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堺市における今後の同和行政のあり方について(意見具申)

更新日:2012年12月19日

 平成14(2002)年2月8日

堺市長 木原敬介 様

 堺市同和対策協議会

 会長 菅原隆昌

 堺市における今後の同和行政のあり方について(意見具申)

 本協議会は、平成9(1997)年2月の「堺市における今後の同和行政のあり方について」の答申以後の社会経済情勢の変化、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の失効、同和問題の解決に向けた実態等調査の結果などを勘案し、法期限後の「堺市における今後の同和行政のあり方について」慎重に審議した結果、結論を得たので、別紙のとおり意見を具申するものである。

1.はじめに~これまでの経緯

 国際的な人権問題の取組みは、昭和23(1948)年の国際連合第3回総会における「世界人権宣言」の採択に始まり、以後、この宣言の具現化に向けて、国際人権規約を始めとする人権に関する諸条約が採択されてきた。さらに1995年から2004年までを「人権教育のための国連10年」と定め、平和と人権の確立に向けた取組みが世界中で進められている。
 このような国際的な人権尊重の潮流の中、平成13(2001)年3月、国連の「人種差別の撤廃に関する委員会」は、日本政府に対し、同和地区の人々を含め、差別からの保護並びに市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利の完全な享受を確保するよう勧告したところであり、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務となっている。
 国においては、平成8(1996)年5月、地域改善対策協議会意見具申(以下「地対協意見具申」という。)が出され、これまでの特別対策については、おおむねその目的を達成できる状況になったこと、同和問題の解決に向けた今後の取組みは、同和問題を人権問題という本質から捉え、人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていくという広がりをもった現実の課題であることが指摘された。
 これを踏まえて、平成9(1997)年3月に制定された「人権擁護施策推進法」に基づく、人権擁護推進審議会において、平成11(1999)年7月に「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」の答申が出され、平成12(2000)年11月に人権教育及び人権啓発に関する、国や地方公共団体及び国民の責務を明らかにした「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定された。
 また、平成13(2001)年5月には、「人権救済制度の在り方について」の答申が出され、現在、人権救済機関の整備等について検討がなされているところである。
 大阪府においても、平成10(1998)年10月に、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現を目指し、「大阪府人権尊重の社会づくり条例」が制定され、平成13(2001)年9月には、大阪府同和対策審議会から「大阪府における今後の同和行政のあり方について」の答申が出されたところである。
 堺市における同和行政は、昭和40(1965)年の「国の同和対策審議会答申」(以下「国答申」という。)並びに昭和44(1969)年に制定された「同和対策事業特別措置法」を受けて、昭和47(1972)年に「堺市同和対策事業総合計画」を策定し、住宅建設などの生活環境改善等の物的事業並びに社会福祉の充実、産業の振興・職業の安定、教育文化の向上及び基本的人権の擁護等の非物的事業を内容とする総合施策として、市政の最重点課題に位置付け積極的に取り組んできた。
 昭和52(1977)年には、市民の広い理解を得て、総合的かつ効果的な同和行政の推進に資するため、市長の諮問機関として堺市同和対策協議会が設置され、これまで数次にわたり答申を行ったが、平成9(1997)年2月の「堺市における今後の同和行政のあり方について」では、これまで実施してきた同和対策事業の成果の上に立って、未来を展望した同和問題解決の新たな方向性を示した。これを受けて、堺市では人権の視点から総合的な行政を推進するため、平成10(1998)年に「同和行政基本方針」、平成11(1999)年に「同和行政推進プラン」を策定し、同和問題の解決に向け取り組んでいる。
 また、人権教育・啓発を推進するため、「人権教育基本方針」や「人権教育のための国連10年堺市後期行動計画」などを策定し、人権尊重を文化として市民生活の中に浸透させていくための取組みを進めている。
 このような状況の中、平成14(2002)年3月末には「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下「地対財特法」という。)が失効し、30年以上にわたって実施されてきた特別措置による「同和対策事業」は終了し、一般対策への移行という大きな転換期を迎えている。
 今まさに、同和行政をめぐる状況は大きく変化しており、今後の同和問題解決に向けた取組みは、すべての人の人権が尊重された差別のない社会づくりを目指す中で行われる必要がある。

2.同和問題の基本認識

 同和問題は、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる深刻かつ重要な課題である。
 日本国憲法は、何人にも職業選択の自由、教育の機会均等などの市民的権利と自由を保障している。しかし、日本国民の中には、この市民的権利と自由を完全に保障されていない、いわゆる部落差別を受けている人々が存在している。これまで、多くの人々の努力により解決に向けて進んでいるものの、本格的な取組みが始まってから30数年が経過した今日においても、わが国における重要な人権問題であると言わざるを得ない状況にある。
 地対協意見具申では、「同和問題を人権問題という本質から捉え、解決に向けて努力する必要がある」、「国内において、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」としている。
 堺市においては、「同和問題の解決は、国の責務であり、同時に国民的課題である」との国答申を踏まえ、その責務を分担し、同和問題解決のために積極的に取り組んできた。その結果、住環境整備を始め、地区住民の生活の安定・向上など着実な成果を上げてきたが、なお教育、啓発、就労などの面で解決すべき課題もあり、同和問題が解決されたとはいえない状況である。
 今後は、同和問題を人権問題という本質から捉え、市民一人ひとりが主体的に人権問題の柱である同和問題の解決に向け、市民の共通の課題として取り組む必要がある。そのためには、すべての人の人権が尊重されてこそ自らの人権も尊重されるということの理解・認識を社会の隅々に広げていく取組みが重要である。
 人権の尊重は、わがまち堺に住む市民一人ひとりが心豊かに暮らせる「まちづくり」の基礎でもある。その意味では地方自治における最も基本的な課題であり、日本国憲法の基本理念を具現化するための課題でもある。
 本市は、21世紀にふさわしいまちづくりの指針として策定した堺市総合計画「堺21世紀・未来デザイン」において「人が輝く市民主体のまちづくり~自由と自治がいきづく人間尊重都市を築くために~」を掲げており、すべての人の基本的人権が擁護され、個性や価値観を互いに認め合う差別のない明るい社会の実現に向け取り組んでいく必要がある。

3.今後の同和問題の解決のための基本目標

 同和問題の解決を目指す行政の取組みが新たな転換期を迎えた現在、今後の同和問題の解決のための施策の基本目標は、部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現を目指し、同和地区内外の住民が協力して自らのまちづくりを進めていくための協働関係を構築し、一体となったコミュニティの形成を図ることである。
 そのためには、
(1)差別意識の解消、市民の人権意識の高揚を図るための諸条件の整備
(2)地域住民の自立と自己実現を達成するための諸条件の整備
(3)地区内施設の活用を図り、同和地区内外の住民の交流を促進するための
 諸条件の整備を図ることが必要である。

4.「同和問題の解決に向けた実態等調査」からみた現状と課題

 同和問題の解決のため、堺市の同和地区における生活実態や府民の人権意識の現状と差別の原因等を把握し、法期限後の同和問題の解決に資するための基礎資料を得ることを目的として、平成12(2000)年5月に実施した「同和問題の解決に向けた実態等調査」の結果の概要と課題は、次のとおりである。

(1)同和地区は堺市全体と比較して、核家族世帯の割合が高く、また、高齢者世帯や母子・父子世帯の割合が高い。人口は年々減少し、10年前と比べると1割程度少なく、主な転出入の年齢層をみると若年層に多い傾向がある。転入している理由で最も多いのは結婚のためである。
 現住地区で生まれ育った原住者の比率は3割、同和地区出身の来住者は2割強、同和地区出身でない来住者は4割となっている。

(2) 結婚については、若い世代ほど同和地区内外の結婚、すなわち「一方が同和地区外出身の夫婦」が多くなっている。しかし、大阪府同和地区全体の調査結果によると、同和地区内外の結婚の場合、結婚に際し被差別体験を有する夫婦が2割を超えている。また、同和地区出身者と自認している人のうち2割が結婚破談経験を有し、その半数近くが同和問題が関係したと思うとしている。さらに約2割の府民が、結婚にあたって相手が同和地区出身者かどうかが気になるとしている。このように依然として結婚に際して同和問題が影響しており、より一層の人権教育・啓発への取組みが必要である。

(3) 学歴構成では、平成2(1990)年調査と比較して高等教育修了者が増え、高学歴化が進んでいる。高校進学率は堺市平均と比べて若干の較差は残るものの大きく改善された。しかし、「学校生活になじめない」、「将来の進路に展望がもてない」などの理由による高校の中退率が高く、重要な教育課題となっている。
 また保護者からみた中学生の学習時間は大阪府同和地区全体に比べて、「ほとんどしない」や「30分以内」が多く、「1時間以上」が少なくなっているなど、家庭での学習習慣が十分に定着していない傾向がみられる。
 これらの課題の解決を図るため、学校における主体的な取組みの充実とあわせ、学校・家庭・地域が連携を強化する必要がある。

(4) 同和対策の奨学金制度は、高校生・大学生等に広く利用され、高校・大学等への進学率を高め、学歴構成の較差是正に大きく貢献してきた。
 同和対策の奨学金がなかった場合の進路への影響を利用者に聴いたところ、半数の保護者が子どもの進学に対する態度に変化があったと回答している。また、中学生の子どもをもつ保護者は、子どもに高校卒業以上の進学を期待している人が多い。
 今後は、この制度が果たしてきた進学奨励への役割を踏まえ、経済的理由により進学を断念することのないよう地域での相談体制を充実し、日本育英会、大阪府育英会などの一般施策の奨学金制度を活用するための取組みが必要である。

(5) 介護保険制度については、実態等調査の時期が制度発足後1か月あまりの時点であることを考慮する必要があるが、介護サービスの内容や制度について複雑でわかりにくいという意見が多い。こうした中、介護や援助を必要としている人でも要介護認定の申請をしていない人がいる。
また、実際に介護や援助を受けている人の主な介護者は、ホームヘルパーやガイドヘルパー、家族が多い。
 福祉サービスへのニーズで多いのは、住宅相談や自宅への配食サービスであるが、高齢者になると掃除や買物などの家事サービスが多くなる。保健・福祉サービスを受ける際に、どこに相談していいのかわからなかった経験を持つ人もいる。
 高齢者などが住み慣れた地域で安心して自立した生活を送ることを支援するためには、一人ひとりのニーズに合ったサービスの提供を行うことが重要であるとともに、介護保険や保健・福祉サービスを住民自らが十分活用できるよう、サービスの周知・徹底や総合的な相談活動の充実など住民のニーズとサービスを結びつける方策が求められる。

(6) 同和地区のパソコンの普及率は、全国と比べてかなり低く、インターネットの利用率も同じく低くなっている。こうした実態は、今日の高度情報化社会にあって情報手段を使いこなせる人とそうでない人との間に生じる情報格差が社会的・経済的格差につながるおそれもあり、そうならないための方策が課題となっている。

(7) 近年の経済不況の影響による雇用・就労状況の悪化が現れている。雇用形態においては常用雇用の割合が平成2(1990)年調査より減少し、臨時雇いの割合が増えている。給与形態が月給である被雇用者の割合も同じく減少している。ともに若年層の減少が大きい。平成2(1990)年調査にみられた若年層の安定就労の傾向が今回の調査ではみられなくなっている。
 社会・経済情勢の変化の中で臨時雇いの割合が増えるなど雇用形態の変化がみられるとともに、離職理由として若年層に「労働条件が悪い」「収入が少ない」「自分に向かない」などの理由が多くみられる。
 雇用環境の厳しさや職業選択への意識の変化を踏まえ、就労の安定化を図るため、就職困難層の自立就労支援など新たな労働行政の推進が課題となっている。

(8)住宅所有形態については、堺市同和地区の場合、全面買収(一部存置を除く)により公営・改良住宅の建設等の整備を行った結果、大阪府下の他の同和地区とは大きく異なっている。
 居住水準では、最低居住水準未満の世帯は4.1%と大阪府同和地区全体より少なく、居住水準はほぼ満たされた状態であるといえる。「住宅・地区への定住意向」は約半数の人が「住み続けたい」としている一方で、若年層、高学歴層にできれば「住み替えしたい」「地区外へ引越したい」という意向が強くなる傾向がある。また、現在の住宅から住み替えを希望する人には持ち家志向が多い。
 今後は「定住魅力あるまちづくり」に向けて、これまでに整備してきた住宅を始めとする良好な住環境の維持保全を図るとともに、多様な住宅施策を検討していく必要がある。

(9) 意識調査結果については、市町村ごとの調査結果が出されていないので、大阪府民全体の調査結果についてみることとする。
 8割を超える府民が「被差別部落」、「同和地区」、あるいは「部落」と呼ばれて差別を受けている地区があることを知っており、家を購入・賃借するときに同和地区を避けるとする人が約4割いる。また、自分の子どもの結婚を考える際に相手が同和地区出身者かどうか気になるとする人が約2割いる。
差別の原因では、「同和地区だけに特別対策を行うから」や「同和地区に対する偏見が強く、市民の人権意識が低いから」とする人が多い。
 同和問題の解決に向けた取組みについては、約3分の2の府民が「同和地区と周辺の人々が交流を深め、協同してまちづくりを進める」「学校教育・社会教育を通じて、差別意識をなくし、人権を大切にする教育・啓発活動を積極的に行う」ことが重要だとしている。さらに差別があると知っている人のうち、約7割の府民が近い将来差別をなくすことができると考えている。
 このように忌避意識や結婚観にみられる府民の人権意識の現状を踏まえ、同和問題の解決にあたっては、市民の理解や認識を深める啓発活動はもちろんのこと、解決可能な問題であるという具体的な展望を市民に示すことや住民交流の促進、コミュニティづくりなどを進め豊かな人間関係づくりに取り組むことが必要である。

5.同和問題の解決のための施策の方向

(1) 特別措置としての同和対策事業の終了

 同和対策事業は、本来一般施策で実施すべきものであるが、地区の生活環境改善や地区住民の生活向上が緊急の課題であったこと、また、こうした課題に当時の一般施策が十分に対応できなかったことから、これまで地区や地区住民を対象に特別措置として実施してきたものである。つまり、緊急の課題として、また、一般施策を補完するために地区を限定して取り組んできたことにより、生活環境改善や住民の生活の向上に極めて大きな役割を果たしてきた。
 このように実施されてきた同和対策事業であるが、その根拠となった特別措置法、いわゆる現行の「地対財特法」が平成14(2002)年3月末で失効する。これにより、同和対策事業の前提となる、いわゆる「地区指定」はなくなることになる。
 したがって、平成14(2002)年3月末の現行法の期限をもって、同和地区及び同和地区住民に限定した特別措置としての同和対策事業は廃止すべきである。
 今後は、同和地区出身者を含む様々な課題を有する人々に対する一般施策による人権尊重の視点に立った取組みを行うべきである。
 このことにより、同和地区や同和地区出身者に対する偏見、同和地区だけに特別措置を実施することから生まれる「逆差別意識」や「ねたみ意識」の解消にもなり、同和問題解決の取組みが普遍性を持ったものとして共感を広げ、同和問題の解決につながるものと考える。

(2) 基本的な施策の方向

 今後の施策は、同和地区や同和地区出身者に対する結婚や就職等に現れる差別意識や忌避意識の解消、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現を目指すための人権教育・啓発の推進とともに、人権が侵害された被害者に対しての救済施策の推進や同和地区内外住民の交流促進を図るコミュニティづくり、また実態等調査結果に現れている様々な課題の解決に向けた取組みを、これまでの成果を損なうことのないよう配慮し、財政状況をも考慮しながら、一般施策の有効かつ適切な活用や工夫を加えつつ人権行政の一環として推進することである。その際には、様々な課題を持った地域住民の自立と自己実現を支援するという視点に立って、一般施策が地域住民に広く周知できるようにきめ細かな相談体制の充実やより効果的な施策の推進に努める必要がある。

1)市民の人権意識の高揚を図るための取組み

 これからの人権教育・啓発は、「人権教育のための国連10年堺市後期行動計画」が示しているように、まちづくりの主人公である「人」を中心に、あらゆる機会・場を通じての人権教育・啓発の推進を図り、人権尊重を文化として市民生活の中に浸透させていくことが求められている。
 そのために、まず地域社会における人権教育・啓発の推進を図るためにすべての人々が日常生活の中の出来事を人権の視点から捉え、考えていくことができるよう、情報や多様な学習機会の提供、相談機能の充実等と同時に、学習者のニーズにあったプログラムや教材の開発・整備、研修会等の充実を図る必要がある。これらを推進するにあたっては、生涯学習と密接に連携した取組みを進め、「生涯学習としての人権教育」に発展させる必要がある。
 学校教育の場においては、豊かな人権感覚をもって行動する人間の育成を図るために、人権についての理解を深め、義務と責任を自覚し、人権の尊重が日常生活において実践できるよう、発達段階を踏まえ、人権教育を系統的に推進していく必要がある。
 また、人権教育・啓発にかかわる指導者の役割は大きく、人権についての専門的な知識や技能を身に付けるだけでなく、自らの行動力を高めるためにより効果的な研修の充実が必要である。また、人権行政を推進していくために、職員一人ひとりが人権問題の解決を自らの課題とすることができるよう、資質の向上を図るための効果的な人権研修や自己啓発が必要である。
 本市では、差別のない明るいまちづくりを目指して啓発活動を展開している堺市人権教育推進協議会を始め、様々な市民団体等が人権問題に取り組んでいる。人権教育・啓発の推進にあたっては、これらの団体とともに関係機関との一層の連携を進め、情報のネットワーク化を図り、多様な人権課題、学習要求に応えていく必要がある。
 平成13(2001)年5月に人権擁護推進審議会から出された「人権救済制度の在り方について」の答申の中で、「人権委員会(仮称)」という独立した機関の設置を中心とする新たな人権救済制度の整備を提言しているが、都道府県や市町村の行う各種相談事業との連携の重要性も指摘している。今後整備される人権救済機関を含め様々な相談機関との連携・協力体制を構築するため、ネットワーク化の検討を進める必要がある。
 今後、本市は堺市総合計画で掲げている「人が輝く市民主体のまちづくり~自由と自治がいきづく人間尊重都市を築くために~」を実現するため、すべての施策を人権の視点に立って総合的・体系的に進め、人権の世紀にふさわしい人権行政を全庁的に推進する必要がある。そのため人権行政の基本理念、直面する課題への取組み、市民参加の促進などを内容とする「人権施策推進基本方針(仮称)」の策定が必要である。

2)地域住民の自立と自己実現を達成するための取組みの支援

 地域住民の自立と自己実現を図っていくための条件整備として、教育、就労、地域福祉、保健・医療、住宅・まちづくりの各分野で次のような取組みが求められる。
 教育については、学校教育におけるこれまでの知識・理解力の向上だけではなく、平成14(2002)年4月から実施される新学習指導要領が求める「生きる力」としての学力への転換が必要である。また、多様な進路選択を可能とする進路指導等の充実、保護者等への学習機会の提供、生涯学習環境の整備による交流の場の充実や地域活動の活性化などが求められる。このため、学校・家庭・地域がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に連携して子どもの教育のためのコミュニティを形成し、地域活動の活性化・ネットワーク化を進め、家庭・地域の教育力の向上を図ることが必要である。
 さらに、堺市教育委員会においては、平成12(2000)年3月に策定した「人権教育基本方針」、「人権教育推進プラン」を踏まえ、豊かな人権感覚を持って行動する人間の育成を学校教育の基盤として位置付けるとともに、地域住民の自立と自己実現を達成することはもとより、すべての人の自立、自己実現、豊かな人間関係づくりを図るため、人権教育をより一層推進することが重要である。

 就労については、財団法人堺市同和地域振興協会や堺市進路保障協議会等が中心となって、就職の機会均等や就労支援に取り組んできたが、就労は地域住民の自立と自己実現の達成を支援するうえで根幹をなす課題である。この課題解決に向けては、前段でも述べた多様な進路選択ができる豊かな学力の向上が求められる。そのためには、自ら学ぶ意欲を持って学習に取り組むとともに、基礎的な職業能力や働くことの大切さなどを身につけさせるための学校における進路指導の充実や家庭・地域における教育力の向上を図ることが必要である。
 また、近年の社会経済情勢の変化の中で就労の安定化を図るためには、財団法人堺市同和地域振興協会を始め国・府の労働関係機関等と連携し、地域におけるきめ細かな職業相談を通じ、職業能力の開発や雇用・就労等に結びつく取組みを進めるとともに、企業に対して人権意識の向上と雇用の場の確保に積極的に努めるよう啓発活動をより一層推進する必要がある。

 地域福祉については、高齢者、障害者、母子・父子世帯や子育てなどで課題を有する人々が、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう施策の充実が必要である。そのためにはニーズの把握に努め、多様な福祉サービスなどの提供が求められるとともに、これらの人々が地域で生きがいを持って自立した生活ができるための条件づくりが必要である。また、きめ細かな相談等について関係機関がネットワークを構築し、これまでの取組みによって培われてきたノウハウを活用し、人権尊重、自立支援の視点に立った多様な福祉サービスの提供や、地域での生活を総合的に支援するための仕組みの整備を図る必要がある。あわせて、周辺地域住民と協働して地域福祉のまちづくりを進めていくことが望まれる。

 保健・医療については、急速に少子高齢化が進展する中で、これまで医療の確保、健康相談や訪問指導、各種検診の実施などによって健康の保持・増進が図られてきた。今後は、国の「健康日本21」の地方計画となる「健康さかい21」の理念にもうたわれているが、市民自らが、健康寿命の延伸を図るために生活習慣病の「一次予防」を中心に、個人個人として主体的に健康づくりに取り組む必要がある。行政は、地域の実情把握に努め、その特性を踏まえ、保健予防から治療につなぎ、かつ必要な福祉サービスを提供できるよう、それぞれの連携はもちろん、地域・学校等関係機関との連携を密にして、保健センターを中心に効果的・総合的に支援する必要がある。

 住宅・まちづくりについては、これまでの事業によって住環境整備はほぼ完了し一定の成果を上げたことから、今後はこれまでに整備してきた住宅等社会資本の良好な住環境の維持保全を図っていくとともに、空家住宅の活用を図るなど、入居・管理体制について検討する必要がある。
 また、住宅に対する多様なニーズからの地区外転出、地区住民の少子・高齢化などにより地区の活力が今後低下していくことが懸念される。このため、地区の活性化に向けて地域住民がまちづくりに参画する機運を高め、住まいの再構築を「まちづくり」の中に位置づけ、「コミュニティづくり」という視点のもと、多様な住宅施策を検討する中で「定住魅力あるまちづくり」に向けての推進が必要である。

3)地区内施設のあり方及び住民交流を促進するための取組み

 同和問題の速やかな解決に資することを目的に設置・運営されている解放会館を始めとする地区内施設については、各施設がより一層連携し相談機能とコーディネイト機能を充実するとともに、より多くの市民の利用を図り、同和地区内外住民の交流に努める必要がある。このことから、地区内施設の名称、機能、運営方法などのあり方を早期に検討すべきである。
 解放会館は、同和問題を始めあらゆる人権問題の解決に資する学習の拠点となる生涯学習・人権啓発センターとしての機能、住民交流の拠点とともに地域住民の文化の拠点ともなるコミュニティセンターとしての機能及び地域住民の自立支援に向けた継続的・総合的相談機能を持った総合施設として、より一層機能の発揮に努めなければならない。そのためには、人権問題の学習・啓発・情報発信、関係機関と連携した自立支援のための相談窓口の充実、住民交流を図るための貸館業務の拡充などを推進する必要がある。
 他の地区内施設についても、これまで地区住民を始め多くの市民に利用され、同和問題の解決に寄与してきた実績とノウハウを活かしながら、人権尊重の視点からそれぞれの施設の持つ機能を発揮することにより、地域住民の自立を支援する拠点として保健・福祉・医療サービス等の提供の充実、地域における人材育成や地域住民の相談、人権教育・啓発の推進などに努める必要がある。また、コミュニティづくりの視点から同和地区内外住民のより一層の交流促進に取り組む必要がある。

(3) 人権行政の推進体制

1)人権行政の庁内推進体制

 今後の同和問題解決のための施策の推進にあたっては、同和問題を人権問題という本質から捉え、人権行政の一環として位置付け、かつ、総合行政として全庁一体となった取組みが必要である。法期限後も従来の総務人権局や人権教育部の果たす役割は大きく、その有する総合調整機能をこれからも十分発揮することが求められている。

2)堺市同和対策協議会

 堺市においては、昭和52(1977)年に、市民の広い理解を得て総合的かつ効果的な同和行政の推進に資するため、市長の諮問機関として堺市同和対策協議会を設置し、これまで数次にわたり答申を行うなど、同和問題の解決に大きな役割を果たしてきた。
 なお同和問題が解決されたとは言い難い状況にあり、今後においても、人権行政の一環として同和問題の早期解決に向けて審議していく必要があることから、名称、目的等の変更を含め、協議会の新たなあり方について検討すべきである。

3)堺市同和事業促進堺地区協議会

 堺市同和事業促進堺地区協議会は、同和問題の早期解決に向けて市が実施する同和対策事業に協力し、かつ、促進する機関として、同和地区の実態・ニーズを踏まえた必要な調整や、啓発、福祉、人権に関わる諸施策に協力するなど、地区における同和対策の推進に大きな役割を果たしてきた。
 今後は、これまでの地区での取組み等を通じて蓄積されたそのノウハウを活かし、同和問題を始めあらゆる人権施策を推進するための市の協力機関として位置付けるべきである。そのため、これまでの成果を継承し、名称・役割・機能を含めた新たなあり方についての検討を求めるべきである。
 また、改組後の地区協は、周辺地域の住民も参加した地域での取組みを推進する組織として整備し、地区内施設と連携を図りながら、周辺地域を含む様々な相談活動を通じた地域住民の実態・ニーズの把握、自立支援のための一般施策の普及・定着、同和地区内外住民の交流を通じての「コミュニティづくり」の一翼を担うことが期待される。

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