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(2023年5月2日)性教育と芸術

更新日:2023年9月15日

舞台中央で踊る康本雅子さん 撮影:金サジ

2023年2月12日、フェニーチェ堺でコンテンポラリーダンサーの康本雅子さんの「子ら子ら(主催:堺市文化振興財団)」を鑑賞しました。ジェンダーとセクシャリティ、母と子の関係について問う、現代的なダンス公演。終了後に、鑑賞体験を誰かと語ってゆくことによって、そんな見方があったのか、とハッとするような考え方を聞いて、自分もまた揺れ動き出すアフタートークも印象に残っています。

 

ダンサーである康本雅子さんは性教育にも取り組んでいらっしゃることはチラシに記載されていました。その情報から、おおむね女性の経験しかない母が男性の育ちゆく身体とどのようにつきあうのか、語られにくいことがダンスの身体によって示唆的に表されていることに気づきました。反復される動きと言葉は、えんえんと続く日常が想起され、また承認欲求は満たしても満たしてもキリはないものだからこそ、その境界を出てゆく瞬間は著しく複雑な感情が渦巻くことを感じさせるものでした。そして、それは数ヶ月の時間を経て、さらにじわじわと思い起こされ、あのときあのシーンに反応した感覚を思い出します。

 

「芸術」というもののが、社会状況のなかで変化していることはおよそ知っています。

 

古代の人は芸術を意識せずに洞窟に壁画を描いたり、生活につかう器物や衣服、祭りや儀礼に使用するものに装飾を施したことでしょう。手順や振付、言葉、歌、そうした全てが暮らしを彩り、やがて交換や売り買いの対象となり、戦争の広報物となったり、保存の対象となったり、ならなかったりして、現在へと続いています。そして芸術のなかに今日的なテーマが埋め込まれることは、現代の特徴なのかもしれません。(検閲のある国もいまだにありますが。)

 

それでも、あまりに制度化され、内面化されると、それを表現することがためらわれます。せっかくの「芸術」領域なのですから、自ら枠をつくるのではなく、新しい視点やユーモア、機微をもって社会との接続点をつくる芸術にふれていきたいと思います。

 

そうした芸術経験が、自分自身の生き方や人間関係に影響を与えています。

     

「子ら子ら」公演は、康本雅子さんの関西公演がそれほど多くなかったことから、多くのダンス関係者の姿が客席にありましたが、芸術実践者だけでなく、子育て中の大人、教育関係者など、多くの人に観てもらいたい公演でした。

 

堺市でこのような前衛的意欲的なダンス公演が行われたことで今後、さまざまな芸術活動や教育活動の広がりにつながることを願っています。

 

2023年 5月 2日


プログラム・ディレクター上田假奈代

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