このページの先頭です

本文ここから

「栄養と食の問題」

更新日:2012年12月19日

自閉症スペクトラム障害(ASD)をもつお子さんにとって、栄養上必要なものはなんでしょうか?

 一般的に、ASDのお子さんが栄養上必要とされるものは、すべてのお子さん、また育ちざかりの10代のお子さんと同じです。
 ですが、ASDのお子さんは、偏食がちであると言われています。なので、お子さんが、本来必要とする栄養が十分には摂れないこともあるでしょう。
 例えば、(お子さんが飲むのを拒否したり、ある特定の物を好むために)もしお子さんが牛乳を飲まない時には、十分なカルシウムやビタミンDを摂取できていないかもしれません。また、もしお子さんが、穀類を十分に摂取していない時には、繊維やビタミンBを十分に摂取できていないこともあります。ASDのお子さんの多くは、このような偏食のために、栄養障害をおこすリスクがあるかもしれません。また、鉄分の摂取不足のリスクも高くなる可能性があるでしょう。

「食」の問題について、知っておくべきことはなんでしょうか?

 食の問題は、ASDのお子さんだけでなく、多くのお子さんに等しく見られることでもあります。ASDの子どもの場合、その問題がより長く続いたり、お子さんの味覚や、嗅覚の特性によるものであったり、学習された行動パターンの結果だったりします。ASDのお子さんのうち、多くて4分の3のお子さんが、食に関する問題を抱えている可能性があると言われています。
 以下のような問題が挙げられています。

  • 食物の手触り(材質感)、色、味、温度に関する限局性
  • 食物に関する儀式や執着
  • 食物以外のものを食べたり、口に含む(異食症)
  • 強迫的に(否応なしに)食べること
  • 食べ物を口に詰め込む
  • 吐く、吐こうとする、長時間、何度も繰り返し食物をかむ

 もしお子さんが、ある食べ物を食べた後、むかつきを感じたら、次にその食べ物を食べるのを嫌がることもあるでしょう。これは、たとえその食べ物がお子さんの気分を悪くするようなものでなくても起こりうるかもしれません。また、お子さんが、好きな食べ物を食べなくなったり、過去に大好きだったものも嫌がったりすることがあるかもしれません。これは、行動上のもの、また好みや強迫観念に関連するものである可能性があります。

食事のイラスト

お子さんの「食」を改善するために、できることは?

 食や栄養の問題に上手に取り組む方法としては、まず、食事時間を規則正しく構造化したものに設定するといいでしょう。食事やおやつは、毎日ほぼ同じ時間に与えるようにしましょう。
 食事時間は、穏やかに、そして、注意がそらされるものを除くようにしてみましょう。お子さんと一緒に座って、同じ食べ物を食べましょう。また、できるなら、お子さんが自分自身で食べるように促してみましょう。
 毎回の食事には、お子さんがいつも美味しく食べているもの、または少なくとも一つは好きな食べ物を一緒に出しておくといいでしょう。このようにすると、お子さんにとっては、食事のときには必ず好きで食べられそうな食べ物が一つ用意されていることになるでしょう。
 また、インスタント食品ばかりにならない方がいいかもしれません。お子さんに食べるように言うときにも、決して、懇願したり脅迫してはいけません。
 一旦、お子さんが食卓から離れたら、食事を終わりにするといいでしょう。
 お子さんには、決まった食事やおやつの時間に、食べる習慣をつけていくために、できるだけ、次の食事やおやつの時間までに、食べ物を与えないようにしましょう。お子さんは、家族が食べているのをみて食べることを学んでいきます。だから家族の皆さんは、果物や野菜をしっかり食べたり、間食をしないなど、食行動において、お子さんの良いモデルになるように努めてみましょう。
 口に食べ物を詰め込む、何度も噛んでは出す、ひどい偏食などの摂食に関する特異な問題でお困りの際には、必要であれば、行動やスピーチ、作業療法の専門家からの助けも利用されるといいでしょう。また、栄養士への相談は役立つアドバイスを得られるかもしれません。

小児科医のチェックはなぜ必要なのでしょうか?

 定期的な診察の際に、医師はお子さんの食事についても検討します。お子さんにひどい偏食がある場合など、一度相談してみて下さい。小児科医は、食の問題に関連する医学的な原因がないか、成育歴を聞いたり、身体的な検査をすることもあるでしょう。
 例えば、食べ物でないものを食べること(異食症)は、鉄の血中濃度の低下、精神遅滞(低年齢の子どもは手に触れるものすべてを口に入れます)、感覚的な探索行動、もしくは、強迫、不安に関連することもあると言われています。
 栄養障害について調べるために、検査が必要になることもあります。

食べることや栄養について、このほかに留意しておくこと

 親御さんにとって、お子さんが食べる必要があると考えている量や種類は、実際のところは、ひどく多すぎる場合があることを心にとめておくといいでしょう。小児科医は、お子さんの年齢や体重を加味して、お子さんにとってベストな一人前の食事量を教えてくれるでしょう。また、一食で、バランスの良い食事をめざすのではなく、一週間単位でめざすのが好ましいということを覚えておいてください。そして、食事の問題は、一夜にして突然に消えてなくなるものではありません。お子さんには、食に関する新しいルールを伝えて続けていくことが必要となるかもしれません。

このハンドアウトは、大阪大学子どものこころの分子統御機構研究センターが、アメリカ小児科学会の一連のハンドアウト集“Autism: Caring for Children with Autism SpectrumDisorders”のNutrition and Eating Problemsのハンドアウトを、日本の実情に適した形に加筆したものです。

引用参考
Ernsperger L, Stegen‐Hanson T. Just Take a Bite: Easy, Effective Answers to Food Aversions
and Eating Challenges. Arlington, TX: Future Horizons,Inc; 2004
Legge B. Can't Eat, Won't Eat: Dietary Difficulties and the Autism Spectrum. London: Jessica
Kingsley; 2002
Satter E. How to Get Your Child to Eat-But Not Too Much. Palo Alto, CA: Bull Publishing Co;
1987





このページの作成担当

健康福祉局 障害福祉部 障害支援課

電話番号:072-228-7411

ファクス:072-228-8918

〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所本館7階

このページの作成担当にメールを送る
本文ここまで