(2022年9月4日)コクリコさかいと、与謝野晶子
更新日:2022年12月6日
阪堺電車
9月に入ったけれど、陽射しはアスファルトをじりじり熱くしています。
「ゆんたくしましょうね」というお芝居を観に、コクリコさかいを訪ねました。
「ゆんたく」は、沖縄の言葉で、「おしゃべり」。
語尾の「ね」は沖縄の人と話すと、よく聞きます。
耳に優しい「ね」ですね。
2両編成の阪堺電車に乗って、宿院駅で降りました。
大きな通りに小さな駅。
「コクリコさかい」をめざして、数分歩きながら、与謝野晶子の歌を思い出します。
ああ阜月(さつき)仏蘭西(フランス)の野は火の色す
君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)
コクリコは、ひなげし。ポピー。
明治45年5月、夫・寛のいるフランスへ、シベリア鉄道を経由して14日かけて会いにゆく晶子。
フランスの野原に真っ赤なひなげしが咲き乱れていて、再会をその赤色に託して詠んだ情熱的な歌。
雛罌粟(コクリコ)をひなげしやポピーと変えて詠んでしまうと、迫力に欠けるような気がして、晶子の言葉のセンスに脱帽です。
「コ」の繰り返しにリズムがあり、ひなげし一輪一輪のたたずまいが際立ちます。
コクリコさかいは、堺市の男女共同参画センター。
3階建の建物で、駐輪場にはすでにたくさんの自転車がとまっています。
会場となる3階の受付には、堺 自由の泉大学(愛称: ラ・パリテ)の受講生専用があり、
ここが「堺 自由の泉大学」だということがわかってきました。
堺市立男女共同参画センターは、昭和27年から堺市内の女性たちが自らの学びの場をつくろうと寄付を集め、
婦人会館として建設されたのだそうです。
この日も「コクリコさかいのつどい」として開かれ、受講生が大勢参加されていました。
高齢の女性が多く、にぎやかです。
堺のまちの女性たちは、与謝野晶子におおいに励まされ、背中を押されているように感じます。
芝居の幕があがりました。
大阪で生まれた俳優の谷ノ上朋美さんは半分大阪、半分沖縄のルーツを持ちますが、それを意識したことはなかったと語ります。
沖縄で暮らす祖母。
摩文仁(まぶに)の丘の平和の礎(いしじ)に刻まれた名前を祖母がみて、親族のなかでただ一人生き残った祖母の名前はありません。
でも、彼女は多くを語らない。
そこで、劇作家の樋口ミユさんといっしょに、沖縄戦の跡地を歩いて、つくりあげたひとり芝居「ゆんたくしましょうね」は、
何人もの登場人物に憑依されながら、語られなかった言葉がそのまま身体に宿っているようでした。
語るには時間がかかるから、出来事を忘れないために、身体を通して繰り返されることによって、
誰かに片鱗でも伝わってほしいとする亡くなった人の声にならない声だと思います。
与謝野晶子のみた赤いコクリコは、ひとりひとりの情熱となって、咲いています。
2022年9月4日
プログラム・ディレクター上田假奈代
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