このページの先頭です

本文ここから

働く人々の子育てを地域で、みんなで考える

更新日:2012年12月19日

コーディネーター
杉本 貴代栄(すぎもと きよえ)
(金城学院大学現代文化学部教授)
パネリスト
神原 文子(かんばら ふみこ)
(神戸学院大学人文学部教授)
中山 徹(なかやま とおる)
(奈良女子大学大学院人間文化研究科准教授)
萩原 久美子(はぎわら くみこ)
(都留文科大学非常勤講師)

近年、働く現場では長時間労働が当たり前になるなど労働環境がますます厳しくなる中、子育てをしながら働き続けるためには、さまざまな視点からの子育て支援が欠かせません。これまで子育てを支える施策や支援メニューなどが整備されてきましたが、解決できない問題も残っています。

地域のつながりが改めて見直される時代、地域の人たちの協力を得てみんなで子育てを支える仕組みをつくるなど、新たな時代に対応した取り組みが求められています。

働きながら子どもを生み育てたいと願う人が、どちらも実現できるために有効な子育て支援とは何か、そしてそれを地域や社会がどう担っていくのかについて考え、具体策を探りました。

小学生を育てる親のおもい

実行委員A

 私はメーカーでフルタイム勤務しています。長男が小学校2年生、長女が保育園で4歳です。

 小学校に関することと企業に関することについてお話します。

 まず学童保育に関してですが、学童保育は一律18時までで延長はなし。夏休みなど休業中は朝9時から始まるので、子どもが1人でかぎを閉めて出かけるところも多いです。保育園では延長保育の時間に小学生を預かってくれるサービスをしてくれるところもありますが、学童保育から保育園までどうやって行くか。この距離が何とかなれば、これから必要とされる子育て支援の一つではないかと感じています。

 次は小学校に関してですが、小学校の行事は、親が家にいることが前提に組み立てられていて、授業参観も何もかもが平日の昼間に行われるので、小学校の行事だけで有休の半分ぐらい消化してしまいます。子どもが小さいときは病気などで急に休むことも多く、休みはとても貴重なので、共働きが増えていく中で小学校側ももう少し歩み寄りが必要ではないでしょうか。

 また、多くの企業で長時間労働が当たり前になり、うつが国民病といわれる今、子育てをする女性だけが早く帰れるようにするのではなく、みんなでこの長時間労働の異常さに気づいてほしいなと思います。

男性の家事・育児参画

実行委員B

 男性の育児、家事参画と地域のつながりづくりについてですが、職業生活と育児や家事の両立のためには夫婦間でうまく役割分担をすることが大切です。役割分担がうまく機能すれば、男性ももっと家事や育児に参画できるのではないかと思います。また、緊急時に頼れる存在、頼れる親や協力者が身近なところにいれば助かるというのが切実な思いです。職業生活と家庭、地域生活を両立していくために、地域という生活の場でその課題が解決されるような仕組みや地域づくりが必要。ですから、改めて地域のつながりについて考えて、私たちも自ら参画し、いざというときにお互い助け合っていける地域にしていくための具体策を本分科会で考えていきたいです。

病児保育について

実行委員C

 病児保育についてですが、地域社会と密着していた以前とちがい、コミュニティーが狭くなり、近隣の人を知らないことや仕事のために自治会や子ども会にも入れず、家族のみの生活になりつつある今日、仕事と育児を両立するためには、突然の子どもの病気という非常事態に対応してくれる駆け込み寺が必要です。現在の病児保育施設の数は、近くにあればとても幸運だというぐらいの充足率で、価格もさまざまで高額の入会金が必要な場合もあります。それでは働くこと自体がわがままになってしまうので、優れた力をむだにしないため、世の働くママがあきらめてしまわないうちに社会が動いてくれることを期待します。

ひとり親家庭の当事者から

実行委員D

 私はひとり親家庭の当事者団体のメンバーで、私自身もシングルマザーなので、シングルマザーについてお話しします。

 子育て支援では、最近はさまざまな子育て支援策が整備されていますが、ほとんどシングルマザーには使えないものばかりです。子育て支援として用意されているサポートの対象は、昼間おうちにいる主婦の方たちで、仕事と子育てを頑張って一生懸命しているシングルマザーではありません。でも、シングルマザーも子育てでいっぱい悩みをもっていて、それを相談したいし、同じ立場の人たちとつながっていきたいと思っています。

 最近、子どもの貧困という言葉をよく聞きますが、シングルマザーは本当に貧困のもう最も底辺のところにいて四苦八苦しています。本当にしんどい、大変な状況の中で子どもにも構っていられなくて、日々の生活が精いっぱいという方もおられますが、さまざまに工夫して、そして仲間や親御さんの助けをかりて仕事と子育ての両立に頑張っているシングルマザーもたくさんいます。

 私はだれもがどんな生き方を選んでも幸せに暮らせるような社会が当たり前の社会だと思います。そして何よりも子どもたちはどんな家に生まれても、みんな公平に幸せに生きる権利があります。そのためには家族だけに子育ての責任を負わすのではなく、もっと地域で子どもを育てていく、みんなで子どもの未来を担っていくようなシステムが今こそ必要ではないでしょうか。私たちの問題提起は以上です。

杉本 貴代栄

 今、4人の実行委員の方から小学校の壁、病児保育、男性の家事・育児参画、シングルマザーの抱える問題という四つのテーマを抽出していただいたので、その四つに加えて、あるいはその四つを含めたシンポジウムを進めていきます。

 それでは最初に、神原さんの方からお願いいたします。

子どもの育ちを支える親システムの提案

神原 文子

 神原文子です。働きながら子どもを生み育てるというのはどういうことなのか、プラス子どもが地域で育つということはどういうことなのかを提案します。

 そこで神原の視点として、子どもの育ちに優しい社会はおとなの育ちにも優しい社会だと。私は子育てとは言いたくありません。子どももおとなも生涯育つのではないか。だから、子どもが育つことを中心に考えたいと思います。

 子どもの育ちを支えることで言えば、ひとり親に優しい社会はふたり親にとっても優しい社会で、男性が当たり前に子どもの育ちにかかわれることは、女性も当たり前にかかわれる社会になるだろうという視点です。それから、ここでは子どもの育ちを支える親システムという考えを提案したいと思います。私は育つというのは、他のだれでもない私が生きる営みを通して自分を解き放つことを、そしてそれはつながり広がること。私たちは一生かけて育っているのではないかと思っています。

 育つことの課題ですが、第一は一人ひとりが自分育ての主人公意識をもつこと。第二は一人ひとりが大切な存在であること、唯一無二であることを体感できる、それを子どもたちに伝えていくこと、こういう価値観が大事。第三は一人ひとりのエンパワーメント。第四は子どももおとなも自分育て、支え合いのつながりが広がっていくこと。第五は恥ずかしい観念の定着、尊厳を傷つけることが恥ずかしいという観念の定着。こういう考えのもとで、私自身は子どもたちに唯一無二だよ、かけがえのない尊い存在なのだよと、やっぱり何度も何度も伝えたいと思います。

 それから21世紀の自立は1人でがむしゃらに頑張ることではなく、ともに育ち合いの力をつけていくことが自立じゃないか。助けてと言える、それから助けてと言われたらいいよと言って協力できる。それが21世紀型の自立じゃないか。そして、自分の尊厳を傷つけることは恥ずかしいと思えるようになってほしいと考えています。おとなができる子育ち支援はおとな自身が自分の尊厳を守ること、自分の嫌なことは子どもも嫌なのだと思えること、子どもの言い分をきちんと正面から向き合って聞くことなどが子育ち支援ではないでしょうか。

 そんな中で地域ぐるみの子育ち支援とは、学校、保育所、家庭ですべきことと地域でできることがばらばらで検討されているので、同じテーブルについて考える機会を提案したい。

 子育ち支援システムについてですが、子どもを中心に置いて、子どもの育ちの支援のシステムをなんとか地域でつくれないか。しかし、地域だけでそれをやってくれというのは難しいので、それをコーディネートする体制として、子ども人権センターを全国につくってほしい。ここでは虐待や不登校、子育ち支援、時には子どもの逃げ場になるシェルターにもなり得る、ここが一人ひとりの子どもの育ちをずっと見守るコーディネーター役をするシステムができないだろうか。そういうシステムづくりをなんとかできないでしょうか。

杉本 貴代栄

 神原流子育て支援システムの提案をしていただきました。

 それでは萩原さん、お願いいたします。

保育は大切

萩原 久美子

 先ほど4人の方からご報告がありました。シングルマザーとしての体験、父親の子育て、保育の現場からの発信、学童期の子どもを抱えての両立。地域や行政でやるべき個々の課題は山積みといったところです。でも、一方で、皆さんのご報告に対し、それは男性の育児参画の問題ですね、労働時間短縮の問題ですね、病児保育が足りませんね、と切り取ってしまわれると、何か違和感はありませんか。本当はもっと言いたいこと、言葉に尽くせない苛立ち、ぎりぎりまで追いつめられたしんどさを抱えているのではありませんか。ですから、ここではあえてこう提起したいと思います。「両立」という親と子の暮らし全体の一部を切り取って、個々の課題として対応すれば望ましい支援になるでしょうか。逆に、そうした対応によって問題を断片化し、親と子の暮らしの全体像、それをもたらす社会全体のありようを見えにくくしてしまってはいないでしょうか。

 90年代以降を取り出してみれば、均等法の施行、保育サービスの多様化、育児休業制度と個々の施策は前進しました。でも、三つの施策、そして社会全体を関連付けてみると、その内部矛盾が拡大しているように思います。長時間労働が増加してもなお、世帯収入は減少。育児休業取得どころか、食べるのも困難な不安定な雇用が社会全体を覆い、女性、とりわけシングルマザーをいっそう追い詰めています。そうした親の両立の基盤となる保育現場は財政難を理由に切り詰められ、保育士の処遇は低下の一途です。

 「両立支援」「子育て支援」と言いながら、社会全体を見れば、暮らしの基盤を切り崩すような動きが起きている。多様で柔軟なニーズへの対応で、失われた包括的な基盤や制度のありかた。その原点にもう一度戻るべきではないかと思います。

 そのひとつが保育所です。いま1番包括的に子育て家庭を支援している場であり、子育て支援、両立支援で地域の核となる制度だからです。地域で暮らす私たちのもっとも身近な財産です。ところが、その保育所に対し、「多様なニーズへの対応」「地方分権」の名のもとに保育室面積などの基準を引き下げよう、国の負担金をなくそうという動きが起きています。この対応が最優先です。

 民主党政権で子ども手当が現実化されそうですが、保育の大切さを忘れてもらいたくない。その点を提起し、中山さんにつなげたいと思います。

杉本 貴代栄

 萩原さんの今の提案では、保育が肝心だとおっしゃっています。じゃあ最後に中山さんの方からその保育について報告をしていただきたい。

日本の保育・学童保育は今

中山 徹

 保育や学童保育を今後どういうふうに考えるべきか。

 今、待機児が大きな問題になっいますが、保育や学童保育をめぐって待機児童の問題をどう解決しようとしているか。保育所の面積基準を下げようとしている。ただし、規制緩和ではなく地方分権という名目を使っておりそこが問題です。具体的には、1人当たりの面積基準を国が決めるのではなく、自治体ごとに決めたらいいと。別に今の方式でも地方分権との関係では全く問題ないと思います。最低レベルの基準は国が決めて、それを上回る基準で運用するかどうかは地域の実情で判断していけば地方分権がきっちりできていると思います。しかし、このまま行くと、地方分権という名の下に、待機児を解消するためにちょっとくらい狭くてもいいだろうという判断が、一部の自治体で働くかもしれません。将来を担っていく子どもたちのために、わずか数百億円のお金を節約するために、国の基準をなくすことが今の日本であってはいけないと思います。

 また、保育、学童保育の分野でコスト削減のために行政がやらずに民間にやってもらったらどうかという議論が広がっています。民間に変えることでコストが下がる大きな理由は人件費です。確かにむだがあれば削ればいいですが、今削ろうとしているのは主に人件費です。今の日本の保育士や学童保育の指導員は、削らなければいけないほど給料もらっていないと思います。

 さらに、保護者が保育所や学童保育を選べない、これからもっと親が自由に選べる直接契約制を導入したらどうかという議論が進んでいます。ですから、果たして直接契約制を導入するのが本当にいいのかどうかかを考えなければなりません。

 それでは何が大切かですが、きちっとお金をかけないとだめだと思います。いいものを保障するためにはお金をかけないとだめ。日本の子どもにかけている予算は、ヨーロッパの国々と比べると3分の1以下の水準です。いかに日本人が勤勉でも、それだけの差を努力だけで補うのは無理だと思います。そして、保育や学童保育で働く人の労働条件もきっちりしていくこと。そして地域で子育て支援を充実させるために、市町村の役割をもっと大きくしなければだめだと思います。

 子育て分野でいえば、例えば小学校区ぐらいで子どものことをきちっと把握するような公的なセンターをつくってほしい。

 やっぱり行政が地域の子育て支援の中心に座って、その上でいろんな地域の施設や組織がネットワークを組んでいく。あくまでも行政が公的な責任としてそういう役割をきちっと果たしていくことが地域の子育て支援では重要だと考えます。

質問者1

 子どもたちが今、貧困のため、就学できない問題もありますが、行政や政府への働きかけをどのようにすべきか。また私たちは何をすべきか。

今までの保育の仕組みと歴史

神原 文子

 一つは、戦後の高度経済成長期以降の日本における子どもを育てるということを日本の国がどう考えてきたか。父親は外で働いて収入を得て妻や子どもを養う。妻は家事や子育てに専念するという近代家族を模範的な標準家族として家族制度を確立してきた。その家族の考え方、家族制度に基づいて保育、看護、介護の仕組みをつくってきた。

 それから介護、親が年をとったら家族が見るのが当たり前ということが、90年代後半まで家庭で子どもが親を介護するのが当たり前という日本型福祉政策で来たわけです。それが介護に関しては介護制度ができて、少し社会化されましたが、保育に関してはまだ全面的に社会化されていません。今でもまず親が責任をもちなさい、家庭教育が大事ですよということがメッセージとして言われる中で、どうしても親が子育てが大変だから、例えば在宅で保育することの少しサポートしましょう、子育て広場をしましょう。それから、どうしても親が共働きで働かないといけなかったら、働かないと生活できなかったら大変だから、その間子どもの保育をしましょうという体制が今でも大前提で継ぎはぎだらけの制度ができてきました。

現金給付について

萩原 久美子

 中高校生が貧困のため、就学できない問題に対してどう働きかけるのかというご質問について、子ども手当と関連してぜひ、子どもの名義で、子どもに対して子ども手当を出してくださいという働きかけをしてもらいたいです。子どもが児童養護施設に入った場合や子どもが何らかのかたちで家族と離れて暮らさなくてはならない、家族と統合できない状態でも、ある程度の自立資金を得ることができます。それが一つの突破口となって、1人の子どもが育つ制度の体系性を議論するきっかけになるように思います

質問者2

 やっぱり現金を渡すというのは、まだまだ日本の家庭では親がパチンコで使ったり、ローンに回したりするのではないかなという心配がありますがいかがですか。

萩原 久美子

 保育所を増やす、子育て支援の充実というと、「親の育児放棄につながる」と言われました。親はなぜか信用してもらえません。無論、制度を悪用する人はいるでしょうが、ぜひ親を信じてください。現金給付である子ども手当、現物給付の保育所の両方が今、絶対必要なのです。

杉本 貴代栄

 補足の解説をしますと、子育て支援というのは、政策的にいうと3種類ありまして、保育政策、育児休業、児童手当(いわゆる現金給付)です。この三つが政策的にいうと子育て政策です。ですから現金給付も重要な子育て政策の3本柱の一つですが、三つをどういうバランスをとってやるのかが大切です。

 今の現金給付はちょっと、もう少しほかの方法がいいのではということに対してご意見がありましたら。中山さん、いかがでしょうか。

中山 徹

 子育てを現金で補助していくという考え方自身は否定すべきものではありません。しかし、限られた予算の中でどうバランスをとっていくのか、お金渡して後は親に考えなさいというのはだめなので、両方のバランスをとりながらきちっとやっていくということが重要ではないか。

神原 文子

 子どもの権利条約で子どもの定義は18歳未満が全部子どもです。ところが今回の民主党政権のマニフェストの子ども手当は15歳までです。なぜ15歳で切るのか、私はせめて18歳まで出してと言いたいです。私はむしろ本当に子どもと言われている子たち全部に子ども手当を支給してほしい。

 やっぱり現金給付するのは、なぜそのぐらいのお金が出せないの、なぜその子たちの奨学金給付がもっと広がらないのか。何でもお金の問題ですが、何かそういう1番大変なところこそもっとお金をかけてほしいです。

質問者3

 質問ではありませんけど、私、今この子ども手当について本当に現金給付をぜひ子どもにしてほしいと思います。母子家庭や父子家庭で育つ子どもたちも同じように地域や日本を背負ってもらうので、ぜひ子ども手当はしてほしい。

質問者4

 なぜおじいちゃん、おばあちゃんをもっと利用しないのか。

保育のあり方とは

神原 文子

 祖父母だからイコール孫をみるのが当然という考え方ではなく、したい人はやってください。でも強制されるものではありません。

 もう一つは日本の保育のあり方です。3世代だったら、なかなか保育所に入れません。仮に申し込んでも優先順位がものすごく低いので、同居をしていても別世帯と見てもらえるような親族制度が確立しないと安心して同居もできないので、今の日本の家族制度にいろんな矛盾があります。

 最後になりましたが、子どもを生むか生まないか、結婚するかしないか、だれと人生ともにするか、それから仕事も、どういう働き方をするかも選びたい。選ぶことは決してわがままでありません。だれもが選ぶような社会の仕組みをつくってほしい、その中で生き方の選択に応じた働き方、子どもの育ちの支え方が今まだ日本の社会にはそういうモデルはないので、それを独創的にいろんなアイデアを結集して、もう1回トータルにつくっていくことが今私たちに問われていることではないでしょうか。

質問者5

 質問というより提案なのですが、先生方がおっしゃられたとおり、小学校区ごとに、子育てにかかわっている組織や施設が、地域の一般の方と一緒に地域の子どものことを考えたり、情報交換したりする子ども人権センターみたいなものが必要だと思います。ぜひ、この堺市がそういったものをつくる先駆けになっていただきたい。

自尊感情(自己肯定感)を 高めるには

質問者6

 どうしても自尊感情というか自己肯定感をなくす子どもたちが大きくなるほど増えてくるということをお聞きしましたが、さまざまな環境の子どもたちを見られたことだろうと思うので、そのあたりの実態はどうでしょうか。

神原 文子

 これは自己肯定感に関して言うと、国際比較を見ても、日本の子どもたちの自己肯定感はすごく低いし、自信がもてない子どもたちが多いです。では、自己肯定感というのはどうしたらできるだろうか。それは、あなたは本当にかけがえのない子よ、あなたが生きていることがすごく大事なのよ、あなたはもう2人と替わりないのよと言うことだけで十分ではないか。だから、私はやっぱり地域で子どもの育ちを支えるということ、たとえば、子どもたちに今日から声かけすることからでもできるのではないか。そうなれば、子どもたちが親とうまくいってないが、こっちのおじちゃんとは相性がいいとか、こっちのおばちゃんは何か話聞いてくれるとか、あるいは困ったことがあったら助けてくれる。逆におばあちゃんを自分が支えているとか、そういう関係ができるのではないか。

地域と労働

萩原 久美子

 神原先生から提起された自尊感情を受けて一点。日本では子どもが育つ環境、施設、経済的支援が貧しすぎます。中山さんのお話にあったような粗末な場所、詰め込み保育で、「私たちは大切にされている」と子どもが思うでしょうか。保育所や学童などの基盤整備のあり方を含め、行政の方や市民の方に本当に守り育てていただきたい場です。それがひいては親が安心して子どもの笑顔に出会える基盤になると思います。

 本日は「地域」がテーマですので労働、職業生活の内実にはふれませんでしたが、地域での展開を考える上で、親の労働実態を前提に考えてもらいたいことが一点。長時間労働には理由があるということです。もう一点は、地場産業、中小零細企業の多い堺市だからこそ、地域の雇用を守ろうと頑張っているそれら経営者を応援する意味でも、行政が保育所を作り、力を入れることが必要だと思います。

中山 徹

 比較的大きな子どもの話をしますと、例えば学童保育でも、大体3年生までです。4年、5年になったら学童に来ない、勝手に遊んでいるので。なぜ来ないか、ほかにおもしろいところがたくさんあるからです。

 では、何で4年生や5年生、もしくは中学生、高校生になると、おとなが用意したものに来ないのか、それはおもしろくないからです。じゃあどうやったらおもしろくできるか、子どもたちが来られるかというと、やっぱり日本では子どもの意見を聞くということが欠けている。

 スウェーデンの学童保育も大半は3年生までで、4年生以上になると全児童対策といって、親の就労に関係なくだれでも利用できる。スウェーデンは、小中くっつけて9年制になっている。大きな小学校に行くと、4年生から日本でいう中学3年生までみんな一緒ですが、そこで子どもたちが放課後、学校の中で学童保育ではないですが、そういうところに結構子どもが遊びに来ます。何で来ているかというと、子どもが喜ぶようなものがたくさんあるのです、ほかに行くよりもそっちに行った方がおもしろいから。ですから、日本の場合も小学生、中学生、高校生、もっと子どもの意見を聞いて、それをいろいろと展開していったらいいのではないか。

男女平等と地域活動

杉本 貴代栄

 最後にお話をしたいのは、一つは、男女平等です。1999年に男女共同参画社会基本法というのができて、法律的に男女は平等に扱うことになりましたが、実際はそうなっていない。下手をすると、男女平等ということがちょっと妨げになることが実際にあります。だって、私たちの社会、男女平等じゃないですから。

 例えば女性の方に母子生活支援施設とか特別支援がありますが、それはいけないという声が高まっています。だけど、それは現実に合ってはいないわけで、そういう男女平等にすべきですが、今はまだそうなっていないのに全部男女平等にするのはなかなか難しいと思います。しかし一方では、男女平等を進めるということは私たちの希望でもあり、皆さんの希望でもあるわけですので、なかなか難しい局面に立っています。

 それから二つめは、地域の問題が出ましたが、いろいろな政策が地域によってちがってきているわけで、逆に言うと皆さんが地域でいろんな活動をしたり、発言をしたりする必要はすごく増えてきます。ですから、全国で一斉にやるのではなく、地域の力によって、地域ごとにやるものが増えてきます。そういう時代ですので、むしろ地域で活動する、そしてこういう日本女性会議を地域ごとに持ち回りで開いていくことの意味が非常にあると私は思っています。

このページの作成担当

市民人権局 ダイバーシティ推進部 ダイバーシティ企画課

電話番号:072-228-7159

ファクス:072-228-8070

〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館6階

このページの作成担当にメールを送る
本文ここまで