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受賞者挨拶 奨励賞 長瀬 アガリン

更新日:2012年12月19日

 堺市長をはじめ、選考委員会の皆様、堺市民の皆様、朝日新聞社の後援者の皆様、受賞者の方々、そしてお集まりの皆様、こんにちは。
 この度は、第2回自由都市・堺平和貢献賞にご協力いただいた方々と、それに費やしていただきました時間と労力、そして私に信頼を寄せ、今年の受賞者の1人として選んでいただいたことに、感謝の気持ちを述べさせていただきたく思います。
 私はフィリピン南部のミンダナオ島の出身で、そこの住民は紛争の中で生きるのに必死です。家族を支えるために、多くの女性がやむを得ず日本や他の地域へ移住し、働いています。貧困や紛争の被害から逃れるため日本へ来るわけですが、それと引き換えにたくさんの問題を抱える危険を負い、時にはそうした危険性を来日するまで知らされないこともあります。
 歴史的には、戦後一番多くのフィリピン人が渡日したのが80年代前半で、この時期に何千人もの若いフィリピン人女性がこの流れに乗り、日本のナイトクラブやバーでエンタテイナーとして働き始めました。日本にはアジア随一の風俗産業があったからです。こうした産業には若くて能力や魅力のある女性が必要だったため、フィリピンをはじめとしたアジア諸国や他地域から非常に多くの女性が来日することとなりました。その中から日本人の客と結婚をする者も出てきて、社会的安定を手に入れましたが、必ずしも幸福を実感する人ばかりではありませんでした。
 このような状況が続く限り、フィリピン人の来日が絶えることはないでしょう。抜本的な対策により、多くのフィリピン人が直面する虐待的、搾取的、そして保護を受けられない状態をなくさなければなりません。フィリピンおよび日本両政府はこうした人々の権利を保護し、擁護する責任を果たすべきです。日本政府は、すべての移民労働者と家族の権利を保護する国連条約を未だ批准していません。ですから私は、堺市が日本で初めて平和と人権を尊重するまちづくり条例を制定されていることに感銘を受けました。
 日本で私は、KAFINの設立に取り組みました。同会は、地域社会を基盤とする非営利団体で、フィリピン人と日本人が協力してフィリピン人をはじめとする移住者の問題解決に取り組んでいます。
 日本で暮らすフィリピン人女性の中には、ドメスティック・バイオレンス(DV)、売春、そして強制労働などの被害を受けている人がいます。歌手やダンサーとして働けると約束されて来たのにもかかわらず、クラブや酒場のエンタテイナーやホステスをさせられることがあります。メール・オーダー花嫁の場合、合法的に入国さえしますが、業者の仲介で二・三回会っただけの日本人男性に嫁ぐのです。意思疎通が図れない夫婦間には、ドメスティック・バイオレンスを含む不幸な関係が発展していく場合があります。
 長年に渡ってKAFINは、限られた資源の中で、弱い立場のフィリピン人移住者がそれぞれの地域でお互いが助け合えるよう、組織化とエンパワーメントを通じて、こうした移住者を保護する責任を負ってきました。同会の主な活動は、各地のフィリピン人コミュニティーに力をつけることで自立してもらうとともに、移住者本人およびその家族の権利を主張できるようにすることです。
 10年以上にわたって在日フィリピン人の支援をしてきたKAFINにとって大きな喜びの一つは、9人のシングルマザーとともに子どもたちの日本国籍取得を求めて裁判を闘ったロサーナ・タピルさんのケースです。タピルさんは当時、KAFIN東京支部の代表を務めており、彼女たちの子どもに日本国籍を求める署名活動を率いていました。
 2008年6月4日、最高裁は国籍法の違憲性を認め、嫡出子と非嫡出子の間に差別があると指摘しました。両親が結婚しているか否かの問題は、子どもたちの責任ではありません。この最高裁の判決によって国籍法は改正され、日本人の父親を持つ非嫡出子であっても20歳未満であれば、認知を受けたうえで届け出ることにより日本国籍を取得できることとなりました。
 最後に、私の日本での活動の原点は、まだ幼いとき自身が戦争の被害者だったことにさかのぼります。私はミンダナオの紛争地域で生まれ育ちました。マルコス時代の子どもの頃から、銃弾を避け、飢えをしのぐすべを学びました。こんな経験から、私は大人になるのを待たずして、15歳のときには、現地で最大の避難所で、私と同じ立場の子どもたちや、紛争で夫や息子を亡くした女性のためのボランティア活動をしていました。
 フィリピンの新政権には、問題解決に真剣に取り組み、紛争を終焉させるよう期待されますが、まだまだ多くの人々が公民館、学校、教会などの避難所に残っています。日中は一時的に自宅へ帰れても、夜間は避難所に戻らなければならない人びともいます。
 私の心は、今もなおミンダナオの仲間たちのもとにあります。私は毎年、友達や支援者から古着や薬を集め、現地のNGOが組織している救援・医療支援派遣団に贈っています。
 最後になりましたが、ミンダナオの恵まれない子どもや母親を支援されている特定非営利活動法人「ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)」の皆様、そのメンバーで今回私を推挙していただきました山崎さんと玉置さんに、心から感謝の気持ちを述べさせていただき、この度の受賞の言葉とさせていただきたく思います。
 本当にありがとうございました。

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