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平成18年11月17日 堺市監査委員公表 第34号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第34号

地方自治法第242条第1項の規定に基づき平成18年9月28日に監査委員に提出された住民監査請求について、監査委員の合議によりその結果を次のとおり決定したので、同条第4項の規定に基づき公表する。

平成18年11月27日

堺市監査委員 西 惠司
堺市監査委員 星原 卓次
堺市監査委員 木戸 唯博
堺市監査委員 西林 里子

住民監査請求に係る監査結果

平成18年9月28日請求

<南区における国民健康保険料の徴収懈怠について>

目次

堺市監査委員公表第34号

第1 監査の請求

1 請求人

1人(氏名は省略)

2 監査請求書の提出

平成18年9月28日

3 請求の趣旨

(1) 国民健康保険の短期被保険者証交付状況

 別紙事実証明書の「短期被保険者証交付状況(平成18年5月末現在)」は、堺市南区管内の国保短期被保険者証交付世帯のうち、国保記号番号順に抽出した100世帯の保険料滞納額、保険料額、収納額、不納欠損額、納付誓約内容について、請求者の要請により堺市南区保険年金課が一覧表にまとめたものである。
 これによると、100世帯とも長期間にわたって保険料を滞納していることが分かる。徴収の公平性を確保するため、このような世帯には、堺市が厳しく対応することが求められている。

(2) 徴収を怠る事実

 100世帯のうち、少なくとも12世帯(一覧表番号の8、18、42、44、58、61、65、68、70、73、92、98)については、堺市が滞納保険料の徴収を怠っていることが明らかである。
 12世帯は、保険料が年間20万円以上(平成16、17年度とも)の中から高所得世帯であり2年以上にわたって滞納し滞納額を膨らませる一方であるにもかかわらず堺市は納付誓約書も取らずに<4>平成17年度に滞納額の一部を欠損(帳消し)にした世帯である。納付誓約とは、今後の保険料を完納するのを前提に、それまでの滞納保険料について、毎月分納して滞納額を減らしていくという約束であり、滞納保険料徴収の時効を中断する効力を持つものである。しかるに堺市は、所得が十分ありながら滞納額を膨らませる12世帯に対して、時効中断の措置をとらずに欠損を出している。これは、明らかに徴収を怠った結果であり、地方自治法第242条第1項の「公金の賦課、若しくは徴収を怠る事実があるとき」に該当し、違法である。
 なお、国民健康保険法は、特別の事情(災害、病気、廃業など)がないのに1年を超えて滞納している世帯に対して、保険証を返還させることを、市町村に義務付けている。12世帯は、特別の事情があるかどうか、堺市が交渉記録を非公開にしているので分からないが、もし特別の事情がないならば、保険証(短期証)交付は国保法違反である。国保法に違反した保険証乱発は、滞納を助長・容認するものであり、徴収を怠っていることに他ならない。12世帯が特別の事情がないとすれば、上記「徴収を怠る事実」が、より一層はなはだしいものとなる。

(3) 堺市の損害、市長の責任

 損害額は、明らかに徴収を怠って出した12世帯の欠損金(平成17年度処理分)394万6728円である。
 堺市長は、堺市国民健康保険事業が公平・適正に運営されるよう指揮監督し、保険料を賦課徴収する権限と責任がある。にもかかわらず、公平・適正な徴収を怠って欠損金を出したのは、不作為の違法行為であり、上記損害額を賠償する責任がある。

(4) 措置請求事項

 木原敬介市長に対して、違法に徴収を怠って出した損害金394万6728円を堺市(国保会計)に支払うよう、監査委員の勧告を求める。
 さらに、100世帯(少なくとも12世帯)について、滞納の特別の事情があるかどうかを、監査委員の権限において調査し、特別の事情があるならば、具体的にどんな事情かを明らかにするよう求める。特別の事情がないならば、国保法に基づいて保険証を返還させるよう、市長に勧告することを求める。

(原文のとおり)

事実証明書(掲載を省略)
 短期被保険者証交付状況(平成18年5月末現在)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求の要件を審査した結果、地方自治法第242条第1項に規定する要件を具備していると認められたので、平成18年10月5日にこれを受理した。

2 請求人の証拠の提出及び陳述

 請求人から、地方自治法第242条第6項に規定する証拠の提出及び陳述を行わない旨の申出書が平成18年10月11日付けで提出され、同日これを収受した。

3 監査対象部局

 南区役所(保険年金課)
 健康福祉局(保険年金管理課)

4 監査対象部局からの事情聴取等

 本件について、市長に対して請求に係る意見書の提出を求めるとともに、平成18年10月30日、監査対象部局の職員から、本件請求に関する意見等について事情を聴取した。その概要は次のとおりである。

(1)事情を聴取した者

 (南区役所)南区長、総務部長、保険年金課長ほか
 (健康福祉局)健康福祉局長、保険年金担当部長、副理事兼保険年金管理課長ほか

(2)本件に関する意見等

ア 納付誓約をとっていないため、違法に徴収を怠ったという主張について
 本市では、滞納保険料を一括支払いできない場合は、納付交渉において分納計画に基づき納付するよう指導しており、分納誓約書の提出を求めている。
 ただし、世帯によって毎月分の保険料の納付さえままならないときは、分納計画の実効性などを斟酌し、徴収猶予申請に基づき保険料を徴収猶予するなどして、結果として分納誓約書の提出に至らない場合もある。
 また、分納誓約書は、本人の意思に基づき差し出されるものであり、実態のない分納計画を市が策定し、分納誓約書への署名を強要する等しても実効的な滞納保険料の解消にならず、さらに毎月分の保険料の支払いを滞らせることにもつながりかねない。
 以上のように、納付交渉により、滞納保険料の実効的な回収と、これ以上滞納させないという指導の実施により保険料の収納確保に努めており、納付誓約を得ていないというところだけをみて違法に徴収を怠っているという請求人の主張は根拠を欠くものである。
イ 国民健康保険料の収納確保に対する取り組み等について
 次のとおり徴収体制を整備し、収納確保への取り組みを実施している。
 <1> 窓口における納付相談及び納付指導
 <2> 被保険者資格証明書及び短期被保険者証の活用による滞納者との接触機会の確保
 <3> 夜間・休日訪問徴収の実施及び納付相談窓口の開設
 <4> 催告書の送付による納付勧奨
 <5> 保険料の口座振込の勧奨
 <6> 滞納処分の実施
 <7> 滞納保険料徴収専門の短期臨時職員の雇用(平成11年度から。平成17年度以降非常勤職員に変更。)
 <8> 各区役所(支所)への収納対策担当職員の配置(平成12年度から)
 <9> 国保特別滞納対策室の設置(平成15年度から)
ウ 100世帯に対する短期被保険者証の交付について
 事実証明書に記載の100世帯に対する短期被保険者証については、政令に定める特別の事情を個々に判断し、特別の事情があると認めたもの、滞納額の著しい減少があったものなどについて交付しており、国民健康保険法に合致したものである
エ 不納欠損処理の一部事務錯誤について
 請求人が違法に徴収を怠ったと主張する12世帯について調査した結果、徴収猶予申請及び分納誓約書の提出による時効中断について、認識不足や組織としてのチェック機能の不十分があったため、時効消滅していない保険料の滞納債権を不納欠損処理していたことが判明した。
 以上のうち、平成18年3月31日に時効消滅した1世帯の滞納債権を除く11世帯分の滞納債権については、再調定を行い徴収努力を継続することとした

第3 監査の結果

1 本件の監査対象事項

 本件において、請求人は、事実証明書として請求書に添付されている短期被保険者証交付状況(平成18年5月末現在)に記載の100世帯のうち、12世帯(一覧表番号の8、18、42、44、58、61、65、68、70、73、92、98)については、堺市が違法に滞納保険料の徴収を怠っているとし、このような怠る事実から、12世帯の欠損金(平成17年度処理分)の合計394万6,728円について堺市に損害が発生したと主張する。
 以上から、本件12世帯に関する平成17年度に不納欠損処理した滞納の国民健康保険料(以下「保険料」という。)について、違法に徴収を怠る事実があるかどうかを、本件の監査対象事項とした。

2 違法に滞納保険料の徴収を怠る事実について

ア 本件12世帯について、事実証明書、電算システムのオンライン画面、徴収猶予申請書や分納誓約書を調査したところ、請求人が違法に徴収を怠る事実があったと主張する滞納保険料は、平成13年度及び平成14年度の保険料であった。その総額は394万6,728円で、請求人が主張する額と一致していた。
イ 保険料の徴収に関する法令については、次のとおりであった。
 <1>国民健康保険事業の保険者である市町村は、世帯主から保険料を徴収しなければならない(国民健康保険法第76条)。
 <2>保険料を納期限までに納付しない者があるときは、所定の手続に従い督促しなければならない(地方自治法第231条の3第1項、堺市国民健康保険条例第18条)。
 <3>督促の際に指定した期限までに納付すべき金額を納付しないときは、当該保険料について、地方税の滞納処分の例により処分することができる(国民健康保険法第79条の2、地方自治法第231条の3第3項)。
 <4>保険料を徴収する権利は2年を経過したときは、時効によって消滅する。時効消滅について時効の援用は不要である(国民健康保険法第110条第1項、地方自治法第236条第2項)。
 <5>保険料の督促及び世帯主による債務承認等があれば、消滅時効は中断し、以後新たに時効の進行が開始する(国民健康保険法第110条第2項、地方自治法第236条第3項、民法第147条、第157条)。
ウ 以上のような規定から、どのような場合に、違法に滞納保険料の徴収を怠る事実となるかを検討する。
 保険料の徴収に関する規定は、保険料の徴収及び督促を市町村の義務としながら、滞納処分の実施については義務とはしていない。また、時効中断に関する規定は、どのような場合に時効が中断するかについて規定されたものであり、督促の場合を除き、中断措置の実施についても義務とはしていない。
 したがって、滞納保険料の徴収についてどのような取り組みを行うかについては、地方公共団体の債権管理の権限を有する市長(地方自治法第149条第6号、第237条第1項、第240条第1項)の裁量判断に委ねられていると解される。
 よって、違法に滞納保険料の徴収を怠る事実となるのは、市長が債権管理の権限を逸脱または濫用した場合であると考える。
エ そこで、上記12世帯の滞納保険料について、市長に債権管理の権限の逸脱、濫用があったかどうかを検討する。
 (ア) 11世帯(番号8、18、42、58、61、65、68、70、73、92、98)に対する滞納保険料は、平成17年度の不納欠損として処理されていたが、これらの滞納保険料については、滞納者の徴収猶予申請書を受けて滞納保険料が徴収猶予され(国民健康保険法第77条及び堺市国民健康保険条例第20条)、あるいは滞納保険料に関する分納誓約書が提出されていたことがわかった。
 以上の徴収猶予申請書及び分納誓約書の提出により、11世帯に対する滞納保険料はすべて時効が中断され、現時点においても時効消滅していない。
これらの滞納保険料については、現在、再調定のうえ徴収努力が行われており、債権管理の権限の逸脱、濫用があるとはいえない。
 (イ) 番号44の滞納保険料については、平成15年8月15日の徴収猶予申請書の提出により同日から平成16年3月31日まで徴収猶予が行われ、その日まで時効の進行が停止していた。
 しかし、当該滞納保険料については、平成17年6月に不納欠損処理についての事務処理誤りがあり、結果としてそれ以降の納付交渉が行われないままに、平成16年4月1日から新たに進行していた時効によって、平成18年3月31日に時効消滅してしまったものである。
 このような経緯からすると、番号44の滞納保険料を時効消滅させたことは、債権管理の権限を逸脱したといわざるを得ず、違法に滞納保険料の徴収を怠る事実に該当するものと考える。

3 違法に滞納保険料の徴収を怠る事実から発生した損害額について

ア 以上のとおり、違法に滞納保険料の徴収を怠る事実があったと判断される番号44の滞納保険料について、当該怠る事実から損害が発生したといえるかどうかについて検討する。
イ 番号44の滞納保険料の額は11万3,720円であるが、本件で本市に発生した損害額は、当該滞納保険料について納付の可能性がある額であり、その額は、滞納者の収入等の状況によっては滞納保険料の額を下回る場合があると考えられる。このような損害額の確定は困難であるが、一定の損害が発生している可能性は否定できないと考える。

4 損害賠償責任について

ア 請求人は、本市に発生した損害については、本市の国民健康保険事業が公平・適正に運営されるよう指揮監督し、保険料を徴収する権限と責任がある市長が賠償しなければならないと主張する。
イ 請求人の主張は、本市が市長に対して有する民法上の損害賠償請求権の履行を求める趣旨と解されるから、市長の職務遂行についての過失の有無を検討する必要がある。
ウ 市長は市の事務を管理しこれを執行する権限と責任を有し(地方自治法第148条)、市長はその補助機関たる職員を指揮監督する(地方自治法第154条)との規定からすると、市長は市の事務のすべてを自ら執行するものではなく、補助職員を指揮監督することによって執行する趣旨であると考えられる。よって、市長が損害賠償の責任を負う必要があるのは、指揮監督上の過失が認められる場合であると解される。
 したがって、本件における市長の過失の有無は、違法に滞納保険料の徴収を怠る事実が生じた原因について、これを防止するに足る指揮監督を行っていたかどうかによって判断されるべきである。
エ 番号44の滞納保険料を平成18年3月31日に時効消滅させた原因は、徴収猶予申請により消滅時効が中断すること、及び徴収猶予期間中は消滅時効の進行が停止することについて補助職員の認識が不足しており、その結果、当該滞納保険料を不納欠損と取り扱ったために、それ以降の納付交渉が行われなかったというものである。
 しかし、本市保険年金管理課は、不納欠損の事務処理手順についての通知を平成17年3月7日に、各支所保険年金課長あて送付しており、この通知によって不納欠損処理の方法については適切に指導していた。
 したがって、市長は、当該滞納保険料についての事務処理誤りを防止するに足る指揮監督を行っていたものと認められる。
オ 以上から、違法に番号44の滞納保険料の徴収を怠る事実について、市長に過失はないものと判断する。

5 結論

 以上のとおり検討すると、市長に損害賠償を求め、その旨の勧告を監査委員に請求する請求人の主張には、理由がないものと判断される。
 なお、請求人は、短期被保険者証が交付された100世帯(少なくとも12世帯)について、国民健康保険法に定める特別の事情の有無を明らかにすること等を主張しているが、調査の結果、すべての世帯について、国民健康保険法施行令第1条の4に定める事由を総合的に考慮して特別の事情があるものと判断されており、特別の事情なく交付されたものはなかった。

以上

監査結果に添える意見

 本件請求の監査において、時効消滅していない国民健康保険料の滞納債権について不納欠損とする事務処理が行われていたことが判明した。
 このような事務処理誤りの再発防止については、職員の研修を充実するとともに、電算システムの拡充など、事務処理誤りの未然防止に向けた事務の改善策が必要であると考える。
 また、本市の他の未収金についても、同様の誤りがないよう、適切な債権管理に努められたい。

以上

このページの作成担当

監査委員事務局
電話:072-228-7899 ファックス:072-222-0333
〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館19階

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