○堺市自転車のまちづくり推進条例
平成26年6月25日
条例第35号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 自転車の安全利用
第1節 自転車利用者の遵守事項等(第6条―第11条)
第2節 自転車の安全利用に関する教育等(第12条―第14条)
第3章 自転車のまちづくりに関する基本的施策(第15条―第22条)
第4章 雑則(第23条)
附則
私たちのまち堺は、いにしえから仁徳天皇陵古墳を始めとする百舌鳥古墳群の築造のため、多くの金属加工技術を有した人々が集まり、その技術は、環濠自治都市として発展した中世において、高度な鉄砲鍛冶の技術へと受け継がれ、近代には、その鉄砲鍛冶の技術が、自転車産業にも継承された。現在では世界有数の企業も誕生している自転車関連企業群は、本市の地場産業の中で重要な位置を占め、これまで他の地場産業とともに本市の発展に貢献するとともに、自転車の普及及び発展に大きく寄与している。
自転車は、移動手段として環境に対する負荷が少なく、心身の健康の増進にもつながる身近な乗り物であり、災害等による交通網の寸断時における移動手段としてもその有用性が見直され、自転車を利用する人は増えている。その一方で、交通ルールやマナーを無視した自転車の走行が歩行者に脅威を与え、時として重大な交通事故を引き起こし、また、自転車の盗難やひったくりなど、自転車が絡む犯罪も多くなっている。今こそ私たちは、歴史的に本市とゆかりが深く、多くの利点を持つ自転車の安全利用を推進するとともに、自転車に関連する事故や犯罪を減らし、「自転車のまち」として更なる飛躍を遂げていかなければならない。
ここに私たちは、市民が自転車を大切にし、交通ルールの遵守及びマナーの向上を図り、安全に、安心して、かつ、快適に自転車を利用することができるまちづくりを市民共通の願いとして進めるため、本条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市と歴史的にゆかりの深い自転車の安全利用に関し、市、事業者及び市民等の責務を明らかにし、これらの者が自転車を有効に活用できるまちづくりに協働して取り組むための基本的な事項を定め、もって本市における自転車のまちづくりの推進に資することを目的とする。
(1) 自転車 道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第11号の2に規定する自転車をいう。
(2) 自転車の安全利用 自転車の利用者が他人に対し、生命、身体又は財産における損害を被らせず、及びこれらの損害を自らも被らないような自転車の利用をいう。
(3) 事業者 本市の区域内(以下この条において「市内」という。)において事業活動を行う者をいう。
(4) 市民等 市内に住所を有する者、市内に所在する学校、事業所等に通学し、又は通勤する者、市内に滞在する者及び市内を通行する者をいう。
(5) 自転車のまちづくり 全ての市民が、自転車の安全かつ安心な利用に対する意識を高め、自転車の有用性を理解した上で積極的に自転車を利用すること並びに市が市民及び事業者の理解と協力のもと自転車の利用に係る環境の整備を促進することにより、自転車を利用しやすいまちを実現することをいう。
(6) 自転車小売業者 市内において自転車の小売を業とする者をいう。
(7) 自転車損害賠償保険等 自転車の利用に起因して他人の生命、身体又は財産における損害が生じた場合において、その損害を填補するための保険又は共済をいう。
(8) 自転車製造業者 市内において自転車の製造を業とする者をいう。
(9) 学校 市内に所在する学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校をいう。
(市の責務)
第3条 市は、市民等、地域団体、事業者等が実施する自転車の安全利用及び利用促進に関する活動の支援を行うとともに、自転車の安全利用及び利用促進に関する広報、啓発、教育、指導等を実施する責務を有する。
2 市は、自転車の駐輪に係る環境、通行に係る環境その他利用に係る環境を向上させる施策を推進する責務を有する。
(事業者の責務)
第4条 事業者は、第1条に規定する目的を達成するため、従業員に対し自転車の安全利用に関する啓発を行い、自転車の適正な管理及び利用の促進に努めなければならない。
2 前項に規定するもののほか、自転車小売業者は、自転車の購入者に対し、自転車の安全利用に関する啓発及び自転車損害賠償保険等に関する情報の提供に努めなければならない。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、第1条に規定する目的を達成するため、自転車の安全利用に関する理解を深め、自転車に起因する事故及び犯罪の防止に努めなければならない。
第2章 自転車の安全利用
第1節 自転車利用者の遵守事項等
(自転車利用者の遵守事項)
第6条 自転車を運転する者(以下「自転車利用者」という。)は、道路交通法その他の関係法令を遵守するとともに、歩行者の安全に十分に配慮して自転車を運転しなければならない。
2 前項に定めるもののほか、自転車利用者は、次の事項に努めなければならない。
(1) 横断歩道を通行する場合は、歩行者の通行を妨げるおそれのないときを除き、自転車を押して通行すること。
(2) 乗車用ヘルメットを着用すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、自転車を安全に利用すること。
(自転車の点検整備)
第7条 市は、自転車の点検又は整備の不良による事故を未然に防止するため、自転車の点検及び整備の普及を促進するものとする。
2 自転車利用者(第12条に規定する保護者を含む。以下同じ。)及び事業者(以下これらを「自転車利用者等」という。)は、その利用する自転車を日常的に点検するとともに、自転車小売業者等による定期的な点検を受けるよう努め、必要に応じた整備をしなければならない。
(保険等への加入)
第8条 市は、自転車利用者等に対し、自転車に起因する事故がもたらす被害等の情報について周知を図るとともに、自転車損害賠償保険等に加入するよう啓発を行うものとする。
2 自転車利用者(未成年者を除く。)は、自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者の自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等の加入が当該自転車利用者以外の者によりなされているときは、この限りでない。
3 保護者は、その監護する未成年者が自転車を利用するときは、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。ただし、当該保護者以外の者により、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しているときは、この限りでない。
4 事業者は、従業員に自転車を利用させるときは、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入するよう努めなければならない。
(平28条例35・一改)
(自転車の安全利用の対策)
第9条 自転車利用者等は、錠前の取付け、施錠の徹底、ひったくり防止カバーの活用等により、自転車に関わる犯罪の被害の防止に努めなければならない。
2 自転車製造業者及び自転車小売業者は、自転車の盗難、ひったくり等の犯罪を防止するため、盗難の防止に有効な錠前、ひったくり防止カバーその他の用具の普及に努めなければならない。
3 自転車製造業者及び自転車小売業者は、自転車に関する事故を防止するため、灯火装置並びに車両の両側面及び後部に反射板を装備した自転車を製造し、又は販売するよう努めなければならない。
(迷惑運転に対する指導等)
第10条 市は、自転車に起因する事故を未然に防止するため、他人に危害又は迷惑を及ぼすおそれのある運転(次項において「迷惑運転」という。)をする自転車利用者に対し、必要な指導を行うものとする。
2 市は、悪質な迷惑運転が多発する区域がある場合においては、期間を定め、当該区域において、自転車の安全利用の啓発に重点的に取り組むものとする。
(自動車運転者の遵守事項)
第11条 自動車を運転する者(以下この条において「自動車運転者」という。)は、車道を通行する自転車の安全に十分配慮して自動車を運転しなければならない。
2 自動車運転者は、追越し等のため自転車の側方を自動車で通るときは、当該自転車との間に安全な間隔を空け、又は徐行するなど、自転車の安全に注意しなければならない。
3 自動車運転者は、交差点を通行するときは、交差する道路を通行する自転車との衝突、左側を通行する自転車の巻き込み等を予防するため、当該自転車の交差点への進入速度、動向等を確認しながら自動車を運転しなければならない。
第2節 自転車の安全利用に関する教育等
(保護者等による教育等)
第12条 未成年の自転車利用者の保護者は、当該自転車利用者に対し、自転車に関する事故を予防するために自転車の適正な利用方法を説明し、乗車用ヘルメットを着用させる等の自転車の安全利用に関する教育及び指導を行うよう努めなければならない。
(学校等における教育等)
第13条 学校(大学を除く。)の長は、その幼児、児童又は生徒に対し、発達段階に応じた自転車の安全利用に関する教育、啓発及び指導(以下この条において「教育等」という。)を行うよう努めなければならない。
2 中学校の長及び高等学校の長は、生徒の自転車通学を認める場合は、自転車の安全利用を確保するための措置を講ずるよう努めなければならない。
3 専修学校(学校教育法第124条に規定するものをいう。)の長、各種学校(同法第134条第1項に規定するものをいう。)の長及び大学の長並びに児童又は生徒の教育又は育成に携わる者(第1項に規定する学校の長を除く。)は、その児童、生徒又は学生に対し、自転車の安全利用に関する教育等を行うよう努めなければならない。
(自転車小売業者の研修の受講)
第14条 自転車小売業者は、自転車の購入者に対し、自転車の安全利用に関する周知及びそのために必要な情報等の提供を効果的に行うため、市が実施する自転車の安全利用に関する研修を受講するよう努めなければならない。
第3章 自転車のまちづくりに関する基本的施策
(計画の策定等)
第15条 市は、この条例の目的を達成するため、自転車のまちづくりに関する計画を策定するものとする。
2 市は、社会情勢の変化等に応じて、前項の計画を変更するものとする。
(自転車のまちづくり推進の組織等)
第16条 自転車に関わる全ての者は、第1条に規定する目的を達成するため、それぞれの役割を相互に補完し、及び協働するよう努めなければならない。
2 市は、自転車のまちづくりの推進に柔軟かつ弾力的に対応できる組織を構築するものとする。
(人材の養成等)
第17条 市は、自転車のまちづくりを推進する人材を養成するため、次に掲げる事項について講座を実施するものとする。
(1) 自転車の安全利用に関する事項
(2) 環境に対する負荷を低減するための自転車の活用に関する事項
(3) 自転車を活用した市内観光に関する事項
(4) 健康で快適な自転車利用に関する事項
(5) その他自転車のまちづくりに関する事項
2 市は、自転車のまちづくりについて自主的に活動する市民団体等に対し、市が実施する自転車に関する研修会への参加の機会の提供及び自転車に関する様々な情報の提供その他の必要な施策を行うものとする。
(自転車利用推進委員の設置)
第18条 事業者は、従業員等の自転車の安全利用及び利用促進を図るため、市長が定める基準に基づき従業員等のうちから自転車利用推進委員を設置するよう努めなければならない。
2 自転車利用推進委員は、市が実施する講座を受講し、及び市の認定を受けた者でなければならない。
(自転車利用推進委員の役割)
第19条 自転車利用推進委員は、その事業所の従業員等に自転車の安全利用に関して指導を行うとともに、事業所内における自転車利用の促進に努めなければならない。
2 自転車利用推進委員は、規則で定めるところにより、市長にその活動内容を報告するものとする。
3 自転車利用推進委員は、自転車のまちづくりを推進するために有効と考えられる施策について、市に提案を行うことができる。
(顕彰)
第20条 市は、自転車利用推進委員の活動が円滑に行われるよう支援を行うとともに、自転車利用推進委員が設置されている事業者を、自転車のまちづくりに寄与する事業者としてその名称その他の事項を公表するものとする。
(情報の収集、発信等)
第21条 市は、自転車に関する様々な情報の収集及び発信を行うとともに、市民等がそれぞれ有する自転車に関する情報を共有し、交流を行うことができる場の創出に努めるものとする。
(市の施策への協力)
第22条 市民等、事業者その他自転車のまちづくりに関係する者は、自転車の安全利用及び利用環境の向上に関する市の施策に協力するよう努めなければならない。
第4章 雑則
(委任)
第23条 この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成26年10月1日から施行する。
附則(平成28年6月24日条例第35号)
この条例は、平成28年7月1日から施行する。