(2022年6月29日)堺を歩いて知る、職人の技。そして芸術
更新日:2022年10月11日
昆布
ある日、堺市内をよく知る堺アーツカウンシルのプログラム・オフィサーの中脇健児さんと、地域にある芸術拠点を訪ねることになりました。
住宅街のなかに時折、商店があり、表からはあまりわからないけれど、ものすごい技術を持つ職人さんがいる、と教えてくれます。
そのうち、足をとめて、「ここは昆布屋さん」。
昆布といえば、北海道の昆布が有名ですから、堺の昆布が特別とは思えず、ふうんとビルを眺めました。
ところが、「堺の刃物の技術で作られている昆布なんですよ、おぼろ昆布」と、中脇さんが言います。
「あの、おうどんに乗ってる、ほろほろの昆布?」
「そう。堺の包丁、堺の職人の高度な技術で作られている特殊な包丁。さきを薄く薄くして、その刃を曲げる包丁があって、それで昆布を薄く細かく薄く削り出す。包丁に吸いつくような昆布。それに、バッテラ寿司のはちみつ色の昆布、あれも特殊な包丁があって、生まれる昆布。その包丁を扱える職人さんもほんとに少ない。」
鋭い切れ味の刃物をつくる技術と、その刃物を扱う技術を持った堺の職人たちが大阪名物を支えているんですね。
俄然、興味が湧いてきて、ビルの一階の昆布屋さんに吸い込まれました。
何種類もの昆布。
色合いも形も違います。見たことのない昆布も。
ほのかに酢のにおいもするような。
江戸時代中期、大阪が「大坂」と呼ばれていた時代に、北前船で北海道の昆布は運ばれました。日本海から瀬戸内海に入り、届けられた昆布は関西の食文化の特徴「出し」の文化を支えました。
大正から昭和にかけて、堺には昆布加工業者が軒を連ねていたそうです。
話は飛んで、新潟市。
白山神社の石の鳥居は、北前船が大坂で荷をおろし、北に戻るのに船が軽すぎてバランスが悪いため、わざわざ重くするために運んだものと聞きました。船主たちが海上安全を願い奉納したどっしりとした石の鳥居を見ると、どれだけ多くの荷物を運んだのか驚くばかりです。それが昆布だとしたら、大量の昆布ですね。
さて、その後、全国最大規模の昆布手加工の町であった堺も、現在はずいぶん少なくなりました。
技術や食文化はどうなってゆくのか気になり、「歴史をつくってきた技術と文化芸術、架橋できるような気がするのになあ、どうにかならんかなあ」と、そんなことを中脇さんと話しながら歩きました。
まちの歴史や人の働きを知り、まちの文化芸術に触れるのは、堺ならではの楽しみですね。
もののはじまりなんでも堺のまちで、芸術との道、ゆっくり歩いてみませんか。
2022年6月29日
プログラム・ディレクター上田假奈代
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