第4回授賞式詳細
更新日:2015年4月14日
主催者あいさつ
堺市長 竹山 修身
21世紀は、平和と人権の世紀と期待されておりますが、今もなお、世界では、紛争や貧困、飢餓、感染症の蔓延、人権侵害などによりまして多くの人々の生命や尊厳が脅かされています。
基本的人権の尊重や平和社会の実現と維持は、国際社会における共通の原理であり、日本国憲法や世界人権宣言の理念とするところです。 私たちは、国際社会の一員として、世界に存在するさまざまな課題に対し、関心を持ち、国際平和の実現のために何ができるかを考え、行動することが重要です。
第4回となりました自由都市・堺 平和貢献賞は、アジア・太平洋地域の平和に貢献された方々を顕彰することを通じ、堺から世界に向けて、かけがえのない平和の重要性を発信するとともに、地方自治体として平和社会の実現に貢献することを目的としております。
本賞の受賞者の皆様は、それぞれが国内外におけるさまざまな課題に対して努力を続けられている方々です。本日、ここに多くの市民の皆様にご臨席いただき、受賞者の皆様の功績を称え、授賞式を挙行できますことを、大変嬉しく思っております。
本市といたしましては、今後も、この賞を通じて、平和と人権尊重の確立のため地道に活動されておられる方々を応援し、国際平和の実現に貢献してまいりたいと思います。
最後になりましたが、第4回自由都市・堺 平和貢献賞の授賞式を開催するにあたり、多大なるご尽力を賜りました選考委員会の皆様をはじめ、朝日新聞社並びにご協力いただきましたすべての皆様に心からお礼申し上げますとともに、今後とも、なお一層のお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
(授賞式プログラムから)
来賓あいさつ
堺市議会議長 大毛 十一郎
第4回自由都市・堺 平和貢献賞の授賞式の開催にあたり堺市議会を代表いたしまして一言ご挨拶を申し上げます。
はじめに、国際交流の会とよなかの皆様、テラ・ルネッサンスの皆様、第4回自由都市・堺 平和貢献賞のご受賞、誠におめでとうございます。皆様が国内外において様々な課題解決に大きく寄与されていますことに深く敬意と感謝の意を表する次第でございます。
さて、今なお世界は人権侵害をはじめ、貧困や飢餓など、人々の生命や身体並びに尊厳が脅かされる問題が数多く存在しており、非常に胸が痛みます。すべての人々が、安心して暮らすことができる社会を築くためには、お互いを理解し、尊重しあうことが何より重要であります。受賞された皆様におかれましては、平和社会の実現に向けまして、引き続き、ご尽力を賜りますようお願い申し上げます。
堺市議会といたしましても、これまで、「人権擁護都市宣言」、「非核平和都市宣言」の決議を行うなど、基本的人権の尊重と平和社会の実現に向けて、取り組んでまいりました。今後も「堺市平和と人権を尊重するまちづくり条例」の理念に基づき、平和と人権の視点を持って、堺から世界に向けて、国際平和と人権の大切さを発信できるよう真摯に議論を重ねてまいる所存でございます。
最後になりましたが、この自由都市・堺 平和貢献賞を通じて、多くの人が国際協力、貢献活動に対する理解と認識を深めていただくことを期待いたしますとともに、本日受賞された皆様並びにご臨席の皆様のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、お祝いの挨拶とさせていただきます。
後援社あいさつ
朝日新聞大阪本社 池内 清編集局長
朝日新聞社を代表いたしまして、ごあいさつとお祝いを申し上げます。
今回、受賞されました国際交流の会とよなか及びテラ・ルネッサンスの皆様、本当におめでとうございます。
竹山市長のご挨拶にもございました通り、両団体の活動の共通点は「グローバル」ということだと思います。二つの世界大戦があった戦争の時代である20世紀が終わり、21世紀は、情報や商品、ヒトやマネーが世界中を行き交う「グローバリズム」の時代となりました。しかし、期待は裏切られ、世界各地で紛争、戦争が絶えません。ただ、かつてない人々の交流は、互いを知り合い、認め合う第一歩だと考えます。
国際交流の会とよなかは、1985年から、祖国を離れ、見知らぬ土地で生活をする不安や、言葉や習慣の違いに悩む人々を温かく受け入れ、支援を続けてきました。就学や子育て支援に加え、母国料理を提供するカフェの運営など、日本社会を世界の人々に開こうという思いが込められています。また、ネパールの子どもたちを支援する運動こそは、次に時代を担う世界市民を生み出すに違いないと思います。
テラ・ルネッサンスは、21世紀の冒頭に生まれ、カンボジアでの地雷撤去活動などの支援に取り組んでおられます。元子ども兵の社会復帰プロジェクトにも取り組んでおり、ウガンダを皮切りにコンゴ、ブルンジと活動を広げています。まさに、世界規模の活動だと思います。憎しみの連鎖を断ち、平和への道筋を世界で広めようという壮大なプロジェクトに拍手を送りたいと思います。
「都市の発展には平和が欠かせない」との理念のもとに創設された本賞も今回で4回目となりました。一自治体としては異例の取り組みを続けてこられた堺市と、川島慶雄先生をはじめとした選考委員会の皆様には心から敬意を表します。あわせて会場にお集まりいただいた皆様のさらなるご支援をお願いして、挨拶とさせていただきます。
受賞者あいさつ
国際交流の会とよなか 葛西代表
このたびは、第4回自由都市・堺 平和貢献賞を受賞させていただき、誠にありがとうございます。
国際交流の会とよなか(TIFA)が、国籍や文化の違いにかかわらず誰もが暮らしやすい社会をめざして一歩一歩進んできた地道な活動を評価し、受賞させていただけたことに感謝し、今まで歩んできた仲間や周りで支援を続けてくださっている方々と喜びを分かち合いたいと思います。
今から30年前の発足当初は、地域に住む外国人は、留学生や研究員・駐在員などとその家族位でしたが、徐々に、就労、研修、日本人の配偶者などの人たちも増え、日本語でコミュニケーションができ、生活基盤を作る手伝いから日本での生活でのトラブル解決等を経て、活躍の場を作るなどと広がり、市民の力がますます必要になってきています。
日本に住み始めた人たちとは、地域での生活がスムーズに出来るように、日本語の手伝い、生活支援、相談相手などの支援からはじまりますが、この人たちは、言葉が出来、生活に慣れるにつれ、地域住民にとって大切な存在になっていきます。自分たちが持っていなかった考え方、価値観があることを彼らから学ぶことが出来、多文化を持つ人たちと共に生きる社会は、私たちの生き方・考え方をゆたかにしてくれています。
言葉や習慣がよくわからない、子育てしながら仕事を見つけるのが難しい、といった段階の外国人の就労の場として、2012年にいろいろな国の料理と喫茶の店「カフェ・サパナ」を開業しました。食材の調達、接客、言葉の不安など家庭と両立させながら取り組んできて、今では皆プロのシェフの意識を持って主体的に運営しています。お客様には料理を通してその国の文化にふれ、身近に感じていただける機会になっています。
将来を託す子ども達のために、財産になった多文化を持つ人材の活躍の場として、国際教育の講師として学校からの依頼をうけて派遣するだけではなく、学校の枠を超えて、「アジアの音楽やおどりを楽しもう」や「世界の打楽器を楽しもう」などのシリーズを展開し、保育園・小学校、公民館、ホールなどで、音楽やおどりを通して、また毎年実施する「TIFA国際子どもキャンプ」などで世界の多様な文化のすばらしさにふれ、国際的な視野を育てる場を作ってきました。
活動の中で知り合った人達からの要望で始まった海外活動は、色々ありますが、タイとの関係は、現地の中・高校や大学との相互交流に発展し、日本語教師を派遣したり、若者交流ツアーを相互に数回実施しました。フィリピンやベトナムの子ども達の支援の後、インドネシアの地震の際は、留学生会と協働して壊れた小学校の再建、スリランカの津波災害時の支援活動など直接現地へ出かけて協力してきました。
海外の中で20年間続けているのはネパールの田舎の女性と子どもの自立支援です。
支援の必要な子ども達の里親になっていただき子どもを通して相互理解を深める、現地の女性達が作った縫製品、キルト製品、手織りショールなどを日本へ持ち帰り、売り上げを現地の人たちへ渡すフェアトレード以上のダイレクト・トレードで現地の女性たちの自立を支援する形が軌道に乗り始めています。このような支援活動を周りの皆さんと一緒にすすめるなかで、多くの方々がネパールの人たちの状況を知り、同じ地球上の人間同士として協力関係が出来てきました。現地の女性達の生活は徐々に改善され、村の様子、人々の意識・表情が変わってきているのを感じます。
国籍や文化の違いにかかわらず誰もが暮らしやすい社会をめざす私たち市民の活動はこれからも時代のニーズに合わせながら続けて行きたいと思います。
ありがとうございました。
受賞者あいさつ
テラ・ルネッサンス 小川理事長
このたびは、自由都市・堺 平和貢献賞に表彰いただき、大変光栄に思います。心より感謝申し上げます。
認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、京都に本部を置き、地雷・子ども兵・小型武器の課題に取り組む団体です。2001年カンボジアの地雷撤去支援からはじまった支援活動が、この13年間でウガンダ、ラオス、ブルンジ、コンゴ民主共和国と活動地を広げ、岩手県にて復興支援を行うまでに至りました。まずは課題を知ってもらうことからと日本国内での啓発活動にも力を入れて、全国各地で講演活動を行っています。これまで堺市内の小学校でも講演の機会をいただくなど、現在約25人の堺市在住の方にも定期的に活動にご協力いただいています。
私どもが活動を行うウガンダでは1986年に内戦が始まり、その内戦の中で、多くの子どもが誘拐され、兵士として戦わされてきました。当会は2005年よりそのウガンダにて、逃げて帰ってきた、あるいは、政府軍との戦闘時に助け出された元子ども兵に社会復帰支援を続けています。
私は、そのウガンダで活動の立ち上げから、6年間駐在員として活動を行ってきました。ウガンダで、元子ども兵たちが困難な状況であったとしても、変化・成長していく姿をみる中で、やっぱり人は変化をすることができますし、未来をつくることができると強く信じられるようなりました。
そして、ひとりひとりの状況に応じて、支援を続けていくと、全員が変化していくのが目に見えてわかりました。だからこそ、一部の人ではなく、すべての人に未来をつくる力があると信じられるのです。
過去を変えることができないけれど、未来は変えられるということも、合わせて実感しています。元子ども兵の支援では、彼らの弱い部分に、まず焦点を当てて、それを取り除こうとするのが、一般的な支援です。つまり、その子が、怪我をしていたら、怪我を治し、心に傷を負っていたら、その傷を治療してあげなければいけないということです。
けれども、現場で支援に取り組む中で、治療する、悪い部分を取り除くというアプローチだけでは、十分ではないと思うようになってきました。つまり、PTSDやトラウマの原因になっている「過去」をみているだけでは、本質的な解決にならないと考えたのです。
元子ども兵の抱えている過去ではなく、その元子ども兵が持っている何らかのちからに着目して、その能力を信じて、引き出すための支援を行うことが重要だと思います。過去ではなく、今に注目する。すると、元子ども兵たちが、未来に向けてそのちからを伸ばしてくるのです。そして、自立への道を一歩ずつ歩み始める。だからこそ、過去は変えられなくても、未来は変えることができると信じることができるのだと思います。
そして、その未来を変える力は元子ども兵だけでなく、私たちにもあることを本賞を通して、実感することができました。私どもの活動は、支援者の皆さま、ともに理念追求のために行動してくれるスタッフ、インターン、そして何より、ウガンダやコンゴ、ブルンジ、カンボジア、ラオス、岩手において、自らの「ちから」で立ち上がろうとする人々のおかげで継続することができています。多くの方の未来をつくろうという意志が集まり、本賞の受賞につながったと私は思います。
この度の受賞を通して、一人でも多くの方に地雷や子ども兵の課題、そして岩手県での復興支援の取り組みを知っていただき、関心が広がることを願っています。今後もテラ・ルネッサンスはスタッフ一同、心と力を合わせて、世界中の協力者とともに、すべての生命が安心して生活できる社会の実現をめざし、活動を続けて参ります。
この度は、誠にありがとうございました。
受賞者との対談
国際交流の会とよなか 葛西芙紗氏 筒井百合子氏
テラ・ルネッサンス 小川真吾氏 栗田佳典氏
【司会】 本日、自由都市・堺 平和貢献賞を受賞されて改めてご感想をお伺いしたいのですが。
【葛西】 本当に光栄なことで、思いもよらない、私どものような市民の活動を粛々と続けてきた者にとりまして、こんな栄えある賞をいただきまして感激しております。けれども、これはとても責任重大で、これからもきちんとしっかりした活動を続けていかなければいけないなということを身にしみて感じました。本当にありがとうございます。
【小川】 私たちは活動する中で、地域の人たちの持っている伝統とか文化とかそういうのを大事にしようとよく言っているのですけれども、どうしても平和とかというと国際的な話で、日本の地方都市の方々に関心を持っていただくのって非常に難しい面があるのですね。特に我々の活動資金の実はほとんどが民間の方々からいただいていまして、地方の方々にこういうお話をして賛同いただくと。そういう意味において、堺市のこの地域でこういうことを認めていただいて、受賞させていただけたということがすごく私にはうれしいことです。
【司会】 それぞれ活動されていて、最も印象に残ったことはどのようなことでしょうか。
【筒井】 活動内容については、先ほど代表のスピーチの中で大体触れましたが、私が事務局に入って15年余りですけれども、一番の大きなチャレンジというのが2年半前にTIFAカフェ・サパナを立ち上げたことです。それまでは本当に草の根のボランティア活動という形で個々の支援というのが中心だったのですけれども、それを目に見える形で何か拠点ができないかなということで、地域の外国の人たちが自分の国の文化をランチとして日替わりで紹介する、そういう場所を思い切ってお金もかけてつくったわけです。それは参加してくださる方には楽しい場所ですけれども、店舗の運営という非常に重いこともスタートしてしまいまして、今も四苦八苦しながらやっています。何とか軌道に乗せられたらと思っていますが、それが一つの大きな私たちのチャレンジになっています。
【司会】 外国の皆さんといいましてもいろんな国の方がいらっしゃいますよね。言葉の違いとかそのあたり、お話はどのようにされているのですか。
【筒井】 カフェの中では基本は日本語です。片言でも日本語。でも、日本語がなかなか通じない人もいますので、英語だったり、ジェスチャーだったり、筆談だったりと、そういう形で何とかやっています。
【司会】 外国の食べ物もいただいたりできるのですか。
【筒井】 ベトナムのフォーとか、インドネシア、台湾、韓国の料理とか、日替わりでやっていますので、豊中ですけれども、ぜひ皆さん、いらしてください。
【司会】 食を通じてまた交流も深まっていくということですね。
【筒井】 そうですね。それが一番楽しい部分です。
【司会】 テラ・ルネッサンス様から最も印象に残ったことをお聞かせいただけますでしょうか。
【栗田】 改めまして、NPO法人テラ・ルネッサンス、国内事業の担当をしております栗田と申します。よろしくお願いします。最も印象に残ったことなのですが、海外のこととかもたくさんありまして、本当に話し出すと1時間とか90分とかかかってしまいますが、今日はその中でも特に私が関係している日本国内での出来事を一つお伝えしたいと思っています。私たちは平和教育というものをとても大切にしておりまして、先ほど小川がお話しさせていただいた子ども兵の問題や地雷の問題を小学校や中学校でもお話しさせていただく機会をいただいています。その中で、私の子ども兵についての話を聞いてくれた大阪の小学3年生の子が、自分も何かしたい、子ども兵の人たちのために何かしたいと考えてくれて、私たちは要らなくなった古本をお金にかえてそれを活動費に充てるというプロジェクトをしているのですが、それにかかわってくれたのですね。白雪姫とかすごくかわいい本がたくさん集まったのですが、自分にできることというのを考えて、そして実際にアクションを起こしてくれたというのがとてもうれしかったです。
国際協力というのは別にお金を出す以外にもいろんな参加の方法があると思うのですね。その参加方法をたくさんつくっているのが私たちの一つの強みでもあるのですが、だからこそいろんな世代でこの活動ができるというのを私自身、小学3年生の子からも教わりましたし、もっともっとたくさんの世代を巻き込んでこの活動をしていきたいということを思ったエピソードです。ほかにもっとあるのですが、きょうはこのエピソードをお伝えさせてもらいました。
【司会】 皆さんがそういった活動をしてくださらないと、現状も日本の皆さんに伝わらないですし、子どもさんから返ってくる言葉とか行動はいかがでしたか。
【栗田】 本当に純粋に受けとめてくれて、すごく周りを巻き込んでくれるのですね。古本を集めるといっても、お母さんにこの古本を持っていっていいかと聞かないといけないですし、そうなるとお父さん、お母さんが何で集めるのってなると思うのですが、それは子ども兵の人たちを支援するためだよと子どもが自分の口でこの課題を言ってくれるというのはとても大事なことだと思うのですね。自分の言葉で子どもたちが家族に説明して支援を集めてくるというその取り組みも先生方もとても喜んでくださって、私自身もとてもどんどん輪が広がっていくのを目に見えて感じることができました。
【司会】 ありがとうございます。本当にうれしいことですよね。では、続いては、活動をされてご苦労されたことをお聞かせいただけますでしょうか。
【葛西】 一番大変なのは活動にはお金がかかりますから、活動資金をどう工面するかということです。
それから、今、実はちょっと困っているのはネパールの女性たちが自立しようとして一生懸命頑張って、縫製技術指導をして服をつくったり、織物を織ったり、それから今、キルト工芸というのをやりまして、とてもすてきなのをつくったからぜひ日本の皆さん買ってくださいといってどんどんつくって頑張っているのです。そうしたら、つくった人たちに作業費をきちんと払ってあげなければいけない。払ってあげたい。だけど、それを皆さんに理解していただいて売るということはやはり日本人の好みに合うものでなければいけないし、向こうで頑張っているその熱意を皆さんに伝えて、そして皆さんも喜んで買っていただくというか、そういうことの一つずつを克服していくのに、お互いに意見を言い、こちらからこのほうがいいよとかというアドバイスをしながら、それは逐一やっていかないとできませんが、そういうことで大変苦労しております。
小さなランチョンマットからベットカバーまで、すごく張り切ってつくって
おりますので、また機会がありましたらぜひ一度、買っていただかなくても、ご覧いただくだけでもいいですので、よろしくお願いいたします。
【司会】 テラ・ルネッサンスのお二人はご苦労されたこと、こちらは大変危険なこともされていらっしゃるので、本当に大変だなと思うのですが、いかがでしょうか。
【小川】 よく聞かれる質問なのですけど、いつも思い浮かべても、実は自分自身が苦労したなと思う経験って余りないのですね。後になって客観的に見ればあのとき大変だったなとかはよくあるのですけど、例えばさっきマラリアのお話をしましたけど、私自身もマラリアに4回感染しているのですね。マラリアって本当に怖い病気で、今、世界中で100万人の命を奪っていて、アフリカだと本当に一番大変な病気で、放っておくと亡くなったりもするのですが、それは後で思えば大変だったのだろうなとは思うのですけども、自分の中ではあまりそういう認識がなくて、むしろ事業をやっていて大変だなと思うのは、支援等をしてくださる方々にどのようにアプローチすればいいのかということ。例えば現場で食べ物が足りてないというニーズもあるけれども、もっときめ細かなサポートをしなければいけない。そのためには人を雇って動いてもらわなければいけないというニーズがあったときに、それを日本の人にわかりやすくどうやって伝えるのか。建物を建てるとか食べ物がないというと、緊急だからと御支援いただく方が多いのですけど、でもそれ以上に大事な活動があって、それをどうやって日本の方に伝えるのかというのが一つ大きな課題というか、苦労している点かなと思います。
ちょうどうちの財務、会計を見ているのが彼ですので、私以上にその辺はシビアに苦労しているのかなと思うので、彼からも一言、お願いしたいのですけど。
【栗田】 日本国内でもいろいろと苦労はあるのですが、やはり関心を集めるというのがなかなか難しいことでもありまして。どうしても活動にはお金が必要なのですね。そのお金を集めるためには、何よりも関心を集めることが大事だと思っています。だからこそ、学校もそうですし、企業さんでもそうですし、いろんなイベントに出ますし、とにかく私たちから発信していくというのが大切でして、あとは学生の仲間たちの力もかりながらとにかく発信していくということをこれまでずっと続けてきたのですが、そういう伝えるということ、そして関心を集めていくというのがこれまでいろいろと苦労したところです。
【司会】 先ほどもおっしゃっていましたが、例えば、アフリカ等での支援の中で、日本との生活環境の違いから特別なご苦労もあるのではないですか。
【小川】 アフリカというとどうしても貧困だとか紛争だとかネガティブなイメージがあると思うのですね。そうではなくて、アフリカ全体のことを包括的に皆さんにいかに知っていただくかということが大事だと思うのです。そうすると、日本と意外と共通している部分もたくさんあって、例えば東北で震災があった後、毛布を送ったり、食べ物を送ったりということをしていた段階から、徐々にテレビのワイドショーなんかでも、物を送るだけじゃだめで現場のニーズに沿った形で何か、コンタクトレンズが必要だとかという現場のニーズが大事だと、そういう声がワイドショーでも出てくれば、日本の方々はそれを理解してそれに合ったサポートをする。それはなぜできたかというと、東北のことを多分、知ったからだと思うのですね。なので、アフリカであってもアフリカの人たち、アフリカのことを日本の方々により知っていただく、そのことで、アフリカで職業訓練であろうと、それに付随するいろんな現場のニーズに合った活動が大事だという認識を日本の方にも持っていただけるのかなと思います。
【司会】 まずは相手を知るということですね。ありがとうございます。
それでは、続きまして、活動される中で最も大事にしてきたこと、また常にこうやっていこうと意識してきたことというのはどのようなことでしょうか。
【葛西】 一番のモットーは、相手の話をよく聞いて、相手が何を必要としているか。それに対して何をするのが一番ふさわしいかということを一方的にこちらが考えるのではなくて、相手のニーズと思いを考えて活動する、それが一番大切。相手の人格と立場を尊重して、そこでお互いに助け合えることは何があるだろうかというところを必ず同じ目線でやっていくというのを私のモットーにしています。
【司会】 では、テラ・ルネッサンス様はいかがでしょうか。
【栗田】 最も大事にしてきたこと、常に意識してきたことなのですけれども、もちろん現地で元子ども兵の人たちに対して、あるいは地雷の被害者や貧困層の人たちに対して何がないかというのを探すのも大事なのですけれども、その人たちに何ができるか、何があるかというのをしっかりと考える、知るということ。本当に今、おっしゃっていただいたように、相手を知るということはとても大事だと思いますね。私たちはかわいそうな人として見るのではなくて、その人たちには本当に未来をつくっていく力があるのです。それをいかに引き伸ばすことができるか。例えば元子ども兵や地雷被害者の方々の中に種があるとして、それを品種改良することではなくて、その種がちゃんと育つようにどのような環境をつくっていけばいいのかというのを私たちは常に考えて活動を行ってきました。
【司会】 ありがとうございます。
では、今回のこの受賞をきっかけに何かこれからはこうしていこうというお考えはありますか。
【筒井】 30年間、葛西代表を中心に引っ張ってきた会で、例えばこの賞をきっかけに急に何か新しくなるとかそういうことはなくて、今までの延長で続いていくとは思うんですけれども、ここにも何人か来ていますが、担ってきた人たちの今までの活動をここで振り返って、来年、30周年になりますのでそれを機に、私たちの国際交流の会とよなかの女性中心の生活者としての市民活動といいますか、その目線での、市民レベルでの活動という、そういうカラーは保ちながら、これからどういうふうに日本社会が進むのか、国はどういうふうな政策で外国人を入れていくのか、そのあたりもきちんと勉強し、私たちもアンテナを張りながらそれに対応して、国に対して言うべきことは言うぐらいの気概を持って、しかも市民レベルの隣人としての支援を続けていきたいと思っております。
【司会】 この30年でいろいろ変わったと思うのですが、どういったことが変わりましたか。
【葛西】 最初のときは支援というか、こちらからしてあげようというような姿勢があったと思うのです。でも、これからは私たちが得る、お互いが対等の立場でもっと多文化のよさを生かして、誰もが国籍に関係なく、みんなが同じように幸せに生きていくということと同時に、この社会がもっと豊かなもの、そのことによってもっと豊かになるようにしなければいけない。そういうふうに時代が流れてきておりますから、その中でいかに多文化のよさを生かして、日本をもっとすばらしいものにしていくかというところがこれから課題になると思いますので、どんどん変わっていく時代に合わせて、私たちの活動ももっと役に立つことをやっていきたいと思っております。
【司会】 今、メンバーは何名ぐらいいらっしゃるのでしょうか。
【筒井】 90人近く。
【司会】 たくさんいらっしゃるのですね。
【筒井】 私たちは会員制度なのですけれども、支援していただく、お金を出していただく会員ではなくて、活動する会員が90人ぐらいです。そのほかにも支援だけの方もいますけれども、活動するということが会員になる条件です。
【司会】 支援していただける皆様は豊中市の方じゃなくても大丈夫なのですよね。
【筒井】 はい。海外でも結構です。
【司会】 ありがとうございます。では、テラ・ルネッサンスの皆様はいかがでしょうか。この受賞をきっかけに何かお考えはありますか。
【小川】 冒頭に申し上げましたように、堺市でこのような評価をいただいたということが非常に大きいですので。私も実は実家は和歌山でして、そんなにここから遠くないのですけど、田舎に行けばいくほど日本のよさとか伝統って結構いろいろ見られると思うのですね。僕がこれを機にやっていきたいなと考えていることは、日本人らしい日本のNGOらしい国際協力、そういうものをもっと深く考えていきたいなというのが一つあります。
アフリカで活動しているほとんどのNGOというのは欧米のNGOなのですね。もちろん彼らがやってきた業績とかノウハウとか学ぶべきところはたくさんあるのですが、一方でその欧米的なやり方だけではアフリカはよくならないというのが実は私自身の主観なのですね。そういったときに、日本らしい価値をベースにしたNGO、市民社会がもっと国際社会で活動していくというのが非常に大事だと思うのです。例えば日本人は八百万の神様、108つも神様を信じていた。向こうの人からすると何かよくわからないという、クリスマスもお祝いすれば、お正月もお祝いしてという。その曖昧なところというのは、ネガティブなふうに見られることもあるけれども、でも我々の強みでもあると思うのですね。これからますます世界が多様化していく。その中で人口を見たって、これからアジア、中国なんかがどんどんふえてきて、世界がどんどん多様になっていく中で、私は日本人のような多様性を認められるような価値観、そういうものをベースにした何か組織というものは、NGOに限らないかもしれませんけれども、非常に重要だと思うのですね。なので、まずは我々の組織として日本らしい援助のあり方、そういうものを追及していく、今回、地方で、堺でこのような受賞をしたのを機に、もっと深く考えて実践していきたいなというふうに思っています。
【司会】 テラ・ルネッサンスの皆さんは、最初は学生さんもいらっしゃって、今もいらっしゃるのですか。
【小川】 そうですね。学生といいますか、インターン生が今18人いるのですけれども、職員は全部で、現地職員も合わせると38人です。学生のインターン生、学部生、院生、社会人も若干いるのですが、彼らが主力といいますか、国内では動いてくれていますし、彼も実はもともと学生時代から2年間インターン生をして、テラ・ルネッサンスとして初めて新卒採用して、唯一でもあるのですけれども、採用したスタッフでして、今はもう7年目ぐらいになるのですが、そういう若い世代が主力というのがうちの一つの特徴、強みでもあり、弱みでもあると思います。
【司会】 それでは、最後になりましたが、これからこんなことをしていきたいという展望、夢をお聞かせください。
【葛西】 これからはどんどん国籍に関係なくいろいろな人が行き来する時代になってまいりますので、誰もが同じように幸せに暮らせる、国籍に関係なく就職先や活躍の場が広がるということがもっと当たり前のようになっていくのを私は望んでいます。今は、まだ就労先や活躍の場が限られておりますので、とてもすばらしい人材がたくさんいますから、そういう人たちを活用して、もっと多文化共生社会としたほうが日本の社会もずっと豊かになると思いますし、そうなるのが夢です。
【筒井】 外国人の活躍の場を広げるとともに、多文化共生社会というものを実現するためには、日本人も変わらなければならないと思います。今、テレビとかインターネットで世界じゅうの情報が入ってきますよね。テレビでも旅行番組とか、世界の隅々までの情報が入ってきますけれども、実際に外国の人と触れ合う機会というのがまだまだ少ないのかなと思います。すぐそこに外国人が住んでいてもなかなか話す機会がないとか、話すのをためらうというのがまだ今の日本社会の現状だと思いますので、小さい範囲ですけれども、サパナでおいしい御飯を食べながらその国の話を聞くとか、何か触れ合うきっかけを少しでも提供していけたらいいと思いますし、そういう場所がほかの地域にもどんどん広がっていってくれたらいいなと思って、これから頑張りたいと思います。
【小川】 今、私たちがめざしている地雷の問題であるとか、小型武器の問題、子ども兵の問題が解決するようにこれからも活動を続けていきたいと思っているのですが、そういう大きな物事に取り組んでいくときに、私たちの組織、団体の内部のことになるかもしれませんけど、先ほど若い団体と言ってくださったんですけれども、私自身もまだまだ若輩者なんですが、やはり若い世代に任せるということを私はもっと意識して、どうしても自分が現場でやってくると、自分の思いとかやり方とか多くを教えてしまいがちなのですけれども、そういうときに若いスタッフに任せる。本当は一から十までしなければいけないことがあって、一から九まで説明してやらせるほうが結果いいだろうという意識があっても、一から三ぐらい教えて、それ以降は任せていく、そういうふうにして若い人たちを育成していく。その中で私自身にもまた新しい役割が多分あると思うのですが、どんどん自分ができることを若い人たちに任せて、活動を大きく広げていく。そのことで我々が解決したい問題に取り組んでいく、そのような展望を今は抱いています。
【栗田】 私の展望なのですけれども、今、小川が言ったようなたすきをちゃんと預かりまして、それを次の世代につないでいく役割が私たちの世代にあるのかなと思っています。本当に究極なことを言えば、私たちのような活動が必要とされなくなる社会、つまり平和な社会になれば私たちの活動も必要とされなくなりまして解散ということにもなるのですが、その社会をめざしていくためにはどうしても仲間が必要なのですね。その仲間をどのようにして集めていくのか。そして、その仲間をどのようにして平和の担い手の中心となるメンバーとして育てていくのかというのが重要なポイントだと思っています。今日も学生のメンバーが来てくれているのですが、先輩方から受け継いできたたすきをちゃんと次につないでいけるように私自身、これからも全速力で駆け抜けていきたいと思っています。
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