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受賞者挨拶 奨励賞 アフガン孤児支援 ラーラ会 代表 柄子 眞弓

更新日:2012年12月19日

 自由都市・堺市は、アフガン孤児支援・ラーラ会に立派な賞をくださいました。この賞が人権を擁護し、平和を構築することに尽力した個人や団体に与えられる賞であることに格別の喜びを感じております。
 また、私達ラーラ会が団体受賞したことにも大きな喜びを味わっております。なぜなら、ラーラ会を構成している会員も運営委員も殆どがごく普通の主婦たちだからです。専門家でなくても、有識者でなくても、ごく普通の人たちが思いを一つに力を合わせれば、小さくても世界平和の再構築へとつながる働きができるという良い具体例になれたのではないかと思うからです。堺市がこの点を評価してくださいましたことに深い敬意を表します。

 世界から見捨てられていたアフガニスタンが世界の注目を浴びて9年になります。アメリカ・NYのワールド・トレード・センター・ビルディングがテロリスト達の攻撃によって崩れ落ちるショッキングな映像をテレビで見、アメリカが報復のためにアフガニスタンを攻撃したとニュースで聞き、世界はどうなっていくのかと、皆が緊迫した危惧を抱きました。眠っていた私たちは覚醒させられました。私たちはほとんどが平凡な主婦でしたが、このまま放っておくわけにはいかないと感じ、傍観者の立場から脱出して行動する者になったのです。大きな事はできなくても私たちにもできる何かがあるはずだと確信して。幸い、私たち女性は、その内に神から戴いた「母性・母なるもの」を秘めています。これこそ力です。

 いつの時代もそうですが、戦争や紛争は最も弱い立場に置かれている小さな者たちに一番の惨禍を負わせます。2002年12月に初めてアフガニスタンを訪問した時に目にした光景は、終戦後まもない昭和20年代の日本社会をほうふつとさせるものでした。直感的に「助けなければ」と思いました。悲惨のどん底に放置されているのは親を失って誰からも守ってもらえない孤児たちです。一人でも二人でもいいから助けたいと思いました。あれから8年。「見た者の責任」を果たすべく孤児たちへの活動を開始してすぐに、友人・知人たちが活動に加わりました。「聞いた者の責任」だと言って。このようにして、NGO・アフガン孤児支援・ラーラ会はごく自然に結成され、今日に至るまでアフガニスタンの孤児たちへの援助活動を展開、継続して参りました。

 水に投げ込まれた一つの石が波紋を広げていくように、ラーラ会の活動は静かに確かに、広がっていきました。なんと大勢の方々が支援の輪に入ってくださったことでしょう。「40年こつこつ働いて貯めたお金です。生きる困難に直面している人を助けたいと思っていました」と、浄財を匿名で寄附してくださった人。この方は奇しくも堺市のお方でした。「まだ子育て中なので大きな寄附はできませんが私にできることは協力します」と、孤児たちにプレゼントする楽器類の布袋縫製を引き受けてくださった人。ラーラ会の活動は実に大勢の方たちの善意の結集で可能となったのでございます。普通の人たちが熱い思いを共有したうえで、それぞれが自分の持てる力を出し合って、ともに歩んでまいりました。これこそが尊いのだと思っています。

 目に見える成果といたしましては、ヘラート州政府に250人の男児が生活する建物を新築・寄贈。私立孤児学校にカーテン・ベッド・机などの備品を調達し、食堂やトイレも建設・寄贈いたしました。孤児院に収容されているヘラートの孤児たちが清潔に安心して日々暮らせるように、住環境を整えることに貢献いたしました。

 しかし、もっと大切なのは目に見えないものです。ピクニックを開催しては孤児たちとの楽しい交流の機会を持ち、人間同士のあたたかな温もりを共生共有する努力をしてまいりました。孤児院内に幼児教室や英語・パソコン教室を開設し、教育支援も続けています。教育こそアフガニスタンの現状を変革し、将来に新世界を生み出す希望が持てるものと確信しています。ただ、私たちの今の力では直接教育に携われないのが残念な点でございます。

 アフガニスタンでは、母親がいても父親のいない子たちは「孤児」と呼ばれ、孤児院に送られてきます。母親に経済力がないからです。この子たちを母親のいる家庭に返す運動の一環として、貧しい女性たちの自立支援を開始しました。「女性手仕事センター」を開設し、アフガン刺繍やギリム織など伝統工芸の製作を指導し、完成した作品を買い上げることで、彼女たちの生活の安定を図っています。彼女たちが精魂込めた美しい手仕事作品は、着物の半衿となり、スカーフとなり、敷物となり、壁掛けとなり、日本の女性たちに歓迎されています。国境を越えて、手をつなぐ女性たちの連帯が生まれました。

 アフガニスタンの情勢はますます混迷を深め、国の再建はどんどん遠のいて行っているように思えます。しかし、私たちはあきらめません。私たちが問題解決に向かって努力することが大切なのだと考えています。志を同じくする人たちと連帯を組み、ささやかでも着実に平和に向かうさざ波を広げてゆきたいものです。

 「千里の道も一歩から」「一滴のしたたりが大河を造る」イスラム世界にもこのような格言があります。小さなことでも、皆が自分のできることで協力する。これがラーラ会の基にあるコンセプトです。難しいことではありません。実に当たり前のことなのです。特別なことではなく、当たり前のことを実行してゆきます。

 堺市の皆様に、そしてラーラ会をサポートしてくださっている皆様に、心から厚く御礼を申し上げます。名誉ある賞をくださいまして、ありがとうございました。

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