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堺市同和行政基本方針

更新日:2020年2月18日

1 同和問題の基本認識

 同和問題は、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる深刻かつ重要な課題である。
 日本国憲法は、何人にも職業選択の自由、教育の機会均等などの市民的権利と自由を保障している。しかし、日本国民の中には、この市民的権利と自由を完全に保障されていない、いわゆる部落差別を受けている人々が存在している。これまで、多くの人々の努力により解決に向けて進んでいるものの、本格的な取組みを行ってから30数年が経過した今日においても、同和問題はわが国における重要な人権問題であると言わざるを得ない状況にある。部落差別の解消は、日本国憲法の精神を実現するものにほかならない。
 地域改善対策協議会意見具申(以下「地対協意見具申」という。)では、「同和問題を人権問題という本質から捉え、解決に向けて努力する必要がある」、「国内において、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」としている。
 本市においては、「同和問題の解決は、国の責務であり、同時に国民的課題である」との国の同和対策審議会答申をふまえ、その責務を分担し、同和問題解決のために積極的に取り組んできた。その結果、住環境整備をはじめ、地区住民の生活の安定・向上など着実な成果を上げてきたが、なお教育、啓発、就労などの面で解決すべき課題もあり、同和問題が解決されたとは言えない状況である。
 今後は、同和問題を人権問題という本質から捉え、市民一人ひとりが主体的に人権問題の柱である同和問題の解決に向け、市民の共通の課題として取り組む必要がある。そのためには、すべての人の人権が尊重されてこそ自らの人権も尊重されるということの理解・認識を社会の隅々にまで広げていく取組みが重要である。
 人権の尊重は、わがまち堺に住む市民一人ひとりが心豊かに暮らせる「まちづくり」の基礎でもある。その意味では地方自治における最も基本的な課題であり、日本国憲法の基本理念を具現化するための課題でもある。
 本市は、21世紀にふさわしいまちづくりの指針として策定した堺市総合計画「堺21世紀・未来デザイン」において「ひとが輝く市民主体のまちづくり~自由と自治がいきづく人間尊重都市を築くために~」を掲げており、すべての人の基本的人権が擁護され、個性や価値観を互いに認め合う差別のない明るい社会の実現に向け取り組む。

2 今後の同和問題の解決のための基本目標

 同和問題の解決をめざす行政の取組みが新たな転換期を迎えた現在、今後の同和問題の解決のための施策の基本目標は、部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし、同和地区内外の住民が協力して自らのまちづくりを進めていくための協働関係を構築し、一体となったコミュニティの形成を図ることである。
 そのためには

<1> 差別意識の解消、市民の人権意識の高揚を図るための諸条件の整備
<2> 地域住民の自立と自己実現を達成するための諸条件の整備
<3> 地区内施設の活用を図り、同和地区内外の住民の交流を促進するための諸条件の整備

 を図り、すべての人の基本的人権が擁護され、個性や価値観を互いに認め合う差別のない明るい社会の実現に向け取り組む。

3 同和問題の解決のための施策の方向

(1)特別措置から人権尊重の視点に立った一般施策への転換

 同和問題解決のための施策は、本来は一般施策で実施されるべきものであるが、地区の生活環境改善や地区住民の生活向上が緊急の課題であったこと、また、こうした課題に当時の一般施策が十分に対応できなかったことから、一般施策を補完するため特別措置として実施してきたものである。
 今後の同和問題解決のための取組みは、同和地区の状況や特別措置法が失効したことにより、同和地区・同和地区出身者に対象を限定した特別措置としての同和対策事業が終了したことをふまえ、同和地区出身者を含むさまざまな課題を有する人々に対する一般施策による人権尊重の視点に立った取組みを総合的かつ計画的に推進していく。

(2)基本的な施策の方向

 今後の施策は、同和地区や同和地区出身者に対する結婚や就職等に現れる差別意識や忌避意識の解消、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現をめざすための人権教育・啓発の推進とともに、人権が侵害された被害者に対しての救済施策の推進や同和地区内外住民の交流促進を図るコミュニティづくり、平成12(2000)年実態等調査結果に現れているさまざまな課題の解決に向けた取組みを、これまでの成果を損なうことのないよう配慮し、財政状況をも考慮しながら、一般施策の有効かつ適切な活用や工夫を加えつつ人権行政の一環として推進していく。
 その際には、さまざまな課題を持った地域住民の自立と自己実現を支援するという視点に立って、一般施策が地域住民に広く周知できるようにきめ細かな相談体制の充実や、より効果的な施策の推進に努めていく。
 本市は堺市総合計画で掲げている「ひとが輝く市民主体のまちづくり~自由と自治がいきづく人間尊重都市を築くために~」を実現するため、すべての施策を人権の視点に立って総合的・体系的に進め、人権の世紀にふさわしい人権行政を全庁的に推進する。そのため人権行政の基本理念、直面する課題への取組み、市民参加の促進などを内容とする、平成15(2003)年2月に策定した「人権施策推進基本方針」をふまえ、施策を推進していく。

<1>市民の人権意識の高揚を図るための取組み

 これからの人権教育・啓発は、「人権教育のための国連10年堺市後期行動計画」が示しているように、まちづくりの主人公である「人」を中心に、あらゆる機会・場を通じての人権教育・啓発の推進を図り、人権尊重を文化として市民生活の中に浸透させていくことが求められている。
 まず地域社会における人権教育・啓発の推進を図るために、すべての人々が日常生活の中の出来事を人権の視点から捉え、考えていくことができるよう、情報や多様な学習機会の提供、相談機能の充実等と同時に、学習者のニーズにあったプログラムや教材の開発・整備、研修会等の充実を図る。これらを推進するにあたっては、生涯学習と密接に連携した取組みを進め、「生涯学習としての人権教育」に発展するよう努める。
 学校教育の場においては、豊かな人権感覚を持って行動する人間の育成を図るために、人権についての理解を深め、義務と責任を自覚し、人権の尊重が日常生活において実践できるよう、発達段階をふまえ、人権教育を系統的に推進する。
 また、人権教育・啓発にかかわる指導者の役割は大きく、人権についての専門的な知識や技能を身につけるだけでなく、自らの行動力を高めるためにより効果的な研修の充実を図る。また、人権行政を推進していくために、職員一人ひとりが人権問題の解決を自らの課題とすることができるよう、資質の向上を図るための効果的な人権研修や自己啓発を推進する。
 本市では、差別のない明るいまちづくりをめざして啓発活動を展開している堺市人権教育推進協議会をはじめ、さまざまな市民団体等が人権問題に取り組んでいる。人権教育・啓発の推進にあたっては、これらの団体とともに関係機関との一層の連携を進め、情報のネットワークを構築し、多様な人権課題、学習要求に応え、人権教育・啓発を推進する。
 平成13(2001)年5月に人権擁護推進審議会から出された「人権救済制度の在り方について」の答申の中で、「人権委員会(仮称)」という独立した機関の設置を中心とする新たな人権救済制度の整備を提言しているところであり、都道府県や市町村の行う各種相談事業との連携の重要性も指摘している。今後整備される人権救済機関を含めさまざまな相談機関との連携・協力体制を構築する。

<2>地域住民の自立と自己実現を達成するための取組みの支援

 地域住民の自立と自己実現を図っていくための条件整備として、教育、就労、地域福祉、保健・医療、住宅・まちづくりの各分野で次のような取組みを推進する。
 教育については、学校教育におけるこれまでの知識・理解力の向上だけではなく、平成14(2002)年4月から実施されている新学習指導要領が求める「生きる力」としての学力の充実に努める。
 また、多様な進路選択を可能とする進路指導等の充実、保護者等への学習機会の提供、生涯学習環境の整備による交流の場の充実や地域活動の活性化などが求められているので、学校・家庭・地域がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に連携して子どもの教育のためのコミュニティを形成し、地域活動の活性化・ネットワーク化を進め、家庭・地域の教育力の向上を図る。
 さらに、堺市教育委員会においては、「人権教育基本方針」、「人権教育推進プラン」をふまえ、豊かな人権感覚を持って行動する人間の育成を学校教育の基盤として位置づけるとともに、地域住民の自立と自己実現を達成することはもとより、すべての人の自立、自己実現、豊かな人間関係づくりを図るため、人権教育をより一層推進する。

 就労については、財団法人堺市就労支援協会※1や堺市進路保障協議会※2等が中心となって、就職の機会均等や就労支援に取り組んできたが、就労問題は地域住民の自立と自己実現の達成を支援するうえで根幹をなす課題である。この課題解決に向けては、前段でも述べた多様な進路選択ができる豊かな学力の向上を図る必要があるので、自ら学ぶ意欲を持って学習に取り組むとともに、基礎的な職業能力や働くことの大切さなどを身につけさせるための学校における進路指導の充実や家庭・地域における教育力の向上を図る。
 また、近年の社会経済情勢の変化の中で就労の安定化を図るためには、財団法人堺市就労支援協会をはじめ国・府の労働関係機関等と連携し、地域におけるきめ細かな職業相談を通じ、職業能力の開発や雇用・就労等に結びつく取組みを進めるとともに、企業に対して人権意識の向上と雇用の場の確保に積極的に努めるよう啓発活動をより一層推進する。

 地域福祉については、高齢者、障害者、母子・父子家庭や子育てなどで課題を有する人々が、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう施策の充実を図る。そのためにはニーズの把握に努め、多様な福祉サービスなどを提供していくとともに、これらの人々が地域で生きがいを持って自立した生活ができるための条件づくりを推進する。
 また、きめ細かな相談等について関係機関がネットワークを構築し、これまでの取組みによって培われてきたノウハウを活用し、人権尊重、自立支援の視点に立った多様な福祉サービスの提供や、地域での生活を総合的に支援するためのしくみの整備を図り、あわせて周辺地域住民と協働して地域福祉のまちづくりを推進する。

 保健・医療については、急速に少子高齢化が進展する中で、これまで医療の確保、健康相談や訪問指導、各種検診の実施などによって健康の保持・増進を図ってきた。今後は、国の「健康日本21」の地方計画となる「健康さかい21」の理念にもうたわれているように市民自らが健康寿命の延伸を図るために生活習慣病の「一次予防」を中心に、個人個人として主体的に健康づくりに取り組む必要がある。
 行政は、地域の実情把握に努め、その特性をふまえ、保健予防から治療につなぎ、かつ必要な福祉サービスを提供できるよう、行政間の連携はもちろん、地域・学校等関係機関との連携を密にして、保健センターを中心に効果的・総合的に市民の健康づくりを支援する。

 住宅・まちづくりについては、これまでの事業によって住環境整備はほぼ完了し一定の成果を上げたことから、今後はこれまでに整備してきた住宅、道路、公園等の良好な住環境の維持保全を図っていくとともに、空家住宅の活用を図るなど、入居・管理体制について検討する。
 また、住宅に対する多様なニーズからの地区外への転出、地区住民の少子・高齢化などにより地区の活力が今後低下していくことが懸念される。このため、地区の活性化に向けて地域住民がまちづくりに参画する機運を高め、住まいの再構築を「まちづくり」の中に位置づけ、「コミュニティづくり」という視点のもと、多様な住宅施策を検討する中で「定住魅力あるまちづくり」に向けて推進する。

<3>地区内施設のあり方及び住民交流を促進するための取組み

 同和問題をはじめあらゆる人権問題の速やかな解決に資することを目的に設置・運営されている人権ふれあいセンターをはじめとする地区内施設については、各施設がより一層連携し相談機能とコーディネイト機能を発揮しながら、より多くの市民の利用を図り、同和地区内外住民の交流を図る。
 人権ふれあいセンターは、同和問題をはじめあらゆる人権問題の解決に資する学習の拠点となる生涯学習・人権啓発センターとしての機能、住民交流の拠点とともに地域住民の文化の拠点ともなるコミュニティセンターとしての機能及び地域住民の自立支援に向けた継続的・総合的相談機能を持った総合施設として、より一層機能の発揮に努めなければならない。そのためには、人権問題の学習・啓発・情報発信、関係機関と連携した自立支援のための相談窓口の充実、住民交流を図るための貸館業務の拡充などを推進する。
 他の地区内施設についても、これまで地区住民をはじめ多くの市民に利用され、同和問題の解決に寄与してきた実績とノウハウを活かしながら、人権尊重の視点からそれぞれの施設の持つ機能を発揮することにより、地域住民の自立を支援する拠点として保健・福祉・医療サービス等の提供の充実、地域における人材育成や地域住民の相談、人権教育・啓発を推進する。また、コミュニティづくりの視点から同和地区内外住民のより一層の交流促進に取り組む。

(3)人権行政の推進体制

<1>人権行政の庁内推進体制の充実

 同和問題解決のための施策の推進にあたっては、同和問題を人権問題という本質から捉え、人権行政の一環として位置づけ、かつ、総合行政として全庁一体となって取り組む。その際、市民人権局及び教育委員会人権教育部※3の果たす役割は大きく、その有する総合調整機能をこれからも十分発揮し、各部局の有機的連携のもと、全庁的な取組みに努める。

<2>堺市同和行政協議会の活用

 同和問題がなお解決されたとは言い難い状況にあり、今後においても、人権行政の一環として同和問題の早期解決に向けて調査審議していく必要があることから、「堺市同和行政協議会」の活用を図る。

<3>堺市人権地域協議会※4との連携

 堺市人権地域協議会については、本市が同和問題解決のための施策をはじめあらゆる人権施策を推進するための協力機関として位置づけ、周辺地域の住民も参加した地域での取組みを推進する組織として、地区内施設と連携を図りながら、周辺地域を含むさまざまな相談活動を通じた地域住民の実態・ニーズの把握、自立支援のための一般施策の普及・定着、同和地区内外住民の交流を通して差別のない「コミュニティづくり」をめざす機関として、今後とも緊密な連携を図る。

※1 平成23(2011)年度より公益財団法人堺市就労支援協会へ変更
※2 平成19(2007)年度末をもって廃止
※3 平成27(2015)年度より教育委員会学校教育部人権教育課へ改組
※4 平成24(2012)年度より(一財)堺市人権協会へ発展改組

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