が減り、高齢化が進んでいることから、年代別の分析をしたほうがいいのか、1人当たり平均などを見たほうがいいのか。人口の変化との対比や、年齢構成の変化も合わせてみる必要があるではないか。ただし、サンプリング調査をしているので、そのエリアに住んでいる人が例えば3万人いても、サンプルを取ったら1000人ぐらいで、それぞれが様々なところに行くので、1カ所に行く人が10人とか20人ぐらいになってくると拡大係数が大きくなってしまう。なかなか難しいところである。

塚本委員

 パーソントリップ調査を細かく分析しても、正司先生がおっしゃったように信頼性の問題があると思うのだが、パーソントリップ調査から堺の都心流動の特性を掴もうということから言うと、9ページの堺市外の北から1万2千人、南から1万2千人で、合計2万4千人が平日に来ているという数字と比較すると、堺市内から同じぐらいの数字しか来ていないというのが気になる。普通、堺区が都心というのであれば、市外からだけではなく、市内からも来る。市外の大阪府内から来る人と堺市内から来る人が同じぐらいというのが少し気になる。他都市の細かいデータはわかっていないが、そういう点で少し堺区の都心性が低いのかなと思う。南から受け止めているという感じはするが、逆の分析の仕方として、各区別に、一体どこからどこへ行っているかというデータが必要である。今回は堺区へ来るデータを見ているのだが、例えば南区については1位と2位はどこからか、美原区の1位と2位はどこからかといったことは簡単に見られると思うのでそういった資料を作成していただけないか。都心はどうあるべきかというところに議論をつなげていかなければいけないので、堺区がこのままでいいのか、それとももっと都心性を高めるような都市交通政策が要るのかということに効いてくるデータになりえるかと思う。

事務局

 今回は外からの流入を中心に分析したので、次回は堺市内の分析をしたいと思う。

正司座長

 いろいろなコメントをいただいたが、ここまで分析していただいたおかげで、我々のほうもいろいろと欲が出ている。堺東から臨海へのアクセスのように意外なデータも出てくるので、貴重な資料として活用していただきたい。さらに分析し、検討を進めていただければと思う。

阪堺線の取り組みについて

田中委員

 マンションやショッピングセンター、商業施設がこのエリアでどれぐらい着工が増えてきているのかといったデータはあるか。パーソントリップ調査の分析結果は重点的に出されているが、交通政策を考えるときに、周辺エリアの住宅の形態、商業の規模、商業施設利用者などのデータも合わせながら考えるのが通常で、パーソントリップ調査だけで判断するのは難しいところがある。

事務局

 人口については、例えば堺駅と堺東駅を含む中心部では、人口の増加が続いている。具体的な数字でいうと、10年間で約17%増というデータがある。マンション建設が都心で進んだというあたりが寄与していると思うが、小学校の児童も増えている。
商業施設については、あまりたくさん出てきていない。人口の増加を追いかけるように、新しい居住者を顧客にしていくという形で、ここ数年で若干新規出店が見られる。ここに紹介している2軒以外にも、堺駅に新しい店舗が出ており、商業施設についてはようやく出てきかけているというような状況である。

田中委員

 堺市では、これから自転車をもう少し増やしていきたいということだが、ドイツのフライブルグの例などはご存じだと思うが、人口密度を上げるということと、大きな商業施設を配置するということが公共交通を充実させるポイントだと思う。都心Bゾーンでマンションが増えてきたのは、公共交通を考える上ではメリットではないか。マンションや集合住宅ができ人口密度が高くなるということと、それを追いかけるように商業施設が出てきたということが大きなポイントかなと思う。それらが自転車とどう関係するのかについては、これから考えていく必要があると思う。

事務局

 この動きは阪堺線だけの問題ではなく、都心の居住人口が伸びていくということは、都心活性化のベースとなる話である。また、単に人口が増えるだけではなく、その方々の日常的な活動が、商業や業務などいろいろなことに波及していくと思う。波及させるというところが一番難しいのかもしれないが、それをこれからのテーマとして、いろんな取り組みを進めなければならない。また、住まれている方以外の、外から来られる方々にとっても、機能向上が図られていくということはプラスになると思うので、今後、うまく相乗効果を図る形で、交通の面から取り組めればと思っている。

弘本委員

 阪堺線の支援でV字回復をされているというのは素晴らしい成果だと思うが、何よりも市民の方々が大事に思われているということだと思う。しかし、アウトカム評価といったものをどのように作っていくか。おそらくこの阪堺線の支援というのは社会実験的な取り組みだと思うのだが、社会実験の効果を都心交通の他の側面にも波及させていくということは非常に重要な観点だと思う。評価というものに対しての取り組みは今どのように行われているのか教えていただければと思う。

事務局

 この点については塚本先生からも補足いただければと思う。今日は紹介していないが、そんなに数多くはないがアンケートを取らせていただいており、また、この阪堺線の支援策を始める前に、市民の方々から活性化に向けてどういった取り組みをしたらいいのかというアイデアもいただいた。そうした中でこのような取り組みをして、今まさにこのようなアウトカムというか、数字が出てきている。また、その当時いただいた意見の中で、実際どのようなことが実現し、どのようなことがまだ実現していないのかを経年的に整理し、今指摘いただいたような、単に阪堺線の議論だけではなく、都心交通と都心の活性化の関係性についても見ていければと思っている。

塚本委員

 阪堺線の活性化に関する会議で座長をやらせていただいているが、その会議の目的は、阪堺線が活性化するための具体的な提案をすると同時に、税金を使っているので、その結果がどうなるのかを検証することである。委員のほとんどが市民の方であり、現在は出てきた提案を受けてそれらを具体化していくというステップが進んできている。市民の提案でないものもたくさんあるのだが、その中で挙がってきているものがここに示されている。
 もう1つは検証ということで、我々は決してそうだとは思わないのだが、外から見ると税金を阪堺電気軌道という企業に使っているという形を取っているので、これだけ財政支援を受けている企業が、堺のまちのための公共交通という観点からどこまで効果があるのかということで、経営面での検証が1つと、もう1つはどこまで出せるかわからないのだが、もう少し幅広く地域の社会的な便益を出しながら検証していこうということである。検証結果はあと1年ぐらいで出てくることになると思う。
 また、都心の活性化から見て、後で都心交通についての中で議論されると思うが、阪堺線のことだけを言うと、支援が行われる前と後にアンケート調査を行っているのだが、非常に好評というか、喜ばしいことに今まで阪堺線に乗っていなかった人が阪堺線に乗るようになっている。それほど大量にいるわけではないのだが、自動車で行っていたのが阪堺線で行くようになったなど、そういう芽生えはかなり出ているということで、この取り組みは非常にいいことだと思う。
 同じアンケートの中で、満足度、不満足度について、料金の問題はもちろんあるのだが、それ以外にも不満点が3つほどある。1つはバリアフリーの問題で、やはり高齢者にとって乗りにくい。低床式車両が入ってきているし、停留場の改良等でバリアフリー化が進むと思うのだが、それが1つ目である。もう1つは遅いということである。阪堺線は南海電鉄などの鉄道に比べるとゆっくり走っている気がする。そういう速達性の問題が2つ目である。それから、3つ目は乗り継ぎ利便性である。他の公共交通機関、あるいは自転車や車との連携が弱いということが不満として出ていた。その3つはいずれも阪堺線の取り組みであると同時に、都心交通の中でないと解決できないものでもあると思う。

田中委員

 コミュニティや社会学の先生で、早稲田大学の鳥越先生が言っていたのだが、幸福尺度、幸福感ということを非常に重要視されている方で、自分がやった行いに対して他人がハッピーになれる、助けることができてハッピーになれること、これが幸福の尺度だというふうに言っている。塚本先生のおっしゃったアンケートの中で、自分が車生活をやめて阪堺線に乗ることによってだんだん乗降客が増えてきたということがある。これは自分のやった行為に対してある程度成果が見えているということなので、幸福感を市民あるいは他の方に波及させていく大きなポイントだと思っている。人と人の関係性をどうつないでいくかというところで大きなポイントではないかと思った。阪堺線の動きについては、都心部の堺東の方まで続いていくような、そういう交通の仕組みづくりが考えられればいいと感じた。

正司座長

 人が生活する上で移動というのは必要不可欠であり、そことうまくつないでいくことをやっていく。阪堺線というのは1つ実験的に動かしているので、それがいろんな形で評価されて、広がりを持って検討していくということで、そのことを私どもで考えていくということは重要な指摘だと思う。
 紹介されたものは、市が全部作って運営も市がやっているものなのか、民間との関係を教えていただきたい。代表的なものだけで結構である。

事務局

 自転車について申し上げると、駐輪場の設置は市で行い、妙国寺前は無料駐輪場なのでそれ以上のことはないが、コミュニティサイクルに関しては、民間にお願いをしてやっていただいている。ただ、民間で十分収支を取っていただいているというわけではないと思う。

正司座長

 バスアンドライドや停留所関係は。

事務局

 バス停に関しては、今回市側から設置を働きかけたので、工事は市のほうで行っている。表示装置などはバス側で付けていただいた。

正司座長

 本当はよくないのかもしれないが、まちによっては、緑地帯などを沿線の住民の方々が 自分の庭のようにきれいにしているところもあるが、堺市ではあるか。

事務局

 例えば6ページの上や右下の写真のように、このバス停の周辺の植樹帯では、市民の方々がアドプトということで植栽などを管理されている。阪堺線の軌道横は危ないので公園協会がやっているが、道路のほうはアドプトで市民の方々でやっていただいていて、このバス停の設置にあたっても協議させていただいた経緯がある。

田中委員

 やはり交通を考えるときに、商業施策や商業振興とは切っても切れない話だと思う。市が支援することはとても大切だし、要所で支援されているのは素晴らしいことだと実感している。ただ、民間の商業あるいは企業がそれに甘んじてしまうことはいけないことで、例えば某地域のショッピングセンターでは高齢者の需要を伸ばそうということで、その地域は過疎化の地域なのだが、コミュニティバスを企業が走らせて、高齢者を集落からセンターまで運んでいる。これは企業が単独でやっている事業である。市民からの移動が大変だという話から始まって、ショッピングセンターがそういうバスを走らせているという事例である。そのうちにだんだんと高齢者を対象とした品ぞろえに変わっていき、商品の並べ方も変わっていく。そういう、企業主体、あるいは市民主体でやっている効果が波及していくような支援の仕方というのはとても大事だと思う。堺市では支援策はすごくやられてはいると思うが、もう少し企業や市民が主体となれる動きを後ろから押してあげるという支援方法もあるのかなという気がした。

塚本委員

 17ページはどちらかというと行政がオーソライズされたような取り組みだと思うが、ここにはのらないような市民からの運動もある。停留場の清掃から始まって、「ちん電」でパーティーをやるようなもの、田中先生も私も絡んでいるような紀州街道沿いの素敵な建物や風景等の取り組み、大道筋に提灯をぶら下げましょうという取り組みなど、阪堺線の活性化と絡んだ市民の動きは結構あるが、田中先生がおっしゃられたように行政が市民の自発的な動きをサポートすることは非常に重要だと思う。

正司座長

 市が投げたボールと市民が投げ返したボールを対比的にまとめられたらいいと思う。多分都心だけでなく、市全体として市が投げたボールを市民が受け止めて投げ返している。もっと前から投げているボールも最終的には描く形で、市の計画のプロセスさえできていればいいというのが今の指摘かと思う。

都心交通について

田中委員

 観光軸について、軸はよくわかるのだが、バスだけではなくて、補足的に自転車とか歩くということも入れていただきたい。
 最近歩くというのも諸説あって、「マラソン」+「ピクニック」ということで「マラニック」という言葉が出てきていて、私もサークルに入っている。マラニックというのは、その周辺を軽いマラソンをして、店舗に入って一杯飲んでおいしいものを食べて解散という、そういうことを重ねていく。これを見てもよくわかるのだが、地域の商売をされている人との連携がとても大事で、おかげ横丁の社長さんの話を伺ったが、やはり観光という言葉を使ったものは駄目だと。弘本先生が地域の人たちがどう楽しむかという視点、生活者の視点がとても大事だとおっしゃっていたのと同じく、伊勢では、その地域で採れたものをその人たちが通常食べている昔からの料理方法を利用しながら商いをして、賑わいを作っている。堺でも私はときどき行くのだが、例えばおいしいてんぷら屋さんとか、休日は閉まっているけれど平日たまに営業するうなぎ屋さんとか、そういう採算は取れないけれども、そこのおいしいものを提供してくれるところはいっぱいあるし、バルも最近阪堺線でやられているので、そのネットワークを広げていく必要があるのではないか。自転車、マラソン、バスも含めて、堺の文化を提供しているお店や、日常的に職員の方が行かれるようなお店を見せることが私は魅力だと思っている。施設ばかりを見せるのではなくて、平日やっていることをそのまま見せられたら面白いと思う。文化施設とか観光施設はある程度PRもしているし、わかりやすいので、いつでも行ける。そういう既存の施設を紹介する方法も考えられるのではないかと思う。
 堺市の方がすべてやらなくても、例えば車から降りたところ、商業施設であったり、ガソリンスタンドであったり、そういうところでコミュニティサイクルにつながるような、土木や都市計画で言うところの拠点という従来の考え方を取り払い、ネットワーク型でまちを作り直すという発想も必要ではないかと思う。

正司座長

 交通屋からすると、観光交通はスペシャルトランスポートのようなもので、観光軸という言葉には違和感があるので、考えていただきたいと思う。
 1点心配しているのだが、市民交流広場について、広場でみんな休憩して、そこから路地に入っていくという感じで、広場があるおかげで路地が栄えるという形はいいが、広場自体が路地から人を吸い出してしまって、路地を寂れさせてしまう広場づくり、どちらかというと日本はではそういったケースが散見されるような気がするだけに、決してそうならないように気をつけていただきたい。特に今栄えている路地から広場が遠くて、物理的な障壁がいろいろあるところなので、どういう広場なら本当の路地の魅力を際立たせるのかということは、よく考えて作る必要があるかと思う。

宇都宮委員

 広場についてはこの会議とは別に進めているということかもしれないが、都心の賑わいと大いに関係するところだけに慎重にやっていただきたいと思う。
 例えばペデストリアンデッキの改修再整備というのはもう決まってしまったからやらなければいけないのかどうかわからないが、ヨーロッパで広場の賑わいを出すときに、空を覆うようなペデストリアンデッキはない。ペデストリアンデッキで車にやさしくなるように歩行者と車を分離するという対応を取っていくことは、我々が今都心交通で賑わいを出そうとしていることと矛盾しているような気がする。慎重に考えていただきたい。
 この広場へのアクセスをきちんとしていないと、お年寄りはペデストリアンデッキで広場に行かなくなってしまうし、もっと言えばデッキ下がやや暗くなったりして、寂しい空間になってしまう可能性も十分にある。交通結節点における賑わいの作り方を慎重に判断していただきたいと思った。それは、文化観光拠点などの他の施設においても、施設を点として考えるのではなく、面として、賑わいがもう少し広がるやり方がないのかということを感じた。

事務局

 デッキについては、堺東駅が橋上駅になっている関係で、バリアフリーの経路が平面的にはあるのだが、今はペデストリアンデッキが途中で終わっている。それを広場に延ばして、公共施設の側にもそういった経路を確保しようという目的もあり、こういった検討が進んでいる。
 それからもう1つ、今回はポイントとなる施設周辺に特化した資料を出しているが、この旧市街地の中には、商業施設だけではなくて、例えば寺社仏閣とか観光資源含めて、非常にたくさんの資源がある。これらを、例えば阪堺線などであれば非常に短い区間でつなぎ、カバーしている。そういったところが堺の特色の1つということで、先ほど観光の形態も変わってきて、まちの歩き方もいろいろあるということだったが、まさにそういったなんとかウォークといったようなもの、大道筋はもともと紀州街道であるので、そういったところにも人が来ていただいており、その人たちは沿線のさまざまな施設に立ち寄りながらいろいろと見ていただいているのではないかと思う。市外の方だけではなく、市内の方も含めこれまで旧市街地にあまり来ていただけていなかった方々が来て、堺のまちを実感していただけている。それらを交通の面から支えられるような、ミクロというか、細かな部分も配慮したような交通にしていきたい。
 それから先ほど申し上げたように、1カ所だけではなくて、回遊していただく、いろいろなところに移動していただくために、歩行者空間も整備されているので、できれば車ではなくて、公共交通や自転車などで回っていただく。そういったことが、交通の面だけではなく、まちのよさを知ったり、美しい部分を見たりしていただいて、堺のまちに好感を持っていただくことにつながればいいのではないかと感じている。

弘本委員

 賑わいを中心として都心交通を考えていくということは、これまでのこの場の議論もそうだったと思うし、方向性として間違っていないと思うのだが、1つ気になったのは、今日のパーソントリップ調査による移動実態の分析から見えてきたことがどのぐらいここに入っているのかがわからないということである。そのあたりをもう少し説明していただけたらと思う。

事務局

 重要な点であり、また答えが出せていないポイントである。最初のほうでも申し上げたが、休日にはそれなりに堺に人が来ていていただいている。ただ、今のところ車が主になっている。そのこと自体は経済活動的には否定するものではないのだが、先ほども申し上げたように、1カ所に来ていただくだけではなく、その後、回遊をしていただきたい。それを車で駐車場を探しながら回っていただくということは決して交通の上でも、また、さまざまな面でもよくない。むしろそれが、それなりに人が来ているわりに賑わいが見えていない要因になっている部分もあるのではないかと考えている。外から車で来ていただいた方、これは市内も含めてだが、堺区や都心に来ていただいた人が、公共交通や自転車、歩行者といった交通手段に変わっていただいて、回遊していただく。そういう交通を作る必要があり、そういうことがある程度充実できれば、スタートは自動車かもしれないが、そこから乗り換えていく。そのためには施設を整備しなければいけないとか、いろいろ議論はあるかもしれないが、そういうところがあるかと思う。
 またユーザー視点で、そういったサービスをどのような形で提供していくべきかということをもう少し分析をしないと、単純に何か施設をどこかに作ればいいという問題でもないと思うので、具体的にハードルになっているところを見ながら、細かく解決を図っていく。時間もそれなりにかかるかもしれないが、そのためにも阪堺線などの取り組みを細かく検証して、実際の利用者やいろいろな方の意見を聞くことで何とか解決を図れればと思っている。加えて、できればそういうことを行政単体で推し進めるのではなく、関わっていただいている市民の方々と一緒に議論をしながら進めていきたいと思っている。

弘本委員

 考え方の流れをもう少し示されたほうがいいのではないかと思う。こういう問題があるけれども、我々はこう考えているというところがはっきり見えたほうが、市民も理解しやすいのではないかと思う。問題は問題として認識しているけれども、こうあることが市民の幸福につながるのではないかというようなストーリーが必要かと思う。この資料だと、個々のトピックが分断されていて、1つのストーリーとして読めない資料になっていると思った。トピックとしてはそれぞれ意味があって面白いと思うのだが、連続性のようなものがもう少し必要かと思う。

塚本委員

 一般論から入ると、こういう都心交通計画を作るときに5段階ぐらいあると思う。1つ目はその地域をどうしたいのか、2つ目はそのために交通やまちはどうあるべきか、3つ目が具体的な都市計画と空間計画、4つ目がそれによる整備効果、5つ目がその計画を実現するための方法で、よくあるのは行政と事業者と市民が三位一体でどうやるかといったこと。それら5つのステップがあって、全部やるのはとても大変だし、熟度の問題や、あるいは行政のレベルでもまだ意思決定ができないという話もあるので、その5つすべてができるとは思えないのだが、最初に言った2つ、あるいは3つ目というのは、都心はどうあるべきかということだと思う。議論をしてきているが、堺の都心性は低いと思う。それは周辺から人をあまり集めてきていないということと、人の都心内流動が人口のわりには極めて少ないためである。前にも言ったと思うが、まちの人口の大体2割から3割が1日に都心を流動しているのが大きなまちの特徴だと思うので、それに比べると堺は結構低いということで、都心性を高めないといけないという議論はいいと思う。
ではどういう機能で都心性を高めるのか。都心といってもいろんな意味がある。政治機能、商業機能、それ以外のいろいろな機能があるので、堺というまちにとって、堺区あるいは都心というのは一体どういう機能を持たせるべきなのか。これは大体出てきている感じがする。
 2つ目は、それに応じた交通体系のあり方だが、人にやさしい、環境にやさしいというのはどんな交通なのか。自動車主体型なのか、あるいは歩くということの復権をめざすような交通体系であるべきなのかということだと思うが、その2つが出てきそうである。
 それから3つ目は、それにしたがった形で、今日は東西交通だとか市民交流広場といった形で交通計画と空間計画のようなものが出だしてきているのだが、このあたりになってくると議論がいっぱいあり、なかなかすぐには出せないかもしれないが、少なくとも都心のあり方と交通体系のあり方さえ決めればいい。交通計画ではないところで気をつけてくださいというコメントがたくさん出てきているのはそういうことで、1つ目と2つ目をきちんと決めておかないと、いわゆる昔ながらの箱物を作っただけということになる。であるから、例えば東西交通の候補の3本の道路をどう評価するのかといったときに、交通機能だけから評価するのではなくて、各々をどういう通りにしたいのか。交通処理的な評価というのは数年前にある意味終わっているわけで、都心や交通体系のあり方の中でこの3本の道路をどう位置づけて、ここの交通手段として例えば路面電車を入れるとすると通りはどうあるべきかという議論をしないと評価できないわけである。この会議の中でどこまで決めるのかは事務局と座長の間でまた相談していただいたらいいと思うが、そういう問題提起はしておきたいと思う。

宇都宮委員

 私もそこが気になっていた。資料の最後の方に東西交通軸を今後検討していきたいということが書いてある。これが路面電車なのかバスなのかはともかくとして、そもそも日本においては何らかの形でこういうことを実現して効果が出たという例がなく、効果が測定できない。言い換えると、そういう形だけでなく、こうやって繰り返し議論していく過程で、弘本先生や田中先生がおっしゃられたような定性的な話も踏まえた上での検討をお願いしたい。定性的なものは何かというと、これまで議論してきたような都心のあり方、堺は人が少ない、あるいは自動車が多い、こういった話だろうと思う。この会議である程度の方向性的な判断ができるのであれば、数字だけではない部分をくみ取っていただきたい。

正司座長

 施策と方向性、それぞれを取り上げるといいことを言っているのだが、全体で見たときに方向性がぼやけている。あちこち歩けるようにするというのはまだいいのだが、お金をかけて交通を便利にするというときには、どういう交通をどこに入れたらいいのかという議論ができないという話になってしまっているのではないか。議論百出するところだと思うが、ここは課題に思っているとか、歩行者支援をメインにするといった、市としてのストーリーを提案して整理していただいたほうがより生産的かと思う。マンチェスターは、市内のターミナル駅が1.5キロメートル程離れていて、歩かせるには遠い。そこを結ぶ交通手段を整備しても、郊外から来た人を乗り換えさせて使わせるといったら乗換抵抗から利用されない。といった発想から郊外から電車がそのまま都心部で路面電車として運行するLRTを整備した。すなわち、乗り換えさせずに二兎を追う手段整備をおこなったわけである。高槻市は500mしかないので、資料の赤い点線上を歩くわけではないが、阪急とJRの間の路地を動き回って、路地がまた元気になってくる。それぞれがいろいろな工夫をされている。堺市はマンチェスターぐらいの距離感があるので、それなりに戦略的に考えていかないといけないと思う。
 それともう1つ重要な視点があり、公共が全部やれるわけではない。民間をうまく使ったほうがいい。そういうときに、民間は公共の思うとおりには動いてくれない。だからといって、公共が支援しないというのはあり得ないので、そこをどうするのか。民間としてすぐ大規模商業施設といったものを思い浮かべるのだが、住居も、まちをきれいにするのも、観光施設も、阪堺電車や南海電鉄も民間であり、いろいろなレベルの民間が、それぞれ動いてくださっている。それを全て市が計画するのは大変なので、そこは民間にもっと自分たちが一番都合のいいようにうまく動いていただける仕掛けが必要である。そこをどう3段階目にするのかという点をぜひとも整理していただければと思う。
次の会議ではこういう方向性の資料が出てくると思うが、事前にいただければ先生方も積極的にご意見をお寄せいただけると思うので、事務局によろしくお願いしたい。

閉会

事務局

 以上をもって、第4回堺市都心交通検討会議を閉会させていただく。次回の日程等については、決まり次第事務局から連絡をさせていただく。本日はどうもありがとうございました。

以上

このページの作成担当

建築都市局 交通部 交通政策担当

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