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ジェンダー平等教育を考える ~子どもたちの未来ヘ~

更新日:2012年12月19日

コーデイネーター 
古屋 和雄(ふるや かずお)
(NHKアナウンサー)
パネリスト 
多賀 太(たが ふとし)
(関西大学文学部教授)
橋本 紀子(はしもと のりこ)
(女子栄養大学大学院栄養学研究科教授)
朴木佳緒留(ほうのき かおる)
(神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授)

人々が幸せに生きていくためには、ジェンダー平等社会の実現が不可欠です。子どもたちの未来があたたかい人間関係でみたされ、一人ひとりの個性を尊重できる社会の実現を願って、日本における男女平等教育の現状と課題を考えました。また、ジェンダー平等の先進国といわれる北欧諸国の教育に学びながら、これからの方向性や方法を考えました。

ジェンダー研究のきっかけ

古屋 和雄

 この第3分科会では、子どもたちの未来があたたかい人間関係でみたされ、一人ひとりの個性を尊重できる社会はどのようなものかを、北欧の教育などに学びながら考えていこうと思います。

 それでは、まずお三方から一言ずつ研究内容も含めて自己紹介をいただきたいと思います。

朴木 佳緒留

 三つのことを自己紹介として申しあげればよろしいかなと思います。
 
 一つは、私がなぜこういう研究あるいは実践を始めたかということです。
 
 私は1949年生まれで、中学、高校まで家庭科は女子だけでした。女子が高校で家庭科を勉強している間、男子は何を勉強していたとお思いですか。
 
 体育。正確に言うと、実は体育じゃなくて格技です。学習指導要領には格技と書いてありました。柔道または剣道ですね。家庭科と柔道がなぜ等しいか。これ、どう考えても等しくないのに。しかし当時の教育法学では、それは機会は均等で教育基本法に反してないという論文が主流でした。偉い先生が書いておられたんですね。どう考えても家庭科と柔道が同じだとは私には思えないというのが始まりです。
 
 したがいまして、最初の研究テーマは、なぜこういう教科ができたのか、家庭科教育成立史研究というものです。これは後ほどにもちょっとだけ触れますけれども、実は日本は教育の機会均等がずっと実現してなかった国です。
 
 二つめですけど、現在、私は神戸大学の男女共同参画推進室というところの室長を兼任しております。これは、理系の女性研究者を支援するもので、理系の女性研究者は非常に数少ないです。神戸大学で言うと6.9%しかいないんです。そこを増やそうというプログラムを文部科学省が既に設定しておられ、そのプログラムに応募し採択されましたので、その仕事を今は行っています。三つめは、実践的研究として、地域の実践家と一緒にワークショップのプログラムをつくるということをやっております。

多賀 太

 私がジェンダーの問題にかかわるようになったのは、20年ほど前のことです。卒業論文を書くときに、これはもう本当にたまたまです。小学生がどういう性別役割意識をもっているか、つまり男がどういう役割をして女がどういう役割をするのがいいと思っているのか、そういう小学生の意識を調査して、そういう意識が母親が働いているかどうかでどう異なるかを調べました。それがきっかけです。
 
 その頃ジェンダー問題と言えば、イコール女性問題のような雰囲気でした。ジェンダーについて書かれたものを読んでいると、男は悪者のような気がしてきて、男ですみませんという気持ちでずっと勉強していました。しかし、当時私が一つ疑問に思ったことがありました。それは、女性の地位が低い、女性の人権が守られてないというのは確かだけれども、男だって男としていろいろな生きづらさをかかえているのではないかということです。私自身の経験で申しますと、父親から「男のくせに泣くな」「男のくせに台所に立ちやがって」と言われていやな思いをしてきました。
 
 私がこれまでに、具体的にどういうことを研究してきたかを申しあげておきます。20代のころは、伝統的な男らしさが揺らぐ中で、自分とちょうど同じ世代の若い男性たちが、「一人前のおとな」というアイデンティティや自己意識をどうやって形成しているのかを研究しました。就職して教員になってからは、ジェンダー平等教育に関心をもちまして、学校の先生方と一緒に、実践的なことを考えたりもしてきました。自分が結婚して子どもが生まれた後には、全国を回って忙しいお父さんたちにインタビューをして、父親の問題やワーク・ライフ・バランスについての研究も行いました。最近では、父親の家庭教育について研究しています。

橋本 紀子

 まず、私も、どうしてジェンダー平等教育とか性教育関係のことに関心が向いていったかということをお話ししたいと思います。私は女子校だったカトリック系のミッションスクールに中学、高校と行っておりまして、東北大に進学しましたが、そこまではほとんどジェンダー平等問題的なことは感じていませんでした。男子がいないので、女子校というのは差別の体験がありません。それで、大学まですんなりと行ったのですが、その後の修士課程、それから博士課程に行く、そういう段階で女が大学院、ドクターコースに行くのは国費の無駄だというようなことを言われました。女子学生亡国論の時代から5年ぐらいしか経っていない頃です。それで、東京に出て来て、東大の大学院に入り直し、女性の自己形成史や女子教育史から、男女共学制の史的研究へと研究を進めていくことになります。
 
 1992年に『男女共学制の史的研究』という本を出しましたけれど、これは寺子屋から始まって、その後 100年間ぐらい、女子と男子がどういうふうに学ぶ内容と形態がちがっていたかという歴史をずっと1990年代近くまで検討したものです。
 
 大学院のときに、東大病院で子どもを2人産みますが、どちらも14%という学割が利用できた頃です。その後、北欧のフィンランドに1978年から79年、夫の仕事に家族で同行しました。かれこれ30年近いフィンランドとのつき合いはそこから始まっております。フィンランドの79年の国会議員選挙で、女性が国会議員の26%を占めたという、北欧の中でも初めてのことだったんですね。そういう政治進出が始まったときにそこにいました。最初、行ったときに何で公園に赤ちゃんを乳母車に乗せたお父さんがいっぱいいるのか、失業しているのかなと思ったら、そうじゃなくて、育児休業を男性もとれる制度が始まっていたという、そういう体験をして帰ってきまし
た。

ジェンダー平等教育の歩み

古屋 和雄

 皆さんご存じのように、ジェンダーとは、生物学的な性別とは別に社会的・文化的につくられた女性像、あるいは男性像といった社会的な性別のことです。

 ジェンダーの視点とは、ジェンダーが性別による固定的役割分担及び偏見などにつながっている場合もあり、これらが社会的・文化的につくられたものであることを意識していくことです。

 ジェンダー平等とは、性差別や暴力、性別による固定的な役割分担などの要因となっているジェンダーを見直して、すべての人が性別にかかわりなく個人としてその尊厳が重んじられ、個性と能力を十分に発揮するとともに、あらゆる分野に参画し、責任を担い、平等に利益を受け取ることができる状態を言います。

 では、このジェンダーの歴史と現状について朴木先生からお話をいただけますでしょうか。

朴木 佳緒留

 改めてジェンダーとは何か、ちょっと整理しておきたいと思います。

 人間の性はとても複雑で、ジェンダーや生物学的性差以外に、もう一つセクシュアリティというものがあります。これは、好きとか嫌いとか、あるいは自分を男性だと思っているか女性だと思っているかですね、感覚とか感じ方とかも含めたものですね。通常は、これらが全部一緒になって1人の人間の体に入っていますので、私たちが物を考えるときに、今はジェンダーだとか今はセックスなんて考えることはまずなく、自分の認識、あるいは人に対する認識となっていると思います。

 歴史をたどると、1958年中学、60年高校、家庭科が女子必修になったんですね。これで教育機会は均等ではなくなりました。実は、それより前も別学だったんです。75年、国際婦人年というので、以下10年、国連婦人の10年だということがありました。そのこともあって、技術・家庭科だとかいろんなことが変わっていき、そして85年、女性差別撤廃条約を日本も批准しました。それに伴い、89年に学習指導要領が改訂されて、実はここで初めて戦後、男女同一の教育課程が実現しています。つまり、戦後から40年かかってようやく実現したんですね。よく戦後、憲法ができて、教育基本法云々があって、男女は平等で共学で出発したなんて言われますが、それは正確ではないです。実行に至るまでは、実は94年まで待たねばなりませんでした。

 今、日本は科学技術創造立国として生きていくんだと決めているわけです。そうすると、科学技術創造立国ですから、科学者や技術者が一定数いないと実現しないんですね。ですが、少子化が他方で起こっております。実は男性はもう科学や技術に関心がある人は、そういう方向に進んでいます。そうすると、このまま数が減りますので、科学者や技術者の絶対数が減るわけですね。これでは日本の国は科学技術創造立国を実現できない。であればどうするか。あと、頼りになるのは女性だと、こういうわけです。

 文部科学省は女子中・高生が理系に進学することを支援するために色々なことをやっています。大学や研究機関を対象とした女性研究者の支援をするファンドですけれど、お金を出しています。神戸大学もこれもらいまして、それで私は忙しい思いをしていると、こういう話です。

 研究者に占める女性割合、ちょっとこれも世界的なものを見ますと、日本は、文系も理系もひっくるめて12.4%。最新情報では13.0%まで上がりました。私たちになじみの深いアメリカですと34.3%というところですね。それから、今日お話のフィンランドはありませんけど、北欧はよく似ていますので、ノルウェーですと29.4%ぐらいです。つまり、私たちが見ているこの状況は、とても日本的、男女格差が非常に大きい、そういう世界で生きているということです。

古屋 和雄

 ありがとうございました。朴木先生からの歴史と現状についてのお話、なるほどこういうことになっているのかと、よく分かりました。それでは、今度は男性の視点から、多賀先生にお話をいただければと思います。

男性にとってのジエンダ一平等教育の意味

多賀 太

 男性や男の子の問題を大きく二つに分けてお話したいと思います。

 一つは、男性や男の子が、女性の問題や女の子の問題をつくる原因になってしまっているということです。なかなか女性の社会進出が進まない理由の一つが、女性が男性から家事・育児の責任を一手に負わされていることです。また、最も深刻で人権問題でもあるのがドメスティック・バイオレンスや性暴力、セクシュアル・ハラスメントなどですが、これらの加害者はほとんど男性です。つまり、これらの女性問題は、男性によって引き起こされているという意味で、男性問題だと言うことができます。

 これを教育に引きつけて考えるならば、男の子たちに、同じ人間として女性の人格を尊重する態度の学習や性教育などを教育の場で率先して行っていくべきだと思います。男の子を将来の女性に対する加害者にしないために、ジェンダー平等教育は男の子にとっても意味をもっていると思います。それが引いては女性問題の解決にもつながるのではないかと思います。

 もう1点、男性は男として問題を抱えているという側面があると思います。男性はいわゆる「男らしさ」というものに縛られていて、そうしなくていいよと言われても、自ら頑張り過ぎちゃうんですね。それで、過労死するまで働いてしまったりとか、変に強がって他人に相談することなく、思い詰めて精神的に病に陥ってしまったりとか。そういう中で神経をすり減らしたり、けがをしたり、場合によっては命を落としたりということもあります。こういった生きづらさから男性を解放するというのも、もう一つジェンダー平等教育の重要な役割ではないかと思います。

古屋 和雄

 ありがとうございました。橋本先生、海外ではどのようになっているのか、是非お話を伺いたいと思います。

北欧から学ぶジエンダー平等教育

橋本 紀子

 ジェンダー平等教育に関して日本と似ている点で言いますと、フィンランドでも1980年代にジェンダーの中性化原則というか、それまでは男の子、女の子ということで、そういう問題をどうするかという話だったのが、生徒一般と改称して、性的中立としての平等ということで、表面的には何かジェンダー差というか、男女格差がないようになるんですけど、実際は科目の選択ですね、例えば小学校の中学年段階で手工と裁縫というふうに分かれていくんですけど、そのときに圧倒的に男の子は手工を選び、女の子は裁縫を選んでいくというのがあります。

 国際学力テストPISAの2000年のテストのときに、フィンランドは女子が読解力で断トツによかった。男子はまあまあいいんですけど、女子が断トツによかったために読解力でトップになります。そして2003年、2006年と、だんだんと科学的リテラシー(理解し、活用する能力)も数学的リテラシーも1位とかになっていくわけですね。日本は同じぐらいに、2000年ごろには一緒に並んでいたのに、読解力ががっと落ちて、数学リテラシーの順位も下がっていくということがあります。こういうときでもフィンランド社会は、女子は断トツによかったなんてことは余りだれも評価しなくて、男の子がもうちょっと頑張ればと、男性の心配ばっかりして。

 大体、女の子は言われたとおり細かく宿題もやれば、いろんなことをやって成績はいいけど、男はそんなことは苦手なんだけれど才能があるんだと、校長先生もその他世間一般が言うと。こういうことを言って、学力的にはヘルシンキ大学の医学部の53%は女性とか、女の人がかなりいろんな分野に進出しているにもかかわらず、アカデミックの分野では、それほど女性の教授とかは多くはないということがあります。日本よりは多いですけどね。

 それでも、フルタイムの女性の平均賃金はやっと男性の84から85%ぐらいまでいっている状態です。パートは働く女性全体の中で17%ぐらい。ですから、圧倒的にフルタイムの人が多く、女性雇用労働者の内の8割以上がフルタイムだということですね。そのあたりが非常に日本とはちがって、女性全体としての所得が上がっています。

 ちがう点ということで言いますと、一つは1986年に男女平等法というのが制定され、95年に改正されるのですが、これには日本の男女雇用機会均等法的な中身がばちっと入っているんですね。男女平等法の中心は労働条件をどうするか、自立してきっちりと働いて生きていけるように保障するということなんですね。ですから、それができてから男女平等オンブズ、男女平等局ができます。さらに、EUに加盟してから男女平等ユニットができます。これは、政府のジェンダー平等政策を準備し、国際的な問題を調整する機関です。男女平等局というのは司法というか、裁判所を兼ねているんですけど、これらが全部整備されました。たとえば、賃金差別があったとか、セクハラがあったとか、これは男性の方からもかなり申し立てがありますが、これらの機関は、査察権をもっていて、企業に全職員の賃金表を出しなさいとかの命令ができるわけです。そういう権限をこの男女平等オンブズも男女平等局ももってるわけですね。こういうかたちで、女性の労働条件を整備してきました。

 ジェンダー平等教育は学校とか教育だけではなくて、社会の構造とか社会システムをどうするかということと予算とかと関係がありますので、そういうことをフィンランドだとか北欧から学んでほしいというか、学びたいと思っております。

質疑応答

質問

 行政が、神戸の小学生なり、そういう方たちに対して男女共同参画のジェンダー教育みたいなのをどういうふうに、積極的にかかわっていらっしゃるのか。神戸市もどんなふうに推進していらっしゃるのか、ぜひちょっと教えていただきたいなと思います。

朴木 佳緒留

 兵庫県はトライやるウィークというのを実践してるんですね。これは全国に先駆けて、それこそさまざまなことがあってのことなんですが、中学2年生になると、子どもたちが5日間、社会のどこかに出ていくんです。職場でもいいですし、ボランティアでもいいですし、要するに大人と一緒に働くんですね。それは日本の中で先駆けてやったことなので、注目されたことなんです。

質問

 これからは本当に小さい子どものうちからジェンダー平等教育、それから社会教育が大事だと思います。人口減少になっている日本は、これから夫の給料で妻を養える社会にはならないと思います。だから、女子も将来家計を支えていく、そういう教育をしていただきたいなと。それが女性の経済的自立にもつながっているように思いますが、こういう点についてどうしたらいいのかをお聞かせいただきたいと思います。

多賀 太

 男女とも経済的にも生活的にも自立して対等なパートナーシップを築くことを早くから教えることは重要です。その一方で、そうした男女のあり方が可能な社会の枠組みをどう作っていくのかも考えなければならないと思います。経済界の意向などで大きな社会の枠組みがつくられたりするわけですから、そうした社会の枠組みをどうとらえて、国民としてどのような声をあげていくのかということも重要です。こうした姿勢も教育を通してつくられていくと思いますので、こうした点も含めてジェンダー平等教育を進めていく中で少しずつ光が見えてくるのではないかと思います。

質問

 日本と北欧とのちがいは、やはり子どもたちに教える、日本ではタブー視されている性の問題ですね。スウェーデンの子どもたちは、命の大切さや女の子の体の大切さ、そして男の子のやってはいけないことなどをいっぱい学んでいると思うのですが、そういうところを橋本先生から教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。

橋本 紀子

 日本の場合は大体1970年代、80年代の前半ぐらいまで、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーなどの北欧諸国のいろいろな絵本の翻訳もので性教育をやっていました。その後、徐々に自前のものをつくろうということで、性教育の関係の絵本とかジェンダー平等の絵本を作る動きが90年代後半から末にかけて起こりました。私も朴木先生と一緒に、『ジェンダー・フリーの絵本』全6巻をつくりましたが、そういう動向に対して、日本では2002年ごろからパッシングがありまして、これらの図書をどこかに撤去するとか、いろいろなことが起きています。

 しかし、フィンランドの場合は、私がよく行きますフィンランド家族連盟というところは、セクシュアルヘルスクリニックをもっていまして、子どもたちは性の相談があればそこにやってきます。ここは、無料で診察や治療、相談が行われています。それから、そこで開発した性の教材ですね。きちんと性を科学として教えようとしていますし、それから人権、対等、平等、関係性の問題も含めてどう教えるかということでは、かなり教材は徹底しています。また、発達に即していろいろな教材が生み出されています。

まとめ

橋本 紀子

 ジェンダー平等教育の課題として、一つは、適正な男女比で男女共学を制度として守っていくということは、相変わらず必要と思います。しかし、高校も含めた公立の大部分の学校が男女共学制になっているからという理由で、教育基本法第5条の男女共学条項が削除されましたが、実際にジェンダー平等教育、男女平等の実質的な教育が完成されているだろうかというと、今日、朴木先生と多賀先生がいろいろおっしゃったような中身がありますので、必ずしも意識的に男女平等を実現するような方向で、教育内容が吟味され、教育実践が行われているとは言えない部分があります。本当の意味の実質的な平等教育をどのように実現していくのかというのは、現場の先生たちと、それから親たちもそこにかかわったりしながらでないと作り上げるのは難しいと思われます。ですから、みんなで、共同して作り上げていくということが一つの大きな課題です。

 もう一つは、他のいろいろな分野の人たちと、教育以外の雇用だとかその他も含めて、予算をきちんと国民のために役立つように使ってもらうような運動と連動しながらジェンダー平等教育も進めていかなくてはいけない。たとえば、給食費の無料化や高校、大学の授業料の無料化等、そのことがすごく私は課題だなと思っております。

多賀 太

 私の方からは、主に男性、男の子の問題という立場から3点、展望として申しあげたいと思います。

 1点目は、やはり男性への非暴力の取り組みです。仮に男の子の方が生まれつき攻撃的な傾向があるとしても社会的に暴力は悪いこと、腕力に訴えかけるんじゃなくて気持ちを言葉で表現すること、これらを早くから教えていくことが必要だと思います。 2点目は、原則としては、あらゆる場面で男女共学がよいと思いますが、一時的に分けることで効果がある場合もあるのではないかということです。それも、男女を分けるだけじゃなくて、男子のタイプ別に分けるなどということも今から模索していく必要があるのかなと思います。

 3点目ですが、女性が女としての理不尽さを感じたり、男性が男としての生きづらさを感じたときに、もちろん個人の努力とか教育で何とかなる部分はあるでしょう。しかし、それだけでなく、いったいその理不尽さや生きづらさはどこから来ているのか、社会の仕組みのどこから来ているのかを問う想像力や、社会の仕組みを変えていくためにみんながつながるというような態度を教育の中で培っていくということが実は一番大事なことなんじゃないかなと思います。

朴木 佳緒留

 少し整理しながら、私も3点ぐらい申しあげようと思います。

 大学生に女性差別撤廃条約なんて話をすると、労働は権利だったって初めて聞いたなんて感想を書くんですね。それはちがって、中学で習ってるはずなんです。ただ、全部消えてしまう。だから、それが消えてしまわないよう教科の教育をもっと充実させる必要があります。

 つまり、男女平等のために新しい何かが要るということももちろんあるんですけど、新しい何かだけではなくて、今までやってる教科の目標をきちんと子どもが理解できるような、そういう教育がまず必要だということを申しあげたいと思います。

 2点目、ジェンダーを再生産しないために性に中立な環境をつくるということで、子どもの見るものが性に中立なかたちになっているかどうかという意味です。子どもが見るものは実は性に中立ではない、偏ったバイアスのかかったものを見て育つわけなんです。一般的にいろんな能力を育てましょう、均等にやりましょうなんて言っても、実は何をしていいかよくわからないわけです。そうではなくて、男性が占めてるポジション、女性が占めてるポジション、どっちかが非常に少ないというポジションがあれば、少ない方の人がそこのポジションにつくように注意していけば、徐々に平準化していく。それを教育だけではなくて社会全体の問題としたいと思います。

 それで、ジェンダーの視点というのは、要するに人間を一人ひとりで見ましょうと、男とか女とか言うのをやめましょうと。最後は性による発達制度を解除しましょうと。男だから云々、女だから云々というのは発達を制限する、それをやめましょうと。そのためのポジションを取りましょう、男女ともということです。

古屋 和雄

 こうやって話をしておりますと、なぜ私たちは今ジェンダー平等の話をしているのかを思いますと、もちろん子どものことを考えていったりしますが、自分たちの生き方をどうするかということとイコールであろうと思えます。
 今、経済は非常に厳しくなっておりますが、私たちはこれから先どうやって生きていくのか、これからも格差社会、競争社会を生きるのか、そうではなく共生、共に生きる社会をつくっていくかという大きな節目のところにあるんだろうと思います。皆さんには、格差とか性差ではない社会をどうつくっていくかを、皆さんそれぞれの地元に戻られて、話し合っていただければと思います。

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