会議録(第5回堺市都心交通検討会議)
更新日:2014年2月26日
1開催日時 | 平成26年1月28日(火曜)、午後6時00分から8時00分 |
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2開催場所 | 堺市役所 本館3階 大会議室1 |
3出席者 | 委員(50音順、敬称略) |
前回会議内容の確認
正司座長
参考資料(1)の5、6ページで、大阪市から都心への平日の自由目的・鉄道での流入は、Aゾーンに1,180人、Bゾーンに962人となっており、鉄道での流入はほとんどがBゾーンへ行っている。自動車ではBゾーンへの流入は6割ぐらいとなっている。休日も同じような傾向がある。目的地で手段を使い分けていると思う。堺東を中心とした賑わっている所はかなり公共交通が支えているのだと想像できる。
一方で、パーソントリップ調査データの分析には限界がある。そこは市の都市政策の中でどういうまちを作っていくのかを議論しないといけない。
宇都宮委員
私が危惧していたよりは、相対的に堺区への集中が平日、休日ともに一定見られる。圧倒的に大阪市に逃げてしまっている感じでもない。
正司座長
昼間人口の整理も一緒にできないか。
事務局
昼間人口の整理まではできていない。エリアを絞った分析であり、夜間人口を中心に整理している。政令市指定以降、堺市全体ではかなり昼夜間比率はよくなってきている。
正司座長
都心活性化の議論としては昼間人口が気になる。
東西交通軸の事業性検討について
正司座長
連節バスは堺大和高田線の交差点等のカーブを曲がれるのか。
事務局
厳しいかもしれない。BRTでは一般的に連節バスの事例が多いのでこのような設定とした。もしBRTを検討していくとなれば、そのあたりも加えて検討する必要があると考えている。一般的な事例ということで比較している。
宇都宮委員
一般的なイメージというのはあるかもしれないが、BRTだから連節バスというわけではない。BRTは専用バスレーンを持ち、信頼性が高いシステムである。また、バスの高度化というのは聞こえのいい言葉であるが、CNGバスやバスロケーションシステムなどは、他都市ではバス停留所を作り直して少し利便性を高めたという位置づけである。こういう形で基幹軸の選択肢として比較していいのか。高度化という非常に魅力的な言葉で、かつ非常に安いということもあり、基幹軸を考えるにあたって誤解を招きそうな印象を持っている。基幹軸の交通を考えるにあたって、バス停留所を改造する程度のことは目的ではないのではないか。定員についても、この資料ではBRTの定員が多く、LRTとバスは定員がほとんど変わらないという印象を持たれる懸念がある。今後、市民に説明される際には気をつけたほうがよい。
費用を考えるのであれば、同じような交通事業、例えば道路の整備や駅前整備など、そういった都市交通に関連するプロジェクトと比べて、相対的に、都心の交通軸にどれぐらい費用がかかるか見せていただきたい。そうすることで初めて都心の交通に関する投資のイメージが湧くのではないか。これだと、この3つだけ比較して何が高い、何が安いだけで議論が終わってしまう。少なくとも他の道路を含めたプロジェクトとの比較を参考として知りたい。今後市民に見せる上でもぜひその数字との比較で考えていただきたい。
大小路線については、歩行者の交通量が多い道路に関しては歩道が4.5m必要であり、2.5mの道路拡幅が必要ということだが、歩行者の交通量がさほどでもなければ4.5m取らなくていいという理解でよいのか。私の経験では、現時点では大小路線の歩行者はさほどでもない。だから今後賑わいをもたらそうということでやっているわけだが、拡幅は必ず必要なのか。
事務局
比較できる取り組みの事業費については、一番身近なものとして大小路線をシンボルロードとして整備しているので、この事業費を参考に記載するなど、工夫をしたい。
大小路線は場所によって歩行者量のイメージは違うが、12時間あたりの歩行者量は2,800人ぐらいである。堺大和高田線は400人を切り、大阪中央環状線は600人程度である。この3つの道路の中では大小路線の歩行者量は多いが、歩道が広いので寂しいイメージはある。歩行者量の違いがあるので、必要な歩道幅員の違いは当然出てくると考えている。
塚本委員
いくつか前提条件を確認したい。需要予測の条件として、大小路線のLRTの場合でも堺シャトルバスは残した設定としているのか。
事務局
あくまでも需要予測上の仮定として、シャトルバスを残した形で需要予測を行ったが、利用者の多くはLRTに移ってしまい、バスの利用者はあまりいないと分析している。
塚本委員
なぜシャトルバスを無くした設定ではいけないのか。
事務局
軌道事業者がこのような断面で軌道を導入した場合、既存のバス事業者が残るケースも考えられるので、今回はそのような条件で需要予測を行った。シャトルバス無しの場合もありえるので、今後検討を加えないといけないと思っている。
塚本委員
15ページの需要予測結果について、阪堺線と東西のLRTの相互直通による誘発は見込んでいるのか。パーソントリップ調査のデータをそのまま転換させているのか。
事務局
今回の需要予測では、新しい近畿圏パーソントリップ調査結果を踏まえた、国で検討中の需要予測モデルを活用している。新たな開発計画は特に考慮していないが、阪堺線とのネットワークによる効果は見込んでいる。
塚本委員
平成20年当時の概算事業費85億円が今回は130億円と、45億円アップしているが、その中身は、道路改良と用地買収が相当すると考えてよいのか。
事務局
そのとおりである。
塚本委員
2.5m拡幅する延長はどのぐらいか。
事務局
阪堺線より西側になるので500m弱である。
塚本委員
その区間は全部用地買収するのか。
事務局
停留場の付近では、断面図のように右折車線が必要となる。また、その他の場所でも右折箇所が短い距離で出てくるので、その区間は拡幅するものとして設定している。
塚本委員
右折させないような交通政策によって、用地買収の費用を減らすことは可能か。
事務局
阪堺線の停留場をご覧いただくと分かるかもしれないが、軌道は道路のように自由に曲げられないため、停留場の交差点を挟んだ反対側はどうしても余分な空間が出てくる。右折車線はそういう空間をうまく使っているため、用地買収が全く要らないということはない。停留場を取らないなど、サービスレベルを下げれば別だが、それも考えにくいため、このような設定とさせていただいている。
塚本委員
この会議は都心交通検討会議なので都心交通を議論しているのだが、堺市全体にとって東西交通軸は必要かという話は出てきていない。「堺駅から西側の臨海部をどうするのか」とか、「堺東駅から東側をどうつなげればいいのか」とか、「堺市全体の広域的な公共交通ネットワークの中で東西交通軸はどういう位置づけなのか」という議論はこれまでやっていないが、それでもよいのか。
事務局
この会議を立ち上げる前に、公共交通検討会議において堺市全体の公共交通について一定の議論を行った。その中で、堺市全体で将来どういう交通軸を形成していくのかという点において、東西交通、特に都心の交通ネットワークをどうするのかという議論があった。そのことから、この会議では都心の交通ネットワークに焦点を絞ってのご議論をお願いしている。もちろんそれぞれの関連性はあるが、今回の東西交通軸は堺駅と堺東駅を結ぶ場合を想定して比較させていただいている。
塚本委員
それは重々理解している。前提条件をはっきりさせておかないと、ここに出ている指標だけで3本のルートのどれがいいかという比較にはならない。西に延伸するのであればどちらが便利かなど、そういう議論は後々出てくるだろう。この東西交通軸の事業性検討は限られた前提条件のもとでやっているということはどこかに書いていただきたい。
事務局
後ほどご議論いただく都心交通の方向性の中でもその点は触れているので、そこで説明させていただきたい。
正司座長
阪堺線とのネットワーク形成をどう評価するかにおいても同じ話が出てくると思う。阪堺線のことを議論する別の会議があり、この会議では都心をどうするかを議論する。それに合う形でどういう効果があるのかという結果の出し方を考えないといけない。このままでは「計算だけしました」という感じになってしまう。一方で、特定の機種が載っているので具体的な検討を行ったかのように見えてしまう。この会議は何をめざしたのかわかりにくくなるという危惧がある。
塚本委員
前回会議の主な意見と対応で、「東西交通軸は数値だけでなく、定性的な話も踏まえて検討してほしい」というのは、今、正司座長がおっしゃられたことや、都心は交通機能だけでなく空間機能や開発機能などいろいろな機能を持っており、今回のような数字だけで弾き切れないものがたくさんある。そういう定性的なことも含めて検討してほしいという意味だったのではないか。
正司座長
幅員25m区間はどのように専用の公共交通空間を確保するのか。そこをコアな意味での都心と考えることができるのか。歩行者は本当にその区間も多いのか。こんな車線確保をする必要性が本当にあるのかどうかもっと議論しなければいけない。お金がたくさんあって何でもできるというのであればよいが、現実はそうでない。制約の中でどうすべきか、都心ではもっといろいろなことが考えられると思う。
弘本委員
塚本委員と同じようなことを感じている。まちづくり指標の中でそれぞれがまちづくりに対してどういう強みと弱みを持っているかを比較する視点を持っておかなければ、都心交通のまちづくりへの寄与を描けないのではないか。定性的な話になるかもしれないが、これにまちづくりの評価軸みたいなものを加えていく必要があると思う。少なくとも、これだけではどうこう言えない段階だと思う。例えば観光のあり方や交流のあり方を考えたときに、東西のこの限られた区間の中だけで話しても解決できない問題が周辺にたくさんあるのではないか。
田中委員
堺市で考えると、中心市街地活性化や観光(古墳)との関係性から交通ネットワークが考えられるのではないか。中心市街地活性化は商業にも非常に関係してくる。古墳が世界遺産指定の候補に挙がらなかった理由として景観が言われている。堺市は景観が弱く、マンション等の規制ができていないので、世界遺産として捉えるのは難しいのではないかという議論が新聞紙上に出ていた。そういう意味で交通ネットワークには演出効果も必要である。堺の道路交通網はしっかりできているが、空間的に余裕がない。例えば街路樹を植えるだけでなく、芝や屋上緑化も含めてちょっとしたところの緑や、ホッとする空間などがあまりにも少ないのではないか。観光、景観、商業も含めた交通ネットワークのあり方はどういうものなのか議論していきたいと思う。
宇都宮委員
事業性を比較するという議論に絞ったとしても、通常の企業では過去の売上高と費用だけで事業性を比較しないと思う。企業であればその企業のイメージであるとか、いろいろな定性的な議論を踏まえて事業をされる。もちろんいろんな意味で大きな話も必要だが、事業性の話だから数字で検討するということ自体が偏っているのではないか。定性的な部分を含めた比較も事業性の検討だと思う。市役所の中や議員から数字はどうなのかという質問があると思うが、数字だけでは語れないところがあるというのが、少なくとも私などの専門家の意見である。
正司座長
そのあたりは皆さんご意見がある。ここで示されている指標は我々が議論しているものと全然違った意図にも使える資料になることを各委員の方も心配されている。議論の材料にはなるが、費用対効果がまちづくりにどう寄与するか、どのように捉えていくのか、多面的にどのように考えるのかということ、その点をもっと考えるべきだと皆さんで議論されている。それがわかるような資料にしておかないといけない。
堺市では今までたくさんの検討をされてきており、最後はそれを見てどう判断するのかということを市民の方にお話ししないといけないと思う。それなのに、こういった形で集約したような資料にすると誤解されやすいだけではないか。例えば需要予測で阪堺線との連携の効果が出ていることは需要量に現れているようだが、採算性の数字が目に付いてしまってそういった議論に気づかなくなる恐れがある。その意味では阪堺線との連携の効果はまた違う形で見せないといけないのではないか。使いやすさの面でも、案によってかなり違うと思うが、このことがどの程度反映できた需要予測といえるのだろうか。うまく出ている側面と出ていない側面があるように思える。それらを横へ置いて議論されていたり、抜けている項目があったりするのではないかという危惧はある。
事務局
たくさんのご指摘をいただいた。この会議では、東西交通軸の検討とまちづくりの検討という2本についてご議論をお願いしてきたところだが、これまではどちらかというとまちづくりについてのご意見をいただいてきた。東西交通軸についてはあまり具体的なものをお示しできていなかったので、まずは数字として表れる部分、コストや需要、収支という部分をお示しさせていただいた。今日いただいたご意見を含めて整理をしていきたい。今日は事業性検討ということで示させていただいたが、これによっていきなり結論に至るということではない。議論に必要な1つの要素と考えたものである。都心交通の方向性の議論の中で、東西交通軸の議論も当然出てくる。そのあたりもご議論いただいた上で、整理をしていきたい。
都心交通の方向性について
正司委員
自転車は悪くない手段だと思うが、どれくらいのボリュームを捌こうと考えているのか。意外と場所をとるわりにはさほど多くの需要に対応できないという指摘もよくされている。
事務局
ボリュームは想定していない。自転車は端末的な移動に使われているが、地形的に自転車そのものを代表交通手段として利用されている方も多い。4~5キロメートル移動される方もおられる。自転車に発揮してほしいのは、面的に広がっている部分を結びつけることと、個人の交通行動に即して活用してもらうこと。そうすれば、かなり賑わいという面でもいいのではないかと考えている。パーソントリップ調査では、代表交通手段としての自転車の分担率は平日で約2割である。平成2年、12年、22年で1ポイントずつ増えてきている。堺市において、自転車は代表交通手段として有効な交通手段となっている。
宇都宮委員
資料の13、14ページで、自動車から公共交通への転換、自動車利用の抑制と書かれており、そういう方向性は我々も今まで議論してきた。ただ、今後は駐車場をどんどん増やしていくことはしないということは書いてあるのだが、自動車利用を抑えることは何かやっているのか。駐車場のさらなる供給を抑制するのではなく、既にある駐車場を減らすとか、駐車場料金を引き上げるとか、何らかの形で抑える施策はやっていないのか。あるいは我々が議論する過程でそこに踏み込むことができないのか。これだけでは自動車利用の抑制になっていないと思う。
事務局
需要に応じた駐車場供給は一定必要であるが、今後の流れとして自動車利用が減っていくことも予測されるので、それを踏まえて過大であったところを下げていくという考えである。完全な抑制策とは言えないというご指摘はそのとおりである。
13ページのように、既にバス優先レーンや自転車レーンも市内に一部あるが、どちらかというと今まではなかなか展開が難しかった施策である。今後車線を減らして、公共交通や自転車に転換を図ることができれば、自動車交通の抑制につながるのではないか。明確にプログラムがあるわけではないが、この会議でも都心の賑わいではそこが重要だというご指摘をいただいているので、これからそういったことを打ち出していけないかと考えている。
宇都宮委員
この会議の議論を活用して打ち出していただければと思う。
田中委員
個別施策はよくわかるのだが、市民の方がこれを見られたときに、全体としてどういうつながりがあるのかは読みとれない。市民など利用者の視点で話が進んでいないように思う。私はノンステップバスによく乗る。低床で乗りやすいが、タイヤの部分の座席が高いので座りにくい。先ほど「見せる」という話が出ていたが、賑わいを見せるとか、交通の動きを見せるとか、その見せ方の問題ではないか。
よく市民の方と一緒に計画を作るのだが、例えば自由通路を考えるときに、6mがいいのか、もっと広い幅がいいのかを議論してもらうのに、実際に6mの空間を会場で作って、そこに自転車や車いすを通らせてみる。空間的に何mと資料に出ていても、それが自分の感覚でいいかどうかというのはある程度見せないといけない。そういう見せ方があると思う。議論を見せようと思えば、実験的に見せることも必要である。
全体を組み合わせたときにどんな交通ネットワークが完成するのかというイメージはこれから作っていく話だと思う。
弘本委員
3ページに書かれている「移動の支援」と「賑わいの演出」とか「交通から見た賑わいの姿」とか、今の役割とか目標があるが、堺市の場合は堺東駅と堺駅があり、周りには仁徳天皇陵古墳をはじめとして様々な都市的な資源、歴史文化資源がまばらに存在しているとあったが、さらに堺区を超えて堺市全体ではなおさらのこと、堺というまちのアイデンティティとかまちの求心力とかまとまりというものを感じにくい現状がある。その分、ミクロな地域の我がまち意識というのは非常に高く、素晴らしいものがあっていいのだが、全体としての堺をアピールする力、まとまる力が作りにくいというところが良くも悪くも堺の特徴だと思う。点在している資源を結んでいく軸が、非常に強い求心力を持っている「アイデンティティの核」になっていく姿というのは、堺のように資源が点在しているまちならではの都市のアイデンティティの打ち立て方になっていくのではないかと思う。そういうものを軸にしながらまちのまとまり、あるいは交流を促していくという形、そのことがまた多くの人の日々の暮らしの元気にもつながっていくという、そういうイメージが生活者のイメージとしても見えてくると望ましいと感じた。そういう視点に立って東西軸、周遊、歩行者、自転車ネットワークを重ね合わせて考えていかなければいけないと感じた。
塚本委員
個々の取り組みは非常に面白そうなものが並んでいるのだが、それが立体的に配置されていない感じがする。なぜかと言うと、都心交通の基幹がきちんと位置づけられていて、そこに自転車や歩行者など、諸々の交通に関わる資源がどう配置されるかという絵がないからだと思う。答えはある意味はっきりしている。大小路にLRTを通しなさいということしか答えがないとずっと思っている。これまでの社会的な合意の問題や、費用の問題などはよく理解できるのだが、LRTとBRT、バスの高度化を横並びに比較して東西交通軸の議論をしているが、まだそういう段階ではないと思う。「移動の支援」と「賑わいの演出」が大きな2つの柱であるならば、それにふさわしい交通機関は何なのか。段階的な整備として、お金がなく社会的な合意が得られないのでLRTはすぐには無理だから、とりあえずバスを通しながら自動車を都心から排除していく政策を進めるとか、自転車との連携を図るようなステップを踏んでいくとか、そういう段階的な計画はありだと思う。最終的にどうするのかとなれば、答えは決まっているとしか思えない。
都心が都心らしくあろうと思うと、都心人口の10~20%が1日の都心内流動として必要である。100万人のまちであれば、1日10万人から20万人が動いていることとなる。それで初めて都心らしくなる。それを堺に当てはめると、堺の人口は85万人だが、いろいろなところに副都心があるため、仮に30万人規模の都市だと考えると、1日3~4万人が流動していて欲しい。それが都心らしさを引っ張り出してくる人の動きだと思う。パーソントリップ調査結果を見ると、休日の自由目的でAゾーンに入ってくる人が2万人ぐらいいるので、内々移動の人を入れて3万の人が1点に集中してきて、直行直帰ではなく、来た人をどう動かすかを考えれば、都心らしさを作り出すことができるだけのポテンシャルはあると思う。そういう観点に立って、人をどのように動かしていくのか、それを支援する交通手段はどうあるべきか。基軸になる交通が1日7,000人しか乗っていないのは極めて寂しい数字である。これは単純に阪堺線とのネットワーク効果も含めたとりあえず現状の数字である。シャトルバスでは4,000人ぐらいしかないと思う。「賑わいの演出」と「移動の支援」という大きな目標の中で、自動車をどう規制していくか、歩行者をどう支援していくのか、自転車とどう連携するか。阪堺線は存続問題もあるが、存続させるには東西軸をLRTでつなげなければいけないという意見も市民から出ている。多面的な東西の交通システムのあるべき形を評価した上で数字を出し、その数字に対して、自転車、歩行者、観光周遊をくっつけていった図を描かないと、どうしてもバラバラになり、どうつながっていくのかが見えない。可能であれば、近い将来ブレークダウンさせて、そこへ向かって行くための段階整備としてはとりあえずこれで行こうというまとめ方ができるとわかりやすいのではないか。
田中委員
段階的な施策を打つということは賛成である。議論もそうだが、見せていくことが重要である。
以前、豊中市で交通社会実験をしたことがある。そのときには、市民の方が作られたまちづくり構想、ゆっくりと歩ける道づくりを大きなテーマに挙げて交通社会実験を実施した。歩くということを基本に、トランジットモールやパーク&ライド、コミュニティバス、歩行者天国、環境定期、すべてを踏まえて平日と休日の4日間で交通社会実験をした。
社会実験というのは、実際にそれをするかどうかはそこで決めたらいいことで、やめてもよいということなので、何回か繰り返し実験的なことをやってみてはどうか。そこで市民の方は利用するだろうし、マスコミも来る。マスコミのPRは、反対意見、賛成意見が同じように報道に載る。歩行者天国を行ったときは、子ども連れの若いお母さんが「非常に歩きやすいです」と言っていた。一方で、事業者や商売をされている方の搬入車の運転手は「こんなのやってもらっちゃ困ります」と怒鳴っている姿があって、その2つが対比として流れた。議論を見せるというところではマスコミの観点もよい。歩行者天国を行ったときには、そこでイベントやフリーマーケットなど、活動されている市民の活躍の場を作っていくことができた。そういうことを積み重ねて議論をいろいろと引き出していきながら、どういう形がいいのかを作り上げていくことはとても大事なことだと感じている。
宇都宮委員
堺は歴史資源が点在しているとか、わかりにくいとか、いろいろ弱みがある。しかし、他の賑わっているまちは歴史資源などが集中しているのか。必ずしもそういう問題ではないのではないか。むしろ点在している資源をいかに活かすかということを今までやってこなかったということなのではないか。集中度合いが低いのではなく、集中度合いをあまり高めようとしなかった。日本で唯一LRTがある富山市と比べると、たぶん歴史資源もたくさんあり、集中している。堺の都心機能というのは全然崩壊していない。それなりに人も来る。あとは、いかにインパクトを持ってやっていくかということではないか。塚本委員から7,000人は寂しいとご指摘があったが、富山のLRTは平日1日4,000人台、休日が3,000人台で大成功と言われている。JR時代に比べれば2倍、3倍になったということで、日本全国のみならず、世界のOECDからもコンパクトシティで賞をもらっている。7,000人とは言え、堺の都心というのはそれぐらいの位置づけにある。
窪園交通部長
6ページでは異質なものも含めて施策が並んでいるなど、資料がわかりづらかった。面的な交通ネットワークの形成に向けてもう少し議論ができる資料づくりが必要だったと思う。そういう中で貴重なご意見をたくさんいただいた。
都心におけるネットワークや、賑わいに資する歩行者のあり方、自転車の活用の仕方、都市機能という中で商業や観光とどのようにリンクするか。これまでの流れの中で、東西交通機能は堺市としてどうあるべきなのか。自転車やバスなどいろいろな交通手段がある中で、LRTなどの機種を特定するというよりも、基幹軸のあり方はどうあるべきなのか。自動車の抑制や、都心のまちづくりの方向性、例えばコンパクトシティにしてもっと人を住まわせていくとか、そういうことを実現していくにあたって、交通として基幹軸の議論はどういう方向性で進めていけばいいのかということについてご意見をいただきたい。
塚本委員
東西の交通軸は仮想的な太い赤線で描いて、そこに、バスや自転車との連携、環境の改善、交通が持っている空間機能、都市景観を回復するような風景づくり、端末の停留所で人が降りてどのように観光地を周遊するルートを作っていくのかなど、そういう絵を描いていく中で、道路空間の配分をしなければいけない道路は一体どこなのか。東西の赤い軸はLRTと書けばいいのだが、そこまで書くだけの機が熟していないのであれば、後から東西の空間、交通軸が持つべき機能、周りの交通やまちの賑わい、移動の支援ということと絡めた都心交通の方向性、これら1個ずつをその上に載せていくような整理の仕方をすると見えてくる。そうすると赤線はおのずと決まってくるのではないか。そういう方向でまとまるのが望ましい。
田中委員
「賑わいの演出」と書かれているが、「賑わい」がどういうものなのかイメージできない。人口減少時代の賑わいとはどういう賑わいなのか。年中人が歩き回っている姿なのか、それともある拠点に集まって、人口密度が高いという状況なのか。賑わいというのが一体どういうものなのかもう1度じっくり考えてみる必要があるのではないか。人の移動についても、どういう人の移動を支えるのかというところも議論をしないといけない。そこが明確になってくると交通のあり方が具体的にわかってくるのではないか。さらに誰がという主体が明確になってくれば、もっと交通そのもののあり方が議論として深まってくるのではないか。
塚本委員
これまでの会議において、賑わいについてまとめていなかったか。
事務局
賑わい自体を定義はしたとはない。ここに書いた背景は、先ほどシンボルロードの話も出たが、堺の都心の特色として、歩行者量を測ると実はそれほど少なくはないのだが、実感がなかなか伝わらない。それは歩道が広すぎるからという意見もあるが、恐らくそうではなくて、堺のまちが持っている特色の部分で賑わいを感じにくいからである。均質化しすぎた堺の都心部、道路もきっちり作ってあり、建物もきれいに並んでいて、まちの真ん中に定規を当てると線が書けるようなまちの形というのは、どうしても賑わいを見えづらくしていると考えている。他のまちのように複雑なまちにするということではなく、賑わいというものを何か感じられるような工夫が、全体的には無理でも、部分的には可能なのではないか。特に駅周辺は本来そうあるべきであり、それが魅力になるのだが、なかなか感じられない。平日はまだいいが、特に休日は寂しく感じてしまう。これは交通ということを置いておいても、都市を考えていく上での大きなテーマである。
以前、LRTの議論がされていたときも、LRTができれば自然とまちに賑わいが出てくるのか、人がいないところから勝手に溢れ出してくるのかという質問をいろいろな方からいただいた。交通を考えていくときに、賑わいを生み出すためにはおそらく強い交通軸を作らなければ賑わいは簡単にはできないのだろうが、そういうあたりは堺市なりの工夫というか、堺市の特性を踏まえた結びつきというものが必要ではないか。そこで、道路空間の再配分と、自転車や歩行者という通常の交通では横に置かれているようなミクロな交通と言われている部分を加えて、全体で考えることはできないかという思いでまとめた。ただ、ご指摘のように寄せ集め的なところがまだまだあり、これを集約していかなければいけない。今日は様々なご意見をいただいたので、整理して考え、答えを導けるものにしていきたいと考えている。
田中委員
人が集まっているから賑わいとは捉えていない。交通施策から考えたときに賑わいというのは、人の手が加わるということではないか。人の手が加われないような交通機関というのは望まれない気がする。例えばバスを走らせるのはバスの運行事業者だけの問題なのかということである。バス停にフラワーポットを置くなど、周辺の人たちがいかにそこに加われる余地があるかどうか。停留所とバスの間に高低差があるのでスロープをつけるとか、人の手が加われるような交通網というのはどういうものなのか。軌道敷を敷いた場合には、軌道敷内の空間をどうするかというときに、市民の方がそれに加われるような空間が少しでもある形、そういうものが重要ではないか。人が集まっているから賑わいだというわけではなく、何か一緒に作っていくというイメージが強く賑わいを作っていくのではないか。それが環境を作っていったり、文化を作っていったり、教育を作っていったりする。
正司座長
委員のおっしゃる点をある程度意識しているから「演出」という言葉を使っているのだと思うのだが、それが後に出てくるものとうまくかみ合っていないから問題指摘を受ける結果になっている。そもそも方策が政策体系になっていない。4ページの都心交通体系に求められるものの「都心の活性化につながる交通体系」と「都心の機能強化に資する交通体系」の2つ以外は、交通体系を反映した方策になっていない。3つぐらいに絞れるのではないか。見直していただきたい。
また、「堺駅、堺東駅への集約機能」とあるが、たくさんの人たちが集まってきて、その人たちを支えないといけないという議論と、「駅への集約機能」という言い方とは取り方が違うのではないか。
交通軸という表現があるが、そもそも論としては堺市の交通軸、そしてそれを担う交通機関は大阪市へ向かう南北方向の鉄道である。これ無しで堺市は考えられない。しかし、それでも堺市には一定の中心性を保持していることは本日の最初の資料でも議論されたところである。しかしこれから施策的に便利なところに魅力ある地区を作らないと完全に悪い意味でのベッドタウンになるのではないか。南北軸のようなたくさんの流動を捌く軸とは違った話をされようとしているのだが、それだけに、そこで求められる交通は、田中先生がおっしゃったようなことは当然大切な視点にならざるを得ない。市民の方に政策としてどういう体系になっているのかを提示しないと、個々の方策の手法の羅列ではかえってわからなくなる。
一番論議を呼ぶものは一番議論しなければいけないテーマだと思う。その議論を後回しにすればするほど、どのような手を打っても反応しなくなる。
ところで、「民設民営」という言葉があるが、バスは税金で作った道路を走るので「民設民営」と表現してはよくない。表現を修正してほしい。
原田技監
方向性の議論について、今日の資料はまだ十分まとまっていないところがあった。ご指摘の点、特に他の交通施策やまちづくり施策と今回のテーマとの関係性が十分ではなかったと考えている。賑わいの効果がどうかという議論もあり、定性的になるかもしれないが、都心交通とまちづくりなどの他の施策との関係性を深めていきたいと考えている。国のほうでも交通政策基本法ができて、我々も市全体で施策を考え直さなければいけない時期に来ている。
事業性については、我々もこの資料がそのまま一人歩きするのは望ましくないと考えている。しかし、今回は収支などを示して、市としてどれぐらい財政支出が必要なのかというところのオーダー感を、比較をもって検討するという単純化した話をさせていただいた。ご指摘のとおり、前提の置き方や他の交通施策との関係性などをあまり議論せずに比較をさせていただいたのだが、手法によってこれぐらい差があるという話と、定性的になってしまうと思うが、単純に人を運ぶというだけではなくて、まちづくりの観点からこういう手法を使うとこういう効果があるというあたりも踏まえてまとめていきたいと思っている。
また、「民設民営」や「公設民営」というざっくりとした書き方になっていて、公設民営だから償還がゼロになるという非常に粗っぽいことをしている。ここでは公設や民設といった経営の議論をするものではなく、あくまで今回は建設と運営を分けるとどのぐらいになるかという比較を行ったということである。
閉会
事務局
本日は様々なご意見、ご議論をいただいた。事務局で整理をして、場合によってはご相談させていただきながら準備を進める。さらにお気づきの点あれば、後日事務局までお願いしたい。
次回の日程については、またご連絡させていただく。以上で第5回の都心交通検討会議を閉会させていただく。ありがとうございました。
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