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(2025年4月30日)声を聴く

更新日:2025年5月14日

さくらを待ち望んでいたのに、
いつのまにか新緑の風が吹いています。

 
あたらしい場であたらしい日常がはじまった人もいるでしょう。
あまり変わらない日常がつづいている人もいることでしょう。
あたらしさにもすこし慣れた気持ちもあるし、緊張感もまだあるでしょうか。
不安もいりまじって、出会いの予感のような気持ちは細胞を活性化するように思います。

 
ところで、知らない人と黙っていっしょにいると、ぎこちない気持ちになるのは、わたしだけでしょうか。早くその場を立ち去りたいと思ったりします。そんな時は軽く挨拶の声をだしてみるようにしています。
相手の人が挨拶を返してくれると、ほっとして、うれしい気持ちもしてきて、その場への居心地が変わり、楽になります。

 
そうしようと思ったのは、道端で会う猫に声をだして挨拶をしてみたことがきっかけです。猫好きだから、というわけではありません。猫はこちらをちらっと見たような見ないような歩き方でいってしまい、挨拶を返してはくれないのですが、声をだしたことで、気持ちがすっきりしていました。
自分の声を、自分の耳は聞いています。聞いたことによって、その空間が自分に馴染んでくれたように感じるのです。
「こだま効果」と勝手に呼んでいます。

 
先日、自転車をこいでいると、後ろを走っていた自転車にぬかされ、くるっと振り向かれました。邪魔だったのかな、怒られるかな、とビクッとしたのですが、「後ろ姿、とっても素敵です!その色の組み合わせ、いちばん好きです。あ、急にすいません」と、その女性は猛スピードで行ってしまわれました。全く想定していなかった言葉に驚いてしまい、ほぼ何も答えられなかったのが残念でした。でも、とてもおもしろく、うれしい出来事でした。いい街だな、と思いました。

 
知らない人に声をかける、というのは勇気がいるものだと思います。台本が決まっているわけではない日常のなかで、声が届けられることはとても大事だと思います。
話しづらい人、こどもや母語でない言葉で話さなくてはならない人、弱い立場にある人はじぶんの本心の声をだすことは難しいと思います。
そうした声に耳を澄まし、呼びかけることを大切にしたいと思います。

 
地域に根ざす芸術活動が、小さな声の結び目になりますように。

 

2025年4月30日


プログラム・ディレクター 上田假奈代

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