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堺市
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平成21年6月25日 堺市監査委員公表 第29号

更新日:2012年12月19日

 地方自治法第242条第1項の規定に基づき平成21年5月20日に監査委員に提出された住民監査請求について、監査委員の合議によりその結果を下記のとおり決定したので、同条第4項の規定に基づき公表する。

平成21年6月25日

堺市監査委員 西林 克敏
 同 吉川 敏文
 同 木戸 唯博
 同 小杉 茂雄

住民監査請求に係る監査結果

(平成21年5月20日請求)

<堺浜への企業立地に伴う市税の減免等について(その2)>

目次

堺市監査委員公表第29号

第1 監査の請求
 1 請求人
 2 監査請求書の提出
 3 請求の趣旨
第2 監査の実施
 1 要件審査及び請求の受理
 2 監査を行った監査委員
 3 請求人の証拠の提出及び陳述
 4 監査対象部局
 5 監査対象部局からの事情聴取等
第3 監査の結果
 1 本件の監査対象事項
 2 市税の減免に関する主張について
 3 請求人の主張する理由について
 4 結論

 

第1 監査の請求

1 請求人

68名(氏名は省略)

2 監査請求書の提出

平成21年5月20日

3 請求の趣旨

第1 シャープ堺浜工場の立地

 2007年7月31日、シャープ株式会社 (以下、「シャープ」といいます。) は、堺浜 (大阪府堺市) に新工場を建設すると公式に発表しました。
 シャープ堺浜工場は、敷地面積127万平方メートルで、投資額は、土地代を含めて約3800億円です。2007年11月に着工し、2010年3月の製造開始が目標とされました。
 シャープ堺浜工場は、発表時点で世界最大の大型テレビ用液晶パネルの生産をおこない、同じく世界最大の太陽電池工場を併設し、同一敷地内に関連するインフラ施設や部材・装置メーカーの工場を「フルセット」で誘致する「21世紀型コンビナート」と呼ばれる生産形態をとることとしています。

第2 堺市長によるシャープなど関連5社に対する減税措置

 2008年4月、堺市長は、堺浜において展開されているコンビナートのうち、シャープなど関連5社を堺市企業立地促進条例の対象に認定しました。
 上記条例の対象に認定されると、市税 (固定資産税、都市計画税、事業所税) が軽減されます。
 今回の認定では、減免の対象となる投資総額は約5500億円を見込んでおり、10年間の減免額合計は240億円にも上ります。

第3 LRTの敷設計画

 LRT (ライトレールトランジット) は、次世代型路面電車とも呼ばれ、環境にやさしい公共交通として注目されています。
 堺市では当初、市の東西を結ぶ公共交通機関が路線バスのみであったことから、地域の活性化を図るためとして、「堺東駅-堺駅間」のLRT路線が計画されていました。
 その計画自体、堺市民の間で異論があるにもかかわらず、そこに堺駅からシャープ工場が立地する堺浜まで敷設する「堺駅-堺浜間」の路線が計画に加わりました。この計画によれば、280億円の公金を支出することになります。

第4 堺市長による税の減免措置等の違法・不当性

1 税の減免等に関する法的根拠

 地方自治体が行う税の減免等の補助に関しては、地方自治法232条の2に、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定されており、公益上必要性がある場合に限られています。
 したがって、公益上の必要性が認められない補助は、違法であると評価されます。

2 シャープ立地にともなう補助に公益上の必要性は認められません

(1) 補助の目的・趣旨に公益性がありません

 堺市のシャープ等に対する税の減免の目的は、堺市企業立地促進条例において、「企業立地を促進し、誘導すること」であるとされています。
 しかし、企業の立地選択の重要な要素としては、税の減免等の金銭的支援はわずかな比重しかありません。シャープが堺浜に立地した動機は、シャープの本社機能と亀山工場などとの連携、関西空港や道路網など交通・搬送上の条件、労働者確保の条件などの経営、営業の諸条件を総合的に判断して、堺浜が適切であったからです。
 したがって、税の減免とシャープ立地との間には必ずしも因果関係がなく、減免の目的・趣旨に公益性は認められません。

(2) 税の減免と住民の利益との間の因果関係が明らかではありません

 シャープ立地に際して、巨額の税の減免をする根拠は、シャープの進出が、「雇用機会および事業機会の拡大」「地域経済の活性化」をもたらすこと、つまり「波及効果」論です。
 しかし、堺市が公表している波及効果についての説明は趣旨や根拠が不明確で、シャープ立地によって、堺市民にいかなる経済的利益をもたらすのか具体的に明らかにされていません。
 また、堺市の試算では、今後10年間で188億円の増収になるとされていますが、もし税の減免をしなければ692億円の増収となるはずです。減免をしても、188億円の増収になるなら問題はないように思えますが、税収が増えたことを理由に、国から堺市に交付される地方交付税が減らされます。しかも、増えたとみなされる税収入は188億円ではなく、減免前の税収入である692億円とされます。結局、実際に増えた税収入よりも地方交付税の減り方のほうが多くなりますから、差し引きすると堺市の収入は減ってしまいます。このように、税の減免が財政的には堺市民にとって不利益となるのです。

(3) 税の減免を受けるのは、営利を目的とする私企業です

 シャープは公益活動を目的とする公益団体ではなく、営利を目的とする私企業です。営利を目的とする私企業が立地をすることによって、税収や雇用等への波及効果が仮に一定程度あったとしても、堺市民全体に利益がおよぶものではないし、それは営利活動にともなう結果にすぎません。私企業に対して交付する補助金は、シャープという大企業の営業利益を補充してやることにほかなりません。

(4) 税の減免の公平性、平等性がありません

 堺市企業立地促進条例は、軽減率や軽減期間が大企業ほど有利に作られており、大企業と中小零細企業との間に、公平性、平等性を欠いています。

(5) 税の減免は、堺市の財政規模、状況に照らして不適切であり、緊急の必要性もありません

 堺市の税の減免は、総額240億円を10年にわたって減税するものです。堺市の一年毎の減税額は一般予算の1%ほどになる支出であるし、堺市の財政状態も決して良くはありません。
 具体的には、国民健康保険料、介護保険料は共に政令指定都市の中で一番高く、水道料金、下水道料金も全国で2番目の高さです。
 このような状況の下で、莫大な利益をあげている世界的企業であるシャープに対して巨額の税金を長期にわたって減免することは、財政的に相当性を欠いています。このような規模の税の減免をすべき緊急性や重要性はありません。

(6) シャープ門前までのLRT敷設計画は不適切です

 シャープ門前までのLRT敷設計画は、その運行地域の土地利用、利用者層の予測からみても市内全域の移動利便の向上を高めるものであるとはいえません。
 これは、LRTの運行役割である、人々の生活を豊かにするものとはいえず、公共性という観点からみても、利用者の限られる怖れがあるものについて、堺市が投資を行うべきか疑問があります。

3 小括

 以上のように、シャープ立地にともなう税の減免等に公益上の必要性は認められず、堺市長による補助は違法・不当であることは明らかです。

第5 まとめ

 よって、監査委員は、堺市長に対し次のとおり勧告するよう求めます。

 記

1 木原敬介堺市長は、シャープおよび関連企業に対する税の減免をしてはならない。
2 木原敬介堺市長は、「堺駅-堺浜間」のシャープ門前までのLRT敷設計画を中止しなければならない。

 上記のとおり、地方自治法242条1項の規定により、別紙事実証明書を添付の上、必要な措置を請求します。

事実証明書

1 「地方自治体と企業誘致」

-大阪・堺市のシャープ誘致にみる問題点の分析と提言
発行所 せせらぎ出版

(原文のとおり。なお、事実証明書の掲載は省略した。)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求は、地方自治法第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成21年5月21日にこれを受理した。

2 監査を行った監査委員

 平成21年5月21日、西村昭三、松本光治、小杉茂雄、木戸唯博が本件請求の受理を決定し、以後同月25日まで監査を行った。
 同月26日以降は西林克敏、川敏文、小杉茂雄、木戸唯博が監査を行い、合議により監査の結果を決定した。

3 請求人の証拠の提出及び陳述

 地方自治法第242条第6項の規定に基づき、平成21年4月28日、同年5月20日及び同年6月9日提出の住民監査請求書は同一の記載のものであったため、平成21年6月12日、堺市役所高層館19階・監査室において請求人及び堺市住民監査請求代理人に対し証拠の提出及び陳述の機会を合同で設けたところ、(i) 「大阪府・堺市のシャープに対する公金支出の法的問題点」と題された書面と、(ii) 「LRTと街作りを考える勉強会資料」等の書面が証拠として提出され、企業誘致に伴う市税の減免の法的問題点やLRT敷設計画の問題点などについて請求人の陳述が行われた。
 また、平成21年6月22日、代理人から「住民監査請求代理人意見書」等の書面が提出された。

4 監査対象部局

 財政局(財政部)、理財局(税務部)、産業振興局(商工労働部)、建築都市局(鉄軌道推進室)

5 監査対象部局からの事情聴取等

 本件について、市長に対して請求に係る意見書の提出を求めるとともに、平成21年6月12日、監査対象部局の職員から、本件請求に関する事実及び意見について事情を聴取した。その概要は以下のとおりである。

(1) 事情を聴取した者

(財政局)財政部長、財政課長ほか
(理財局)理財局長、税務部長、税政課長ほか
(産業振興局)産業振興局長、商工労働部長、商工労働部次長兼産業政策課長、商工労働部参事(企業立地担当)ほか
(建築都市局)市長補佐官(鉄軌道担当)、鉄軌道推進室長、鉄軌道推進室次長兼鉄軌道企画担当課長ほか

(2) 本件請求に関する意見等

ア 地域産業活性化の必要性について

 本市において、バブル崩壊後、長期の景気低迷による大手製造業を中心とした事業者の撤退や規模縮小、中小企業の倒産・廃業等により雇用吸収力の低下を招き、地域産業の活力が低迷していた。また、本市の税収構造は、市民1人あたりの税収額が他市と比較して低く、特に法人関係税の税収割合が低いことにより、他の政令指定都市と比べて脆弱であったところ、地方分権の流れの中で、高齢化による社会保障関連費用の増大、少子化による労働人口の減少、教育施策の充実など市民から求められる多種多様な行政需要に応えていくためには、地域産業の活性化による強固な財政基盤の確立等が求められていた。

イ 企業誘致の重要性について

 本市では、平成17年には企業の再投資促進も対象とした「堺市企業立地促進条例」を、平成18年には緑地規制の緩和により設備の更新を容易にする「工場立地法地域準則条例」を制定した。企業誘致施策は、税源涵養と雇用の創出を図り、地域を活性化させ、財政基盤を強固にする上で、最も効果的で重要な施策である。

ウ 堺市企業立地促進条例について

a 堺市企業立地促進条例制定の経緯

 堺市企業立地促進条例(以下「企業立地条例」という。)制定の検討時、本市においては、税収や雇用の落ち込みが著しく、企業の流出・空洞化の阻止が喫緊の課題であった。このような中、企業立地条例については、市内の工業に適した土地に企業投資を誘導することにより、本市における雇用機会及び事業機会の拡大並びに産業の空洞化の防止を図り、もって地域経済の活性化、産業の高度化及び市民生活の向上に寄与することを目的として、平成17年第2回堺市議会定例会に条例案を提案し、審議を受けた後可決され、同年4月より施行された。またパブリックコメントも実施し、広く市民の意見も募集した。

b 税の不均一課税について

 企業立地条例における税の軽減措置については、地方税法第6条第2項の規定に基づき、不均一課税を行っている。
 地方税法第6条第2項は、「地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」と規定しており、その運用にあたっては、昭和27年10月24日自丙税発第43号兵庫県副知事あて自治庁税務部長より「公益上の理由に基づき工場を誘致するため、地方税法第6条の規定によって、当該工場に対する地方税を免除することは違法ではない」との回答が示されている。また、昭和41年の松山地裁判決においても、公益上の理由によって工場を誘致するため、地方税法第6条第2項に基づき条例を制定して当該工場に対する固定資産税を免除することも許されるとされている。
 この点、本条例のように不均一課税を用いることについては、企業立地により得られる税収は各種施策として還元され、広く一般市民の福祉の向上につながること、また雇用吸収力の向上は市民に安定した就労の場を提供するとともに、所得向上をもたらし、また、地元中小企業のビジネスチャンスの拡大により地域経済の活性化につながることなどから、長期的には本市経済基盤の強化に資するものとして公益性が認められるものと考えている。
 企業誘致等において、優遇措置を企業に与えることについては、当該地方自治体の直面する社会的、経済的状況に基づく総合的、政策的な判断に基づき、地方議会の監視の下、首長の広範な裁量に委ねられているものと解される。

c 企業規模による不均一課税の公平性について

 投資額によって不均一課税の額が異なることによる、大企業と中小零細企業間の公平性・平等性に関して、一般に大規模投資が建設段階も含め、雇用や波及効果など地域経済への貢献が大きいことから、その効果に着目し、投資額によって優遇策の規模を決定することは妥当であると考える。さらに、中小零細企業の投資を誘導するために、中小企業を対象とした1億円以上の投資枠を設けており、公平性を確保している。

エ シャープ株式会社誘致の経緯

 本市臨海部の堺2区には、広大な遊休地が存在し、成長産業として将来性があり地域経済への波及効果の大きい企業を中心に、積極的に企業誘致に取り組んできた。また、その他の臨海部においても、既存企業が新たなプロジェクトに取り組めるよう努めてきた。
 そのような中、シャープ株式会社の誘致については、関西国際空港や阪神高速道路大和川線、耐震岸壁といった堺臨海部の立地条件の良さをアピールし、トップセールスをはじめ積極的な誘致活動を実施してきた。本市堺浜地区は、大規模な土地改良や杭打ち工事などがデメリットであるといわれ、企業立地条例がなければ、他の候補地へ決定する可能性があった。
 シャープ株式会社は当時複数の候補地を立地先とし、その条件や投資コストについて比較検討しており、本市においても投資額による不均一課税の概算を知らせていた。
 なお、企業立地条例制定以降、シャープ株式会社及び関連企業の立地決定までに、条例の対象外のものも含め50件3,400億円の投資が見込まれるまでになり、建設工事や操業に伴う従事者が増加し、臨海部が徐々に活性化している。

オ シャープ株式会社の立地効果について

a 試算による立地効果について

 堺コンビナートは、シャープ株式会社をはじめとする日本を代表する関連17社を含めた企業の集積であることから、税収効果や政令指定都市最低である法人市民税の増大をもたらすなどの税収構造の強化に加え、雇用の創出効果も期待できる。また、シャープ株式会社の液晶工場の経済波及効果だけでも、工場稼動後には1兆円を超えると見込まれ、地域経済の活性化が図られる。
 さらに、企業立地条例では、従業員の5分の1の市内在住を求めており、定住人口の増加による地域の活性化が期待される。

b 地方交付税制度上の効果について

 地方交付税制度は、地方団体間における財政力の格差を解消するための財源調整機能の目的があるため、標準税収入額が増加すれば、普通交付税は収入増加に連動し減少する。一方、企業の立地を契機として、定住人口及び世帯数、並びに昼間流入人口が増加することにより基準財政需要額が増加し、普通交付税も需要増加に連動して増加する。
 不均一課税に伴う減収分は、普通交付税では基準財政収入額に反映されるが、不均一課税は最高10年を限度とした一時的な措置であり、長期的には企業立地による税源涵養や定住人口や昼間人口の増加によるまちの活性化、その他の経済波及効果も含め、本市全体にとって大きな効果を生み出すと考えている。

c これまで測定された立地効果について

 平成21年3月末現在において把握している波及効果は、最寄駅の乗降客数が前年対比約4%増加で推移し、市内ホテルの月ごとの稼働率は建設時のピークにおいて最大7.5ポイント前年を上回り、長期宿泊数の目安となる平均宿泊日数(連泊数)も3四半期連続で全国一となるほか、ホテルの新増設が計画されるなど、波及効果が徐々に現れてきている。従業員の増加を見込んだマンション等の建設計画も進み、その結果、地価も上昇しているほか、建設作業に伴い地元の飲食店の売上が2割程度上昇するなどの効果も現われている。
 また、新聞媒体に掲載された本市及びシャープ株式会社関連記事を広告料に換算した場合、平成19年度、平成20年度の約2年間で合計13億円の広告効果となるなど、本市の知名度向上に大きな役割を果たしている。
 一方、産業振興面、特に地元企業等への波及効果については、地元企業を優先した発注がなされていると聞いている。
 また、平成20年度に開催した製造技術関連の各種商談会等においては、シャープ株式会社及びその協力企業等の協力を得て実施され、出展した堺市内企業は現在、様々な商談の段階にあると聞いている。
 堺コンビナートの建設着工から1年間の市内企業との取引は、その企業数は延べ400社(複数企業との取引含む)、発注額は見込み額を含めて約400億円となっている。
 その他、雇用については堺コンビナート勤務予定の平成21年度の新規高卒採用約300名のうち、約3分1が堺市内、3分の1が堺市外の府内の高校から採用されたと聞いている。
 堺浜においてはシャープ株式会社の新規高卒採用と併せて、堺コンビナート全体で約5,000名の従業員の雇用創出効果が見込まれるとともに、堺浜での従業者が堺市内に居住することによる、市内消費の促進や税源の涵養など、雇用の維持・創出や強固な財政基盤の確立に寄与することが期待されている。

カ 東西鉄軌道事業(堺浜~堺東駅区間)について

a これまでの経緯について

 東西鉄軌道計画については、平成16年1月に堺市公共交通懇話会から「東西鉄軌道の実現に向けて」と題してLRT導入を前提に、臨海部~堺駅~堺東駅~堺市駅間を結ぶ東西方向の軌道整備構想の提言を受けた。さらに同年10月には近畿地方交通審議会より「近畿圏における望ましい交通のあり方」について「京阪神において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」のLRT関係として、臨海部~堺駅~堺東駅~堺市駅間を結ぶ「堺市東西鉄軌道」が答申された。
 その後、平成19年7月にシャープ株式会社の臨海部進出が決定するなど、臨海部における土地利用が急激に展開したことに伴い、あらためて具体的な交通アクセスの必要性について検討を行ってきた。
 これらの検討を踏まえ、平成20年4月に東西鉄軌道(堺浜~堺東駅間)基本計画骨子(案)を公表し、ルート・事業スキーム・東西鉄軌道と阪堺線堺市内区間との相互直通運転の実施など計画の基本的な内容について公表した。
 さらに、同年12月にはより具体的な内容を明確に示した東西鉄軌道(堺浜~堺東駅間)基本計画(案)を公表した。

b 東西鉄軌道事業の重要性及び公共性について

 東西鉄軌道は、既存の鉄軌道が南北方向にかたよっている本市において、東西方向に主要駅を結節して東西方向の交通機能を強化することによって、南北方向にかたよる鉄軌道の是正、沿線まちづくりの支援・促進、堺市独自の都市圏を形成することを目的としている。
 臨海部(堺浜)と主要駅をLRTで東西方向に結ぶことで、交通機能が高まり、さらに東西都市軸が強化され、あらたな沿線まちづくりや活性化に繋がるものであると考えている。
 特に臨海部(堺浜)における交通需要については、平成14年7月に都市再生緊急整備地域に指定され、平成18年3月には堺浜シーサイドステージの一部の商業施設等の営業や海とのふれあい広場の開設など既存の交通需要に加え、シャープ株式会社をはじめとした関連企業や中小企業クラスターの形成などの企業集積、また、サッカー・ナショナルトレーニングセンターの開設、清掃工場の稼働、物流関連企業立地など、新たに集中する自動車交通需要への対応が不可欠である。
 臨海部(堺浜)の新たな交通需要に対応し、自動車交通から公共交通への転換を図るために新たに東西方向にLRTを整備することは、阪堺線堺市内路線との相互直通運転の実施や既存の鉄道・バスと連携することで、交通利便が高まり臨海部全体及びルート沿線の交通需要をはじめ市内外から利用され、広く市民の交通利便の向上が図られるものであると考える。
 このことから、利用者が限定されるものでなく十分な公共性が担保されると認識している。
 本基本計画(案)は、LRTを基軸とした公共交通優先のまちづくりの先導となる事業計画であり、将来的には利便性の高い路面公共交通ネットワークの構築をめざしてLRTの延伸等の具体化を図ることで、よりいっそう市民への交通利便向上に繋がるものと考えている。

キ まとめ

 企業立地条例の公平性・平等性については、上記のとおりである。
 堺コンビナートの立地は、既に様々な立地効果をもたらし、これらは税源の涵養、雇用の創出など強固な財政基盤の確立に加え、地域の中小企業のビジネスチャンスの増加など、地域の活性化にも貢献している。特に環境面においては、本市が環境モデル都市として認定される大きな転換点ともなっており、本市の都市イメージの向上にも貢献するとともに、将来有望とされている環境技術分野において産学連携の進展および世界最大級のメガソーラー発電施設の建設計画、ならびにまちなか太陽光発電などのグリーン産業発展の端緒となるなど、本市のまちづくりに大いに寄与している。
 企業立地条例の適用については、堺コンビナートの立地計画はその立地先、展開する事業など条例の対象に該当するものであり、申請を受理しない事由は何ら存在しない。
 また、東西鉄軌道事業においても、様々な事業が展開される臨海部への交通アクセスを確保し、その事業のもたらす波及効果の市域への浸透を促進するとともに、本市の長年の課題であった東西交通軸を確立するほか、沿線のまちづくりや都心部のにぎわいの創出など、本市の活性化に寄与するものと考えている。

第3 監査の結果

1 本件の監査対象事項

ア 請求人は、堺市長が平成20年4月に堺浜において展開されているシャープ株式会社など関連5社(以下「本件立地企業」という。)を堺市企業立地促進条例(以下「企業立地条例」という。)の対象に認定したため、市税(固定資産税、都市計画税及び事業所税)の軽減をすることになるが、市税の減免等に公益上の必要性は認められず、堺市長による補助は、違法・不当であると主張し、市長に対し、
 (a) 本件立地企業に市税の減免を行わないこと
 (b) 「堺駅―堺浜間」のシャープ門前までのLRT敷設計画を中止することを求めている。

イ 請求人が上記(a)、(b)を求める理由は、次のとおり要約される。

 (a)について、

 【1】 地方自治体が行う税の減免等の補助に関しては、地方自治法232条の2に「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定されており、公益上必要性がある場合に限られ、公益上の必要性が認められない補助は、違法である。
 【2】 市税の減免と本件立地企業の立地との間には必ずしも因果関係がなく、減免の目的・趣旨に公益性は認められない。
 【3】 市税の減免と住民の利益との間の因果関係が明らかではなく、堺市民にいかなる経済的利益をもたらすのか具体的に明らかにされていない。また、実際に増えた市税収入よりも地方交付税の減り方のほうが多くなり、差し引きすると堺市の収入は減となり、市税の減免が財政的には市民にとって不利益となる。
 【4】 市税の減免を受けるのは、営利を目的とする私企業であり、私企業が立地することによって、税収や雇用等への波及効果が仮に一定程度あったとしても、堺市民全体に利益がおよぶものではないし、シャープという大企業の営業利益を補充してやることにほかならない。
 【5】 企業立地条例は、軽減率や軽減期間が大企業ほど有利に作られており、大企業と中小零細企業との間に、公平性、平等性を欠いている。
 【6】 巨額の市税の長期にわたる減免は、堺市の財政規模、状況に照らして相当性を欠いており、緊急性や重要性もない。

 (b)について、

 【7】 シャープ門前までのLRT敷設計画は市内全域の移動利便の向上を高めるものではなく不適切であり、LRTの運行役割である、人々の生活を豊かにするものとはいえず、公共性という観点からみても利用者の限られる恐れがあるものについて、堺市が投資を行うべきか疑問がある。

ウ まず、上記(b)が監査対象となるかについて検討する。
 住民監査請求について、地方自治法第242条第1項は、普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添えて、監査委員に対し監査を求めることができることを規定している。

エ したがって、住民監査請求においては、本市職員等による個別具体的に特定された財務会計上の行為又は怠る事実(以下「当該行為等」という。)について、違法性又は不当性が主観的に思料されるだけでなく、具体的な理由により当該行為等が違法又は不当であることを摘示する必要があり、請求人において違法又は不当な事由を特定認識できるように個別的、具体的に主張し、これらを証する書面を添えて請求する必要があるとされている。
 この点、上記(b)の理由【7】は、堺駅から堺浜までのLRTの敷設計画が市内全域の移動利便の向上を高めるものではなく、人々の生活を豊かにするものとはいえず、公共性という観点からみても利用者の限られる恐れがあり、堺市が投資を行うべきか疑問があるとする請求人の主観的な見解といわざるをえず、また、当該行為等の違法である理由、不当である理由が具体的に取り上げられているとは、理解しがたい。

オ また、地方自治法第242条第1項は、「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」には、住民監査請求の対象となることを明らかにしている。
 この点、堺駅から堺浜までのLRT敷設計画は、平成20年12月に基本計画案が発表されているが、実施計画の策定、都市計画決定はなされていない。ましてや、基本計画を策定するに至っていない現段階では、LRTの敷設に伴う公金の支出が相当の確実性をもって予測されるとの要件を満たしていないということができる。
 よって、上記(b)については、地方自治法第242条の要件を満たさないものと判断せざるをえない。

カ したがって、上記(b)については、監査対象から除き、以下、上記(a)について、本件立地企業への市税の減免が違法又は不当といえるかを本件の監査対象事項とした。

2 市税の減免に関する主張について(上記(a))

 企業立地条例は、地方税法(以下「法」という。)やその規定の趣旨に明らかに反する違法性や不当性は見当たらない。以下に、具体的な検討と判断を詳述する。

(1) 市税の減免をすることができる根拠法令について

ア 請求人は、地方自治体が行う税の減免等を「補助」としてとらえ、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定している地方自治法第232条の2を根拠とし、本件立地企業に対する市税の減免等には公益性がないと主張している。
 しかし、地方自治法第232条の2は普通地方公共団体が補助金等を支出できる要件について規定したものであり、租税の減免等の要件を定めたものではない。

イ 請求人が主張する市税の減免は、法第6条第2項を根拠とする企業立地条例第4条に基づく不均一課税措置であり、法第6条第2項は、地方団体が不均一課税をすることができる要件として「公益上その他の事由に因り必要がある場合」と規定している。
 よって、請求人の理由【1】は、その前提において理由がない。

ウ そこで、以下、請求人のいう市税の減免等は法第6条第2項又は企業立地条例に違反するかの観点から検討することとする。
 なお、市税の「減免」とは、天災その他特別の事情がある場合や貧困により生活のため公的扶助を受ける者その他特別の事情がある者に対する減免など、一旦成立した納税義務の全部又は一部を解除して消滅させる意思表示をいうが(市町村民税について法第323条、固定資産税については法第367条)、不均一課税は納税義務そのものを軽減するものであるから減免と同一ではない。そこで、以下では、企業立地条例第4条の用語である「不均一課税」ということとする。

(2) 企業立地条例の規定について

ア 企業立地条例第1条は、本市の区域内における工業に適した土地に企業投資を誘導することにより、本市における雇用機会及び事業機会の拡大並びに産業の空洞化の防止を図り、もって地域経済の活性化、産業の高度化及び市民生活の向上に寄与することを目的とすることを規定している。

イ 条例第3条第1項は、企業立地を行おうとする企業等は、法第6条第2項の規定に基づく不均一課税に係る措置その他規則で定める企業立地に係る支援を受けようとするときは、あらかじめ規則で定めるところにより企業立地に係る計画を市長に提出し、その認定を受けなければならないことを規定している。
 また、同条第3項は、市長は、第1項の規定により企業立地計画の提出があった場合は、企業立地計画が本市の地域経済の発展に資するものであるか、環境保全等に配慮したものであるか、企業等の資力、信用及び経営能力の面から適切であるかについて審査し、適当と認めるときは、企業立地計画を認定するものとすることを規定している。

ウ 条例第3条第3項の認定があったときは第4条で規定する固定資産税(家屋、償却資産)、都市計画税(家屋)及び事業所税について不均一課税が行われるが、その内容を整理すると、以下の表のとおりである。

投下固定資産額 軽減率、期間
(不均一課税の内容)
従業者の要件
600億円以上 5分の4軽減
10年間
事業所従業者の合計数の5分の1以上が市内に住所を有する者であること
300億円以上 3分の2軽減
10年間

事業所従業者の合計数の5分の1以上が市内に住所を有する者であること

10億円以上 2分の1軽減
5年間
なし
1億円以上
(中小企業のみ)
2分の1軽減
5年間
なし

(3) 企業立地条例の制定の経過等について

 企業立地条例の制定の経過等については、以下の事実が認められた。

ア 企業立地条例の制定を検討していた時期、本市においては、長期の景気低迷等により大手製造業を中心とした事業者の撤退や規模縮小などから雇用吸収力の低下を招き、地域の経済力が低迷していた。また、政令指定都市移行を目指していた本市の税収構造は、政令指定都市と比べて脆弱であり、地域産業の活性化により強固な財政基盤を確立することが求められていた。
 あわせて、堺浜においては、広大な低・未利用地が存在し、その有効活用が求められていた。

イ このような状況の中、税源涵養と雇用の創出を図り、地域を活性化させ財政基盤を強化するうえで効果的であるとして、企業誘致施策を行うこととし、市内における工業に適した土地に企業投資を誘導することにより、本市における雇用機会及び事業機会の拡大並びに産業の空洞化の防止を図り、もって経済の活性化、産業の高度化及び市民生活の向上に寄与することを目的として、企業立地条例を制定することとなった。
 条例案の策定においては、他の地方自治体の当時の先行事例を研究し、企業誘致における都市間競争に堪えうる優遇策とするとともに、本市に与える財政面への影響について関係部局と検討を行った。
 策定された企業立地条例案は、平成17年第2回定例会に上程され、原案のとおり可決され、平成17年4月1日に施行された。

ウ なお、平成20年度末までの企業立地条例による年度別の企業立地計画の認定企業数、投下固定資産額、雇用計画者数は次のとおりである。

 a) 平成17年度 4社、約70億円、522人
 b) 平成18年度 8社、約147億円、193人
 c) 平成19年度15社、約5,797億円、2,700人
 (うちシャープ株式会社関連5社(=本件立地企業)、約5,500億円 約2,400人)
 d) 平成20年度13社、約2,620億円、544人
 (うちシャープ株式会社関連8社 約1,500億円 約400人)
 以上、合計認定企業数40社、合計投下固定資産額約8,634億円、合計雇用計画者数約3,959人となっており、そのうちシャープ株式会社関連の合計は、認定企業数13社、投下固定資産額約7,000億円、雇用計画者数約2,800人となっている。

3 請求人の主張する理由について

(1) 不均一課税の公益性について(理由【1】)

ア 前述のとおり、法第6条第2項は、地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができると規定されており、行政実例や裁判例も、公益上の事由に基づき工場を誘致するため、法第6条の規定によって、期間を定めて工場に対する地方税を免除することは違法ではないと判断している(昭和27年10月24日自丙税発第43号自治庁税務部長回答、昭和41年4月11日松山地裁判決)。
 このことから、地方公共団体は、工場等を誘致するため、その地域社会における社会経済生活の特殊事情を考慮して、その自主性に基づいて、独自の判断により一定の範囲のものに対し不均一課税をすることも認められると解される。
 ただし、公益性がない場合や、永久的又は不相当な長期間の場合は適当ではなく、不均一課税をすることの目的を明確なものとして、この制度が濫用されることのないよう留意することが必要であると考えられる。

イ 上記2の(3)で述べたとおり、長期の景気低迷や、大手製造業を中心とした事業者の撤退など本市のおかれていた状況の中で、本市臨海部の広大な遊休地に企業を誘致することなどにより、地域産業を活性化させ、強固な市の財政基盤を確立し、市の自主財源を確保したうえで、市民の福祉向上のための施策を行うという目的のもとで経済効果が合理的に見込まれる場合は、法第6条第2項に定める「公益上その他の事由に因り必要がある場合」に該当すると判断される。
 また、企業を誘致するにあたり、どの政策を選択し、議会に提案するかの裁量権は市長にある。市長は、パブリックコメントを踏まえ、不均一課税の対象事業、開始時期、期間、投下固定資産額及び減額率等について規定した企業立地条例案を提案し、同条例は議会において可決されたものである。よって、法第6条第2項の規定の濫用はないものと判断され、企業立地条例による不均一課税には公益上の必要性が認められる。
 なお、本件立地企業の立地計画の認定において、立地計画の内容、立地先、展開する事業をはじめ、地域経済の発展に資すること、環境保全等への配慮、企業等の資力、信用及び経営能力など、条例で規定する多岐にわたる諸項目に該当するかについて有識者等の意見も踏まえて審査が行われ、決定されていることを確認した。
 よって、本件立地企業に対する企業立地条例の適用について、違法性又は不当性はないと判断する。

(2) 不均一課税と立地の選択との因果関係について(理由【2】)

ア 請求人は、市税の減免と本件立地企業の立地との間には必ずしも因果関係がなく、減免の目的・趣旨に公益性は認められないと主張しており、この点について検討する。

イ 一般に企業が工場を建設するにあたり、複数の候補地を立地先とし、その条件や投資コストについて比較検討することは経営の常と解される。
 シャープ株式会社が堺浜に進出する計画を発表したのは平成19年7月31日であったが、堺浜地区への工場建設を決めた理由の一つに本市の税制優遇措置があることは十分に推測される。但し各要因のウェイトは企業秘密に属するから企業立地条例の適用による不均一課税と立地の因果関係の程度は知るよしもない。

ウ しかし、企業立地条例は平成17年4月1日に施行されており、当時、他の自治体と誘致競争関係があったこと、当時の大阪府知事や本市市長らがシャープ株式会社を訪問し、府市一体で誘致活動をしていたことは顕著な事実である。そのような状況で、シャープ株式会社が立地先を決定する際に本市の企業立地条例の不均一課税制度を検討の対象から除外したと考える理由もない。

エ よって、不均一課税と本件立地企業の立地との間には因果関係がないとはいえないから、この点に関する請求人の理由【2】には理由がない。

(3) 不均一課税と住民利益の因果関係について(理由【3】)

ア 請求人は、市税の減免と住民の利益との間の因果関係が明らかではなく、堺市民にいかなる経済的利益をもたらすのか具体的に明らかにされていない。また、実際に増えた市税収入よりも地方交付税の減り方のほうが多くなり、差し引きすると堺市の収入は減となり、市税の減免が財政的には市民にとって不利益となると主張しており、この点について検討する。

イ 地方交付税は、地方公共団体間の財政不均衡を是正し、必要な財源を保障するため、国から地方公共団体に対して交付されるものであり、基準財政需要額と基準財政収入額との差額が地方公共団体に交付されるものである。
 基準財政需要額とは、各地方公共団体が標準的な行政を合理的水準で実施したと考えたときに必要と想定される一般財源の額であり、基準財政収入額とは、各地方公共団体の財政力を合理的に測定するために、標準的な状態で徴収しうる税収を一定の方法によって算定した額である。

ウ 地方交付税においては、不均一課税に伴う減収分は基準財政収入額に反映される。しかし一方で、企業の立地により定住人口や世帯数、昼間流入人口が増加した場合、基準財政需要額が増加し、地方交付税も需要増加に連動して増加する側面もあり、地方交付税の増減額を見込むことは困難な状況にある。
 そもそも、市税収入額及び地方交付税の額については、少なくとも企業立地による様々な波及効果が広く影響していくものであると考えられる。

エ 新聞報道等によると、平成21年3月末までにおいて、本件企業の立地の経済効果の例として次のようなものが挙げられている。

 a) 工業地、商業地及び住宅地の地価が上昇しており、ホテル等の建設計画も進んでいる。
 b) 地元の飲食店の売上が2割程度上昇している。
 c) 堺コンビナート全体(本件立地企業を含む)の勤務予定者の平成21年度の新規高校卒業者約300名のうち、約3分の1が本市内、3分の1が本市以外の府内の高校から採用された。
 d) 平成20年4月から平成21年2月の最寄の堺駅の乗客者合計が前年比約4.3%増加した。
 e) 市内ホテルの平均稼働率が前年比1.74ポイント上回り、長期宿泊数の目安となる平均宿泊日数(連泊数)も3期連続で日本一となった。
 f) 平成20年度に府市共同で開催した「府内中小企業とシャープ株式会社とのビジネスマッチング商談会」は、シャープ株式会社の協力を得て実施され、出展した堺市内の企業は現在様々な商談の段階にある。
 g) 条例対象外の複数の運輸業・小売業の大型物流施設等が臨海部に立地又は立地予定となっている。
オ 税収入の増加分より地方交付税の減額分の方が大きくなるという請求人の主張は、経済波及効果、雇用の創出及び従業員の定住などに伴う不均一課税対象の税目以外の市税の増収分を考慮した本市の全体的な税収の変動について言及されていない。さらに、定住人口や昼間流入人口の増加による地方交付税への影響も考慮されていないといわざるをえない。

カ よって、不均一課税が財政的には市民にとって不利益となるという請求人の主張は、企業立地により広範に及ぶ経済的及び財政的影響全体を考慮せず、税効果の一部分のみを取り上げたに過ぎず、不均一課税の違法性又は不当性を根拠付けるものとはいえない。
 よって、請求人の理由【3】には理由がない。

(4) 不均一課税と市民全体の利益との因果関係、大企業に対する営業利益の補充であることについて(理由【4】)

ア 請求人は、市税の減免を受けるのは、営利を目的とする私企業であり、私企業が立地することによって、税収や雇用等への波及効果が仮に一定程度あったとしても、堺市民全体に利益がおよぶものではないし、シャープという大企業の営業利益を補充してやることにほかならないと主張しており、この点について検討する。

イ 企業誘致をはじめ、融資や販路開拓なども含めた産業振興施策は、企業を支援することによって、地域経済を振興し、地域の活性化を図るものである。国においても「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律」を制定し、地域による主体的かつ計画的な企業立地促進等の取り組みを支援し、地域経済の自律的発展の基盤の強化を図ることとしている。経済波及効果や雇用促進の観点から、企業誘致は全国の地方公共団体においても喫緊かつ重要な産業政策として位置付けられ、企業に対する優遇措置が制度化されているものである。

ウ 3の(3)で述べたとおり、本件企業立地によって市内企業への発注拡大、雇用促進などの市民生活への利益が既に実現しており、また、将来にわたる税収の増加等を通じて、各種施策を行うことにより、市民全体への利益をもたらすことは合理的に見込まれる。

エ よって、不均一課税が市民全体の利益にならず大企業の営業利益の補充にほかならないとする請求人の理由【4】には理由がない。

(5) 大企業と中小零細企業との間の公平性・平等性について(理由【5】)

ア 請求人は、企業立地条例は、軽減率や軽減期間が大企業ほど有利に作られており、大企業と中小零細企業との間に、公平性、平等性を欠いていると主張しており、この点について検討する。

イ 企業立地条例では、中小零細企業の投資を誘導するために、中小企業に対しては、1億円以上の投資の場合に不均一課税措置が適用される制度(投資額が1億円以上のときは5年間2分の1が軽減されている)を設けており、投資機会を保障することで大企業と中小企業との間での実質的公平性が確保されているということができる。
 実際に、これまで企業立地計画の認定は40件あるが、うち9件が中小企業の認定となっている。

ウ 投資額の多寡によって軽減率、期間を区分することについては、大規模投資であるほど雇用や経済波及効果など地域経済への貢献が大きいと考えられることから、合理性があると認められる。

エ よって、大企業と中小零細企業の間に、公平性、平等性を欠いているとする請求人の理由【5】には理由がない。

(6) 財政的相当性、緊急性及び重要性について(理由【6】)

ア 請求人は、巨額の市税の長期にわたる減免は、堺市の財政規模、状況に照らして相当性を欠き、緊急性や重要性もないと主張しており、この点について検討する。

イ 企業立地条例の適用により不均一課税の開始から最長10年間は、本来の税収が得られないが、不均一課税は臨時的な措置であり、その間及び不均一課税の期間後に雇用拡大や経済波及効果が長期的に見込まれ、本市の財政基盤の強化、及び市税収入の増加が図られ、各種施策として市民に還元されることによって市民全体の利益及び福祉の向上に資することが合理的に見込まれる。
 このことから、財政的に相当性を欠いているとする理由はないと考えられる。
 また、緊急性及び重要性についても、上記2の(3)アで述べたとおり、本市において、市民の福祉向上のために財政基盤の強化を図ることに努めなければならないことや長期にわたる広大な低・未利用地の問題等の諸事情が背景にあり、否定されるものではない。

ウ よって、市税の減免は、堺市の財政規模、状況に照らして相当性を欠き、緊急の必要性もなく、重要性もないという請求人の理由【6】には理由がない。

(7) まとめ

 したがって、本件立地企業に対する不均一課税の違法性・不当性にかかる請求人の理由【1】ないし【6】はすべて理由がないと判断する。

4 結論

 以上のとおり、市税の減免等(不均一課税)が違法・不当であるとの請求人の主張には理由がなく、この主張に基づく措置の請求についても理由がないものと判断する。

 以上

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電話:072-228-7899 ファックス:072-222-0333
〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館19階

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