このページの先頭です

本文ここから

令和2年度第1回堺市博物館協議会 会議録

更新日:2021年1月5日

日時

令和2年10月26日(月曜) 午後2時から4時まで

場所

堺市博物館 地階ホール

出席者

協議会委員

 中村浩会長、岩間香副会長、谷晃委員、土橋ひとみ委員、森範子委員、山中浩之委員、吉川真一委員(欠席:足立久美子委員、伊藤廣之委員、菅原真弓委員)

事務局職員

 須藤館長、岩本副館長、増田課長、神原参事ほか

会議録

開会あいさつ

司会

定刻となりました。ただ今より令和2年度第1回堺市博物館協議会を開催いたします。
本日の出席者は委員10人中7人です。過半数の出席をいただいていますので、堺市博物館協議会規則第4条第1項により、協議会が成立していますことをご報告いたします。
なお、現在傍聴の希望者が一人おられます。堺市博物館協議会規則第5条第1項により傍聴を認めてよろしいでしょうか。

全委員

異議なし。

司会

ありがとうございます。それでは傍聴を認めます。それでは館長の須藤よりご挨拶申し上げます。

須藤館長

本日、ここに令和2年度第1回堺市博物館協議会を開催します。中村会長、岩間副会長はじめ委員の先生方におかれましては、ご多忙の中そして新型コロナウイルスがいまだ収束していないなか、ご出席賜わりまして誠にありがとうございます。
本協議会は、堺市博物館の活動や事業展開を一層活性化するために先生方それぞれの分野でご活躍になっておられますので、その先生方のお立場から多角的、それから専門的に私たちの博物館に対しましてご意見あるいはご助言を賜わりたいというのが、この協議会の目的でございます。前回は本館の茶室の活用について建設的なご意見をいただきました。先生方のご提案に基づいて実施すべく計画は立てたのですが、コロナ禍によって現在まで実施に至っておりませんけれども、おそらく来年度から徐々に多くの生徒さんたちが茶室を利用できるような、そういう体制にし、計画を進めていきたいと考えております。
本館はコロナ禍の影響で3月に閉館し、5月16日にオープンしました。本年は本館創設40周年にあたりますので、オープンした5月以降、意欲的にいろいろな博物館活動を行ってきております。ちょうど創設開館日が10月23日でして、23日をはさむ昨日まで3日間、入館料無料、それから堺市と関係のありますハーベストの丘と連携して現代的な須恵器の展示、それからパンの販売をするなど新しい試みを行ってきました。しかし、現段階での本館への入館者は4万8千人で、昨年の三分の一にも満たない、そういう状況でございます。この博物館から一度入館者の足が遠ざかると、その数を取り返すには非常に長い年月がかかります。魅力的な企画をおこなわないと、ますます忘れさられてしまうようなことも起こります。それで本館ではオンラインミュージアムをとおして館の活動を市民の方に周知して一人でも多くの方が博物館に来て下さるような計画を今実行しております。
来年3月には世界遺産1周年を記念しまして特別展、後でご紹介ありますけども、を行いますので、来年3月以降は前年と同じような入館者が来てほしいものと期待しております。今回の協議会の大きな議題は、博物館における複製品のあり方でございます。すなわちレプリカを製作することによって、その貴重な財の保存とか展示に活用するにはどうしたらいいか、まあレプリカに関しましてはその技術や価値については先生方の間にもいろいろなご意見があるとおもいますけども、本館におきましてはとりわけ考古学の分野でレプリカによる展示を肯定的、積極的に進めていきたいと考えておりますので先生方からご意見を頂戴できればと思います。本日は非常に短時間でございますけれども、忌憚のないご意見やご批判をいただければと思います。これらのご意見を本館の企画や運営に生かしていきたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

司会

(委員・事務局の紹介)
先生方に議事案件でご発言をしていただく際の注意事項を申し上げたいと思います。マイクロホンの数に限りがございまして共用ということになるのですけれども、職員がつきまして1回1回消毒をさせていただきますので、その時間をいただきたいと思います。
それでは議事に入ります。ここからは中村会長に議事進行をお願いいたします。よろしくお願いします。

議事1.報告事項

中村会長

失礼いたします。コロナ禍のなかでの感染対応を伴った議事進行ということで、いろいろ不自由な面があるかもしれませんがどうぞ忌憚のないご意見をお出しいただきますようお願い申し上げます。
まず、議事の第一番目ですが報告事項でございます。これは事務局の方からよろしくお願いいたします。

増田課長

失礼いたします。報告事項として3件ございます。
それではまず報告(1)令和元年度博物館事業報告と令和2年度の組織体制および事業についてご報告いたします。まず、資料(6)をご覧ください。令和元年度は特別展として「百舌鳥古墳群―巨大墓の時代―」を開催しました。観覧者は63日間で40,821人の方にお越しいただきました。企画展は下にございます、ご覧のように5回予定しておりましたが最後の3月開催予定でありました企画展はコロナ禍の中、休館となりましたので本年に繰り越しまして5月より開催しました。
つづきまして資料(7)をご覧ください。令和元年度に開催しました体験学習会の参加人数等を記載しております。博物館では勾玉、ハニワ、キーホルダー等を作製するものやお茶室や昔の道具の体験などを行っております。また、館外でも体験学習事業を開催しております。残念ながら中止になったものもございますが、延べ25回開催し、保護者の方を含めて2,120人の方にご参加いただきました。
予算、経費的な面としましては、資料(5)をご覧ください。令和元年度は12事業で予算としては240,132千円で、決算額は213,503千円となりました。
予算額と決算額の差は、さかい利晶の杜学芸系事業で、お茶や与謝野晶子に関する良好な資料がなく、資料購入の予算としてございました部分が執行できませんので購入できなかったということ、それから様々な委託事業等におきまして入札等により、経費が削減できたことによるものです。
ちなみに、令和2年度の予算額は317,838千円で、これは本年度行っておりますリニューアル業務やみはら歴史博物館の指定管理導入、博物館施設の工事や修繕等により予算が昨年度より増加しているということです。
入館者数は令和元年度266,721人で、昭和55年の開館以来最も多くなっています。
ちなみに令和2年度はコロナによります休館もありまして、10月25日現在で47,915人です。昨年度の同時期では170,787人でしたので、昨年と比較しますと約3割、28%程度しかご来館いただけていないということになります。ただ、昨年は世界遺産登録ということもありました。開館以来のいちばんご来館いただいたという数字です。その前の平成30年度で比べますと令和2年度は約半分程度ということになります。
つづきまして本年度の組織体制について説明いたします。資料(3)をご覧ください。本年度はみはら歴史博物館が指定管理となりまして、その職員数が昨年度より減っていますが、堺市博物館としては職員数31人、学芸員17人で数の変化はございません。
つづきまして令和2年度のご説明に入らせていただきます。令和2年度の事業としましては、やはり当館もコロナ禍の影響が大きく、当初の予定よりも展覧会数を減らすなど、変更せざるをえない状況になりました。 
資料の(6)をご覧ください。まず、特別展については、当初10月から12月で予定しておりました「海を越えたつながり―倭の五王とアジア―」は、令和3年3月13日から開催することになりました。また何よりもこの特別展で韓国から資料の借用を予定しておりましたが、現在の両国間の往来の状況をみましても断念せざるを得ないと判断してまして、韓国からお借りする予定でした資料はパネル等でご紹介することになりました。また、シンポジウムも韓国から先生をお迎えして開催する予定をしておりますが、こちらについては現在どういう形で開催できるか、実際には4月を予定しておりますけれども、韓国から先生をお呼びすることができるのか、お呼びできなければどういった状況で開催できるのか、オンラインを使うでありますとか、そういったことでどういう形で開催できるのか、現在も模索し計画を練っているような状況です。
今年度の他の企画展も先ほど触れましたように3月開催予定であった「詩書画に遊ぶ―幕末明治の文人画―」を5月から開催しております。開館40周年を記念して館蔵品をご紹介する「博物館には何がある?」も順送りになりまして、2本の企画展は現在パート2を開催しておりますが、それ以外に令和2年度に開催する予定でございました企画展は、令和3年度送りとなりました。
なお、本年度は現在開催しております企画展が11月29日で閉幕となりますが、その後、いったんリニューアル工事のため展示場を閉め、1月に企画展会場のみを開けて主に小学3年生を対象とした「むかしの暮らし」を開催いたします。2月より完全休館として工事に入り、3月13日よりリニューアルオープンして、特別展のおひろめをするように考えております。
続きまして報告(2)新型コロナウイルス感染症対応に係る博物館の取り組みについて報告いたします。
当館ではコロナ禍の中で3月3日から5月15日まで休館いたしました。その後の開館にあたりましては、他の博物館などと同様に来館者の皆様にマスクの着用を求め検温を実施し、展示場内でも適度な間隔をあけていただくように、ソーシャルディスタンスを保っていただきながら観覧していただくようにお願いしています。今のところ、混雑して密になるようなことも幸か不幸かございませんが、10月になり若干来館者も増えてきておる状況でございますので、今後とも感染拡大防止には十分な注意を払っていきたいと考えております。
そのような中で、休館中、3月、4月、5月、また現在の活発な往来が躊躇されるような状況下の中でも、博物館としていろいろな情報を発信していかなければならない、という風に考えておりまして、博物館資料のご紹介ということを中心にインターネット、ウェブ上で「堺市博物館オンラインミュージアム」と題しまして、ユーチューブ等で動画を配信しております。資料(9)をご覧ください。こちらの方に堺市博物館オンラインミュージアムをご紹介しております。企画展「詩書画に遊ぶ―幕末明治の文人画―」をご紹介する動画を5月1日に公開したのを皮切りに常設展の古墳時代コーナーの紹介、また7月からは館長セレクションと題しまして須藤館長が出演し重要文化財旧浄土寺九重塔をはじめとして博物館の逸品を学芸員と共にご紹介する動画を配信しております。また体験学習でご好評をいただいている勾玉作りも、本年度は8月まで体験学習会自体も開催できませんでしたので、作り方を中心にこちらも動画でご紹介しております。このような動画配信は、さかい利晶の杜でも担当学芸員により現在11本作製し配信しております。みなさん、ご覧いただいたものはございますでしょうか。このような動画による配信は、現在有効な広報手段であるとも考えられますので、今後も動画の配信は続けていきたいと考えています。なお、この動画は堺市や堺市博物館ホームページやユーチューブ上の堺動画チャンネルから検索してご覧いただくことができますので、またどうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、報告(3)百舌鳥・古市古墳群ガイダンス展示製作設置業務にかかるリニューアルについてご報告いたします。資料(10)をご覧ください。リニューアルにつきましては、昨年度、今年の2月の協議会でも触れさせていただきました。1月末にプロポーザルにより、施工業者がトータルメディア開発研究所に決まり、それ以降、世界遺産に登録された百舌鳥古墳群を来館された皆様により深く知っていただくためには、どのような展示で紹介していけばよいのか協議してまいりました。外部の考古学専門の先生方のご意見も聞きながら進めております。何分にも市役所内部をはじめ調整していかなければならない点も多く、スムーズに進んでいるとは言えない状況ですが、現状を報告いたします。
まず、展示場入り口に向かっては、池側にパネル類を作製し、堺がたどった歴史をイメージしながら展示場への期待感を高めていくようにしています。展示場に入りますと中心に仁徳天皇陵古墳の前方部で見つかりました石槨、石棺を再現し、中心に置きます。この石棺は現在も展示しておりますが、実際古墳において石棺があのように全て露出しているということはありませんので、よりリアルに再現したかたちでご紹介したいと考えております。資料(10)の後ろの方にイメージパース等がございますのでご覧いただければと思います。また、ケース内もパネルを一新し、主要な古墳を中心としながら重要文化財「陶邑窯跡群出土須恵器を時間軸のモデルとしても紹介していきたいと考えています。
次の展示コーナーでは、形象埴輪を中心にご紹介する埴輪ステージを中心に古墳で行われた祭祀儀礼を紹介します。1枚めくっていただきますと埴輪ステージのパースがございます。また、現在、VRを行っております中庭側エリアでは、世界から見た百舌鳥古墳群の紹介、古墳に実際に使用されていた葺石に触れることができる体験コーナーを設置いたします。また、地階ではパズルを置くとともに壁面を利用して子ども向けに世界遺産や堺の歴史を年表等でイラストを交えながら紹介します。
以上のような内容で、来年3月13日に、御陵通の通り向かい側にあります現在改装中の百舌鳥古墳群ビジターセンター、先ほどご紹介した特別展と共にオープンいたします。細かい部分で変更することもあろうかと思いますが今後このような内容で進めていく予定です。
以上をもちまして報告3件を終了させていただきます。

中村会長

ありがとうございました、今の報告に関して何か質問ございましたら。

岩間副会長

パースというのはついていますか。

増田課長

イメージ図ということで。

岩間副会長

わかりました。

中村会長

報告ですから、納得いただければ先に進んでよろしいでしょうか。

山中委員

予算の増額されていることは、この年度に限った事ですか。収集面での予算が挙げられてないんですけれども、そういうことでよろしいんですか。

増田課長

資料の収集に関しましては、先ほど申しましたようにさかい利晶の杜の学芸系事業で、1000万円をお茶と与謝野晶子に関する資料を購入する経費は予算化していますけれども、博物館本体では具体的に収集すべき資料が出た年に予算要求させていただいて、予算を認めていただくということになっています。その候補がないときは予算要求しないということになっています。

山中委員

ただ緊急に手を打たないといけないということもあり得るのではないかと思うんですが、それは業者との約束という形をとっているんでしょうか。

増田課長

現在は、そのあたりはこちらの意を酌んでいただいて、次年度までお待ちいただいて購入するという形です。

山中委員

そういう時は要求するのに結構負担がかかりますよね。そういうときに、やはり一定の予算確保がいるのではないかと、一般的には感じるのですけれども、もし、適切なものがその時に見つからないということは当然あり得ると思いますけれども、一定の予算枠が確保されているということが資料収集をしやすくするのではないかと、思えるんですけれどもいかがですか。その点は、なかなかむつかしいですか。

増田課長

現在はなかなかむつかしくて、今のところ具体的なものはないけれども、一定の確保させていただいて、予算要求というのはなかなか認めていただけない、といった状況になっております。

山中委員

何とか確保していただけることを期待しています。

案件

中村会長

ほかにございませんか。ほかになければ次の案件に入りたいと思います。
博物館における複製品のあり方について、提案理由の説明がありますか。よろしくお願いします。

増田課長

それでは、本日あげさせていただきました案件につきましてご説明させていただきます。今回あげさせていただきましたのは、博物館における複製品のあり方ということです。今回提案させていただきました直接的な理由としましては、今回、博物館の特に古代の部分をリニューアルさせていただくのですけれども、特に目に付くような埴輪等を中心としました古墳時代の出土品ですね、そういったものを展示させていただきまして皆様に見ていただきたいというところなんですけれども、残念ながら堺市の方では、資料が少ない、埴輪の例えば大きなものであるとか、完全な形のようなものは少ないということがございます。やはり堺の百舌鳥古墳群というのは陵墓が多いという部分もありますし、発掘調査例も少ないということもございます。近い例でいきますと古市古墳群の羽曳野市や藤井寺市に比べても堺市が所蔵している埴輪類は非常に数が少ない、見劣りをするといったことがあります。そういった中で仁徳天皇陵古墳を中心としました百舌鳥古墳群の古墳をご紹介する中では、他の機関、例えば宮内庁であるとか他市でお持ちの資料の複製品を作らせていただいて展示をするというのが必要なのではないか。そういった中で複製品に対する皆様の感覚、考え方というのもございます。そのあたりでもう一度原点に立ち返りまして、博物館において複製資料というのはどういった位置づけでどういった風に展開していかなければならないのか。どういう風にした方がいいのかということをここでもう一度議論していただきまして、今後の堺市博物館の展示に役立てていきたいなと、参考としてお話を聞かせていただきたいなということであげさせていただきました。
資料(11)をあげてございます。こちらにありますように堺市博物館では複製品を製作していきたいと考えておりますが、皆さんにご議論いただければと考えております。
その前に堺市博物館の複製品そして博物館においての複製品の位置づけということで説明させていただきたいと思います。
まず、複製品につきましては、博物館の法規でどのように規定されているかといいますと、博物館法以下に記されています。博物館法では博物館は資料を収集し、保管、展示、調査研究する機関でありますが、第3条の方にありますように、模写・模型の類も博物館資料のひとつであるとされています。(2)博物館の登録審査基準要項におきましても資料は実物を原則としながらも複製もやむを得ないという内容で記されています。また、(3)公立博物館の設置及び運営に関する基準では、実物資料があっても、貸し出しが困難な場合でも複製品を製作するとも書かれています。(4)博物館の設置及び運営上の望ましい基準にも同様な内容で記されています。
当館における現状は次からのぺージにあげさせていただいております。前の画像等をみながら、と思いますが、いくつかにグルーピングできますが、まずひとつ目は、原資料は当館所蔵ではないが複製を製作し常設展示に供しているものです。こちらは当館所蔵ではございませんが、堺にとって重要な資料なので 実物をお借りして常時展示することができないので、複製を作製して展示をするというものになります。
つづきまして2番の原資料は当館の所蔵もしくは堺市所蔵もしくは寄託であるが、劣化等を考慮し複製を製作し、常設展示に供しているものです。住吉祭礼図屏風などがそうなんですけれども、こちらの方は当館で所蔵もしくは保管をしておりますが、常設展示すべきものなので、特に美術資料などはそうですけれども劣化を防ぐために複製品を作製して常設展示をしているというものになります。つづきまして3番です。原資料は、当館所蔵もしくは堺市所蔵あるいは寄託ではあるが、貸出等を考慮し複製を製作しているものということになります。こちらの方は貸出等の依頼等が多くて実物資料を当館でも展示をしておきたいし、貸出の依頼等も多いということで、複製品を作製しているものになります。あげさせてもらっていますように埴輪類が多いですけれども、こういった堺市で出土した埴輪類の複製を、実物はございますけれども、複製品を作製しているものになります。
以下、完形品でないため復元して複製品をつくったものや、パズルやタペストリーとして製作しているものなどがあります。
また、なかには複製品を製作した後に実物が損傷し、複製品が本来の形を残すものとなっている場合もあります。いまスライドで出ていますのは、実際に触って体験してもらって 実物に近い形で作っているもの 仁徳天皇陵古墳出土ともいわれるボストン美術館所蔵品に似た三環鈴であります。
趣旨は異なりますけれども、ちょうど今日の朝日新聞の方に、法隆寺の金堂の壁画がむかしガラス乾板で撮られていたものが出てきたので公開されていると書かれていました。ご存知のように金堂の壁画は現在失われておりますけれども、以前に撮られた金堂の壁画が写真となって残っていたので、それを補修して今デジタルで公開している。なくなったものですけれども複製であったり、こうした写真として残していたために、現在そういったものを公開できることもある、というようなものになります。こういった複製品がいろいろございますけれども、展示資料としましてはもちろん実物であるのが原則だと思いますけれども、各地のさまざまな博物館では常設展示資料がほとんど複製品であるような博物館もございますし、デジタル技術を駆使して展示の中心にしているような施設もあります。そのあたりを踏まえまして、博物館における複製品というものに対しまして皆様のご経験やご感想などをもとに、いろいろとご率直なご意見をいただければというふうに思っております。それではどうぞよろしくお願いいたします。

中村会長

今の趣旨なんですけども、堺市博物館の複製資料はどういうようなものを選んで作っていくのかということなんでしょう。この博物館の複製資料についてはいろんな意見があると思いますので、皆さんのご意見を伺っていきたいと思います。まず谷委員、何かございませんか。

谷委員

私どもの美術館では実は複製資料は一切ないわけであります。すべて実物資料です。しかしながら博物館の中でも、博物館資料というのが一次資料と二次資料というのがあって、一次資料が簡単に言えば実物資料、二次資料が複製品などということになるわけですが、それは二次資料だから、コピーだから悪いということは決してないと思います。その目的に応じて予算の範囲内あるいは必要に応じて作り、そして利用していくのがいいんじゃないかと私は思います。ただし、博物館資料というのは、モノがあればそれがすべて博物館資料ではありませんので、常に利用できる状態、展示であるとかその他の博物館の事業のために利用できる状態にあって初めて博物館資料になりうるわけですから、作ったらいいということで収蔵庫においておくとかどこかに積んでおくとかだけではなくて常に利用できる、いつでも利用できる、あるいは要求に応じられるようにされたらいかがかというように考えています。

中村会長

ありがとうございました。森委員何かございませんか。

森委員

複製品にしては意見をいうことは非常にむずかしいところだと思いますね。サイズ感とか、同じサイズのものを複製できる場合と、二分の一とか何分の一かによって小さくなる場合もあるとおもうので、ある程度原寸大のものが複製できればいいのかなあと思いますけれども。大塚美術館なんかに行かれて、初めてそちらの方を訪れた方にとっては、非常に感激されると思うんですけれど、実際にヨーロッパとか実物を見た方にとっては、やはり難しいと、ちょっと違うので感動が違ってくると思います。ひとつしかないものに関しては、やはり複製があって共有して多くの人に見ていただくという点では、良いのかなあと思います。非常に難しいところだと思います。

中村会長

ありがとうございました。複製品で一番多いのはたぶん金印だと思います。金印は原物は福岡市博物館においてあると思います。ほかもちょっとした博物館ですと、弥生の基本資料ということで金印を展示しているところが多いと思います。たいていの場合は、実物に即した原寸大のものを復元していると思いますけれども、一部、粗雑なものもあります。そういうことで唯一無比のものなんですけれども、それが複製品で見ている。だから現物見ても複製品をみているような感じがするというそういうような結果になってしまっているところがあるかもしれません。山中委員何かございませんか。

山中委員

既にいい複製を活用されてきているわけですから、もう複製を展示に活用することはそんなに問題はないのではないかと思うんですけれど。もちろんこの館あるいはこの地域内にない、そしてしかも堺の遺跡あるいは遺物と関連するものを、優れた品物を見られるということですから、もうそれは当然されていいと私は思います。そしてまた技術的にも相当精度がよいものになっているのではないかと思いますので、ほとんど私なんかも、実物と複製の区別が見ただけでは区別がつかないことが多いような感じがするほどです。ちょっと問題が違うのかもわかりませんけど、その複製をつくられるときに、現所蔵者からの許可とかあるいは、許可された以後の展示の仕方とか、そういうことについては一定の条件、あるいは料金の発生ということはあるかもしれませんけども、そういうことも当然あるわけですね。そういうことについては何か今まで複製を作ることに関しての問題というのはありませんでしたか。全く気軽にオッケーが出るもんですか。ただし仏像とかそういうものなんかは、そう簡単にできるようには思わないんですけどね。ちょっとそこらへん聞かしていただければ。

増田課長

私が考古学なもので、私の知っている範囲内でそのあたりの複製品を作ることでそのような難しい点というのがあったという記憶は今のところないんですけれども。いかがでしょうかほかの方何かないでしょうか。一応、すべて許可をいただいて複製品を作って展示するという形、最初の許可をいただければ、あとはもうそこから新たなトラブルが発生するということは今のところないかと思っております。

中村会長

一点だけ。和歌山県立博物館が、和歌山の県立高等学校とタイアップして3Dプリンタで復元をして、現物の資料を完全に復元をして、そして、元の寺に復元したものをおいて、現物は和歌山県立博物館に寄託してもらう。そういう要するに盗難防止ですね。そのために使っているケースというのはありますね。

山中委員

はいよくわかりました。そういうことで問題がないというのであれば、館として必要なものは積極的に取り上げていただくのがいいのではないかと、私は感じます。

中村会長

どうもありがとうございました。吉川委員は何かございませんか。

吉川委員

複製に関してなんですけども、確かに厳密に複製品とほんまもんとでは同じものはできないので、見たときにずいぶん違うなあというのは、本物を見たときにすごく思うことなんですけれども。ここで言われている複製品は特に、私は今、小学校にいてますので、子どもたちがみるという意味においては、複製品でいいので、たくさんいいのを身近で見せていただいたらいいです。または触らせていただいたりすることはすごく意味があるのではないのかなあという風に思います。堺には様々な文化があって、歴史的なものもたくさんありますので、それを触れたりできるのは、すごくいいことではないのかなあと、堺市博物館だからこそ、できることではないのかなあという風に思います。今年はコロナのことで、非常に学校も子どもたちを外へ出すことがなかなかできなくて、本校も今年はここには寄せていただく予定がないのです。出る機会がすごく少なくて、来た時にはたくさんいろんなものを見て帰りたいなあと、いう風に子どもたちも思っていますので、こちらで考えていただいて、今ないものでもっと見せてあげたらいいなと、思うようなものを出していただいたら嬉しいと思います。

中村会長

ありがとうございました。土橋委員、何かございませんか。

土橋委員

博物館の役割として、貴重な資料をきちんと保管される。さらには活用するということを考えますと、やはり貴重なものであるがゆえに、いろんな展示をすることによって 例えば劣化であるとか来館者が直接手に触れることができないとか、あるいは今回ご説明があったように、ここにはないけどもやっぱり展示のなかで、他からいつも借りてくるわけにはいかないので複製を代りに展示される趣旨であれば、当然、保存と活用という所を考えますとやはり、複製というのもやはり必要な資料の一つ、やり方ではないかと思うので、特に問題はないと思います。さらに展示するための複製だけではなくて、もちろん来ていただくというのがまず一番求められていることだと思うんですけれど、さらに、特に学校関係、こどもたちがここにはなかなか普段来られなくても、レプリカを作ることによって、キットみたいな教材があって学校の授業の中で、それが実物大かどうかはわかりませんが、そういう出前授業で使うための作品というのもやはりレプリカでないと、外に持っていくわけにはいきませんので、そういったレプリカの活用方法も考えていただけたらいいのではないかなと思います。専門外のことでよくわからないのですけれど、例えば土器の破片なので全体像はよくわからないので、補修されて本来はこういう形ですというのはよく見ますので、やはり、展示を全体として理解を深めるためにはレプリカも本当に必要な資料ではないかなと思います。以上です。

中村会長

ありがとうございます。岩間委員なにかございませんか。

岩間副会長

今先生いわれたように、歴史の流れをちゃんと理解するには、やはりどうしてもレプリカが必要かなと思います。今後、やはり世界遺産ということもありますし、リニューアルをして注目を浴びるとやはり古墳なんかについて知ることのできる情報センター的なことが、堺市博は期待されると思うんですね。基本的な古代の歴史を理解できる場所として、やはりいろんな今堺市博にないものを補って、ちゃんと歴史の流れがつかめるようにするという意味では、やはりレプリカは非常に必要だと思います。もう一つレプリカのいい点として、さっき大塚美術館のことをあげられましたけれども、私もあれは陶板だしなあと思っていたのですけれど、行った方がみんなよかったよかったといっていました。あれはやっぱり空間を体感できるのがすごく大きいと思います。例えばそれこそ石室に入れるとか、そういう疑似体験が可能なそういうレプリカを考えていったらいいのではないかと思います。あとは実物と同じ材料を使って同じ技法でつくる。例えば銅鐸を鳴らしてこんな音がするんだとかいうようなことをみんなに体感してもらうことができます。そうしたレプリカは製作の技術を研究したり、詳細に資料を観察する意味でも非常に有効な研究課程じゃないかと思います。

中村会長

どうもありがとうございました。ご意見を伺っていますと、複製に関しては特に違和感がない。特に複製を多用してもいいから歴史の流れをつかめるようにしていった方がいいんじゃないか。あるいは地域に即したものが作れるのであればそれはそれでいいんじゃないか。あるいは原寸大というものにこだわっていくのがいいんじゃないかという、そういう意見が出ました。そのほかに何かご意見ございませんか。今ほかの委員の方々のご意見を伺ったうえで、複製資料に関する、コピーだから悪いとかいうことはないんだとおっしゃってました。そういうことも含めて何か追加のご意見ございませんでしょうか谷委員。

谷委員

今複製資料、レプリカについて議論がなされているわけですが、その対象の殆どが考古資料をイメージされているんではないかと思うんですね。しかし、博物館は多様なものがありますから、所蔵品は考古資料だけに限らず美術品、美術工芸品であるとか、文書であるとかあるいは仏像であるとか様々なモノがあるわけですが、美術工芸品に限って言いますと、一つは技術的になかなか完全なレプリカは製作することはむつかしい、という状況があるわけです。絵画は比較的できやすいのですが、焼物ですとか漆工品、漆のものを正確に複製することはかなりむつかしい。そこで、3Dプリンタで複製品をつくるという技術も最近は進んできていますが、これはまだやはり原物とはかなり隔たりがあるわけです。ただし私どもの経験から言いますと3Dの複製品を作ったことで、それまでわからなかったこと、具体的には補修の痕がはっきり出てきてわかったということがありますので、決して無駄ではありませんし、ある程度進めたらいいと思います。それともう一つ美術工芸品の場合は、所蔵者の問題が確実に絡まってくるわけです。めったに許可は出さないのではないかと思います。美術工芸品については。むしろ貸し借りにしても実物の貸し借りが中心であってレプリカの貸し借りというのは、少なくとも私の経験でいう限りでは全くない。ですからそういった分野ごとにおける特性、レプリカというものの意味というのが異なってくるんだということも認識されておいた方がいいのではないかなというような気がいたします。

中村会長

ありがとうございました。森委員。

森委員

今、色々な映像で絵画にしてもいろいろな焼物にしても、その時代背景や素材だとかそういうものを掘り下げて、それができたバックグラウンドを示すような映像で体験できるというようなものも、NHKなんかでよく放映されていると思うんですけれども、歴史に限らず人体のことですとかそういう映像の何か資料もモノと一緒に見られるようになっていれば、一瞬で見て終わるというものではなくてバックグラウンドも知るということを考えると映像を使いながら、複製品であってもできた過程を知ることができるのではないかと感じました。

中村会長

ありがとうございました。山中委員何か追加でございませんか。

山中委員

先ほど谷先生がおっしゃられたように、考古に限らず美術工芸あるいは古文書にも手を広げてほしいというのは確かにあります。ひとつはどれくらいの費用が掛かるのか、ちょっと気になるんですけども。まあ対象によってずいぶん違いがあるのではないかと思うんです。それと、複製の質ですね、これは様々な程度があるのではないかと、3Dでやる、というのはかなり低コストのやり方のように思う。そういうものでいいのかどうか。ここでめざしておられる複製というものが、どの程度のレベルの複製をめざしておられるのかということについてお聞きしたいですけどね。それとコストの面もできればということです。

増田課長

今回提案させていただいている複製資料に関しては基本的にはいわゆる復元であったりするものではなく実物資料をそのまま、原資料とほとんど見た目で見分けがつかないようなものを製作する複製を考えております。考古資料の中では実際、一部分がなくなってしまっておったり、とか本来は一つであったけれども、現時点では二つに分かれてしまっている、そういったものを一体化させてひとつのもともとの完全な形にして複製するといったものもございますけれども、基本的には実物資料と見た目殆ど見分けがつかないといった複製を考えておるものです。

山中委員

複製の場合、難しいのは材質なんですね。紙にしてもものすごい。本当に実物そっくりということになれば、大変な問題になってしまいますし、そこらへんは見てわからない、区別がつかないという程度のモノであれば、埴輪にしてもあるいは金属器にしても、材質そのものまで複製あるいはそっくりなものにする必要は、やはり複製の場合はあるということでしょうか。

増田課長

基本的に考古資料などは、樹脂を使って複製品を作りまして。触れば、持てばわかる程度の、見た目はほとんどわからないといった形にはできると思います。

山中委員

金属品でもそうなんですか。

増田課長

そうですね。金属製品も樹脂で作ることが多いですね。

山中委員

わかりました。技術が向上しているからそれが可能なんだろうと私も思います。

中村会長

花崗岩の石碑なんかも実際に樹脂で作っています。ぽんぽんと触るとわかりますけれど、触らない限り質感はわかりません。埴輪にしても弥生土器にしても、質感は見た目は全然遜色ない状態になります。ただ、値段によって違いが出ますんで。増田さんどのくらいの値段のものを考えておられるんですか。

増田課長

見積とか実際やられる業者さんに聞くと、なかなかの金額ですね。埴輪一体でも大型のものですと500万円、600万円とかはよくある話ですので、かなりの金額にはなると思います。

中村会長

ありがとうございました。吉川委員、お願いします。

吉川委員

展示のための複製資料をたくさん用意していくことはいいこと。私も今改めていろんなご意見を聞きながら、そういう意味での複製資料が増えることはすごく素晴らしいなと思います。先ほど自分がちょっと言わしていただいたのは、もう少しなんていいますか、子ども目線で行くと、そういうのも素晴らしいんだけれども、そこにおいていただいて触れるような複製品でありますとか、貸し出していただけるような複製品であるとか、そういうものもあればいいのかなあと。まあ既にこの博物館の中にはそういうものも存在するんですけれども、よりありがたいのかなあ。同じ堺市の小学校が最近借りてよかったなあと思ったのは、ミュシャの複製の絵をミュシャ館が作っているんですね。それを多ければ7・8枚貸し出していただけるんですよ。それを教室の中において、子どもたちがこれは春を表しているよねとか、夏の絵だねとか秋の絵だねと、じっくりそばで見ながら鑑賞していくような授業をしている。図工の授業ではしたりするんですね。複製資料という意味ではよりほんまもんに近いものを子どもたちが見て触って学習するという意味で充実していただいたらいいかなあという風に思ったりしています。以上です。

中村会長

ありがとうございました。よりポピュラーな資料ということですね。土橋委員。

土橋委員

いただいている資料の中に、既に作られているもののリストの中に、視覚障がい者向け模型という仁徳天皇陵古墳模型ということで、あげていただいているんですけれども、何かこの視覚障がい者向け模型を作ることになられた経緯とかみたいなことをちょっと教えていただけたらと思います。多様な方が博物館に親しんでいただけたらいいのかなあと思うので、視覚障害のある方に対しても、このサポートといいますか、今後複製だけではないと思うんですけれども、何か考えておられるかもしれないので、既に視覚障がい者用模型というのを作ってらっしゃるので、これを作られることになった経緯を、教えていただければありがたいです。

増田課長

視覚障がい者の方には実際に触っていただいて、その展示の解説を付けたものもございまして、今、常時展示しているものは、仁徳天皇陵古墳のものが休憩コーナーのところにある一つだけなんですけれども、私がこちらに来るよりだいぶ前の段階の製作なので、詳しい経過はわからないのですけれど、実際視覚障がい者の方に来ていただいた時に対応できるようにということでそういったものをこれ以外にも数点作ったと思っております。実際に視覚障がい者の方が来られて観覧される場合もあるわけですが、そういう時はだいたい横にサポートされる方がついて来られて、触れなくても今こういうものが展示してあって、これがどのくらいの大きさで、このようなものですよと、お伝えしているのをずっとお聞きになっておられます。そしてこういったものをほかにも実際に触っていただくんですけれども、本当に丁寧に、いろんなことを吸収されるように丁寧に触っていただきながら、見られて非常に好評を得ているのかなと感じております。そういった機会も実際には少ないのは確かです。こういったことも充実していければなあという風には考えています。

中村会長

どうもありがとうございました。岩間委員。

岩間副会長

今後作る予定の複製資料には以下のものがあるということで、考古資料の中には大塚山古墳の甲冑があります。これは個人蔵ですか。

増田課長

現在こちらの博物館蔵になっております。

岩間副会長

そうですか。歴民博所蔵の前田青邨の画帖というのは、どういう状況のものを作る予定でしょうか。

橘学芸員

国立歴史民俗博物館のなかに前田青邨のスケッチ帳がありまして、その中に当市の七観山古墳の甲冑とか黒姫山古墳の冑とかそういうものを選んで描かれた絵というものが残っています。なかなかないような資料なので、こちらでも展示はしてみたいなあと思っているところです。

岩間副会長

写真パネルではなくて本当に画帖みたいな形にされるんですか。

橘学芸員

結構、何ページかにわたっているようなものなので、それも併せてできたらいいなあと思っています。

岩間副会長

常設展に利用されるのですか。

橘学芸員

できたらと思います。

岩間副会長

その次に歴史資料の方でも井上家文書、和田家文書がありますが。全体像をちょっと存じ上げないのですけれども。どんなふうに展示されるのでしょうか。紙のものですか。

渋谷学芸員

そこにあげさせていただいておりますものですね。上の方は寄託品でお預かりしているものですが、先ほども話がございましたように、長期展示がなかなかむつかしいということで、巻物になっている中の一通を精巧な複製を作らせていただいて常設の中で特にこの地域の状況を知るために、大事なものをいくつかセレクトさせていただいて、常設展示の中で活かしていければというようなことでございます。下の方の井上家文書につきましても、ご存知のように鉄砲鍛冶屋敷の井上家の文書でありまして、今文化財課の方で調査の途中なんですが、令和5年に鉄砲鍛冶屋敷が整備されてオープンしますので、それに向けていつもこちらも出すというような状況にはならないけども、新しく近世の常設のストーリーなんかも変わってくると思われますので、井上家の文書の中からもいくつか複製を作れないかなという風に考えて出させていただいたものです。

岩間副会長

わかりました。歴史資料とか先ほども申しましたように流れがわかるような展示もやはり必要かなと思っています。ただ、言われたように美術の資料は、本当に土佐派とか案外安く出るのではないかなあと、ちょっとわからないんですけれども、まあ本物のディテールに似ている事があればいいなという風に考えております。ありがとうございます。

中村会長

どうもありがとうございました。全体の意見としては、レプリカそのものに対しては、考古資料に関しては一定の評価があるということで、それを作っていった方がいいかなあと。ただ美術工芸品に関しては、まだいまいち問題があると、いうことだろうと思います。ただ、こういう世界は日進月歩ですから、まだ我々がわからないところもあると思いますので、その点のところは今後に期待したいと思います。今ほぼ意見が出尽くしたように思いますけども、まだ何か言い足らないところ、各委員の中でございましたらお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。一応まとめということなんでしょうけども、全体として、堺の資料に限って復元をしていくのがいいのではないか、ということですね。それと、原資料に近いものでやはり復元をする必要があるのではないか。フェイク資料というのはやはりまずいのではないか、ということだと思います。ただ、吉川委員がおっしゃられるには、複製品でも子どもたちの感動を得られるものがあるので、できるだけ多くのものを作ってほしいと。それから出前授業についてもそういうものを活用してほしいということですね。文化庁の方針が、保存活用ということに重点がおかれています。特に活用という問題が出てきていますので、そういう意味からすると、レプリカによる活用もありかなと思います。堺市博物館として、どういうレプリカを集めていくんだという基本方針ですね。それをやはりしっかりしていってもらいたいという風に希望します。特にレプリカ1点を作る費用は膨大な額になりますのでその点のところは、ただ思いついてコレコレというのではなくて、一貫した収集というか、レプリカの収集というのを含めて、一貫した内容の充実というものを図っていただきたいと思います。ほかに委員から何かございますでしょうか。それでは博物館における複製資料のあり方についての議論、というのはこのあたりにしたいと思います。それから、その他というものがございます。この際なので何か言っておきたいこと、博物館のあり方、あるいは方針について言っておきたいことがございましたら、委員の方からお願いできませんでしょうか。

その他

中村会長

その他について何か意見はございませんでしょうか。森委員、何かございませんか。

森委員

博物館には何がある?というこのチラシ、非常に私気に入ってまして。何があるの、という問いかけのキャッチコピーというのは、興味をそそるので。ただコロナがあったので、来館数は少なかったかもしれないんですけど、チラシだとかコマーシャルベースのものは、行きたいという気持ちを引き出さないとだめなので、同じものであっても行きたいと思う、人を惹きつけるような言葉のニュアンスで力がパワーアップするというように思っています。金色も使ってあるので広告代は高かったと思いますけれど。でもそれなりの効果は今後見込めると思いますので、チラシ製作には期待しています。が、今のところは三つに分類できるのではないかと思うのです。ひとつは紹介型というようなもので、美術館の紹介であるとか、あるいは展覧会の紹介、あるいはすでに実施されているようですが、館長による所蔵品の紹介とかそういったものがあるわけですね。それから、講座などに参加していただく、シンポジウムなんかの話も出ていましたけれど、美術館、博物館主催の講座に、こちらへ来てもらうのではなくて、自宅なりどこかなりで参加してもらうという方法があるのではないかと思うのです。もうひとつは参加型でオンラインを通じていろいろなことをやってみる。ここでは、勾玉を作ろうということで、努力をされていると思うんですが。参加する場合、無料の場合は関係ないのですが、ユーチューブなどにして、勝手に見てくださいというのであれば問題ないのですが、有料講座ですと、オンラインといえどもやはり料金の徴収が必要になるのではないかと思うんですが、そのへん、参加型のものについても同じですが、そういった料金の徴収、課金ということ、あるいはその方法についてはどのように考えているのでしょうか。

増田課長

こういったオンライン関係ですね。まずひとえに当館といいますか、堺市全体にいえるかもしれませんけれども、まだまだこのオンラインというか、こういったものを使えるハード的なものが整備されておりませんので、実際ここで講座をやっているものを同時中継するとなると、我々の手では全く何もできなくてですね、すべてハード的な面から揃えないといけないので、今のところは紹介型のみでしかできていないというのが現実でございます。それ以降のことはまだまだこれからの課題かなあという風に考えております。以上でございます。

谷委員

ハードの面で難点がある、ハードルがあるとおっしゃいましたけれど、利用の仕方によってはスマートフォンなんかでも十分対応できることがあるのではないかと思うんですね。最初から大掛かりな機材をそろえなくても手持ちのカメラの動画機能を使うとか、iPhoneを使うとかそういったことで、やっていける方法もあるのではないかと思う。これは私どもも課題になっているのですが、そういうことをまたお考えになってまた実行され、そしていいことがあれば教えていただきたいと思うわけです。

増田課長

そうですね。なかなかやっていけないというような状況ですので、非常にコロナによってこういったオンラインが必要ということでやっておりますけれども、コロナが収束すればもう何もしなくていいのかというと、そうではなくて、実際これは非常に有効であるという面が多分にありましたので、今後考えていかないといけない、そこで止まっている状況です。このことは皆でこれから考えていかないといけないなあ、という状況で今はとどまっている状況です。

谷委員

紹介型のものは、いくばくかされているということですが、そのフォロアーは統計はとっておられますか。

増田課長

ユーチューブなどでの視聴数だけしか認識していないという状況です。

谷委員

ユーチューブに出されたのであれば、どのくらいの視聴者数がカウントされているのですか。したものでいちばん最初にアップしたものですので、1500回ほどの再生回数になっています。常設展ですけれどもこれはだいたい850回くらいの再生回数です。体験学習につきましては、つい最近アップしたということもございまして、一般的な体験をしない人は視聴しないと思いますが200回くらいです。だいたい数百回くらいは再生されているなあということです。実はこれことしの5月に市全体でいろんな館が休館しておりまして、その間でも博物館では展示とか、ほかにもいろいろな施設もありますので、やはり動画で楽しんでいただきたいとの趣旨で、市全体の中で取り組みを進めたところがあります。そういうことで始めたわけですけれども。やはりこういう状況の中で、なかなか遠方からは来ていただけない状況もありますし、やはりそのあたりの先ほど課長も申し上げましたけれども、そういう状況の中で最初から計画していたものではなくてですね、何とかこの状況の中で取り組みが必要じゃないかということで始めた部分がありますので、そういうなかで手持ちの機材の中で手作りでやっておりますので、今後どういう形でさきほどご提案いただきました様々な講座ということも含めてですねやっていくべきか、今後検討してまいります。

谷委員

もうひとつお尋ねしたいのですが、私どもがそういうのに取り組んでいて、展覧会の様子を、ユーチューブなんかで流すと、それだけで見たことにしていいのではないかと、言って、来館者数が減るのではないかという、そんな意見があるのですが、そのへんはどうお考えなんですか。

岩本副館長

確かにそういうご意見はあると思います。見せ方で逆により実際見に来ていただくためのきっかけになるかなあということも考えておりまして、やはり予告編としてすべては見せない、さわりだけ見せて、あとは実際来て実物を見ていただくという見せ方を考えることによってある程度今おっしゃった様な課題には対応できるのではないかと思っております。

谷委員

ありがとうございました。

中村会長

ほかにございませんようですので、最後に谷委員からオンラインの問題が出ておりました。そのへんのところ今後とも検討の余地があると思いますのでよろしくお願いします。では、事務局の方にお返しします。

閉会あいさつ

司会

委員の先生方、長時間にわたるご議論まことにありがとうございました。本日委員の先生方からいただきましたご意見やご提案を踏まえまして、堺市博物館の今後のあり方や事務局としましてはより良い方向へ進めて参りたいと、様々な点で活かしてまいりたいと思っております。閉会にあたりまして須藤館長よりお礼のご挨拶を申し上げます。

須藤館長

今日はいろいろありがとうございました。特に堺市博物館における複製品のあり方について、非常に幅広いご意見をいただけました。考古資料を中心に考えておりましたけれどもそのほかに美術工芸、文書類、あるいはその他の仏像に関してもいろんな問題点を指摘されました。今日問題を皆さんにお願いしましたのは、博物館の建て替え構想というのが出ていまして、10年後に新しい博物館をつくるという話なんです。今は3月オープンに向けて、リニューアルもやっています。そういう状況で、世界遺産になったということもありまして、この博物館がどんな役割を担っているかということを考えた場合、やはり本博物館は古墳文化のセンター、先ほど岩間委員が言われましたけれども、として機能しなきゃいけない、その役割を持っていると思います。すなわち仁徳天皇陵古墳を中心としたこの辺の百舌鳥の古墳の構成要素、ないしはその中身とは何なのかということを来た人に情報を提供するとともに情報センターとして国内外に情報を発信するような、そういう役割をこの博物館が持っているのだと思うんです。ところが、リニューアルを進めていますと、この博物館が収蔵している出土品というのは非常に少ないのです。考古資料の破片なんです。これを展示しても来た方々は、ワクワクドキドキしてわあ古墳時代の人々の生活がこうだったのか、ということを自分で見て、さらに新たに自分でイメージをふくらませるといった展示をすることが今のモノでは不可能だということに気が付きました。従いまして私たちが来た人に提示できる古墳文化とはどんなものだったのかということを、できるだけ複製品で、すなわちその同時代の百舌鳥にないものでも、周辺のところで同時代のものがあればそういうものを参考にして、堺市博物館なりの古墳文化像を展示によって表現する。新博物館は10年先ですから、10年先をめざして予算に限定されますので、毎年毎年、基本方針に従って何点かを複製していく、それと同時に古墳に限らず歴史にしろあるいは美術にしろ、そういう分野においても必要なものは複製品を作っていく、そういう方向で臨みたいと思っています。今日のお話しを聞きまして、複製品なんてにせものだと、本物が泣くと、人々が感心しないということはないので複製品でもって、特に子どもたちに触ってもらえるものを作らないといけないと思うのです。樹脂だとだめだということですが、そんな大きなものではなくても、触ってみて五感で、あああの頃の容器はこうであって、埴輪はこうであって、あるいは金属製品の手斧はこんなものでこうであったことをわかってもらえるような展示を、触れる展示、ハンズオンの展示は、これからの博物館はやらなきゃいけないと思いますので、そのへんを含めて複製品にもいろいろなバリエーションがあるものを作ってできるだけ中身を豊かにしていきたい。そういうことを考えております。今日は本当にいろいろなご意見をありがとうございました。これを参考に基本方針を作っていきたいと思います。

司会

ありがとうございました。なお、本年度第2回の協議会は年明けの2月ころを予定しております。改めまして事務局より、先生方の日程調整をさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。ただ今開催中の企画展博物館には何がある?part2ですが、お時間の許す先生方におかれましては、ぜひともご観覧賜わりたく存じます。本日は誠にありがとうございました。

このページの作成担当

文化観光局 歴史遺産活用部 博物館 学芸課

電話番号:072-245-6201

ファクス:072-245-6263

〒590-0802 堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 大仙公園内 堺市博物館

このページの作成担当にメールを送る
本文ここまで