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(2022年3月3日)堺能楽会館とちいさな旅

更新日:2022年4月13日

南海電車の堺駅を降りて、ホテル側に出て

周辺を歩くと、

ふわっと、風のにおいが違う。

 

旅の、

におい。

 

そこに能舞台があるとは思えない7階建のビル。

そのなかにある総檜造の堺能楽会館に

はじめて訪れたとき、

舞台の奥の青々しい松の絵にこころを奪われた。

 

浜松の若い松を写生してきて

描かれたそうだ。

 

触れば、指の腹を柔らかく刺激しそうな松葉。

それが描かれたものであることを忘れそうな。

 

この舞台では、さまざまな芸能や芸術が

繰り広げられている。

50年前に堺能楽会館をつくられた女性の

「これからは、能の幽玄の世界で酔っていただきたい」と

おっしゃったことばが息づいている。

 

能楽会館からの帰り道。

とっぷりと暮れた橋を渡る。

 

その時、じっと立っている人の

その姿勢に目が止まった。

 

ゆったりと流れる川を眺めている。

コロナ禍でなければ、観光船がゆくのだろう。

 

その人はじっと動かない。

銅像と気づくのに

時間がかかったのは、夜の帳のせいでもあり、

能舞台でみた歌や踊りの余韻のせいだろうか。

 

異国の衣装を着た旅人は

山のほうを見ながら、ふるさとを想っているのか、

堺の人々の暮らしをみつめているのか、

すこし湿った風が通りぬけてゆく。

 

ちいさな旅の気持ちが灯る。

まだコロナ禍で、移動は憚れるなかで、

身近な堺を歩いてみたい。

2022年3月3日


プログラム・ディレクター 上田假奈代

このページの作成担当

文化観光局 文化国際部 文化課

電話番号:072-228-7143

ファクス:072-228-8174

〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館6階

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