(2022年4月17日)地域の展覧会は道に通じる
更新日:2022年5月18日
平尾百景展
堺市美原区平尾へ。
電車とバスを乗り継いで、バスの車窓から見える空が広くなってゆきます。
道端の庭に、美術家の草間彌生さんの黄色と黒い水玉のかぼちゃに似たかぼちゃが見えて、「あれ?なに?!」と声をあげてしまいました。直島にある実物より何回りも小さいのですが、目を疑っているうちに、平尾に到着しました。
地域の公民館である平尾会館の2階で「平尾百景」展覧会が開かれています。
玄関先に、矢印のマークがたくさんあります。
その矢印が色とりどりで楽しげです。
階段の壁にも。誘われるように、2階へ。
平尾という地域を表現する作品と自由制作の2点を公募し、3日間の展覧会を開催するものです。会場ではコンサートも開かれ、美術作品と音楽に満ちた空間になります。
この展覧会は、令和3年度の堺市文化芸術活動応援補助金の採択事業です。
主宰者で美術家の北野さんにご案内いただくと、矢印は子どもの人たちの手作りということでした。モノクロの矢印をコピーした紙を渡して、好きなように色を塗ったり絵を描いたそうです。ちょっとした一手間ですが、鑑賞者としては展覧会に足を踏み入れる前からワクワクします。
このアイデアはアートの催しものを企画するときに、お手伝いの方やスタッフたちに描いてもらうなど、応用できそうですね。
会場に向かうはじめての参加者や観客への気持ちを和らげたり、緊張をほぐすかもしれません。
さて、展覧会会場は講堂のような空間。
全面、透明な窓ガラスが特徴です。
展示用パネルは天井までの高さはありません。
そのため、作品越しに平尾の街並みや空が見えるのです。
ひとり2点の展示は、上が平尾を題材にした作品、下が自由制作です。70人が参加しているそうですから、140点の作品が並びます。
平尾の作品も自由制作も同列テンションの方もいれば、片方が際立つ方もいます。アンデパンダンというよりは、小さな個展が集まっているようです。
さきほどの、庭先のかぼちゃの絵が展示されていて、思わず「あのかぼちゃ!」と声がでます。
細かく見ていくと、さりげなく額装が作品をひきたてています。
空間全体が心地よく、壁が額装で、窓ガラスの向こうの街並みにもぐっと奥行きが出て、内側の空間が作品のようにも思えてきます。
足を止めて作品に見いっている人たちの姿も、作品のように見えてきて、ふわっと空間が浮き立つように感じました。
ふだん、なかなか美術館に行かれない地域の方もここなら来てくれます、と北野さん。
「ここ、知ってる!」
「この景色、わたしも好きやわ」
「なつかしいわ」
そんな声が聞こえてきます。
平尾を題材とした作品は、移り変わる地域の記録ともいえます。
「このやり方は、他の地域でもやったらいいと思いますよ」と、北野さんはおっしゃいます。
展覧会場から
それぞれの家へ、生活へ、記憶へ
道がつながっていくような気がして、
会場を出て、矢印の反対方向へゆっくりと足を向けました。
2022年4月17日
(平尾百景展には2022年3月26日に訪れました)
プログラム・ディレクター上田假奈代
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