このページの先頭です

本文ここから

第2回堺市マスタープラン推進等懇話会 議事録(要旨)

更新日:2015年9月10日

1.開催日時

平成27年8月12日(水曜)13時30分~16時00分

2.開催場所

堺市役所 地下1階 大会議室

3.出席者

懇話会構成員

(7人出席)
桜井 智恵子委員・佐藤 由美委員・澤井 勝委員・戸谷 裕之委員・橋爪 紳也委員・早瀬 昇委員・増田 昇委員

「堺市マスタープラン推進等懇話会開催要綱 5 関係者の出席」にもとづき、堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略について意見聴取する有識者

(8人出席)
井上誠氏・塩澤弘幸氏・柴田将彦氏・砂田千秋氏・鶴坂貴恵氏・林義昭氏・藤原広行氏・細見恭樹氏
※所めぐみ氏・山野則子氏の2人欠席

事務局

米澤市長公室長・澤田企画部長・垂井企画部副理事・山本政策企画担当課長・永木主幹・金田主査・法用・宮本

4.議題

(1)開会

(2)議事

案件(1) 堺市マスタープラン後期実施計画(素案)について  
案件(2) 堺市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン(素案)について
案件(3) 堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略(素案)について

(3)次回の開催予定について

(4)閉会 

5.傍聴人

4人

6.議事録要旨

(1)開会

○司会挨拶

○配布資料確認

(2)議事

案件(1) 堺市マスタープラン後期実施計画(素案)について

●増田座長
  堺市マスタープラン後期実施計画(素案)について、事務局から説明をお願いする。

○事務局
 ―資料1-1、1-2、2-1、2-2、2-3にもとづき説明―

●増田座長
 事務局の方から、後期実施計画の策定にあたり、前期実施計画における取組、堺市の現状を踏まえたうえで、「堺・3つの挑戦」と「市民が安心、元気なまちづくり」「都市内分権の推進」を最重点方針と位置付け、7つの基本政策をもとに各事業に取り組むという流れの説明があったが、論点として特に、今後の人口減少や超高齢社会の到来、経済のグローバル化等の社会情勢の変化を踏まえて、今後取り組むべき課題や方向性について、皆様からご意見をいただきたいと思う。

●早瀬委員
 全体的な構成については、こういう形になるのだろうと思っていた。法的安定性の観点で、行政として大きな変換をしにくいのは当然だとは思うが、人口減少問題に本気で取り組むには、移民政策まではともかくとしても、外国人の方々が安心して暮らしやすい、働きやすいまちをつくるということも、かなり重要である。数年前に外国人に関する研修生制度が改善され、一応労働者として扱われるようになったが、それでも研修生からパスポートを取り上げたり、賃金から寮費や食費を差し引く等で、研修生にとって極めて厳しい状況にある人々も多い。
 一方で、堺市が匠のまちという考え方を継続させていくという点で、第二次産業に就く労働者を増やしていかねばならないことを考えると、外国人の研修・実習制度を、良い条件で実施していくまちとして堺をつくっていくことも必要だと思う。
 多文化共生を進める点ではボランティアによる関わりの問題も含むと思うが、外国人との共生を進めて、外国人労働者が暮らしやすくする取組等、今までの連続性にあるものではないような思い切った施策を盛り込んでいかないと、人口減少に対応するのは厳しいのではないか。

○事務局
 堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定を進めており、雇用に関しては、非正規雇用の就労環境の改善など、人口減少を見据え、ご意見いただいた外国人の方を含めた担い手の観点についても検討してまいりたい。
  
●橋爪委員
 先月、大都市戦略(案)として、国の国土のあり方に関する報告があり、それを受けて近畿圏の広域基本計画を作っている状態で、大都市戦略検討委員会の学識委員として私も関わっているところである。国および圏域の中長期の構想がまとまりつつある中で、我々は後期実施計画を考えなければいけないという状況かと思う。
 現状として、大都会、大都市圏に人が集中しすぎるのが問題であるということで、大学等も地方に人を動かそうとしている。堺市の場合は、大都市の側面と地方の側面の両面があると思うが、大都市としての側に立てば、様々な国の政策の中で、集中しすぎて問題があるという側に置かれがちである。そこにおいて国土交通省が大都市戦略案を7月末にまとめた。私も大阪から唯一委員で入ってとりまとめたが、国土全体の計画の中で、日本の大都市はいかなる都市であるべきかという点になかなか触れられていないため、大都市のあるべき姿と考えに対する施策を打ち出していこうというものである。要点のみ参考までに御紹介したい。
 概要版の最後のページに、基本はグローバリゼーションが進展して異次元の高齢化が進むことや、巨大災害が切迫しているなかで「国土のグランドデザイン2050」が確定し、国土形成計画や国土利用計画がまとまりつつある。そのような状況下で、今後10年間を見越した大都市政策をまとめるというのが今回のミッションである。
 検討事項としては国際競争力の強化、郊外部の高齢者の急増等への対応、大都市の防災機能の強化、大都市圏内の機能分担、役割分担などがある。
 1ページ目に基本的方針が3つあるが、一つ目は『「都市再生の好循環」の加速』で、これまで都市再生等で再開発をしてきた事業について、もう一度再開発すべき状況あるのだというものであるが、堺東駅前等をイメージすれば、あらためて都市再生の循環期がきていると思う。一つ目の基本的方針に紐づけられた「効率的な物流環境整備」、すなわち圏域の物流をどうするのかについて、今まで行政では議論してこなかったが、首都圏では高速道路整備等があるため、物流について非常に大事な論点になっており、物流施設についても既存の施設が現状の最先端のスペックというわけではないので、新しいスペックの物流をどこにおくか、これは堺にとっても重要な話であると思う。
 二つ目の方針である『大都市「コンパクト+ネットワーク」の形成』の中では、官民一体での鉄道沿線まちづくりについて、鉄道駅を拠点にして、その周辺のニュータウンや住宅地を再生していこうというような考えである。また、水と緑・農の保全・再生についても、大都市の中に農地があるというのが日本の都市の特徴で、世界的には非常に稀である。これをどうしていくのか考えることが日本の大都市の将来像を検討するうえで重要である。大都市戦略において初めて農業のことが重視されたというのは、画期的なことである。3つめの方針は『「災害に強い大都市」の構築』である。
 4ページには、郊外の鉄道駅にもう一度都市機能を再結集させ、その周囲に広がっている宅地の再構築を図るとし、鉄道沿線のまちづくりに取り組んでいくとし、コンパクト+ネットワークの考え方としている。また、水と緑に加えて農の保全が重要としているほか、5ページには災害に強い大都市の構築について示されている。
 大都市戦略の概要について説明させていただいたが、今回の後期実施計画、あるいはまちひとしごとの構成を考えるうえでも、国策を意識し、新しい動きやあり方を盛り込んでいただきたい。特に、堺では大都市戦略という考え方が、従来あまりなかったと私は思う。国では、しばしば“異次元の高齢化”など、我々が使いなれない言葉を強調して使っている。我々も、もっと危機意識をもって取り組むべきである。

●増田座長
 参考資料1の1ページ目の3つの基本的方針をベースに、堺市で考えている後期実施計画にチェックをかけてみると、さらに具体化できるのではないかということであると思う。私なんかも絡ませていただいているが、官民一体の鉄道沿線のまちづくりであれば、泉ヶ丘の取組が該当する。泉ヶ丘について、一体どのようにして再生していくのかや、あるいは水と緑・農の保全・再生でいうと、堺市は大阪府内で農業生産高が最も高く、大きな農業地域を保有しており、それをどう考えていくかなど、論点が浮き上がってくると思う。

○事務局
 都市機能の集約化やコンパクト化については、国土交通省から立地適正化計画の策定を進めるようにと国土交通省から示されているところである。庁内でも、非常に重要なポイントであるため今後検討していかなければならないということで、本編の16ページにある「計画策定にあたって(主な視点)」の中段に、都市の適正化や集約化についてのあり方を今後検討していかなければならない、という表現を入れている。今すぐにこれを具体化ということではないが、ご意見をいただいた官民一体での鉄道沿線のまちづくりや、立地適正化計画については引き続き検討させていただきたい。

●増田座長
 立地適正化計画でひとつ気になるのは、立地適正化計画における都市機能というのは、住生活をサポートするという非常にせまい都市機能であるが、むしろ、まち・ひと・しごと創  生総合戦略にあるような、就業の場や起業の場が本来の都市機能だと思うので、そういった限界性を少し気にしたほうがいいと思う。

●戸谷座長代理
 後期実施計画素案の第4章の各区のまちづくりについて、都市内分権に関して、各区からの要望や意見等をここに集約するということであるが、各区と本庁の関係というのはどのように表現していくのか。各区の区民評議会における意見と本庁の意見を集約されたものがここに出るのか。

○事務局
 事例として70ページの堺区をご参照いただくと、まず10年間のマスタープランの中で、各区の基本方針を設定しているが、後期実施計画においても引き続き基本方針としていくということで、書かせていただく。次に、これまでの取組と現状について、お示しさせていただいたうえで、71ページのとおり、今後の取組の方針として、それぞれの区のビションの主要な部分について掲載させていただきたいと考えている。

●戸谷座長代理
 私は美原区の区民協議会委員をしているが、美原区でも、どこが責任もってやっているのかが分かりにくい。区と本庁とでもっとコミュニケーションをとってやっていかないといけないと思うので、またご検討いただきたい。
 区民協議会では、議員の方を含めていろんな方がでてこられて議論がなされているので、それをどのように記していくのか、もうそろそろ作っていかないといけないと思う。

●澤井委員
 都市内分権について、最重点方針ということで、かなり大きくでてきたなと感じているが、ただ都市内分権の中身がよくわからない。住民自治、市民自治の観点で、市民と行政の協働を進めるには、市民の自治力を高めていかないと協働にはならない。協働の原理と原則について、すでに議論されているのかもしれないが、明確に表現しないと、市民にとっては一体どういう立場にいるのだろうと参加しにくくなる。市民の協働の原理と原則を整理してどこかに書いておかないといけないと思う。
 区民評議会について、市民自らが自己判断して提案ができるようなしくみになっているのか、構成はどのようなものなのか。

●戸谷座長代理
 各自治連合会の会長や副会長、公募委員など7、8人から成る。

○事務局
 各区で15人以内としている。

●戸谷座長代理
 人口規模に応じたもので、美原区は少ない。

●澤井委員
 区民が集まり自ら意見まとめて市へ提案してということになれば、区民自治の拠点になると思う。

○事務局
 ご指摘いただいたとおり、区民評議会の前身として、区民まちづくり協議会というものがあり、そこでは市民に参画していただいて、自主的なイベントや事業について、自分たちで提案して企画していただいたが、それも含めて一歩進めた形で、区民評議会として設置した。附属機関に位置付けているが、まず各区のビジョンを作ることを大きなテーマのひとつとしており、もう一つは区長から区民評議会にテーマを諮問させていただいて、答申をいただくというような形になっている。
 ただ基本的には今ご説明頂いたように、各区に住んでおられる有識者や市民活動されておられる方、あるいはNPOでご活躍の方など10人前後でご議論いただき、区のことを皆さんにご協力いただこうというものである。教育に関しては、区・教育健全育成会議というものを別につくっており、そこで教育関係の方に参画いただいて、家庭、地域の教育力をいかにしてあげていくか、あるいは、いじめ問題等についてもご協力いただく。

●澤井委員
 趣旨はわかるが、まちづくりと教育を別立てにするのはおかしいと思う。子どもを育てるのはまちであることから考えると、分けて、教育はここでやってもらえばいい、といった議論になるとおかしい。まちづくりの中で、子どもたちをどうやって育てていくのか考えていかないといけないと思う。

●増田座長
 区民評議会はどのような役割と権限を持っているのか、区教育・健全育成会議というのはどういう権限をもっているのかということについて、後期実施計画において一度整理する必要性があると思う。
 前期実施計画においては、各区の特徴に応じて、各区の協働まちづくりの記載があったが、区によって記載の次元が異なっていた。記載のレベルを合わせることも必要なのではないか。大きな柱のひとつであるので、もう少し踏み込んだ検討がいるかもしれない。

●澤井委員
 区ごとに変化があってもいいと思う。構成委員によって問題意識も変わるので、それはそれでいいと思うが、共通してこういうものだということを整理していったほうがわかりやすいと思う。

●桜井委員
 19ページに政策・施策体系が掲載されているが、教育や子育てに関して、記載が貧相である。基本政策3に4つの施策が位置付けられているが薄く、全く異なる価値観が一つの政策の中に混在している状態である。施策3-1と3-2は、みんなで一緒に子育てしようという共生社会関係資本の話になると思うが、それに対して施策3-3と3-4は、個人で頑張りなさいという観点であり、2つの観点がぶつかることになる。個人モデルでひとりで頑張りなさい、ということではなく、そこを豊かにして共生社会と結ぼうという話を、この場でずっと言ってきたが、マスタープランに反映されていない。施策3-1、3-2と3-3、3-4は結ばれないといけない。そういう意味では3-3、3-4は都市戦略、コミュニティデザインで考えると、ありがちな学力向上ではなく、緩めて色んな子どもたちが生きやすく、子育て家庭が堺市に入ってくるような方法でつくっていかないといけない。
 それで初めて3-1、3-2で堺は充実しているということがアピールできることになり、まちづくり、ひとづくり、しごとづくりとつながって、施策1-5の雇用に結びつく。これを3年くらい言っているが、反映されていない。
 澤井委員がおっしゃった区・教育健全育成会議についても、教育を分けるのはおかしいというのは当たり前の話で、小さな教育委員会がいっぱいできてもしょうがない。健全育成という言葉自体もだんだん使われなくなっているので、子ども会議など、子育てと教育の両方をカバーするようなイメージでないと、橋爪委員が説明してくださった新しいコンパクトシティのイメージは、だいぶ古い形でここに記載されてしまうのではないかと心配である。

○事務局
 堺市も3つの柱の中で子育て・教育環境の充実に関しては重点方針として取り組んでいるところで、昨年度のこの懇話会の場でもいろいろとご議論いただき作成した「堺市マスタープラン3年間の振り返り」の中で、成果が表れてきたと考えており、引き続き3つの挑戦の一つである、子育て・教育環境の充実に取り組んでいきたいと考えている。
 今ご指摘いただいた基本政策の体系については、マスタープラン基本計画の計画期間である10年間での設定となっているので、今後もこの体系で取り組みたいと考えており、今いただいたご意見については、事業レベルの具体的な取組の中で対応してまいりたいと考える。

●桜井委員
 取組の成果はどういうところか。

○事務局
 子育て環境の教育の部分では、3年間の振り返りの政策単位の実績として、この後期実施計画にも一部を主な成果として掲載しているが、子ども医療費の助成事業、堺マイ保育園事業、キッズサポートセンターさかいの開設、堺マイスタディ事業の全校実施など、マスタープラン策定以降、充実を図っており、子育て環境しやすい環境であるという市民意識調査の数値も上がってきている。

●桜井委員
 医療費のことやキッズサポートセンター、マイスタディとか個別の事業は載るが、今申し上げたように、全体を見通した構造というのはやはり理解されてない印象がある。
意識調査についても、有意差にならない上がり方であるし、成果として挙げてもいいものかと思う。

佐藤委員
 まず一点目は、後期実施計画なので前期の反省をしなければならないが、それを行っている4ページの部分を根拠にして後期実施計画の方向性を示す、という構成になるはずが、4ページに上がっているものは成果ではなく、実績(アウトプット)で表現している。この実績によって、市民の視点からどのような成果があったのかを分析しなければ、政策成果(アウトカム)にはならず、後期実施計画の見直しの根拠とならないのではないか。堺市の政策は非常に事業数が多く、それぞれの部局が様々な施策を行っているのに、トータルで見たときに本当に成果があがっているのかわかりにくい。検証が十分になされていない。3つの挑戦があって、それにむけて複数の施策を組み合わせ、それによって、このような効果が得られたというように、市全体の検証が必要ではないか。各部局が頑張っているというだけでは良くない。これは実施計画なので、一番細かいレベルの記述になるが、次期総合計画の見直しのことも含めると、総合的に見てどのような達成状況なのか、検証していくことが必要である。
 二点目は、戸谷委員のご意見にもあったが、各区のビジョンとの関係性がわかりにくい。区で議論したことが、市の計画で触れられていないことであっても、そのまま区のビジョンになるのか。先ほどのおっしゃっていた位置付けの問題にも関わってくるが、区が提案したものを、市の計画書の中に取り込むことは可能なのか、都市内分権としての区ビジョンには、そうした位置付けもあるのか、お聞きしたいと思う。

○事務局
 まず区で検討されたことがこちらに位置付けられるかという点については、大きな体系としてマスタープランは基本計画として基本的な方針があり、そのもとで個別の分野別計画が立てられている。各区のまちづくりの基本方針は継承していくが、事業レベルについては、例えば区民協議会と地域の方々が一緒になって考えていただいた内容については、具体的に検討していただき、場合によっては事業メニューの中に記載を検討していきたいと考えている。

●佐藤委員
 区で議論する時間や市と調整する時間は取ってもらえるのか。意見をまとめるのに時間が必要ではないだろうか。

○事務局
 庁内でもスケジュール調整をさせていただいており、他の関係部局を含めてスケジュールについてはしっかりと調整してまいる。タイムスケジュールでは、現在が後期実施計画素案であるが、10月下旬に案としてもう一度懇話会を開催させていただきたいと考えており、3月に策定という予定であるので、タイミングを見ながら区とスケジュール調整をさせていただく。

●橋爪委員
 他の政令指定都市の計画に関わっており、私も十数年座長をしているが、基本的に市の計画と区の計画は矛盾がない範囲で、区だけ独自に、事業メニューとして検討すべきだと書くのはよくあることなので、まったくありえないことが書いてあれば問題であるが、基本的には調整いただけることかと思う。
 一点お聞きしたいのは、65ページの成果指標で、区民まちづくり会場で区独自の提案事業数に関して、目標値70件に対してすでに最新値75件となっている。前期実施計画で達成率100%を超えているのが目についた。ほかにも出てくると思うが、こういった指標について、後期実施計画では達成目標を一気に上げていく考え方なのか、当初の策定時の数値を重視するのか。

○事務局
 こちらについては提案事業数であり、できるだけたくさんの提案をいただきたいという方向性は変わらないが、量だけでなく、採用された事業数など質の部分とするのかを含めて、この部分の設定の考え方について検討してまいりたい。

●増田座長
 それでは案件1に関してまとめさせていただく。
 まず、4、5ページの、堺市マスタープラン前期実施計画の振り返りにおける取組成果に関しては、現状として、医療センターができた、区民評議会を設置したなど、アウトプットが記載されているが、その結果、具体的にどういう成果が表れつつあるのかというアウトカムの表現が全くない。区民評議会の設置によって、区から独自提案みたいな事業提案が何個もでてきますというようなところまで書かないと、アウトプット型の成果だけになってしまっているので、アウトカム型も少し記載しなければならないのではないかということ。また、その際には、3つの挑戦とプラス2を鑑みてアウトカムとして達成できたかどうかを書き込めるかどうか、一度ご検討いただきたいというのがひとつである。
 次に、この7つの基本政策は変えないという枠組みでいいが、橋爪先生や早瀬先生からも、超高齢社会の中での生産年齢人口の減少など、国の捉えている緊急課題に対して本当にこの7つの基本政策だけでいけるのかどうか。おそらくこの体系は崩すわけにいかないと思うが、例えば官民一体での鉄道沿線まちづくりの記載はないし、政策6で都心地域拠点の活性化や泉北ニュータウンの再生などについては記載されているが、それと交通政策を一体化させて展開していかないといけない、というように、もう一歩踏み込まなければならないと思う。もしもこの施策体系を崩せないならば、施策6-1、6-2と5-4との連携を図りながら展開するといった見直しをしないと、達成できないところがたくさん出てきていると思う。そのあたりを一度議論いただきたい。
 今日皆さんからいただいた話に関して、もう一つ例を挙げると、元気な農業空間のあるまちづくりの推進について、産業振興という視点で書かれているが、国の方で議論されているのは、産業振興に加えて環境共生都市の実現である。このため、この施策とこの施策は関連付けた方がいいのではないかといった話が検討できると、これまでの体系を踏襲しながら次の政策へ展開することが可能なのではないかと思う。パッケージ化のようなことを考えてみると、崩さずに新たな展開ができるのではないかというのが、皆さん方からいただいた意見である。
 もう一点は、区民まちづくりという都市内分権である。どんな権限、役割を持っているのかというあたりの説明がないと、何を目標として議論していくのかが見えにくい。出てくるのは区の独自性に基づいた提案があってもいいわけで、大事なのは市全体の部分との関係であると思う。堺市全体と部分との関係性は一体どんな関係性を持っているのか、そのあたりのことを一度整理していただいて、都市内分権を強化して書くといいのではないかといったあたりが、今日皆さんからいただいた意見であると思う。

案件(2) 堺市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン(素案)について

案件(3) 堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略(素案)について

※堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略について意見聴取する有識者入室

○事務局
 ※堺市まち・ひと・しごと創生総合戦略について意見聴取する有識者について、事務局から紹介

○米澤市長公室長(挨拶)
 本日はお忙しい中、ご参加いただき誠に感謝申し上げる。
 国では「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を昨年末に策定し、「しごと」と「ひと」の好循環を確立し、その好循環を支えるまちに活力を取り戻すことで、将来の人口減少問題の克服と成長力の確保に対応することとしている。また6月30日には、国の総合戦略を推進するための基本方針として、新たな枠組みや担い手、圏域づくりの観点からの取組を推進することなどが示されたところである。
 このような中、本市におけるまち・ひと・しごと創生人口ビジョンおよび総合戦略について、それぞれ素案を作成したところである。本市が取組を進めている、雇用創出を含めた地域産業や、ものづくり産業などへの支援、安心して子どもを産み育てられる子育て、教育環境の充実、歴史文化を活用した都市魅力の向上など、本市のリーディングプロジェクトである「堺・3つの挑戦」を基軸として、本市が取り組むべき方向性や重点取組などをまとめている。
 本日、委員の皆様においては、それぞれの素案に対して、専門的な見地からご提言を頂きたいと考えている。よろしくお願い申し上げる。

●増田座長
 ※堺市マスタープラン推進等懇話会委員について、座長より紹介

 それでは案件(2)の「まち・ひと・しごと創生人口ビジョン」および「まち・ひと・しごと創生総合戦略」素案について一括して説明をお願いする。

○事務局
 ―資料3-1、3-2、4-1、4-2にもとづき説明―

●増田座長
 案件(2)および(3)に関する現状の取組状況を説明いただいたが、直接的な質問はいかがか。

 ―質問なし―

 質問がないようであれば、ご出席頂いている懇話会委員以外の先生方にお一人ずつご提言をいただくことになっている。産業、学識、金融、労働、言論の分野ごとに、お一人3分程度でご提言をいただき、議論を深めていきたいと思うので、よろしくお願いする。

◎林氏(産業)
 私は産業振興の現場にいる立場から、堺の課題や今後の展望について、提言させていただく。
 一点目は、堺の基幹産業という言い方をするならば、経済規模や雇用規模の観点では製造業が該当すると思う。いわゆるものづくり産業である。このものづくり産業の企業誘致活動と企業の投資を喚起する施策をしっかりと行っていただきたい。
 特に、新しい企業を誘致していくという施策が重要である。これまで、臨海部にはかなり大きな用地があり、そこをベースに企業誘致を行ってきたが、そろそろ土地が飽和状態になってきて、内陸部への誘致を展開しているところ。内陸部では、ダイセル堺工場の跡地にイオンが入ってくる事例もあるが、工場跡地に工場あるいは流通系の倉庫が入ってくるといのが難しい状況で、その要因としては、臨海部の土地が地価で言うと1平方メートルあたり約5~6万円であるのに対し、内陸部では1平方メートルあたり10万円を下らない。こうなると、どうしても商業や、住宅の用途になる。このため、内陸部では企業誘致がかなり停滞している。
 新たな企業誘致の戦略として、美原区の国道309号線沿いの調整区域の工業用地化を図っていく施策はできないものか。最近、産業振興局で、国道309号線沿いの調整区域に工業が張り付くことについての戦略を展開してきたと聞いている。また建築都市局でも、地区計画のなかで調整区域を工業地に変えていこうという施策を検討している。ただ、その場合規模が大きいと、中小企業が入ってくるのが難しいので、例えば、美原区の木材団地に隣接するような調整区域には、規模が小さめの工業用の土地利用に変える施策展開を考えていただければと思う。
 二点目は、新しい産業という切り口である。狭山にある近畿大学医学部が泉北ニュータウンの泉ヶ丘に移転する計画がある。泉北ニュータウンの活性化に繋がるとともに、新しい医療系の産業クラスターを形成するようなことを検討していただければと思う。周りにも、市立堺病院が新たにでき、府立大学でもBNCT(※ホウ素中性子捕捉療法。負担の少ないガン治療法として早期の実用化が期待されているもの。)の研究がなされているという状況で、阪和道と泉北ニュータウンの間に若干調整区域が残っているので、医療系クラスターの形成についても、ご検討いただきたい。

◎井上氏(産業)
地域のものづくり中小企業経営者の立場から、提言させていただく。
 堺市の戦略の3つの柱の中で、堺市は住みよいまちになってきていると思う反面、仕事が徐々になくなりつつあると体感している状況である。そのためには、地域に稼げるものづくりをたくさん創り出さねばならないと強く感じている。
 中小企業の現状としては、家電産業を中心とした大企業が弱体化し、仕事量と収益力が低下している。これまでの大企業と中小企業の共存・共栄ということも、お互い余裕がなくなっている。また、テーマ性を持った地域としての特段の動きが見当たらない。以前には、パネルベイ構想というものがあり、尼崎市等を含めた関西圏での地域事業創造という取り組みであった。それが、結局うまくいかなかったということもあるが、以来、新しい指標とされるテーマがない。そう言った状況下で、地域製造業、特に我々のような中小企業の活性化には、挑戦的な取組が必要ではないかと感じている。
 その実現の為に、これからの成長事業分野とはどのようなものであるかを的確に捉え、そこで新しい事業を中小企業でも創造できるような取組を是非提案したいと思っている。
私は、これからの成長事業分野とはエネルギー、環境、医療と考えている。そこで中小企業がどのように事業展開するか、その背景には必ずテクノロジーの転換というものが必要である。匠の技というもので生きていけるという状況ではない。匠の技をベースにして、量産でものを作るというところに、何らかのテクノロジーを転換していかなければ、チャンスが生まれてこない。そのためには、テーマを的確にし、どういう分野にどういうチャレンジャーを見つけて、その背中を押すのかということに注力した方がいいのではないか。“的確なテーマ”ということで言えば、この堺の地域にあるコア技術にフィットするテーマ、なおかつ国際競争力が持てるという期待値のあるものになるが、こういうことについては地域にいらっしゃる有能なOB人材の方に支援をいただきながら、マッチングを模索すればどうかと思う。“チャレンジャーを見つけて背中を押す”ということで言えば、産学連携で誘導していくことや、間接金融系だけでは賄えないようなお金が必要となるので、資本面でも支援し、ベンチャーキャピタル等に向けて企業をサポートしていくという背中の押し方があると思う。
 私どもは、地域の支援策を受けて成長した企業であると考えている。簡単に事例として紹介させていただくと、リーマンショック以前はデジタル家電用の設備機器をつくっており、150人の社員で約30億円の売り上げであった。今は産業構造が変わり、当該事業の売上高は約7億円に落ちて戻ってこない。しかし、それに備えて10年前から、将的の成長事業分野と考えられたエネルギー産業に向けて、太陽電池のものづくり革新を捉えるということで、テクノロジーの転換により、匠の技を発展させてダイヤモンドワイヤを作るための製造システムを開発した。匠の技をベースにしたシステム開発である。そこには、大阪府立大学との産学連携がベースにあった。今、その分野での売上高は50億円で、200人の雇用を生み出すことが出来た。地域に支援をいただいて、新しい産業に踏み出すことができた訳だ。なおかつ、資本面においても、堺市からフューチャーベンチャーキャピタル株式会社が有限責任組合員となる「堺地域振興ファンド」を通じて、直接的な投資もいただいている。それが呼び水となり、様々な資本政策が行えた。大阪府立大学からも産学連携でのサポートや人材紹介、大学のOB人材も紹介いただいた。
 地域ぐるみで新しい産業を起こすために、どのような分野を選択するのかということを共に考え、チャレンジャーを生み出して、ぜひその背中を押していただきたいと強く要望する。

◎砂田氏(産業)
 堺市内で学童保育事業を行っており、現在、20数校の小学校の中で、約1,500人の子どもをお預かりしている。運営の中で最近特に増えているのが、就労家庭とひとり親家庭である。昨今の核家族化の中で、働きながら子どもを育てることのしんどさを、日々目の当たりにしている。特に、ひとり親家庭の方々は、いろいろな事情を抱えながら子育てをされている。最近、特に重要課題になっている虐待やネグレクトなどの問題が毎日のように起こっている。現場の指導員からよく聞くことは、家庭の情報を事前にもう少し知っていれば、地域とも連携でき、何とかできたのではないのかということが多くある、ということである。学校や家庭児童相談所、地域、ファミリーサポートの方々と一緒になり、事前に防止できるようなシステム作りを是非お願いしたいと思っている。こちらの方から突っ込んでお聞きしても、個人情報の問題等でお答えを頂けないことが大変多いが、事前に把握しておくことの方が重要なのではないかと思っている。
 堺市が子育てしやすく、結婚、出産したくなるような住みやすいまち、市になるように願っている。例えば、区ごとに子育て支援をどのように行っているかというPRを工夫していただき、それを打ち出していくことによって、堺の人口が少しでも増えていくのではないのかと思っている。子育てをする世代の方々に優しい市であるということをもっと強調していかなければならないと思っている。

◎鶴坂氏(学識)
 私は20年ほど大阪府庁に勤めており、その間中小企業支援に携わっていた。ものづくりからまちづくりまで幅広く関わらせていただき、現在は地域商業の活性化を軸に摂南大学に所属している。また、堺東を根拠地とするNPO法人商業まちづくりネットの理事長を務めており、堺東の商店街活性化のお手伝いをさせていただいている。
 ちょうど私が大阪府庁に勤めていた時に、旧の中心市街地活性化法で基本計画が作成された。それから長い年月を経て昨年、新しく基本計画が作り直され、中心市街地というエリアも、堺東から南海本線の堺駅までのエリア、旧堺市内といわれているエリアに広がった。その中で一際目を引くのが、利晶の杜、建替える市民会館など、拠点となるようなものが次々とできている一方で、例えば堺少女歌劇団というようなグループが立ち上がり、散発的にいろいろな試みがなされている。また、商店街の方々や中小企業の方々、ものづくりの方々も堺を愛し、堺をより良くしたいという熱い思いで活動されておられる方々がたくさんおられる。残念なことは、それらが点であり、面になって見えてこないことである。個人的には、商業と都市計画が融合していないというのが、大きな問題であると思う。融合するということが前提になるが、人が堺の中で回遊するような仕組み、仕掛けが必要であると思う。回遊して少しでも長い時間、滞留してもらい、その時間を長くすることが必要になってくると思う。
 これらを踏まえてご提案したいのは、まちづくり会社、まちづくり事業体を作るべき段階にきたのではないのかと考えている。申し訳ないが、行政が主体的に行っても、あまりインパクトがないと思うので、熱い思いを持った民間主導で行うべきだと思う。堺は地域資源の豊かなところであるので、例えば神戸市長田区ではまちをあげて、様々な場所で映画祭や音楽祭を切れ目なく行っているが、それを支えているのがまちづくり事業体である。まちづくり会社が流行り、だめになったところもあるので、その組織のあり様というのは検討していただくほうがいいと思うが、まちをコーディネートしプロデュースしていくという仕組みが必要であると思う。いろいろな知恵や知識、エネルギーなどを一つに集約する時期に来ていると思う。そうでなければ、堺のめざす方向が定まらないと思う。先日、学生を連れて堺東で月1回開催されている「ガシ横マーケット」を見学に来た際に、堺東に初めて来たという学生もおり、若者がわくわくできないといった感想を持っていたようであった。昔は堺東といえば、若者が集う堺の一大集積地であった。来年、鉄砲町にはイオンモールができるし、これを機に堺東、中心市街地をどうしていくかといことを考える重要な時期であると思う。

◎塩澤氏(金融)
 金融の立場から、中小企業をどう見るかという観点で提言させていただきたい。
 私どもは全国で融資を行っているが、全国的に見ると製造業の割合は約4割であるのに対し、堺市は5割を超え、圧倒的に製造業のウェイトが高いというのが強みであると思う。また、東大阪市のように製造業に特化しているというわけではなく、サービス業もあり、食品関係もあり、業種の偏りがない地域だと理解している。技術力も高く、産学連携が非常に進んでおり、熱心である。また地域に連帯感があり、異業種交流会も密接に行われているところが特徴的であると思っている。
 ただ、もののはじまりなんでも堺というだけあって、非常に素晴らしいものがあるのに、対外的発信力が弱いと感じている。異業種交流が盛んではあるが、ネットワークの構築や連携が上手くできておらず、商売に活かしきれていないと思っている。私が以前担当していた大田区では、中小企業が多く、ピーク時は10,000事業所と言われていたが、今はその半分の5,000まで落ち込んでいる。そのため、小さい企業が集まって何とか生き延びていこうと、非常に強いネットワークを作っている。堺は技術力があり、企業としてそれぞれの基盤を持っているので、異業種交流もそこまで切羽詰った雰囲気はないが、異業種交流を単に意見交換の場だけではなく、いかに商売につなげていくかという一段高めるための具体的な議論を是非してもらいたい。
 我々もそのところについてお手伝いを現在行っており、具体的な例を申し上げると、食品関係の会社が10数社を含む取引先との会合で、年に数回集まるのだが、新しい製品開発ができないかということで、いろいろ意見交換を行い、まず作ってみようと動き始めている。具体的に始めてみるということが非常に大事だと思っており、力のある企業が堺には多いのだから、一歩も二歩も進んで具体的な取組、アクションを是非行っていただきたいし、またそのための仕掛けづくりが必要であると考えている。

◎細見氏(金融)
 私どもの銀行は堺市内に現在14店舗ある。これは市内最大の店舗数である。4年半前には、堺市と産業振興連携協定として、地方創生を先取りする形で協定を締結し、取り組ませていただいている。
 堺市はものづくり企業が多く、一日に数社訪問し、さまざまな企業のお話を伺っているが、課題が大きく二点ある。一点目が企業立地である。企業が工場を建設する用地が今、堺にはないということで、何とか見つけ出そうとしているところであるが、まずは住工混在の問題ということがある。例えば、現在500坪の土地で工場を操業しているが、近隣に住宅ができたために操業しにくい環境になってきているといったことがある。また、少しずつ景気が良くなってきて、500坪の工場をもっと大きくすれば、雇用も投資も増やせるというのはわかっているが、その場所がないために機会を逃しているという企業がかなりある。我々が行った情報収集では、1,000坪、2,000坪の土地があれば、今ある工場を拡張したい、市外から堺へ移転したいといった企業もある。先ほど、美原区の調整区域の活用に関するご意見もあったが、製造業向けには、調整区域における工場利用も条件を満たせば使用できるとされているが、官民挙げてインフラを整備しながら、中小企業向けの工場用地の整備というのが非常に必要であると考えている。
 二点目は、これも必ずと言っていいほど中小企業から出てくる話ではあるが、雇用の確保である。特に今年は売り手市場で、中小企業に人が集まらない。アルバイト、パートであっても人が来ない状況である。地元の中小企業と求職者との出会いの場をどんどん作っていかなければならない。工場立地と同じで、人がいなければ、受注が来てもこなせない。雇用が生まれれば、人口の増加にもつながっていくと思う。
 人口の減少という話があったが、区ごとを見ると南区が突出して人口の減少が著しい。これはニュータウンなりの要因と考えている。昭和40年代に開発された他のニュータウン地域においても、ニュータウンの空き家率が進んでいる。これが防犯上、治安の問題になり危惧されているところである。この空き家について、再度借上げ、行政やインフラ、鉄道、バス会社も含めて官民一体となり、耐震補強するなどし、子育て世代が環境の良い、広い住宅でのびのびと子育てができる取組が必要である。そうしないと、南区の人口を反転させることは難しいと考えている。
 われわれも色々な自治体と連携するなかの事例として、最近親元近居もしくは同居する場合にローン金利を優遇する制度を設けたところ、かなり人気があった。

◎藤原氏(労働)
 堺市における連合については、170組合で約3万人の組合員から構成されている。一部大手企業もあるが、大半が中小企業で働く方々になる。
 いま、労働力人口が減少していく中では、いかに堺市で就労していくのかということがポイントになってくる。堺市に生まれ、学校教育課程までは堺市で過ごしても、就職となると大阪市や他府県に移ってしまうのが現状で、居住地そのものも変えてしまうということで、人口減少につながっている。これは、大企業の本社機能が他市にあるということだけではなく、地元産業を支えている中小企業に元気がないということがひとつの要因であると考えている。堺市においては、昔からあるものづくり産業や農業の活性化を積極的に取り組んでいくのが必要である。居住環境の整備については、私も住んでいる泉北ニュータウンについて言えば、老朽化、高齢化ということが課題であり、居住環境の整備をすることで子育て・教育環境を充実させていくとともに、堺市内の企業に就労するところまでのつながりを大事にするということがポイントである。
 今、堺経営者協会では、大学向けのインターンシップに取り組んでおり、今後は高校も含めて広くインターンシップに取り組んでみてはどうかと考えている。産業の活性化ということも出てくるが、具体的な取組として企業誘致があり、匠町で取り組まれたように有効な選択肢の一つだと思うが、限界が見えてくると思う。今後は、戦略のなかでも提起されているように、農業という分野でも、生産品のブランド化や地産地消を促進するような販路を確立するということが大事である。農業分野でも問題となっているが、次世代の生産者の育成についても重要である。後継者がいないため農業をやめるという方も多く見受けられる。
 ものづくり中小企業の支援については、堺ブランドが持っているポテンシャルがあると思うが、その魅力をいかに引き出し、発信していくことが大事だと思う。堺ブランド、堺の生産品について、若年層を中心に堺市民ですら、それが堺のものであるということを知らないような状況であるので、しっかりと発信して拡大していくことが必要である。
 ものづくりに携わる人材育成に、行政として積極的に関わっていていただきたいと思う。今、各企業において2007年問題で出たように、技術の継承というものがあまり行われておらず、匠の技というものが継承できていない状況で、プロ意識を持った働き手が少なくなってきている現状がある。企業の技術継承が行われないと、企業ひいては産業が衰退していくことにつながる。ただ、各企業単位では限界があるので、中小企業の相互連携を行政として手助けするなど、積極的に関わっていただきたい。
 地域産業の活性化は雇用に繋がり、雇用は定住に繋がる。それは最終的には、まちの賑わいにつながっていくと考えている。有効な相互好循環を作っていくために働くという観点から取組をお願いしたい。

◎柴田氏(言論)
 私どもは国内外を取材し、ニュースを報道機関、行政、金融機関等に配信している。長年の行政取材を通じて感じることを中心に提言させていただく。私自身はこの4月まで2年間、堺市の市政記者クラブに在籍し、大和川以南の泉州地域を取材させていただいた。さらに25年前にも一度堺市を担当させていただいていたのだが、2年前に堺東に戻ってきた際に感じたのは、全く変わっていないということ。かつては賑わった中心市街地だった堺東駅前地区の衰退が著しく、市の玄関口としていささか残念でならない。人を呼び込むためには、まず玄関口をいかに魅力的にするかということが大事であると思う。
 堺市でも、市役所前から合同庁舎までを一体的に市民広場として整備し、イベントを開催することを考えているようだ。そのような人を呼び込む仕掛けづくりに着手し、市民会館の建て替えと連携して、人の回遊性を持たせ、その結果、市街地全体の賑わいを創生しようということである。しかし、人を呼び込んでもその受け皿、長時間滞留させる仕掛けも必要であると思う。それにはまず、商店街を活性化させることが必要で、ただし、単に空き店舗に店をはめ込んでいくという発想ではなく、訪れる人たちと店側のニーズが合致しなければ意味はないと思う。事例としては、大阪市北区中津の中崎町周辺がある。かつては高齢者の方ばかりが住んでいたまちであるが、空き家がかなり増えてきて、この空き家に目を付けた若者たちが、服飾、雑貨、飲食など個性的な店を出店し始めたことから、若者たちの人気となり、今では週末になると多くの若者たちで賑わうようになっている。さらに若い世代と元から住んでいる高齢者の方々との新たな交流も生まれていると聞いている。堺東にも同じような仕組みが取り入れられればと思う。
 もう1点は、子育て世代の負担軽減で、定住促進策などについても、総合戦略にいろいろ挙げられているが、これを一律的に行っていても効果はないと思う。市内を見ても臨海部、旧市街、南区を中心としたニュータウン、それぞれ周辺の環境や人口の形態、世帯の家族数など地域により様々だと思う。地域ごとの特性や実情に合わせて、柔軟な施策を行うことが必要だと思う。市では今年度から区民評議会を設置し、都市内分権に着手している。区役所を中心にまちづくり支援事業などを充実させることが狙いのようだが、是非とも子育て支援や定住促進策などについてもその企画、立案、実施まで、それぞれの地区の特性に合わせた施策が行えるようなシステムづくりを行っていただきたい。
 全体の総合戦略の策定にあたってもこれまでの既成概念に捉われず、柔軟に対応できる感性を持って対応していただきたいと思う。

●増田座長
 懇話会の委員の皆さまからも、ご意見があればお願いしたい。

●早瀬委員
 私は吹田市の千里に住んでいるが、今、千里ニュータウンは建て替えのブームで、小学校の教室が足らず、増設しているような状況となっている。建替えて高層化したところに、若い世代が入ってきている。
 先ほどまちづくり会社、まちづくり事業体に関するご意見があったが、高槻市では「高槻ジャズストリート」というイベントが毎年開催されているが、これを運営している専従職員は一人だけ。15万人が集まるイベントで、ボランティアを1,000人ほど当日に集めるという、とても面白い取組である。企画当初は市役所や警察も消極的であったが、今はそれを高槻のブランドイメージにしようと取り組んでいる。そういうことに取り組もうとする人がどんどんまちづくりに参加してくれるような仕組みが大切だと思う。
 人口を増やしていくことについて、私としては外国人を受け入れること以外にはないのではないかとも思うが、外国人や障害者の方が暮らしやすい、そして子どもも育てやすいまちづくりには、住民の参加が、今重要であると思う。

●増田座長
 泉北ニュータウンに関しては、千里ニュータウンのような住宅需要がない。URも建替えの計画はない。府営住宅に関しては、一定建替えの計画があるが、一部用途廃止をして戸数減を図っている状況である。
 私は泉北ニュータウンの再生、また千里ニュータウンの再生に関わっているが、千里がうまくいっているモデルかというとそうではないと考えている。千里ニュータウンの建替えは、あらためてベッドタウンを作ることになってしまっている。それに対して泉北ニュータウンは、住宅需要がない分、本来の総合的なまちとしてどう転換できるかということで、非常に重要なモデルになりうるのではないかと考えている。
 
●橋爪委員
 「まち・ひと・しごと総合戦略」というのは、中長期を見ながら、短期5か年の計画、そのうちの1年は今年度なので、今後4年間で何をなすべきかを書かなければならない。特に、堺の場合では、今進めている施策を継続して設定する形になりがちで、特にこれから4年間の中で新たに強く打ち出していくことがなかなか書き切れないというところが、今回の戦略の課題だと思う。
 私からは三点申し上げたい。まず一点目は、全自治体が戦略を策定するので、他都市との競争のなかで、堺市として打ち出すべきところは明確に打ち出さなければいけないだろうと思う。特に、打ち出し方の前提として、危機感をどこに持つのか。人口に関しては緩やかに減少ということで、人口が急激に減少する自治体とは問題や課題が全く違う。むしろ、産業振興に危機感を持つべきではなかろうかと思う。いただいた人口ビジョンを見ても、人口は緩やかに減っていくが、産業の方は今後どうなっていくか。産業振興に課題があると記載したうえで、重点戦略の柱がなくてはいけない。
 二点目としては、今申し上げたことを踏まえつつ、戦略の柱を見た時に、例えば大学との連携強化というのが1つめの教育関連の柱のなかにあるが、むしろ3つめの産業振興策に位置付けて、重点的、積極的な大学連携というものを考えるべきであろうと思う。戦略素案の17ページを見ても、「大学との連携強化」の部分に事業がない。大学連携による産業振興に関する新しい取組が今のところなく、空欄になるのが非常に問題であると思う。大学においては「2018年問題」が言われている。今後、人口減少の中で、大学を維持し続けることができるのであろうかと各大学が模索しているなかで、郊外に出た大学が、大都市の中心部あるいは近郊に戻りつつある。今、大学が動く時期にあるわけだ。堺市の場合、近畿大学が泉北地域に来るというのは画期的なことである。医療クラスターのお話もあったが、大学が都市を再生する可能性を秘めている。堺東に大学をもってくるのは難しいかもしれないが、高槻市や茨木市などは駅前や工場跡地の再開発で大学用地を確保した。大学というものが、伸ばすべき資源のひとつであると思う。
 三点目は、この案件についてはかなり元気が出る話にしないといけない。書きぶりとして、いいスパイラルを生むのだという前向きな表現がいいのではないか。素案14ページの3との好循環を表す図も、もう少し勢いが感じられる表現にしていただければと思う。

●増田座長
 資料4-1について、戦略の柱1の重点項目として書かれている「大学との連携強化」は、子育てというよりはむしろ戦略の柱3に連携する。府立大学は、堺市とも連携を行っているし、産学連携、地域のものづくり支援にもかなり力を入れている。重点項目のセット化させたり、連携させるという視点で、好循環モデルを表現しないといけないのではないか。泉北ニュータウンの再生とか中心市街地の活性化は、重点項目の何と何がセットになればできるのかという視点で、好循環モデルに力強さが必要であると思う。

○事務局
 ご指摘いただいた部分で、見せ方として行政が作成する体系整理という形になりがちであり、例えばニュータウンであれば、農業やコミュニティビジネス、大学との連携、健康医療クラスターなどを全体的に、パッケージとしてお見せし、相互連関、好循環の形で発信していきたいと考えている。
 まだ中身を固めきれていない状況ではあるが、そのような視点で構成していきたい。

●澤井委員
 産業振興政策としては、主に中小企業政策になってくるのだと思う。その場合、堺市は北九州市と川崎市に類似しているのではないかと思う。川崎市は、堺市よりも厳しい状況を迎えていたが、少しずつ産業政策の成果をあげており、川崎モデルと言われている。市との連携の仕方が、川崎市はもっと密で、一つ一つの企業に寄り添って、担当の職員が数年付き添って後押しをする方法である。川崎モデルを参考にするといいと思う。川崎市も、横浜市に隣接し、また団地も多いという都市構造で、まちづくりに苦労している。それを参考に、堺モデルを作ってもいいのではと思う。

●佐藤委員
 就労というのは必ずしも企業に就労するだけではない。年齢別の人口区分が素案には掲載されていないが、おそらく60代、70代の前半ぐらいの方々はお元気で、いろいろな形で地域で働きたいと思っている方も多いであろう。そういったニーズに対応する中間的な就労について、女性も含めて地域で働ける場所という観点から考える必要がある。それらを含めて、人が住み続けたくなるような地域づくりが必要だと感じている。それらが地域の活力に大きく結びついていくと思う。単に“高齢者=シルバー人材センター”という結びつきだけではなく、起業できるような支援等はかなり重要だと思っている。

●桜井委員
 資料4-1の中に、雇用のマッチングを入れるとよいのではないかと思う。せっかく働く場があるのに、人を紹介できないミスマッチングがある一方で、堺市内で雇用を提供するということは非常に大事なのに、上手くいっていないという話が、奇しくも続いて出た大事なところで、これをつなげる必要がある。
 人口減少が、負のスパイラルやマイナスの概念で出ているが、人口減少がそれほど悪いことなのか。人口減少を恐れずに雇用のマッチングに取り組むことで、結果的に人が戻ってくることになると思うので、ネガティブから始まらないでマッチングさせることが必要である。子育て支援は雇用政策と密接に関わっており、子育て支援は単にしんどいお母さんをサポートするといことではないので、つなげていくことが大事であると思う。そういう意味では南区などの農業のブランド化や地産地消、担い手の育成、雇用に結びつくような構造的な仕組みが必要であると思う。さらに、他の商店街で成功している面白い仕掛けが、堺市の玄関口である堺東の商店街に必要である。
 最後に資料4-1の最後にPDCAが入っているが、戦略の柱1の重点項目の中の「子どもたちの学ぶ力の向上」とPDCAが合致すると、どうしても点数主義的な学力になってしまう。せっかく安心して子育てできる、充実した話が良くなくなるので、考えていただきたい。

●戸谷委員
 要するに堺の特色が何かを打ち出す時に、皆さんの話を聞いていると、やはりものづくりということになると思う。ただ、農業の後継者や新しい農業の形態は、非常に面白い話であると思うので、堺の中でどういう位置付けにするのかがひとつポイントであると思う。堺市は、政令指定都市の中でも農業を頑張っている市である。そうすると、これを活用しないというのは、もったいない。
 今日は議論に上がらなかったが、宿泊施設が堺市は少ない。関西国際空港ができても通過点になってしまっている。堺にはいろいろな歴史文化があるのに、人が来られたとしても日帰りになってしまう。そこで宿泊していろいろなニーズを喚起することが必要だと思う。

●増田座長
 それでは、案件(2)および(3)についてまとめさせていただく。
 まず、基本的な考え方のところで、好循環ということに関して、重点項目に掲げる取組のうち、何と何をパッケージ化してどうシステム化するか、どうインテグレーションしていくのかをきっちりと書き込まないといけない。今の施策が点の状態であるので、それをつなげて線にし、面にしていくために、どうシステム化するかについて、冒頭の基本的な考え方の中に打ち出していく必要がある。
 また、関係有識者の皆さんからは、プロデュース能力や発信力の必要性である。市民力や地域力の発揮という言葉が記載されているが、行政を挙げて、地域の発信力をどう高めていくのか、それに対してどのような戦略があるのかということも、基本的な考え方のなかで必要かもしれない。
 それと同時に戦略の第4章のところでは、パッケージ化によって好循環させるというモデルを、どのように明確に見えるようにするかということで、そのあたりを展開すれば、さらに力強い戦略が打ち出せるのではないかと思う。
 今日の議論を反映して、どのような戦略が出てくるのか、次回の懇話会でもう一度議論を発展させることができると思うので、今後の足がかりにしていただきたい。

(3)次回の開催予定について

 ※次回の開催は10月中下旬を予定しており、本日の懇話会終了後速やかに日程調整をさせていただく旨を事務局から説明。

(4)閉 会  

このページの作成担当

市長公室 政策企画部 計画推進担当

電話番号:072-228-7517

ファクス:072-222-9694

〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所本館4階

このページの作成担当にメールを送る
本文ここまで