「まさかのロケ電」

更新日：2014年1月23日

○走る電車内（午後3時ころ）
　
一人で椅子に座り、つまらなさそうに携帯を触りながら、独り言をつぶやいた山口建也（やまぐちたてや）17歳。
　
山口「あいつ、今日は暇やから一日中遊べるっていってたのになぁ」
　
少しすると数人の男性の声が聞こえてきた。
　
男　「（標準語風に）いやー、次はどこ行こうか？」
　
数人の男性、話し合いながら乗車。
山口がふと顔を上げると、男と目が合い、話しかけられる。　
　
ロケ隊のリーダー「ねえ、君。僕たち今堺めぐりのロケしてるんだけど、君は堺出身の人？」
　
山口「あ、はい。」
　
と返事をすると、ロケ組がカメラを回そうと話し合うのが聞こえた。
　
ロケ隊のリーダー「あのさ、ちょっと話聞かせてもらっていいかな？」
　
山口「…別に、少しくらいならいいですよ。」
　
ロケ隊のリーダーはロケ隊にカメラを回すような合図を送る。
　
ロケ隊のリーダー「じゃあ早速だけど…、堺といえば何かな？」
　
漠然とした質問で少しとまどう山口。
　
山口「え、えーっと…、千利休…とかですかね。」
　
ロケ隊のリーダー「あー、そうだよね！堺といえば千利休。そしてお茶だよね？」
　
山口「そうですね。」
　
ロケ隊のリーダー「さっきね、お茶を飲みに行ったんだけど、一緒にお茶菓子も出てきたんだよ。」
　
山口「…僕はそういうところでお茶を飲んだことがないんですけどね。」
　
ロケ隊のリーダー「そうなんだ。あ、お茶菓子で思い出したんだけど、『かん袋』にいって『くるみ餅』も食べてきたんだけど、すごくおいしいね。」
　
山口「へぇー。」
　
ロケ隊のリーダー「それでね、初めて知ったんだけど、くるみ餅ってクルミの実とかが入ってないんだってね？」
　
山口「え！そうなんですか！？」
　
ロケ隊のリーダー「え！？」
　
山口「え！？」
　
ロケ隊のリーダー「あ、知らなかったんだ？おいしいからさ、今度食べてみなよ。」
　
山口「そ、そうですね。そうします…。」
　
ロケ隊のリーダー「それから、次に行くところを決めようと思ってるんだけど、どこかおすすめの場所とかはない？」
　
山口「うーん…。浜寺公園とかはどうですかね？今なら確か、紅葉が見れますよ。松林もきれいだし。あと、夜になったら臨海工業地帯の工場の明かりがきれいですよ。」
　
こういったやりとりをしているうちに、山口が降りようと思っていた電停に着く。
　
山口「あ、僕、ここで降りるので、そろそろ…。」
　
ロケ隊のリーダー「お、そうなんだ。いろいろありがとう！」
　
山口「あの、もしかしてこれってテレビに出れるってことですか？」
　
ロケ隊のリーダー「んー、本当は移動で乗っただけなんだけど、話が聞けたから流れると思うよ。」
　
山口「え、マジっすか！」
　
山口はテンションが上がり、何度も会釈をしながらチン電を降りていく。
　
ロケ隊のリーダー「期待しておいてよ！」
　
と、窓を開けてチン電の中から山口に声をかけるロケ隊のリーダー。
　
山口「…よっしゃー！」
　