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基調報告 男女共同参画社会実現への現状と課題

更新日:2012年12月19日

報告者
岡島 敦子(おかじま あつこ)
(内閣府男女共同参画局長)

国の男女共同参画施策の現状と今後の課題について、また、家庭・地域における男女共同参画社会実現への取り組みについて、お話いただきました。

社会で活躍しにくい、日本女性

 最初に、わが国の男女共同参画社会の状況を海外との比較でお話しいたします。

 国連開発計画から人間開発に関する指数が出ています。人間開発指数(HDI)は、平均寿命、教育レベル、所得水準から見た各国の女性の状況を示すもので、わが国は世界で10位になっています。それに対して、ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)では、日本は57位という低い数字になっています。この数字は、政治分野、専門職、管理職の女性の割合、賃金の男女差からつくったデータです。これらの二つの指数を見ますと、日本は教育程度も高く、健康面や所得が高いにもかかわらず、社会に進出して活躍している女性が少ないということになります。

 次に、女子差別撤廃委員会からの最終見解を簡単にご説明いたします。今年の7月に国連で、わが国の女子差別撤廃条約の実施状況についての審査があり、8月18日に最終見解が示されました。その内容は大変厳しいものでした。例えば、民法では、男性と女性では結婚できる年齢がちがっていたり、再婚する場合にも女性だけ一定の期間を置かなければいけないこと、嫡出である子とない子で相続分の差があることについて改善すべきとされました。また、結婚したときに、夫婦別姓を選択できるようにするべきとの指摘もありました。さらに、政治分野をはじめ、さまざまな分野において女性の参画が少ないこと、暴力の問題など、さまざまなご指摘、あるいは勧告をいただいています。このような国際的に見た、わが国の状況を考えると、男女共同参画社会の実現にむけて、もっと進めていく必要があるということがわかると思います。

 わが国の女性の状況についても、ご説明したいと思います。

 このグラフは、女性がいろいろな分野に占める割合をグラフにしたもので、「国会議員や県議会議員の中で女性の占める比率」などが表現されています。今、「2020年までにあらゆる分野で指導的な地位に女性が占める割合を30%にしよう」という施策を進めています。国家公務員の新規採用や、審議会の委員は3割を達成しましたが、全体としてはまだまだです。(資料1)

(資料1)各分野における「指導的地位」に女性が占める割合(抜粋)

各分野における「指導的地位」に女性が占める割合(抜粋の)のグラフ

備考:「「2020年30%」の目標のフォローアップのための指標」より
原則2008年、ただし、*は2007年、**は2006年、※は2009年のデータ。

ライフステージに沿ったエンパワーメントの進展を

 なぜ日本の場合、こんなに進んでないのか。その理由の一つが、「M字カーブ」です。男性の場合、働く人の割合は大体20歳代の前半ぐらいにぐんと上がって、その後、平らになって、また60歳位から下がるという状況になっており、働き始めたら、大体そのまま60歳過ぎまで働き続けています。

 一方、女性の場合は、20歳代中ぐらいまでは8割近くの人が働いているのですが、その後ぐんと減って、また40歳ぐらいから増えてきます。これは、女性の多くが出産や育児で、一度仕事をやめ、子どもが大きくなると再度働くという状況を示しています。そのグラフがローマ字のM字の形をしているので「M字カーブ」と言われているのです。「M」の真中が下がる状況をできるだけなくす、つまり“女性が仕事をしたらずっと続けられるようにする"というのが一つの課題です。

 外国と比較すると、韓国は、日本よりも、はっきりと「M字カーブ」が出ていますが、それ以外の国、スウェーデンやドイツやアメリカなどは、ほとんどM字にはならずに、日本の男性と同じような形になっています。

 ところで内閣府の調査によると、子どもが3歳以下の場合、半分ぐらいの人が「働きたくない」と言っています。実際には7割の方が働いていません。子どもが中学生以上になりますと、働きたくないという人は1割程度に減り、半数程度の人は「フルタイムで働きたい」という希望を持っていますが、実際には、半分の方が働いてない、「フルタイムで働いている」方は2割もいないという状況になっています。(資料2)

 そういうことから、出産・育児などで働きたいと思っても働いていない人が多い、また再就職がなかなか難しい現実にあることがわかります。

(資料2)女性の働き方の希望と現実

女性の働き方の希望と現実のグラフ

備考:1.内閣府「女性のライフプランニング支援に関する調査報告書(平成19年3月)より作成。
2.「自営・家族従業等」には、「自ら起業・自営業」、「自営の家族従事者」を含む。「契約・派遣等」には、「有期契約社員、嘱託職員」、「派遣社員」を含む。
3.調査対象は、30から40歳代の女性である。

急がれる健康・貧困・暴力のセーフティネットの整備

 今は女性が社会で活躍することを中心にお話ししましたが、もっと人間としての根本にかかわる問題ということで幾つかお話をいたします。

 一つは、雇用の問題です。女性で働いている人の中で非正規雇用の割合は、現在53.6%で、半分以上の方が非正規で働いています。(ただし、最近では、男性も増えてきて、2割になっています。)女性が、出産・子育てで一度仕事をやめると、その後、正規職員として、あるいはフルタイムで就職するのは難しい。非正規の場合、給与水準が低いということになります。

 そういうことがよくあらわれているのが、母子世帯だと思います。全世帯の収入を100とした場合、母子世帯の収入は37.8%、つまり4割以下になっています。

 母子世帯の場合は住居にも困っています。保証人になってくれる人が少なく、家を借りにくいという問題があるからです。一方、父子世帯では家事に困ります。そういう意味で、母子世帯、父子世帯は、それぞれの特性に応じた、さまざまな問題点が存在することがわかります。

 健康については、母親の年齢別の周産期の死亡率や子どもの死産率は、高齢になるほど、リスクが高くなります。

 最近、時々聞く話ですが、女性の方が仕事を頑張って、30歳代半ばぐらいから、子どもを産む年齢を意識して結婚をする。ところが、高齢になると妊娠しにくいということがあって、不妊治療に通わなければいけない。また、子どもが生まれる場合のリスクも高いということが出てくるわけです。こういうことをもっと若いうちから理解していたら、結婚ももっと早くしたかもしれないし、子どもも早くつくったのにという声を聞くことがあります。

 また、若い女性で、過剰なダイエットに励む方が多いですが、やせすぎると妊娠しにくいということもあるし、やせた女性からは、低体重で生まれる子どもが多いということもあります。さらに、低体重で生まれた子どもは、大きくなってから成人病にかかるリスクが高いといわれています。女性の身体、健康について、もっと知識として知る必要がある、情報として出す必要がある、教育をきちんとする必要があるということが、課題になっています。

 さらに、配偶者からの暴力について、内閣府の調査では、「配偶者からの暴力を何度も受けた人」が1割、「1、2度はあった」という方が2割もいらっしゃいます。配偶者からの暴力、家庭の中の問題というのは外に出てきにくいと思います。家庭内の暴力はもとより、性犯罪については被害者が訴えられない、相談に行けない、一人で悩んでいる例がたくさんあります。“暴力は絶対にいけない”ということを一人ひとりが自覚し、知らなければいけない。さらに意識の問題だけにとどまらず、シェルターの方などが努力されているように、相談しやすい環境にすることが大事だと思います。相談体制や制度面でもいろいろ整備をしていく必要があるわけです。(資料3)

 今、健康、貧困、暴力について簡単にお話ししましたが、人間としての根本にかかわる課題を解決していかなければいけない、セーフテイネットを整備していかなければいけないと思います。

(資料3)配偶者からの暴力被害経験

配偶者からの暴力被害経験のグラフ

備考:1.内閣府「男女間における暴力に関する調査」(平成20年)より作成。全国20歳以上の男女5,000人を対象に行った無作為抽出アンケート調査[有効回収数(率):3,129人(62.6%)]
2.身体的暴行:なぐったり、けったり、物を投げつけたり、突き飛ばしたりするなどの身体に対する暴行を受けた。
3.心理的攻撃:人格を否定するような暴言や交友関係を細かく監視するなどの精神的な嫌がらせを受けた、あるいは、あなたもしくはあなたの家族に危害が加えられるのではないかと恐怖を感じるような脅迫を受けた。
4.性的強要:いやがっているのに性的な行為を強要された。

日本の未来を左右する「固定的性別役割分担意識」の解消

 そして、そういったことを進めるにあたって、気になることがあります。それは、わが国で、「夫は仕事、妻は家庭」、あるいは「男性がメインで女性はサブでいい」といった固定的性別役割分担意識が強いことです。日本は、韓国やアメリカやドイツなどと比べて、そういう考え方に賛成という方の比率が多くなっています。(資料4)

 育児休業制度にしても、女性は、9割の方が取得していますが、男性はいまだに1%台しか取得していません。男性が育児休業をとるのは恥ずかしい、みんな仕事をしているのだから自分はとれない、育児休業をとりたいと言ったら上司に怒られた、という話も聞きます。

 でも、世の中がもう変わっているということを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。今では、共働き世帯が多くなっている状況です。

 それから、家族というと「両親と子ども」、あるいは「3世代」というイメージを持つ方が多いと思いますが、そういう「夫婦と子どもの世帯」は、1985年は4割いましたが、今では3割になっています。一方で、「単身世帯」は、1985年に2割だったのに対して、2005年には3割に増えています。中でも、65歳以上のひとり住まいの方の数は、1985年には118万世帯だったのに対して、2005年には387万世帯に増えています。もちろん、若い人の単身世帯も増加しています。そして、頭の中に描きがちな「夫婦と子ども」という家族世帯は、どんどん割合が減っているという状況です。

 そもそも日本の人口構成を1985年と2005年とで比較してみると、65歳以上の割合が、1985年は1割前後だったのが、今や2割になっています。また、働く世代の数が、この20年間で随分減ってきました。高齢化が進む一方で、子どもの数がぐんと減っています。

 こういうことを考えていくと、今は65歳以上の女性は4人から5人に1人ですが、もう少しすると3人に1人になってきます。日本の社会の持続性とか社会の活性化を考えたとき、女性たちが、もっと社会に出て能力を生かせるようにしていかなければならないと思います。

 男性の中には、「介護は女性がすればいい」と思っている方が多いと思うのですが、夫が妻を介護する時代はもう既に来ています。長時間働いて休みがとれないという働き方ではもう家庭も回らない、社会も回らない。そういう意味で、社会のシステムも大きく変えていかなければいけない。仕事と生活のパランス、男性、女性にかかわらず能力を発揮できる、働くことも、地域社会への貢献もいろんな形でやっていけるという時代になっていかなければいけないと思います。

 その意味でも、固定的性別役割分担意識は解消しなければいけない。もはや「女性は家庭のことだけをする」とは言っていられないでしょう。より多様な生き方を可能にするために、民法だけではなく、税制や社会保障制度全体、家族に関する制度など、いろいろな社会システムを変えていかなければいけないという時代になっていると思います。

(資料4)固定的性別役割分担意識<国際比較>

固定的性別役割分担意識<国際比較>のグラフ

備考:日本のデータは内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成19年8月調査)、その他のデータは「男女共同参画社会に関する国際比較調査」(平成15年6月)より作成。

幸せで元気な21世紀のために

 男女共同参画社会基本法ができて、今年で10年目。来年、第3次基本計画をつくる予定になっています。とりわけ、これからの21世紀に、元気な社会をつくっていける、一人ひとりが幸せになれる、そういう基本計画をつくっていきたいと思います。そのためには、皆様方から、ご意見を寄せていただきたい、よりよい男女共同参画社会づくりにご協力、ご支援いただきたい、参画していただきたいと思います。

 ご清聴ありがとうございました。

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