ドラマ原作「利休の相談室」
更新日:2023年8月17日
○ 芽依以外誰もいない天王寺駅(夜)
階段につまづきそうになる白鷺芽依(22)。
芽依「向いてないのかなあ…」
うとうととしだす。
○ 走る阪堺電車内(夜)
揺れで目が覚める芽依。
現在地を確認しようと、ふと横を見ると電車中央で利休がお茶を点てている。
芽依「えっ?」
利休は気付いていない様子芽依は利休をジロジロと見つつ
芽依「今日ってまつりだっけ?」
芽依の視線に気付く利休。
利休「あんた何見てんのよ?」
芽依「す、すいません」
利休「ジロジロ見るなんて失礼よ」
二人無言になり、利休のお茶を点てる音だけが車内に聞こえる。
利休「女が車内で寝るなんて不用心よ。何か疲れることでもあんの?」
芽依「い、いえ。別に。」
利休「人に話したら楽になることもあるわよ。」
利休「…あたしは利休。あんたは?」
芽依「…利休って…あの千利休ですか?」
利休「そうよ。文句ある?」
芽依「そ、そうなんですか。」
利休「それより、さっさっと名前、言いなさいよ。」
芽依「…うちは白鷺芽依です。」
利休「いい名前ね。」
芽依「ありがとうございます。」
利休「…てっ、話す気になれた」
芽依「あの実は、うち―(芽依は自分の悩みについて言う。自分が図案のことをしたかったこと。でも、販売にまわされたこと。人見知りでいつも怒られてしまうこと。)」
利休「そう、そんなことがあったの」
芽依「不思議ですね…。うち、昔からすごい人見知りやのに、利休さんとやったら、普通にしゃべる…。」
利休「私もあんたとは初めて会った気しないわ。」
芽依「私、どうしたらいいんですか?辞めためたいけどこんな不景気じゃ、もうチャンスないかもしれないし、でも、もう耐えられない!」
利休はお茶を点てていた手を止める。
利休「あんた甘いわよ…。その話を聞いてる限りじゃ、あんた全然してないじゃない。本当にしたい事なの。」
芽依「したいに決まっているじゃないですか」
利休「なら努力しなさいよ。上司に頼むとかしたの。」
芽依「…」
利休「そういうこともしてないのにぐちぐち言うんじゃないわよ。」
芽依「…ごめんさない。」
利休、芽依にお茶を出す。
芽依「苦っ」
利休、芽依をにらむ。
利休「いろいろ言ったけどね、あんたのしたいようにしたらいいのよ。あんたの人生なんだから。」
(利休、窓にまたがる。)
利休「がんばりなさいよ」
(窓から飛び降りる)
芽依「利休さぁーん!」
○ 船尾と浜寺の間(夜)
車掌の声で目覚める芽依
車掌「次は~、浜寺~、浜寺駅前」
芽依「利休さん!?…って夢…」
(電車の中には芽依しかいない)
芽依「そっか…寒っ!?風?」
(利休が飛び降りた窓が開いている)
芽依「利休さん、私がんばるね!」
意気揚々と電車を降りる芽依の髪を電車の窓からの風がなびかせている。
(楠本あかり、加藤一真 平成25年12月14日 作)
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