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第4回 堺市南海高野線連続立体交差事業鉄道構造形式検討委員会 会議録

更新日:2017年5月29日

日時

平成29年4月28日(金曜)15:00~16:20

場所

堺市役所 本館 地下1階 職員会館 多目的室

出席者

委員

澤田委員長、鍬田委員長代理、岩田委員、竹村委員、室野委員

関係者

南海電気鉄道株式会社鉄道営業本部統括部 中村部長ほか
公益財団法人鉄道総合技術研究所 坂井副主任研究員

事務局

山上道路部長、金田連続立体推進課長ほか

傍聴

4人

議事

(1)地質調査について
  ・ボーリング調査における地質分析結果
  ・事業区間における断層位置・変位量
  ・その他考慮すべき変位量
  ・まとめ
(2)鉄道構造形式の検討について
  ・ラーメン高架橋形式における検討
(3)その他

資料

議事内容

1.開会

事務局

 定刻になりましたので、ただ今から第4回堺市南海高野線連続立体交差事業鉄道構造形式検討委員会を開催します。
 私は、本日の司会進行を務めます堺市建設局道路部連続立体推進課の松岡です。本委員会の事務局は堺市道路部連続立体推進課が行います。
 開会にあたりまして、堺市建設局道路部長の山上よりご挨拶を申し上げます。

山上道路部長

 堺市建設局道路部長の山上です。
 本日は、ご多忙の中第4回堺市南海高野線連続立体交差事業鉄道構造形式検討委員会にご出席いただき、ありがとうございます。私は本年4月の異動により道路部長となりました。本市で進めています連続立体交差事業について担当する一員でございます。よろしくお願いいたします。
 今回第4回の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
 本委員会は上町断層帯の影響を踏まえた最適な鉄道構造形式の選定を目的とし、これまで2年以上に渡りご審議いただいているところです。まずはこの場をお借りしまして、ご尽力いただきました皆様にお礼申し上げます。どうもありがとうございます。
 さて、本委員会は今回の第4回委員会が最後の委員会開催となります。本日はこれまでの集大成としまして、地質調査、分析を踏まえた断層変位の推定と断層の影響を考慮した鉄道構造形式についてご審議いただくこととなっております。
 委員の皆様には、最適な鉄道構造形式の選定に向けた提言のとりまとめのため、忌憚のないご意見、ご指導を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
 以上、簡単ではございますが、ご挨拶とさせて頂きます。

事務局

 それでは事務局より説明いたします。
 最初に、委員の任期についてです。本年1月19日で、一旦、任期が終了しまして、今回から継続で新たな任期での開催となっています。委員及び関係者の皆様方の紹介につきましては、第1回委員会から変更はございませんので、詳細なご紹介は省略いたします。
 本日は、澤田委員長、鍬田委員長代理、竹村委員、岩田委員、室野委員の全委員の方にご出席いただいております。その他、関係者といたしまして、南海電気鉄道株式会社鉄道営業本部統括部長の中村部長を初め統括部の皆様にご出席いただいております。また、公益財団法人鉄道総合技術研究所より坂井副主任研究員にもご出席いただいております。
 本日の議事である地質調査業務に携わっていただきました地域地盤環境研究所の皆様です。同じく、鉄道構造形式の検討業務に携わっていただきました阪急設計コンサルタントの皆様でございます。
 本委員会の配付資料について確認いたします。最初に次第です。次に資料1地質調査についてです。次に資料2鉄道構造形式の検討についてです。最後に、参考資料委員名簿です。以上、不足等ございませんか。
 それでは、議事に先立ちまして、堺市南海高野線連続立体交差事業鉄道構造形式検討委員会規則第5条の規定に基づき本会議は公開としています。現在4人の方が傍聴に来られておりますことを報告します。傍聴される方につきましては、お配りしている傍聴における遵守事項を遵守いただきますようお願いいたします。また、会議の記録のため、録音、写真撮影の上議事録を作成しますので、ご了承のほど、よろしくお願いします。
 なお、本会議について、委員定数5人中全員が出席となっており、規則第3条第2項の規定を満足していることを報告します。
 それでは、以後の進行は澤田委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

2.(1)地質調査について

澤田委員長

 委員長を務めております京都大学の澤田でございます。それでは、議事次第にしたがって進めたいと思います。この委員会は平成27年1月から2年余り続けてきましたが、今日の委員会が最後ということで、方向性を決め、提言という形でまとめたいと考えておりますので、皆様よろしくお願いします。
 それでは、議事次第に従って進めていきます。(1)地質調査結果について、事務局、説明をお願いします。

事務局

 地質調査結果について、説明いたします。前方のスクリーン、お手元の資料1をご覧ください。
 前回の委員会では事業区間北側の調査結果を報告しました。今回は引き続き実施しておりました南側の調査結果について説明します。これまでの地質調査結果を総合して得られる断層位置・変位量、及びその他の考慮すべき変位量についての検討結果を述べ、まとめたいと思います。
 初めにボーリング調査における地質分析の結果について、説明します。
 この図は都市圏活断層図にボーリング調査位置を重ねたものになります。南ラインで実施したボーリング調査についての結果を報告します。南ラインでは計6本のオールコアボーリングの他に、近傍の既存コア試料の分析も行いました。
 得られたオールコアボーリングは、コアの観察に加えて、スライドに示すような地層の堆積環境を調べる珪藻分析と、地層の堆積した年代を明らかにする火山灰分析・花粉分析を行いました。これらの分析を行うことで、構造物の設計に考慮すべき断層変位量を検討していきます。こちらの図が南ラインの分析結果です。珪藻分析からは柱状図の左側の着色部分に示しているような地層の堆積環境が明らかになりました。この中の青色で示している海で堆積した地層を中心に検討していきます。また、火山灰分析からはピンク色で示される火山灰が特定されました。
 花粉分析よりMa9からMa12までの海成粘土層が特定されました。花粉分析で特定されていた2層のMa11層の下位に甲子園浜3~4の火山灰が認められMa11-2相当層と特定されましたので、その上位層がMa11-3相当層と推定されました。このように珪藻・花粉分析の組み合わせにより海成粘土層が詳細に対比されました。
 こちらが第3回委員会時の地質分析結果に基づく北ラインの地質断面となります。北ラインの位置につきましてはスライドの3ページ目をご参照下さい。
 北ラインではさらなる対比精度の向上のために、追加の珪藻・花粉分析を行い、南ラインと同様の対比を行いました。
 追加分析の結果を合わせて、南ラインと同様の整理を行うことで得られた対比断面がこちらになります。南ラインと比べると、Ma11層の分析結果が少ないためこの海成粘土の対比精度は低い結果となります。北ライン・南ラインにおいて下盤側から上盤側にかけてMa11-2 相当層が対比されました。北ラインではK-Tzも対比されております。ボーリング調査で示される撓曲帯構造は、北ライン・南ラインで類似した形状・変位量となりました。
 Ma11-2相当層やK-Tzの対比結果をもとに撓曲帯分布や変位量を検討しました。
 最初にボーリング対比結果から撓曲幅や変位量の推定を行う方法を説明します。ボーリング調査による地層の対比結果に対して、得られるのは対比された地層の累積変位量となります。対比層の年代が得られれば、平均変位速度が求められます。これに上町断層の活動間隔を与えると1回の断層変位量を求めることができます。今回の調査では活動間隔は求まらないため、地震調査研究推進本部における上町断層の評価結果を用います。地震調査研究推進本部でも、本調査と同様に各種調査から大阪市内での平均変位速度を求めており、1千年あたり0.4mと評価しています。地震調査研究推進本部では上町断層全体の長さを42キロメートルと評価しており、国内地震における断層の長さ・変位量の経験式より、断層の全長から1回の変位量を求めています。大阪市内の平均変位速度と1回の変位量である3mからおよそ8千年の活動間隔が推定されており、本検討でもこの値を採用しました。1回の変位量を撓曲幅で割っていきますが、ボーリング調査結果における撓曲幅の評価の補足説明をします。こちらで示しているような撓曲帯を仮定しますと、撓曲帯の幅はスライドのオレンジ色の矢印が示す幅となります。ここで図に示す位置でボーリング調査をしたとしますと、ボーリングから推定される対比線としては、こちらの青点線のように、ボーリング地点を結ぶ線になります。この時の評価としましては、対比層が水平から変化を示す円で囲った部分に着目して、撓曲帯幅は緑の実線と点線のように幅をもたせていますが、検討には一番幅が狭い緑色の実線の部分を用います。このため、実際の撓曲幅よりも狭い評価となっています。この緑の実線矢印の幅を用いることで、黄緑色の線で示した均等配分を仮定した撓曲変形量を求めることができます。先ほど説明した式に戻ります。事業区間幅をかけることで、事業区間における1回の撓曲変位量が求まりますが、このままでは撓曲変形量を均等配分した評価になるため、さらにボーリング断面で示される急勾配部分の傾斜を用います。このように撓曲帯幅を狭く評価し、かつボーリング断面で得られた急勾配を考慮して撓曲変位量を求めていきます。
 続きまして、ボーリング調査による撓曲帯位置の検討について説明します。北ラインの対比断面において、先ほどの説明のようにMa11-2層の水平からの変化を示す部分に着目しますと、緑の線で示すような撓曲幅として評価できます。都市圏活断層図・上町重点調査結果による撓曲帯幅をそれぞれ赤矢印、ピンク色の矢印で示しています。なお、過年度に実施したボーリング調査のSK23-2及びSK23-3の対比結果は、検討しています北ラインとは離隔が大きいため、撓曲幅の解釈には用いていません。ボーリングから推定される撓曲帯西端部は上町重点や都市圏活断層図による撓曲帯西端部より東側にあり、地形情報による撓曲帯西端部は浸食の影響で東側に後退している可能性があります。
 こちらは基盤で発生した断層変位が堆積層中を伝わる様子のシミュレーション結果となります。基盤で発生した断層変位は地表部ではより下盤側、今回の事例では、より西側に撓曲崖として出現する様子が確認できます。このように、逆断層の地表面における撓曲帯の西端はより西側に移動し、形成される撓曲帯幅も浅くなるほど広くなっていることがわかります。
 こちらは、大阪市内における上町断層近傍の典型的なボーリング断面です。地形的な撓曲帯の西端部が地下で確認される撓曲帯幅よりも上盤側つまり東側にある場合は、浸食により後退している可能性が考えられます。事業区間の北側の天王寺付近では地表面での撓曲崖が後退している様子が確認されています。従って、北ラインの地形的に確認される撓曲崖は浸食で後退した浸食崖の可能性が考えられます。
 同様に、南ラインでボーリング調査結果から推定される撓曲帯幅と、都市圏活断層図・上町重点調査結果による撓曲帯幅を比較しました。都市圏活断層図と比較した場合、ボーリング調査による撓曲帯幅の方が広く、その西端は地形的な撓曲帯よりも西側に位置しています。このため、地形的な撓曲帯は浸食により後退している可能性が高いと考えられます。上町重点調査結果と比較した場合、ボーリング調査による撓曲帯幅の方が広くなっていますが、その西端は地形的な撓曲帯よりも東側に位置しています。このため、浸食の影響は北ラインや都市圏活断層図よりも小さい可能性が考えられます。ボーリング調査位置の関係で、対比断面では撓曲帯の西端と鉄道との位置がほぼ同じ位置にみえますが、上町重点調査結果と合わせて考えると、撓曲帯の西端は鉄道よりも西側にあると考えられます。
 対比断面での検討結果を都市圏活断層図に示しました。オレンジ色の点線で丸く囲っている場所にある既存コア情報によると、貝殻層が確認でき、南ラインと同様の構造が示唆されております。そのことにより、撓曲崖には含まれないと考えられます。また、都市圏活断層図では、ボーリング調査から推定される撓曲帯よりもさらに東側に撓曲崖が推定されています。事業区間近傍では、都市圏活断層図で示される撓曲崖は浸食崖である可能性があります。
 対比断面での検討結果を上町重点調査結果に示しました。ボーリング調査結果と活断層分布図を比較した結果、特に南側ではボーリング調査から推定される撓曲帯より西側に推定されており、ボーリング調査結果と矛盾がないと考えられます。したがって、これ以降の検討には活断層分布図として、上町重点調査による成果を用いました。上町重点調査による成果から検討すると,撓曲帯の西端は鉄道より西側にあると考えられます。
 続いて撓曲幅および基準層の変位量の読み取りについて説明します。北ラインでは,K-TzおよびMa11-2層より撓曲変位量を求めました。幅に関しましては、より新しい年代の堆積物であるK-Tzを参照しています。SK23-2、SK23-3を解釈から除外しており西端部の特定が困難なため、撓曲帯の西端部については上町重点調査結果を参考にSK23-2の断面上での位置を用いました。各層の変位量は断面において最深部と最浅部から読み取りました。Ma11-2層は上盤側のMa11-3相当層がMa11-2相当層である可能性もあるため、35m、45mの両方の変位量で検討しました。
 南ラインにつきましてはMa11-2相当層を対象に評価しています。SK27-4とSK27-3の間が急傾斜しているため、均等配分した場合の勾配との関係を求めると、1.5倍であることがわかりました。このため、均等配分で得られる変位量を1.5倍したものを評価に用いることといたします。
 それぞれ読み取った撓曲帯幅と基準層の変位量に対して、ここで示した年代値より平均変位速度を求めました。上町断層の活動間隔を地震調査研究推進本部での評価結果を参考に8千年として1回の断層変位量を求めました。K-TzおよびMa11-2層で、最大1.7mの変位量が得られましたので、評価にはこの1.7mを用いました。その結果、15mの事業区間幅を用いて撓曲帯における変形量を均等配分したものに1.5倍した結果、北ラインでは21センチメートル、南ラインでは15センチメートルの撓曲変形量が求められました。
 次にボーリング調査結果以外に考慮すべき変位量について説明します。
 事業区間近傍では、本調査以外に大和川南測線で実施された反射法地震探査の調査結果により、1回の断層変位量が求められています。具体的な変位量は後のスライドで示しますが、Ma3層を基準としたとき、ボーリング調査よりも大きな1.9mの変位量が得られております。実際の断層変位分布もばらつきが大きいため、ここでは事業区間内の情報の中で、最も安全側になる組み合わせで撓曲変位量を推定しました。
 事業区間における上町重点調査結果で最も狭い撓曲幅を検討した結果、浅香山駅近傍で110mとなりました。この値を用いて、地形から得られる変位量について検討しました。
 先ほどのMa3層における1回の断層変位量と、上町重点結果の狭窄部での撓曲帯幅を組み合わせると、26センチメートルの撓曲変位量となりました。
 また実際の地震では、いわゆる地表地震断層以外に、様々な地表変状が発生します。ここではそれらを称して二次的な断層変位と呼びます。兵庫県南部地震においても、いわゆる断層変位は基本的に淡路島で確認されています。神戸側では顕著な断層変位は報告されていませんが、様々な地震動や地震に関連した現象に付随した地盤変状は神戸市内の色々なところで報告されています。実際の断層変位分布において、二次的な断層変位は右図に示されているように、主要な断層帯から離れて出現していますが、短く変位量も小さい傾向にあると言われています。これまでの委員会における意見を参考に、国内の地震で出現した断層変位における二次的な断層変位に関連した検討成果について整理を行いました。
 こちらのグラフは、過去に検討されたもので、主要な断層からどの程度離れた地点で変位が発生したかについて整理しています。横軸は主要な断層からの最短距離、縦軸が変位量となっています。ここに示していますのは表層が上町断層のように堆積層の場合のデータです。 これによりますと、主要な断層から離れていても30センチメートル程度の断層変位の発生の可能性が示されています。
 以上をまとめますと、15mの事業区間においてボーリング調査結果による撓曲変位量は厳しい結果が得られた北ラインの値を採用しまして21センチメートル、事業区間近傍の情報による撓曲変位量は26センチメートル、国内で発生した地震での二次的な変位を考慮した断層変位量は30センチメートルとなりました。以上より、最も厳しい最大30センチメートル程度の変位量を考慮して鉄道構造形式の検討を行ってまいります。これで説明を終わります。

澤田委員長

 それでは、地質調査結果についてのご質問、ご意見等ありましたらよろしくお願いします。

竹村委員

 今の結果ですと、事業区間は、撓曲帯の中に入っているという結論でよろしいでしょうか。

事務局

 はい。

竹村委員

 ボーリング調査では水平になっている層があり、東側から詰めてくると撓曲の最後の西端に貝殻層が入っているのですが、どれくらいの深さにありましたか。

事務局

 地図には示していませんが、例えば15ページにMa12と書いてある付近に貝殻の層が入っています。既存のボーリングコアでも同じような深度で同じような位置に、貝殻が入っているという記載がありますので、おそらく離隔から考えても同様なもので、ボーリング断面でも比較的水平に追えます。したがって、北ライン及び南ラインで、Ma12で確認されているような貝殻層が他のコアでも一部確認できたため、このような解釈を行っています。

竹村委員

 下盤側で、ある程度平面的な広がりが、水平で見えているということですね。

事務局

 はい。ただ、これ以上北では同じような情報を探しましたが、追える情報が無かったので、ここまでしか確認できませんでした。

竹村委員

 地図の丸でくくってある所が、西側から来た水平層の一番東端くらいとみられるということでしょうか。

事務局

 はい。

澤田委員長

 11ページの式にボーリング断面の傾斜は、具体的にどのように求めていますか。

事務局

 19ページで実際に求めています。まず均等配分で得られる勾配に対して、急傾斜部がどれくらいの勾配になるかを比較すると、ここでは1.5倍になります。
 もう1つ補足すると、19ページの断面図では、SK27-3から27-2の間は、ボーリングの用地等の問題でかなり空いています。均等配分した結果だと、幅が広く評価されている可能性がありますので、必ずしも安全側の値になっているかどうかはわかりません。しかし、急勾配部をあわせて見積れば、均等配分する値の方がより小さな値になるので、ある程度安全側の評価になっていると言えます。
 ただ、最終的にボーリングの間隔は、南ラインの方が空いているところがありますので、ボーリングから得られる最終的な変位量としては、北ラインかつ一番新しい時代のK-Tzを用いた評価としてまとめています。

澤田委員長

 結局は一番傾斜の大きいところの角度、つまり、南ラインの場合はSK27-4 及び27-3の間のMa12層傾斜である50mのところで10m上がっているというこの角度だけで事業区間の変位量が決まってくるということですね。

事務局

 はい。

室野委員

 28ページのまとめのところで、3種類の数字が出ています。考慮すべき変位量と書いていますが、最終的にこの中の一番厳しい値を設計に使えばいいのではないかというご提案ですか。

事務局

 まず1つは、確実な調査データによってどの程度の変位量が推定されたのかということと、それに加えて、自然科学や変位量の見積りに対してばらつきがあることがどうしても拭えないため、安全側になるような値として整理した結果を最終的に積み上げていくと、最大30センチメートル程度の断層変位になるということです。
 今回構造検討では、後で説明しますが、表で示したものの中で一番厳しいもので検討しています。

澤田委員長

 一番上がボーリング調査結果で得られたもの、真ん中が今までの調査や地形情報等によって求められたもの、一番下が二次的な断層変位量というこの3つのそれぞれで一番大きいと思われる変位量を出してきたということですね。だいたい同じくらいの値がでてきているというのが、1つのポイントだと思います。
 その中で一番大きい30センチメートルくらいが、1つの目安であるというご提案ですね。

岩田委員

 2つ目の変位量はMa3で見積られていますが、これは22ページの反射法地震探査で上下変位量を見積り、撓曲の幅は反射法地震探査結果ではなくて、地形情報の事業区間に近いところでの一番狭い値を用いている、つまり安全側の値を与えているのだと思います。しかし、根拠となる22ページの図には横軸が無いので、実際の撓曲幅を教えてください。

事務局

 反射法地震探査結果の断面での撓曲幅だと600m程度です。地形的に見えているものよりは3、4倍の撓曲幅になるため、反射法地震探査結果を用いると変位量は非常に小さな値になります。

岩田委員

 非常に安全側に評価しているということはわかりました。
 少しコメントすると、24ページでいくつかの基準層、つまり40万年前までとか65万年前という値から平均変位速度を求めていますが、基準層の取り方によっては、平均変位速度は局地的に早い値になります。例えば65万年前から85万年前など。それらを考えると実際に平均変位速度が上がって、1回に見積られる平均の変位量が大きくなってしまうということがあると思います。
 ただ、最後の集約としては、そういう値が2、3割増えたからと言って、大勢に影響があるということは無い評価をされていることはよくわかりました。
 すなわち撓曲の幅として、現実的な110mという非常に狭い範囲で与えているので、これがとりたてて非常に低い値で求まっているということではないと判断することができると思います。

澤田委員長

 岩田委員のご発言にありましたように、1回の平均変位速度として考えるのがどの時代のものがいいのかというのが1つのポイントかと思いますが、本来はできるだけ新しい時代のものを用いるのでしょうね。

岩田委員

 新しい時代のもの、もしくは、揺らいでいるのであれば揺らぎを考慮するのがいいと思います。この程度のばらつきがあるというのは事実であると思いますので、それも踏まえて、今回は評価されていると思います。

澤田委員長

 この場合だと一番新しいのはMa9の1.4mだけども、それをとるのではなくて1.9mというちょっと古い時代も含んだ平均速度でやっているということですね。

岩田委員

 私も澤田委員長と同じ意見で、より最新のもので見積って、過去と比較すると等価であるとか、今の方がより1回の変位量があるとかにつながっていくと思います。総合的に見積るのが一番重要であると思います。

澤田委員長

 非常に詳細な調査をなされて、しかも層準がかなり正確に決まったというのが大きな成果であると思います。それによってかなり正確な平均変位速度がでてなおかつ揺らぎがある中で、その中の一番大きな値を使って、事業区間の変位量を求めたというご説明でした。
 他にどうでしょう。ご質問、ご意見等ございますか。

鍬田委員長代理

 11ページの式を用いてボーリングの調査等で出てくる平均変位速度が0.2m/千年そこそこだとみているのですが、この推定量と地震調査研究推進本部の上町台地周辺の調査結果である平均変位速度の0.4m/千年では、同じ上町断層の中でこのようなばらつきはあって然るべきと考えていてよろしいですか。

事務局

 先ほど岩田委員がおっしゃられたばらつきをどこまで考えるかということにも一部つながるかと思いますが、1回地震が起きた時の断層変位を見ますと、どこもかしこも同じ変位というのはありません。やはり全体的に断層帯の真ん中に向かって大きくなる傾向にあるということを考えれば、今のこの地震調査研究推進本部が想定されている上町断層の長さですと、大阪市内くらいが最大で0.4m/千年で、端に行くとそれよりも小さな値になります。データの上では、今回のボーリング調査で得られた値が取り立てて過小とは考えていません。
 ただ、実際にはばらつきが大きいので可能な限り別の値も使って、例えば1.9mとか古い時代の変位量も参照して変位量を算出しています。

澤田委員長

 上町断層帯の中で、大阪市内に比べるとこの位置は、比較的変位は小さいということはよく知られていますが、その点を考慮してこの場所での調査結果の一番大きい値を採用したということだと思います。
 他にご意見はありますか。
 また構造の方を議論したら、関係が出てくるのと思いますので、問題になったら戻ることとします。

2.(2)鉄道構造形式の検討について

澤田委員長

 鉄道構造形式の検討について、資料2に基づき事務局から説明をお願いします。

事務局

 それでは、鉄道構造形式の検討について説明します。前方のスクリーン、お手元の資料2をご覧ください。
 報告内容としましては、パイルド・ラフト基礎構造の検討の深度化、断層変位入力方法の検討、断層変位解析、直接基礎の検討、縦断方向の地質調査結果の順に説明していきます。
 前回委員会では,高架橋の基礎形式として、3タイプの構造を検討していました。1つ目は、1柱1杭完全支持杭で一般的な基礎構造形式となります。2つ目は、パイルド・ラフト基礎で、直接基礎と杭基礎の中間的な支持構造となります。3つ目は,群杭完全支持杭で、細径の杭を多数配置した完全支持杭形式となります。
 この中で、前回委員会で指摘がありましたパイルド・ラフト基礎形式について、報告します。
 前回委員会での解析結果では、基礎スラブおよび後施工杭が荷重を負担せず、パイルド・ラフト基礎として機能していない結果となっていました。そこで、以下の2点について、解析条件の見直しを実施しました。
 1つ目として、後施工基礎スラブの一体化時期の変更を行いました。前回報告では後施工部と先施工部との一体化と荷重載荷を同時としていたのに対し、今回は後施工部の荷重載荷後に一体化する条件としました。
 2つ目は、基礎スラブ底面の地盤改良を考慮しました。前回委員会では基礎スラブ底面のN値13程度で検討していましたが、地盤改良をすることにより地盤を強固なものとしました。これにより、基礎スラブ底面での直接支持力を増加させることができるようになります。
 こちらが、条件変更のイメージになります。解析条件の変更で基礎杭を削減することを目的としています。
 こちらは解析ステップ1になります。一番左から、Case0が前回報告時のケースになります。Case1が、後施工スラブの一体化時期をずらしたケース、Case2が更に基礎スラブ底面に地盤改良を施工したケースとなります。
 こちらのステップ2では、Case1、2において基礎スラブの一体化時期をずらすために、先施工部と後施工部の縁を一端切った状態で、後施工部に自重を載荷します。これにより、後施工基礎スラブの自重は、後施工杭に載荷されることになります。
 ステップ3で、一体化した後、活荷重を載荷します。
 こちらの棒グラフは、左のCASE0が前回検討時のもの、真ん中のCASE1が一体化時期をずらしたもの、右のCASE2がさらに地盤改良を実施したもので、各基礎の支持力の分担割合を示しています。
 前回報告では、全重量の82%を先施工杭で負担しておりましたが,Case2では、直接基礎部で39%、後施工杭で18%の支持力を負担する結果となり、前回報告では先施工杭でほとんど負担していたものが改善する結果となりました。
 今回の解析条件の見直しにより、前回報告時の杭本数30本から22本に削減することができました。
 パイルド・ラフト基礎の条件変更のまとめとしまして、当該地盤においては、常時の沈下量を抑制し、パイルド・ラフト基礎として機能するには地盤改良を要するために経済性で必ずしも優位とはなりません。
 また、鉄道構造物としての国内の事例が無く、設計手法や基準が整備されていませんので、採用するためには、より詳細な検討や実験が必要になることが考えられます。
 次に、断層変位入力方法の検討について、ご報告いたします。高架橋のどの部分で断層変位が起こった場合が高架橋にとって厳しいのかを見極めるために2次元FEM解析を実施しました。
 こちらは解析のイメージになります。3径間高架橋と地盤をモデル化し、地中に強制変位を与えて、高架橋にどのように影響するかを考察いたします。
 こちらが解析モデルになります。(1)~(4)位置で地中に断層変位を入力する4ケースの解析を実施し、基礎スラブの発生断面力と地盤の応力状態を確認いたします。
 こちらが、断層変位位置4の主応力コンター図になります。杭先端に応力が集中し、基礎スラブ底面の地盤には大きな応力は発生しておりません。このことから、断層変位発生時には、基礎スラブ底面が持ち上げられるのではなく、杭が地盤に突き上げられて高架橋に変位が発生していると考えられます。
 こちらは、断面力図になります。杭の位置で最大断面力が発生し、直線的に分布しています。このことからも、杭の突き上げによって、基礎スラブに大きな断面力が発生していることがわかります。
 こちらは各ケースの応答値の一覧表になります。断層変位位置2というのは、杭1本を押し上げる位置になりますが、このケースで最大断面力が発生しています。また、断層変位1は杭1本をかすめるように押し上げるケースになりますが、こちらでは地盤の塑性化が進み、高架橋には余り影響がでない結果となりました。この結果から、高架橋の一定以上の面積を押し上げる、今回の場合、杭1本以上を押し上げるケースで高架橋に大きな影響を及ぼし、高架橋の端をかすめるようなケースでは、高架橋にほとんど影響を及ぼさない結果となりました。
 断層変位入力位置のまとめですが、断層変位による影響は、杭を介して高架橋へ及ぼされることがわかりました。したがって、3次元骨組断層変位解析時には、従来基礎スラブに断層変位を入力していましたが、杭に断層変位を入力するモデルへの変更が必要だと考えられます。
 また、基礎スラブの最大断面力は押し上げる面積18%以下で頭打ちとなる傾向にありました。よって、杭を部分的に押し上げても、基礎スラブには影響がほとんど生じなかったため、3次元骨組断層変位解析時には、杭を1本、2本、3本押し上げる3ケースを実施することで、断層変位が高架橋に最も影響を及ぼす検討を行います。
 次に、断層変位解析についてご報告いたします。この解析では、高架橋がどの程度の断層変位に抵抗できるかを判断するために実施するもので、3次元静的非線形骨組解析により、1径間と3径間の完全支持杭形式について、検討を行いました。
 こちらは解析モデルになります。左の図は前回報告時のモデルになります。基礎スラブの底面に断層変位を入力していましたが、今回は先ほどの2次元FEM解析の結果から、右図のように杭に断層変位を入力する方法に変更しています。
 解析ケースは、左図の3径間高架橋では、橙色の杭を1本、2本、3本押し上げる3ケースを実施しました。また、右図の1径間高架橋では、最も高架橋に対して影響が大きい杭1本を押し上げる1ケースを実施しています。
 こちらは、3径間高架橋の変位図と断面力図になります。杭の位置で大きな曲げモーメントが発生しています。今回の解析で、基礎スラブを押し上げるモデルから杭を押し上げるモデルに変更したため、前回報告時よりも基礎スラブに大きな曲げモーメントが発生する結果となりました。
 こちらは、1径間高架橋の変位図と断面力図になります。さきほどの3径間の結果と比較して、発生断面力は小さくなっています。
 通常、杭の軸方向には非線形を考慮しておりませんが、その場合、杭体の杭頭付近が引張降伏した後も杭の引抜き抵抗が増加していくことになります。よって、杭の軸方向非線形を考慮することにより、杭の引張鉄筋が降伏以降は、杭がそれ以上の引抜き抵抗をしないようになります。このことにより合理的な解析が可能となります。
 こちらのグラフは、3径間高架橋の解析結果になります。横軸に断層変位、縦軸に基礎スラブの発生断面力を示しています。実線が軸方向非線形を考慮した結果を示していますが、断層変位250mm以降で軸方向非線形を考慮しない結果と差が大きくなっているのがわかります。
 こちらは3径間高架橋の基礎スラブの耐力照査の結果になります。基礎スラブが抵抗できる断層変位量がその高架橋が抵抗できる断層変位量と考えますので、基礎スラブが抵抗できる最大断層変位量は、75mmとなりました。
 こちらのグラフは、1径間高架橋の解析結果になります。こちらは、軸方向非線形を考慮する場合、断層変位250mm付近で最大断面力が発生しております。
 こちらは1径間高架橋の基礎スラブの耐力照査の結果になります。断層変位量242mm時点で最大断面力が発生しておりますので、242mm時点の耐力照査を満足すれば、基礎スラブが限界値に達しないと判断できます。
 したがって、基礎スラブが抵抗できる最大断層変位量は、300mm以上となります。
 断層変位解析のまとめですが、1柱1杭式完全支持杭のラーメン高架橋に対して、3径間ラーメン高架橋の場合、許容できる断層変位量は 75mm程度となります。また、1径間ラーメン高架橋の場合、許容できる断層変位量は 300mm以上となります。
 次に、直接基礎の検討についてご報告いたします。
 3径間高架橋について、直接基礎とした場合の3次元断層変位解析を実施しました。
 解析ケースは、高架橋の基礎スラブを一定量押し上げるこちらの3ケースを実施しています。黄色でハッチングした部分の面積に断層変位を入力しました。
 こちらが、各ケースの500mm変位させた時の変位図になります。断層変位を入力した箇所が持ち上がっていることがわかります。
 こちらが曲げモーメント図になります。杭基礎の場合と比較して発生断面力は小さくなっています。
 断層変位500mm時点の発生断面力に対して、基礎スラブの耐力照査を行いました。結果としては、耐力を満足し、更に、想定していた鉄筋量も削減できる結果となりました。
 こちらは、直上施工区間における直接基礎の施工ステップ図なります。本検討箇所の高架橋は直上施工区間となるため、基礎スラブは後施工となります。直接基礎の場合は基礎スラブがない状態では安定しないため、ステップ3の図ように工事桁を架設して現在線を供用したまま、基礎スラブを一括で施工する必要があります。
 直接基礎の検討のまとめとして、許容できる断層変位量は 500mm以上となります。
 当該地盤においては、良好な地盤まで7m程度の地盤改良が必要になります。
 暫定供用時の安定性の問題から、直上施工区間では工事桁設置により、基礎スラブを一括施工とする必要があります。
 また、直接基礎の場合、躯体の転倒等の安定性に留意する必要があります。
 今回、本連立区間の縦断方向における地質調査を実施しましたので、その結果をご報告いたします。
 こちらは、土質の縦断図になります。No.1~No.6の6箇所を実施しています。今までの検討で使用していた地質調査結果は、こちらの図の左側の方の浅香山駅、No.2の付近のデータになります。今回実施した地質調査結果のNo.3、No.4では、表層付近に良好な地層があることが確認できました。その他の調査結果につきましても、非常に軟弱な地盤が表層に連続することもありませんでした。
 縦断方向の地質調査結果のまとめとしまして、今回の地質調査結果では、表層部に深い軟弱層が存在することもなく、今まで検討してきた方針に影響があるものはありませんでした。
 また、一部区間では地表面付近に良好な支持層が存在するため、直接基礎とパイルド・ラフト基礎に対しては、より優位な結果になると考えられます。
 全体のまとめになります。
 断層変位に対する検討結果のまとめとしまして、杭は可能な限り小さくし、引抜き抵抗を極力小さくすることが断層変位に対しては優位となります。
 また、最初にご説明しました地質調査の結果から、本連立区間における想定断層変位量は300mmと設定したことから、杭基礎の場合、1径間高架橋であれば要求性能である断層変位量300mmを満足いたします。
 直接基礎の場合、3径間高架橋で要求性能である断層変位量300mmを満足しますが、直上施工区間では施工が困難であると考えられます。
 こちらは、構造形式の比較表になります。
 今回のご報告内容から、鉄道構造形式として、3つの案を選定しました。
 1つめ案としては、1柱1杭式の完全支持杭となります。こちらは最も標準的なラーメン高架橋形式となりますが、1径間のラーメン高架橋とする必要があるために、線路方向の張出し間隔が小さい場合には柱間隔が小さくなり、一般的な高架橋と比較して高架下の使用性がやや低下します。これらを解消するためには、張出し量を通常より大きくしたり、ゲルバー桁式の採用を検討する必要がありますが、この場合は落橋に留意する必要があります。
 2つめの案としては、直接基礎プラス地盤改良工法です。こちらは断層変位に対しては最も優位となりますが、地質によっては地盤改良厚が大きくなり経済性に劣ります。また、直上施工区間では工事桁を設置して、基礎スラブを一体施工とする必要があるため、他案と比較して施工性や経済性で劣ることになります。
 3つめの案としましては、パイルド・ラフト基礎となります。こちらは,直上施工区間の多径間ラーメン高架橋の基礎として優れている可能性がありますが、国内での鉄道構造物としての採用事例がなく、基準も整備されていないため、採用のハードルとは高いと考えられます。
 今後の事業化に向けた検討方針ですが、断層変位の影響を受ける本連立区間の鉄道構造形式は、以下の検討方針とします。
 直上施工区間については1柱1杭式の高架橋1径間の採用を検討します。
 その他区間で、3径間とするのが合理的な場合は,直接基礎の採用を検討します。
 直上施工区間で3径間高架橋とする場合は,パイルド・ラフト基礎の優位性を検討します。
 事業化に向けての流れについて説明します。
 本委員会では,上町断層帯の影響を踏まえた最適な鉄道構造形式についてご検討いただきました。
 この委員会での検討内容を踏まえ、今後事業区間における鉄道構造形式、施工方法等を決定し、側道や駅前広場など、事業とあわせて基盤整備を行う関連事業の内容を検討し、市民の皆様のご意見も聞きながら、連立事業の基本計画をまとめていきます。
 その後、環境影響評価、都市計画決定の手続きを行い、事業認可取得に向けて、本事業を進めてまいります。
 以上で説明を終わります。

澤田委員長

 それでは、鉄道構造形式の検討について、何かご質問、ご意見等がございましたらよろしくお願いします。

室野委員

 43ページにこの2年間の結果の総まとめという形で比較表があり、この通りだと思います。今後、詳細に詰められていくと思いますが、断層変位に対しては43ページや44ページの結論が当てはまると思います。しかし、実際には、高架橋をつくってしまえば、断層変位の影響だけを受けるわけではないので、実際には通常の地震時に対する問題などもきっちりクリアしていただけるように最終決定をしていただきたいと思います。
 1径間は断層変位における構造にとっては非常に有利でしょうけども、揺れを考えた場合には構造境界があると、地震時だと、例えば熊本地震の際に防音壁が200枚落下したので、そういった新たな問題も発生してくると思われます。その辺を天秤にかけていただいてご判断いただくのがいいと感じました。

澤田委員長

 コメントということですか。

室野委員

 はい。コメントということで。

澤田委員長

 1柱1杭式の限界許容変位量が示されていますし、直接基礎の場合については、500mm以上でも大丈夫ということが示されていますが、パイルド・ラフト基礎については、許容できる断層変位量に対するご説明がなかったように思います。これについてはどのように考えているか教えていただけますか。

事務局

 パイルド・ラフト基礎は、今の時点では採用のハードルが高いということでまとめています。今後もし詳細に検討した際に、パイルド・ラフト基礎とするのが合理的であると考えられる場合には、その時に断層変位解析を実施して、パイルド・ラフト基礎の性能を照査するということを考えております。

澤田委員長

 同じ3径間で考えた時に、おそらく1柱1杭式の75mmよりは大きくて、直接基礎の500mm以上よりは小さいと。どのくらいの値が出るかはわからないが、実際に採用される時は検討すると考えたらいいですか。

事務局

 はい。

澤田委員長

 29ページの1径間のラーメン高架橋における基礎スラブの限界変位について、断層変位が242mmの時に、曲げモーメントが0.92と1に近くなるということはわかりましたが、これから限界断層変位300mm以上という結論になることがよくわからなかったので、その点について説明を追加していただけますでしょうか。

事務局

 28ページの上のグラフは横軸が断層変位を、縦軸が曲げモーメントを示していますが、242mmの時点で最大発生曲げモーメントとなり、これ以降は徐々に下がっていきます。この242mmの断層変位を与えた時が、最も厳しい断層変位量ということになり、この時点で照査しておけばこれ以上の断層変位に対しても満足することとなります。

澤田委員長

 逆に言えば、300mmを超えても断面力は頭打ちになっているから大丈夫だと、もしかすると500mmでも大丈夫かもしれないということですね。

事務局

 はい。

澤田委員長

 圧倒的に1径間の完全支持杭は先ほどの直接基礎と同じくらいの性能があると考えられたらいいですね。わかりました。

澤田委員長

 21ページに示されている断層変位を受けない側の杭は引き抜かれてしまいますが、ここに軸方向剛性の非線形性を入れているということですよね。

事務局

 はい。

室野委員

 ちなみに、ここの周面ばねも非線形性を入れられているのですか。

事務局

 はい。バイリニアモデルで入れております。

室野委員

 わかりました。この通りの結果となるのでしょう。

澤田委員長

 39ページに縦断方向の地質調査結果がでてきていますが、これは非常にいい情報だと思います。今までの断層変位等の検討等に使っていたのは、どの断面の地盤でしょうか。

事務局

 こちらには示していないのですが、No.2とNo.3の間辺りです。形状としては、No.2に近いものになります。そこから数mはN値の低い地盤で、それ以降は互層になっています。

澤田委員長

 No.2に近いということですから、表層はほぼDsg1というボーリング結果ですね。それだと地表面から7mくらいのところにDc1があるというこういうイメージですか。

事務局

 そうです。

澤田委員長

 そこのDc1の周りはかなり軟弱ですね。そのような地盤を念頭に今まで検討されているということですね。

事務局

 はい。

澤田委員長

 それに比べるとNo.3、No.4はDsg1の深いところが比較的固い。浅いところも固いが、深いところも固いので、Dc1自体は柔らかいが、その周りのDsg1とDsg2はかなり固くてその支持力が期待できます。No.3やNo.4はそういう場所であると考えたらよろしいですね。

事務局

 はい。

澤田委員長

 わかりました。逆に言うと浅香山駅や堺東駅付近は、今考えている地盤よりは悪いということなりますね。

事務局

 若干悪いと思われます。

澤田委員長

 Dc1がかなり厚い。N値の低いクレイ層(粘土層)がかなり厚くて、そこの部分は設計する時にかなり大きな影響を与えると考えたらよろしいですか。

事務局

 はい。直接基礎の場合は、地盤改良の必要があります。はい。直接基礎の場合は、地盤改良の必要があります。

澤田委員長

 駅間は今考えているところよりは地盤は良さそうだが、両駅辺りは今考えている地盤よりは悪そうで、それに対して、基礎をしっかり設計しないといけないというように考えたらいいですかね。

室野委員

 今回の検討すごくよくわかりました。今日が最終の委員会になるかもしれないので、最後に確認をしておきたいことがあります。従前からこの委員会では高架橋をメインで作業を進めてきましたが、一方で鉄道だとトンネル形式、地下構造形式というものがあります。それに対して今回高架橋を検討してきましたが、地下については、事務局はどのようにお考えなのでしょうか

事務局

 本委員会におきましては、鉄道構造形式として、最も経済的で施工実績が高いラーメン高架橋形式ということで、実施してきておりました。地下形式につきましは、費用が高架形式の1.5倍から2倍程度かかると言われており、経済性の面で課題の方がございます。
 また、地下の場合、断層変位が起こった際に、復旧に時間を非常に要するということもありますし、鉄道利用者の避難等についても課題が多いということで、委員会では高架橋で検討を進めております。

室野委員

 わかりました。

澤田委員長

 今のところ高架橋形式でいくことを念頭に考えているというお答えでよろしいですね。

事務局

 はい。

澤田委員長

 新しく掘ったボーリングのコア試料は残っていますか。

事務局

 コア試料は残っています。

澤田委員長

 N値をとったサンプラーの中の土ですね。場合によっては、(1)の地質調査で行った花粉分析や火山分析等に使える可能性があるのでしょうか。

事務局

 あくまでもN値を測る際に掘削しており、上がってきた土を袋状に詰めて置いていますので、オールコアボーリングのように筒状できれいに残っていません。しかし、今回委員会の検討では既存のボーリングデータでも活用していましたので、使える可能性は十分にあると考えております。

澤田委員長

 事業区間と断層との関係が縦断方向にどうなっているのかがよく分からない面がありますので、今後また可能でありましたらそのデータも含めて検討していただくと、より断層位置と事業区間の関係がよく分かると思いますので、また考えていただければと思います。
 他にどうでしょうか、よろしいですかね。
 では、今回が最後の検討で、基本的に取りまとめの必要があります。後日提言として提出しますが、地質調査結果については、最後のページの考慮すべき変位量についての表を基に、報告をしたいと考えており、最後にご提案のありました事業区間の断層変位として30センチメートル程度考慮する必要があるという形で提言したいと思っています。
 それから構造形式については、43ページの構造形式の比較表、これを基にして、3つの案併記で提言をしたいと考えております。直上区間は1柱1杭式を基本とするのが良いと考えています。直上区間以外のところでは、あるいは直上区間の、特に径間を長くする必要がある場合は、2案、3案の検討をする必要があるという形で提言として取りまとめたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
 では、そういう形で後日堺市に対しては提言を取りまとめたいと思っております。
 それでは、2年余りの間行ってまいりました堺市南海高野線連続立体交差事業鉄道構造形式検討委員会を終わります。委員の皆様方、事務局の皆様には、2年余りという長い間いろいろとお世話になり、ありがとうございました。特に検討していただきました地域地盤環境研究所と阪急設計コンサルタントの皆様には追加の検討等いろいろ頑張っていただきまして厚く御礼申し上げます。
 これで第4回の委員会を終了させていただきます。進行は事務局にお返しいたします。

3.閉会

事務局

 委員の皆様、本日は長時間にわたりまして、御議論をいただき、ありがとうございました。第1回の開催から2年以上が経ちましたが、上町断層の影響を踏まえた最適な鉄道構造形式についてご審議、ご検討いただきまして、委員の皆様からいろいろな貴重な御意見賜りまして、誠にありがとうございました。
 本委員会は本日の開催が最後になりますが、今後賜ります提言を踏まえまして、南海高野線連続立体交差事業の事業化に向けて進めていきたいというふうに考えております。
 それでは、第4回の検討委員会を、これで終了したいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。

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