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贈賞理由報告

更新日:2012年12月19日

自由都市・堺 平和貢献賞選考委員会 川島 慶雄 選考委員

 本日は、ご多忙の中、第2回自由都市・堺 平和貢献賞授賞式に多数ご参加いただき、ありがとうございます。
 選考委員会を代表しまして、今回の選考理由につきまして、ご報告申し上げます。
 今回の選考におきましては、昨年6月から国内外の500の有識者や研究機関などに候補者の推薦依頼を行い、推薦のあった21の個人・団体について、選考を行ってまいりました。
 その結果、選考委員会は、大賞に田内 基(たうち・もとい)氏、奨励賞に長瀬アガリン氏、アフガン孤児支援ラーラ会を選びました。
 大賞の田内氏は、韓国の孤児院木浦(もっぽ)共生園で30年間に3,000人もの孤児を育て、「韓国孤児の母」と呼ばれた日本人田内千鶴子氏と尹致浩(ゆんちほ)氏との間に、韓国木浦市で生まれました。父が行方不明となり、ひとりで孤児院を運営していた母の死後、1968年に同園園長に就任されました。1982年に来日し、在日韓国・朝鮮人の高齢者の孤独死が相次ぐという問題に直面し、在日韓国・朝鮮人の高齢者が故郷に近い環境で安心して暮らすことのできる老人ホームづくりをめざして、88年に日本の社会福祉法人こころの家族の理事長に就任、1989年に堺市内に老人ホーム「故郷の家」を開設されました。その後も、1994年に大阪市生野区にデイサービスセンター、01年に「故郷の家・神戸」、2008年に「故郷の家・京都」を開設され、在日韓国・朝鮮人の高齢者の福祉の向上とともに、日韓の国際交流・理解にも貢献しています。
 在住外国人が増加し、国際化の進展する日本社会において、多様な背景を有する高齢者一人ひとりが、どのようにして生涯を全うしていくかということは、多文化共生社会の重要な課題です。この課題に対して市民の立場から取り組み、社会の共感を得て展開する田内氏の活動は、モデルケースとして、非常に意義深いものであり、個人の尊厳の追求が保障されたユニバーサル社会・共同体の実現に大きく寄与するとともに、多様性のあるより自由で寛容な社会づくりという面からも、高く評価されるものです。
 続きまして、奨励賞でございます。2組の方々を選出いたしました。
 まず、お一人目の、長瀬氏は、フィリピン・ミンダナオに生まれ、現在は埼玉県に在住、KAFIN(川口フィリピン人会)の代表をされておられます。
 フィリピンでは、第二次世界大戦後、フィリピン南部のミンダナオ島で独自の文化を築いてきたイスラム教徒と政府が対立、1970年に戦闘がはじまり、多くの犠牲や避難民が生まれました。2003年には、一時、停戦合意がなされ、国際停戦監視団により断続的に和平交渉が続きましたが、現在も治安は、回復せず不安定な状態が続いています。
 また、日本には、現在、約20万人のフィリピン国籍の人が滞在していますが、日本社会の中でさまざまな問題を抱えています。
 長瀬氏は、フィリピン・ミンダナオに、1984年にムスリム・青少年団体を設立して以来、1990年にモロ女性センター、2000年にパササンバオ総合保健サービスを設立するなど、ミンダナオ紛争の被害を受けた女性や子どもたちに対する生活安定、自立支援事業を行なっています。
 1995年に日本人と結婚。1996年に来日し、1998年に日本在住のフィリピン人の互助組織KAFIN(本部;埼玉県蕨市)を設立。シングルマザーやドメスティックバイオレンス被害者の相談、支援をはじめ、フィリピン人母親の日本語教室、学校や地域でのフィリピン文化の紹介などにも取り組んでおり、現在では、全国6か所(東京、横浜、名古屋、大阪、群馬、長野)に支部ができています。
 自分自身がミンダナオ紛争の被害者である長瀬氏は、これまで紛争被害者の自立支援のためのサービスを提供するとともに、相互理解の上に立った平和構築活動に取り組んでおり、ミンダナオ紛争の被害者の方々の自由・自主・自律の保障、強化に向けた取り組みとして高く評価します。さらに、日本国内においてさまざまな問題を抱える在日フィリピン人女性を中心とする支援活動や多文化共生に向けた地域交流活動など、個人の権利、尊厳、可能性の追求が保障されたユニバーサル社会・共同体の実現に大きく寄与されています。
 次に、アフガン孤児支援ラーラ会です。同会は、奈良県生駒市を拠点に活動するNGOです。
 アフガニスタンでは、20年以上にわたる内戦状態の後、現在、新たな国づくりが進められているところですが、依然として、政情は、不安定であり、国民生活は、非常に厳しい状況にあります。女性の社会的、経済的自立が十分とは言えないアフガニスタンでは、紛争や病気で父親を亡くした子どもたちは、孤児と呼ばれ、その多くが、非常に貧しい状況に置かれ、家族から離れ、孤児院で生活したり、家族を養うため、過酷な労働を強いられたりしています。
 ラーラ会は、悲惨な状況に置かれている孤児たちを支援するため、2003年に設立、2005年には、アフガニスタン西部のヘラート州に新たな孤児院を建設し、州政府へ寄贈。現在は、ヘラート州内の孤児院の生活環境改善への支援や、生活物品の供与などを行なっているほか、現地で講師を雇用し、孤児院内で英語教室やパソコン教室を開設し、孤児たちの教育支援にも取り組んでいます。
 また、2008年に、ギリム織りと呼ばれる伝統的な敷物や刺繍などを作る「手仕事センター」を開設し、現地の貧しい女性を雇用し、経済的自立、生活安定を支援しています。
 市民の素朴な共感から生まれ、現地の実情に合わせ、細かな支援を行なうラーラ会のこのような活動は、困難な状況にあるアフガニスタンの子どもたちの生活環境の改善、教育機会の確保を図り、今後のアフガニスタンの市民生活の安定に大きく寄与するものであり、個人の権利、尊厳、可能性の追求が保障されたユニバーサル社会・共同体の実現に向けた取り組みとして高く評価するものです。
 受賞者の皆様には、心から敬意を表するとともに、お祝いを申し上げます。
 本日ご参加の皆様におかれましては、この自由都市・堺平和貢献賞は、世界で起こっているさまざまな事象に対して、困難に直面しながらも問題解決に向けて大変な努力を続けられている方々にスポットを当て、広く国内外に向けて平和と人権の尊さを発信し、これら世界で起きている問題を私たち一人ひとりの問題として認識し、国際平和の実現に貢献につなげていくものであるということをご認識いただきまして、今後ともご支援、ご協力くださいますようお願い申し上げます。

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市民人権局 ダイバーシティ推進部 人権推進課

電話番号:072-228-7420

ファクス:072-228-8070

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