株式会社カネシゲ刃物 | 企業の取組事例集
更新日:2025年11月10日
「いつかは働きたい」と考えていても、子育てなど家庭と仕事の両立が難しいと感じている女性は少なくありません。
堺市では、女性をはじめ、すべての人が自分らしく働き続けられる社会の実現をめざしています。働きたいという希望を持ちながら求職活動に至っていない女性、いわゆる「潜在求職者」の就労に向けた支援を実施し、堺市における女性の就業率の向上をめざし、女性活躍推進と中小企業の人材確保に取り組んでいます。
女性が活躍できる社会にするうえでは、企業の「女性の雇用促進の取組」も欠かせません。実際に、多くの企業が女性が働きやすく活躍できる職場環境整備をめざし、さまざまな取組をおこなっています。
今回は、堺区に本社がある株式会社カネシゲ刃物にお話を伺いました。
同社は、堺から世界へ、オリジナルの包丁を届ける打刃物の製造・販売会社です。100 年近い歴史を持つ同社の特徴は、世界にも負けない技術力があること。そして、「私たちが本当に良いと思えるものを届けたい」という想いで製造・開発を行っていることも、同社の特徴の一つです。そんな同社には、国内にとどまらず、世界中にファンがいるそう。
では、国内のみならず世界で活躍する同社では、女性の雇用促進のためにどのような取組をおこなっているのでしょうか。代表取締役社長・河村幸祐さん、従業員の西場奈津子さんに、どのような想いで取り組んでいるのか、今後どのような企業にしたいかなどをお伺いしました。
「子育てや家事との両立をしながらも働きやすい企業があるのか知りたい」という方、「女性雇用促進のために取り組むべきことがわからない」という企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください!
株式会社 カネシゲ刃物
所在地 堺市堺区甲斐町東 4-3-26
事業内容 各種包丁、利器類の製造・販売
ホームページ https://konosuke-sakai.com/(外部リンク)
女性の雇用促進のために取り組んでいること
― 河村さん
弊社で大切にしているのは、「丁寧なものづくり」です。同じ包丁でも、想いを込めて丁寧に組み立てるか、適当に組み立てるかで仕上がりがまったく異なります。「丁寧なものづくり」を進めるにあたって、女性も向いている仕事なのではないかと女性の採用を積極的に行い、現在は男女比が同程度となっています。
女性の雇用促進の取組内容はさまざまですが、例えば、有給休暇は前日でも当日でも申請すれば必ず承認。急な予定変更にも、安心して対応できる環境です。また、「金曜日はお休みにして土曜日に働きたい」といった場合にも、柔軟に勤務時間の振り替えに対応しています。働く時間や曜日を、自分のライフスタイルに合わせて調整できるので、仕事とプライベートのバランスがとりやすくなっています。
また、在宅勤務にも対応しています。例えば「こどもが急に熱を出してしまったので、自宅で取り組みたい」場合。いつでも在宅勤務できる、という環境を整えていますね。
もちろん、時短勤務も可能です。ライフステージの変化や家庭の事情に合わせて、無理なく続けられる働き方を選べるようにしています。
女性の雇用促進に取り組んだきっかけは、「企業あるある」なすべての“理不尽”を排除して、全ての人が働きやすい環境をつくりたかったから
― 河村さん
私が女性の雇用促進の取組を進めようと思ったきっかけは、前職で会社員として働いていた時、「理不尽だ!」と感じることがあったからなんです。取得できる権利のある有給休暇が取れなかったり、仕事は終わっているのに帰りにくい雰囲気があり残業したり…。働きやすい環境ならもっと頑張れるのに、「今までの環境がこうだったから」「私はこうやって働いていたから」と、環境を改善しないんですよね。今、私は働く環境を作る立場です。絶対にすべての理不尽を排除しよう!と、ストレスなく働ける会社をめざし、さまざまな取組を行っています。
また、取引先のお客様が柔軟に対応してくれることも、女性が働きやすい環境が実現できている要因の一つです。長くお付き合いのあるお客様は「丁寧なものづくり」を心掛けている弊社の考えや価値観を理解してくれる方が多いんです。また、海外出荷が主で、到着に要する日数に変動があることから、納期に一定の余裕があります。
これらの 2 つのことから、「休んでも誰かが補完しなくてもいい」「自分の裁量・ペースで進めてくれたらいい」という環境が生まれ、女性の雇用促進の取組を確実に進められているのだと思います。
働きやすいが「当たり前に」|改善シートの活用で意見が言いやすくなる
― 河村さん
女性の雇用促進に取り組んだ結果、全ての人が働きやすい環境が「当たり前」になりました。小さなことから大きなことまで、さまざまな取組を行ってきましたが、これまで従業員から制度に対する不満の声はありません。従業員が友人に会社のことを話したら、「“そんな制度があるの!?」”と働きやすさに驚いていたという声をいただいています。
不満の声は聞かなくても、直接は伝えられない意見を抱えているかもしれないと思い、1か月に 1 度、会社の改善すべき点をシートに書いて提出してもらっています。直接言うほどでもないし、細かなことまで提案するのは気が引ける…、という方も多いみたいで、シートであれば意見や問題点を伝えやすいのではないかと考えました。
シートには、現場で働く従業員だからこその目線で、私が気づけなかった問題点を書いてくれることが多いです。
― 西場さん
私は靴箱に関することを書きました。今まで下足を入れる場所にスリッパを入れていたんですが、不衛生だなと思ったんですよね。言うほどでもないか…と思っていたんですが、シートがあったからこそ意見を伝えることができました。
― 河村さん
また、月に 1 度のシート提出に加え、4 か月に 1 度、1 対 1 の面談をおこなっています。事業運営のセミナーや書籍で勉強して、4 か月に 1 度の面談の実施がベスト!ということを学んで面談をするようになりました。面談では、従業員が普段考えていることや困っていることをたずねます。直接言葉をかわすことで、「あの従業員はこう思っているんじゃないか」という想像ではなく、「この従業員はこう思っている」という事実がわかります。気づかなかった意見が見つかるので、私にとって非常に良い時間です。
普段から話しやすい雰囲気や意見を言いやすい風通しの良さを意識した取組をしていることもあるのか、従業員も素直な気持ちを伝えてくれます。少しでも抱えていたモヤモヤがスッキリして、働きやすさを感じてくれていたら嬉しいですね。
いただいた意見や問題点は、すぐに改善するか判断するように心がけています。代表と言う立場なので、弊社の方針などによって改善すべきかそうでないかは判断しなければならないのですが、現時点では意見や問題点のほとんどを改善できています。
私の方針やめざしていることを理解してくれている人が多く、「めざす方向に進むには確かに改善しなければならないな」という意見ばかりなんです。皆さん前向きに提案してくれるので、本当にありがたいなと思います。
また、フィードバックをタイムリーに行うことも心がけています。書いても改善されなかったりフィードバックがないと、書く意味がないと思ってしまうじゃないですか。そのため、提案してくれた意見や問題点をどのように解決するのか考えて、すぐに導入するようにしています。
いつかは働きたいママの就活部「マミクリさかい」に参加した感想
― 河村さん
以前、堺市と株式会社マミー・クリスタルの協働プロジェクト「マミクリさかい」に参加させていただきました。具体的には、いつか働きたいママと企業をマッチングする「おしゃべり交流会」、実際に弊社に来ていただき、仕事風景を見てもらう「企業見学ツアー」の 2 つです。
印象的だったのが、私の話を本当に真剣に聞いてくれたことです。会社を運営する中で大切にしているポリシーや、女性雇用促進のための取組内容について話すと、「すごくよく考えて取り組まれているんですね」という雰囲気で聞いてくれたんですよね。
私自身の中で「こういう風にしていったらいいんじゃないか」というふんわりした方向性が間違っていなかったんだと自信につながりました。また、頭の中の考えを整理できたこともよかったですし、良い機会だったなと思います。
2 つのイベントに参加後、一人の男性が入社してくれたんですが、なんとイベントに参加してくれた女性のご主人様だったんですよ。「社長は従業員の意見をたくさん聞いてくれる人だよ」「良い会社だから、安心して送り出せる」と言ってくれたみたいで(笑)。弊社の取組は、女性だけでなく、全ての人が働きやすい環境になります。それが体現できたような気がして、本当に嬉しかったですね。
カネシゲ刃物で働く現役ママ・西場奈津子さんに聞く、子育てしながら働くということ
― 西場さん
私は、2 人のこどもを育てながら働いています。「仕事と子育ての両立、意外とできてる!」と思っていたら、いきなり体調を崩してしまったことがありました。倦怠感というか、もう今日は動けない…という状態で。
私に限らず、仕事や子育てで楽しさを感じていても、心身ともにストレスを抱え、でも、職場の人に迷惑をかけるのはよくない…と休めない方も多いと思うんですよね。
でも、先ほど河村からもあった通り、「休める会社」なんです。前日や当日の申告でも有給休暇は取れますし、時短勤務にも対応しています。仕事も子育ても無理せず働けるのがカネシゲ刃物だと感じています。
今仕事と子育ての両立にしんどい思いをしている方も、今後両立が不安な方にも、「女性が働きやすい会社は必ずある」ということを伝えたいです。
「現状維持は衰退」
― 河村さん
今後も、「丁寧なものづくり」を大切に着実に実行していきます。今、日本の包丁は世界中でブームが起きているんですよ。会社の成長のためには、売りやすいものを作って多く販売することがいいんだと思いますけど、私たちはその方向には進みません。技術のある職人が手間をかけて時間をかけて丁寧につくった価値あるものを世界に届ける、このことをずっと続けていきます。
このような会社であり続けるためには、従業員の力が欠かせません。現在の女性雇用促進の取組を続けていくことはもちろん、移ろい変わる社会でのさまざまな価値観の情報をキャッチして常に変化していきたいと考えています。「現状維持は衰退」。従業員にもお客様にも選ばれるような会社をめざし、進んでいきます。
子育てや家事との両立をしながら働きたくても不安を感じている方に伝えたいのは、絶対に働きやすい会社はあるということです。中には子育て中なら採用しない、なんて会社もあるかもしれません。就職活動をして、「子育てや家事をしながら働くのは難しい会社かもしれないけど、採用してくれるなら…」と妥協の気持ちで就職を決めてしまう方もいるかもしれません。でも、女性が働きやすい制度や環境のある会社は必ずあります。大変だとは思いますが、自分に合う職場を探してほしいなと思います。自分に合う働きやすい会社なら、子育てや家事と両立して、きっと楽しく、自分らしく働けると思いますよ。
お話をお伺いして印象的だったのが、女性を含め、すべての人が働きやすい会社にすることが「当たり前」だと考えていらっしゃることでした。
従業員の皆さんの声を形にすることは、きっと簡単ではありません。その中で働く環境の改善を進められるのは、河村さんが「現状維持は衰退」と考え、社会と、会社と、そして従業員の皆さんに日々向き合われているからではないでしょうか。
河村さん、西場さん、素敵なお話をありがとうございました!
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