駆け落ち

○　堺市博物館・前

公務員のヤマモトがうろうろしている。
ヤマモト「うーん…ここで入ったら不法侵入…。でも彼女を迎えに行かないと…。」
声「おい！！そこの怪しいやつ！！泥棒か！？」
ヤマモト「え！？えぇっ！？ち、違…うこともないか…？」
声「なんだ違うのか。」
ヤマモト「あっさり信じた！？っていうかどこにいるんだ…？」
声「ここだここ」
冑（かぶと）、登場。
ヤマモト「う、うわーっ！！なんだ！？亡霊！？」
冑「違う、違う。俺はただの冑だ。」
ヤマモト「冑…？いや、冑がしゃべってもおかしいだろ！？てか外に出てるし！？」
冑「ちょっと風にあたりに来ただけだろー。いいじゃねぇか。」
ヤマモト「いいのかそれ！？」
冑「あ、あんた誰かと思ったら、よく巫女形埴輪を見に来る…」
ヤマモト「え？」
冑「俺だよ俺！！」
ヤマモト「オレオレ詐欺かよ。…あぁ、巫女さんの隣の…」
冑「そうそう。まぁ、立ち話もなんだし、入れよ。」
ヤマモト「え！？いいのか…不法侵入じゃ…？」
冑「いやいや、俺が許可してるんだからいいだろ。」
ヤマモト「そうじゃなくて…」
ヤマモト、もぞもぞする
ヤマモト「…俺、実はあの巫女形埴輪と駆け落ちしに来たんだ。」
冑「はぁ！？お前、まさか…」
ヤマモト「あぁ、俺、実は巫女形埴輪が好きなんだよ…。」
冑「…悪いことは言わないからやめといた方がいいぞ。」
ヤマモト「…え？なんで？」
冑「まぁ、会ってみれば分かるから、会ってきてみたらどうだ？」
ヤマモト「…？」

○　同・中

ヤマモト、巫女形埴輪の前に行く。
ヤマモト「え、えーっと…巫女形埴輪さん…」
巫女「様よ！」　
ヤマモト「…へ！？」
巫女「巫女様と呼びなさい！！」
ヤマモト「あ、えっと…巫女様、俺と、その…駆け落ちしてください！！」
しばらく静かに。
巫女「嫌よ。」
ヤマモト「えぇっ！？フ、フラれた…？」
巫女「まぁ、わらわに目を留めた点については褒めてあげるけど。私はここの女王なの！！ここから出るなんて考えられないわ！！」
ヤマモト「そ、そんなぁ…」

○　同・前

ヤマモト、ウキウキしながら戻ってくる。
冑「な、なんでウキウキしてるんだ？」
ヤマモト「遠距離恋愛することになったんだ！！」
冑「はぁ！？」
ヤマモト「ガラス越しの儚い両想い！なんてロマンチックなんだ…！！」
冑「…それでいいのか…っていうか、あのキャラ好きになれるのか…？」

（二木桜子、藤間初穂　平成26年8月19日　作）