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平成17年6月22、24日 堺市監査委員公表 第28号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第28号

 地方自治法第242条第1項の規定に基づき平成17年4月25日に監査委員に提出のあった住民監査請求について、同条第4項の規定に基づきその結果を次のとおり公表する。

 平成17年6月22日

堺市監査委員 西 惠司
堺市監査委員 星原 卓次
堺市監査委員 西林 里子

 堺市監査委員公表第29号

 地方自治法第242条第4項の規定に基づき、平成17年6月22日に公表した住民監査請求の監査結果の記載を修正したので、次のとおり公表する。

 平成17年6月24日

堺市監査委員 西 惠司
堺市監査委員 星原 卓次
堺市監査委員 西林 里子

住民監査請求に係る監査結果

平成17年4月25日請求

<名誉顧問等の報酬の支出について>

(*この監査結果は、修正後の全文を掲載しています。)

目次

第1 監査の請求

1 請求人

32人(省略)

2 監査請求書の提出

平成17年4月25日

3 請求の趣旨

 住民監査請求書及び事実証明書に記載されている事項から、請求の趣旨を次のように理解した。

(1) 堺市長は、2005年2月1日の美原町との合併に伴い失職した高岡寛旧美原町長を名誉顧問として任用し、月額76万円の報酬を支給している。
 堺市議会議員その他の報酬等に関する条例(昭和31年条例第13号。以下「報酬等条例」という。)第6条第5項では、「(附属機関の委員等以外の)非常勤職員の報酬額は、任命権者が市長の承認を得て定める」こととなっている。
 一方、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第203条第5項は、非常勤職員の報酬等について、「額並びにその支給方法は、条例で定めなければならない」と規定し、同法第204条の2は、「地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、第203条第1項の職員(非常勤職員)…に支給することができない」と規定している。
 これらの規定の趣旨に照らしてみると、報酬等条例第6条第5項自体が違法であり、「任命権者が定める」報酬の支給は自治法第203条第5項及び第204条の2の規定に違反する違法な公金支出といわなければならない。
 さらに、名誉顧問の報酬額とその勤務条件・職務内容との相応性については、任命権者である市長が判断し、これを市長が承認しており、条例によらない報酬額の決定は、同様に、自治法第203条第5項及び第204条の2に違反する。
(2) 堺市事務分掌規則(昭和47年規則第14号。以下「事務分掌規則」という。)第3条第1項によれば、「市行政に係る特に重要な事項で高度の学識経験その他知識経験を要する専門的事項について意見を聴くため、顧問を置くことができる」とされているが、「名誉顧問」の職務規定は定められておらず、ポストなき職への報酬支給となっており、二重の誤りを犯している。
(3) 「旧美原町の国民健康保険料」の住民監査請求について、平成17年4月7日、堺市監査委員は、「(美原町長は、還付加算金相当額について)自治法第138条の2に違反した過失により美原町(堺市)に損害を生じさせたといわざるを得ない」とする監査結果を公表した。監査委員によって自治法違反に基づく返還勧告がなされた旧美原町長の堺市名誉顧問への任用は、極めて不適切であるといわなければならない。
(4) そもそも堺市は、非常勤職員について堺市非常勤職員報酬等支給要綱(平成12年制定。以下「非常勤報酬要綱」という。)及び元堺市職員等非常勤職員の勤務条件等に関する要綱(平成14年制定。以下「元職員等勤務条件要綱」といい、非常勤報酬要綱と合わせて「非常勤報酬要綱等」という。)において、報酬額、支給方法を規定しているが、これらの要綱に定められた報酬、割増報酬及び付加報酬の支給についても、自治法第203条第5項及び第204条の2に違反するものである。
(5) 自治法第204条の2に違反する給与その他の給付の支出は違法であり、その支給を行った職員は地方公共団体に損害を与えた場合、損害賠償の責に任じなければならないのみならず、支給を受けた職員も本来請求権のない者であるから、返還の義務があるものとされている(松本英昭著「逐条地方自治法」)。
 「嘱託職員に対する期末手当の支給」をめぐる損害賠償請求訴訟(住民訴訟)において、平成2年2月5日、京都地裁は、「報酬等の支給を定める条例は、それ自体で支給額を確定し得るものでなくてはならない(昭和50年10月2日 最高裁判決)から、それができない場合は、自治法第203条第5項、第204条第3項、第204条の2、地方公務員法第25条第1項の規定に違反し、無効である」旨の判決を行った。また、同判決は、市長が財務会計上の行為についての監督権の行使を怠り違法な支出をさせたものとして、その責任を明確に示した。
 「市議費用弁償の返還請求」をめぐる住民訴訟においても、平成14年11月18日、名古屋地裁は、「費用弁償の額の決定を市長に一任し、その支給方法について何ら触れるところがない条例は、支給金額等を確定し得るものとは到底いえず、明らかに自治法第203条第5項の趣旨に反し、無効というほかはない。また、予算の議決をもって、同条同項の給付についての条例決定主義の趣旨を確保することはできない」などの判断を行っている。
(6) 以上により、請求人は監査委員に対して厳正な監査のうえ、市長に次の勧告を行うことなどの必要な措置を求める。

 ア 名誉顧問に支給した報酬(2005年2月、3月分)の返還を行うこと。
 イ 名誉顧問職の解職など必要な措置をとり、今後の報酬の支出を差し止めること。
 ウ 報酬等条例第6条第5項を削除すること。
 エ 非常勤報酬要綱等に基づき支出した報酬、割増報酬及び付加報酬について、非常勤職員に支給した過去1年分の返還を行うとともに、同要綱等を条例化すること。

事実証明書

  1. 2004年12月30日付け読売新聞
  2. 報酬等条例の抜粋
  3. 自治法第203条第1項、第5項及び第204条の2の条文
  4. 非常勤報酬要綱
  5. 元職員等勤務条件要綱
  6. 2004年9月3日付け読売新聞、2005年2月1日付け朝日新聞、2005年2月10日付け読売新聞
  7. 2005年4月7日付け堺市監査委員公表(住民監査請求監査結果)
  8. 京都地方裁判所 平成2年2月5日判決(昭和60年(行ウ)第3号事件)の抜粋
  9. 名古屋地方裁判所 平成14年11月18日判決(平成14年(行ウ)第24号事件)の抜粋

(いずれも掲載を省略。)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件は、名誉顧問を含む非常勤職員に対して違法又は不当な報酬の支出が行われているので、当該行為によって堺市のこうむった損害を補填するなどの措置を求める請求であると解し、自治法第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成17年5月9日にこれを受理した。

2 監査を行った監査委員

 平成17年5月9日から同年5月30日までは、吉川敏文、辻宏雄、西林里子が監査を行った。平成17年5月31日から同年6月22日までは、西惠司、星原卓次、西林里子が監査を行い、合議により監査の結果を決定した。
 なお、曽我部篤爾は、代表監査委員として監査委員事務局の非常勤職員を任免する権限を有し現に任命していることから、本件請求が自己の従事する業務に直接の利害関係のある事件にあたるので、自治法第199条の2の規定により除斥となっている。

3 監査対象事項

 住民監査請求書に記載された事項等を勘案して、監査対象を次のとおりとした。
 名誉顧問を含む非常勤報酬要綱等が適用される非常勤職員に支給する報酬は、自治法第203条第5項及び第204条の2の趣旨に反する違法又は不当な支出であるか。違法又は不当な支出である場合、市に損害が生じているか。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

 自治法第242条第6項の規定に基づき、平成17年5月20日、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を設けた。
 請求人13人が出席し、住民監査請求書の記載事項の補足として、大要以下の陳述が行われた。なお、請求人の陳述の際、関係局職員の立ち会いはなかった。
(1) 本件監査請求は、非常勤職員の報酬について、支払う根拠となる条例の規定がなく、自治法に定められた給与条例主義に反しているという極めてシンプルなものである。条例を改正することによってこの違法状態が解消されたとしても、なお治癒されない部分は残ることになる。
(2) 旧美原町長は、国民健康保険料等の不適切な不納欠損処理を行ったことなどについて責任があるので、名誉顧問に就くこと自体がおかしい。今回の監査では、特に名誉顧問の報酬額76万円がどのようにして決まったのか明らかにしてもらいたい。
(3) 名誉顧問の報酬に加え、専属の秘書と運転手の給与が税金から余分に出費されている。名誉顧問の3日間の行動を確認したがほとんど同じパターンで、本庁での仕事は余りないように見受けられる。このような役職が必要か疑問に感じる。
(4) 顧問を置く自治体は、大阪府下で2市、中核市で4市、政令指定都市で8市あるが、その報酬はおおよそ月額10万円から41万円までであり、本市の名誉顧問の報酬額は異例の高さである。
 新聞報道によると、西宮市と姫路市で特殊勤務手当を条例に規定せず規則によって支給していたことが分かり、総務省は「不適切、自治法の給与条例主義の趣旨に反する」とコメントしている。監査請求書に記載した事項やこのコメントからすれば、市長専決や要綱等による本市の名誉顧問を含む非常勤職員の報酬の支出は違法であるといわざるを得ない。

5 監査対象部局

 本市における非常勤職員の任命権者は、市長、上下水道事業管理者、教育委員会、農業委員会、代表監査委員、選挙管理委員会、公平委員会、議長である。任命権者の下で、非常勤職員の任命、報酬に関する事務を行っている総務局、上下水道局、教育委員会事務局、農業委員会事務局、監査委員事務局、選挙管理委員会事務局、公平委員会事務局、議会事務局を監査対象部局とした。

第3 監査対象部局の説明

 本件について、各任命権者に対して請求に係る意見書等の提出を求めた。また、主な関係局の職員から事情を聴取した。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

平成17年5月20日に関係局職員から事情を聴取した。その者は次のとおりである。
 総務局長、人事部長、人事部理事、人事担当課長、人事部参事
 教育委員会事務局総務部総務課長
 上下水道局総務部総務課長 ほか 計14人
なお、この事情の聴取に際し、請求人10人が立ち会った。

2 説明の概要について

(1) 総務局が代表して説明することについて

 本件は、人事制度及び給与制度に関して総合調整を行い、報酬等条例に係る事項を所管する総務局が監査対象部局を代表して説明する。

(2) 顧問、非常勤職員の任用、報酬について

ア 顧問の任用について
 本市における「顧問」の職については、事務分掌規則第3条第1項を設置根拠とし、地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「地公法」という。)第3条第3項第3号に規定する非常勤特別職の顧問として任用している。
イ 非常勤職員の報酬について
 本市の非常勤職員(地公法第3条第3項第3号に規定する非常勤特別職をいう。)の報酬は、別に条例に定めのあるものを除き、報酬等条例を根拠に支給しているが、非常勤職員のうち堺市議会議員、委員会の委員又は委員(以下「議員等」という。)及び附属機関の委員等(以下「委員等」という。)については、同条例の別表第1及び別表第2に月額、日額等の別及び報酬額が規定されており、当該規定に基づき支給している。
 一方、これら議員等及び委員等以外の非常勤職員(以下「非常勤職員」という。)の報酬については、報酬等条例第6条第5項において「委員等以外の非常勤の職員の報酬及び費用弁償の額は、任命権者が市長の承認を得て定める」と規定し、報酬の額の決定については任命権者に委任している。
 この報酬等条例第6条第5項の規定及び第11条の委任規定に基づく細則として、非常勤報酬要綱等などをもって報酬に関するルールを定めたうえで運用している。
 また、その職が臨時又は特別なものであったり、職務の特殊性から上記各要綱の規定によることが適当でないものについては、その都度任命権者が市長の承認を得て報酬の額を決定している。

(3) 住民監査請求に対する意見

ア 高岡寛氏の名誉顧問への任用について
 美原町との合併後の新市建設計画の実施をはじめとする新堺市のまちづくりについて、市長が政策決定を行うにあたり、各分野にわたる意見を聴くため顧問を設置したものである。顧問職にはその経験や見識からアドバイスできる人物が適任であるとの判断から、長年美原町長として住民福祉の向上に尽力された実績を考慮し、高岡寛氏を任用したものである。
 名誉顧問は、事務分掌規則第3条第1項に根拠を有する顧問であり、高岡氏は、長年美原町長の要職を務められてきたこと及びその職の重要な役割を考慮して事実上「名誉」を冠し呼称しているものである。
 また、請求人は、高岡氏が自治法第138条の2に違反したとして過失責任を問われた住民監査請求の結果を基に、名誉顧問職の解職など必要な措置をとることを求めている。しかし、名誉顧問の職務は、事務の管理、執行を要するものではなく、その経験・見識をもって、新堺市のまちづくりについて各分野にわたり助言を行うものであり、町長当時とは職責を異にするもので、合併直後の市政運営に不可欠な人材であることを考慮すれば、その任用は妥当であると考える。
イ 非常勤職員の報酬決定方法及び支出の適法性について
 (ア) 本市においては、限りある財政資源を有効活用し、直面する行政課題に対処していくため、必要に応じて非常勤職員の任用を行ってきたが、非常勤職員は知識・経験、資格等を必要とする職であり、その職種、勤務時間等の勤務形態は極めて多様なものとなっている。また、その時々の状況に対応して機動的に任用を行う必要があることから、報酬について、あらかじめすべてを条例に規定することは立法技術的に非常に困難なことと考えられる。こういった事情を反映し、都道府県、政令指定都市及び中核市では、個々具体にすべての非常勤職員の報酬額を条例に定めているところは見当たらず、条例中に明文の規定を設けて市長等に委任するものとなっている。これは、このような委任の方式が行政を執行するうえで一定の合理性を有していることを示すものと考える。
 (イ) また、請求人は、報酬等条例第6条第5項の包括的な委任規定自体が自治法第203条第5項の「報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」との規定に違反する旨述べているが、本条項は、条例自体に具体の金額を定めるべきことについて一切の例外を許さないものではなく、必要な範囲で概括的な規定を置くことも許されると考えている。
 このことは、「市町村例規準則集」(第一法規出版)に登載されている「特別職の職員の給与に関する条例〔市の事例〕」の別表の備考に「この表に掲げた以外の特別職の職員の報酬は、別に市長が定める額とする」と規定されていることや、本市と同様の委任規定を置く自治体が少なからず見受けられることからも明らかである。
 (ウ) 本市においても、非常勤職員の報酬額の決定にあたっては、報酬等条例第6条第5項に包括的な委任規定を置くとともに、この規定に基づき、非常勤報酬要綱などの基準を整備し、妥当性及び透明性の確保を図りながら適正な運用に努めてきた。これらの要綱は、昭和47年に非常勤職員が制度化されて以来、「非常勤職員の報酬等取扱要項」、「非常勤職員報酬額算出基準」等として整備してきたもので、平成12年度から現在の要綱として制度化したものである。これらの基準、要綱等を改正する際にも、常勤職員との均衡も考慮しつつ、より合理的な制度の確立に努めてきたところである。
 (エ) また、これらの要綱によることができない特殊な場合の報酬額を決定する際にも、報酬等条例別表に規定する報酬額や関係法令を準用するなど、恣意的要素を排除し、その額の社会的相当性を確保することに最大限の配慮を払ってきたところである。
 (オ) 自治法第204条の2において、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」と規定しているが、本市においては、議会議員を含めたすべての非常勤職員の報酬は、同法第203条第5項の規定を受けた報酬等条例に基づき支給しており、同法の規定の趣旨に合致したものとなっている。
 (カ) 請求人は、高岡名誉顧問に対する報酬の支出は条例上の根拠を欠くと述べているが、同氏に対する報酬は自治法第203条第5項の規定を受けた報酬等条例第6条第5項の規定に基づき、その額については、同条例別表に規定する報酬額との均衡や国家公務員の一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「一般職給与法」という。)の規定を準用するなど、社会的相当性を逸しない範囲で市長決裁により適法に決定し支出したものであり、かつ、勤務の対価として支出したものであることから、何ら条例上の根拠を欠くところはないと考える。
 (キ) また、非常勤報酬要綱等に基づいて支出した非常勤職員への報酬の返還請求についても、これらの要綱に基づく報酬は、自治法第203条第5項の規定を受けた報酬等条例第6条第5項の規定に基づき市長が適法に定め、支出したものであり、かつ、これら要綱の適用を受ける非常勤職員の勤務の対価として支出したものであることから、適法かつ妥当な支出であると考える。
ウ 報酬等条例第6条第5項の規定の見直しについて
 以上のとおり、報酬等条例第6条第5項の規定は、違法ではないと考えるが、その条文を受けての各要綱に基づくものや市長決裁によるものなど制度運用も複雑化していることも事実であることから、非常勤職員の報酬の額及び支給方法をより明確にするため、条例の整備を行う考えである。

3 市長以外の任命権者の意見書等(要旨)

(1) 上下水道事業管理者

ア 地方公営企業法(昭和27年法律第292号。以下「公営企業法」という。)は、自治法及び地公法の特別法であるため、地方公営企業の職員(以下「企業職員」という。)については、公営企業法第38条の規定が自治法第203条及び第204条の規定よりも優先して適用される。
 企業職員の給与については、公営企業法第38条第4項に「企業職員の給与の種類及び基準は、条例で定める」と規定しており、この企業職員には非常勤職員も含まれるため、企業職員たる非常勤職員の給与(報酬)の種類及び基準は条例で定める必要があるが、報酬の額及び支給方法は条例で定める必要がなく、上下水道事業管理者(以下「管理者」という。)の権限で定めることができる。
イ 本市上下水道局(以下、この「(1)上下水道事業管理者」の項内において「本局」という。)の非常勤職員の報酬の種類及び基準については、報酬等条例第6条第5項に規定され、報酬の額及び支給方法については、管理者が市長の承認を得て、堺市上下水道局非常勤職員の任用及び勤務条件等に関する要綱(平成14年制定。以下「上下水道局非常勤要綱」という。)を制定し、「市長事務部局の非常勤職員の例による」規定に基づき、非常勤報酬要綱等を準用している。
 なお、市長事務部局との均衡を失しないものとするため、その職が特別なもので、職務の特殊性から上記要綱の規定によることが適当でない場合には、その都度、管理者が市長の承認を得て報酬の額を決定している。
ウ 自治法第204条の2において、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」と規定しているが、本局における非常勤職員の報酬は、公営企業法第38条第4項の規定を受けた報酬等条例に基づき支給しており、同法の規定の趣旨に合致したものとなっている。
 また、非常勤報酬要綱等に基づいて支出した本局の非常勤職員への報酬の返還請求については、これらの要綱に基づく報酬は、公営企業法第38条第4項の規定を受けた報酬等条例に基づき、管理者が上下水道局非常勤要綱を適法に定めたうえで、非常勤報酬要綱等を準用し支出したものであり、かつ、これらの要綱の適用を受ける非常勤職員の勤務の対価として支出したものであることから、適法かつ妥当な支出であると考える。
エ 以上のことから、報酬等条例第6条第5項の規定は違法ではないと考えるが、本局においては、常時勤務を要する者の給与の種類及び基準を堺市公営企業職員の給与の種類及び基準を定める条例(昭和31年条例第20号。以下「企業職員給与条例」という。)で規定していることや企業職員の給与の種類及び基準に関する条例準則(昭和41年8月25日付け自治企一第4号)を考慮すると、非常勤職員の報酬の種類及び基準についても企業職員給与条例で規定することがより的確であるため、同条例の整備を行う予定である。

(2) 教育委員会

 教育委員会において、任用する非常勤職員の任免、給与等に関する事項及び事務執行については、任命権者の間で均衡を失することのないよう一体的に取り扱うため、堺市教育委員会非常勤職員の身分取扱い及び事務執行に関する要綱(平成12年制定。以下「教委非常勤要綱」という。)により、市長事務部局の非常勤職員の例によるものとしている。
 また、非常勤職員の報酬及び費用弁償の額については、教育委員会において独自に定めるのではなく、報酬等条例第6条第5項に基づき、市長の承認を得て決定している。
 したがって、非常勤職員の報酬等の支出については、適正に事務を執行しているものと考える。

(3) 農業委員会

 非常勤職員の報酬等については、本市に任用される非常勤職員との均衡を失することのないように、農業委員会事務局として独自に定めるのではなく、堺市農業委員会に関する規程(昭和38年農業委員会規則第1号)第5条の規定により市長事務部局の要綱を準用し、報酬等条例第6条第5項に基づき任命権者として市長の承認を得て決定している。
 よって、本件非常勤職員の報酬等については、報酬等条例第6条第5項の規定に基づき決定したものであり、非常勤報酬要綱等に準じた報酬等の支出については適正なものと考える。

(4) 代表監査委員

 非常勤職員の報酬等については、本市に任用される非常勤職員との均衡を失することのないように、監査委員事務局として独自に定めるのではなく、堺市監査委員及び監査委員事務局に関する規程(平成7年監査委員規程第1号)第21条の規定により市長事務部局の要綱を準用し、報酬等条例第6条第5項に基づき任命権者として市長の承認を得て決定している。

(5) 選挙管理委員会、公平委員会、議長

 平成16年4月から平成17年4月までの間に、非常勤報酬要綱等の対象となる非常勤職員は任用していない旨の通知があった。

第4 監査の結果

1 本件に係る事実

 関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 名誉顧問の任用等について

 任用にあたって、平成17年1月24日に、委嘱期間(平成17年2月1日から平成19年3月31日まで)、勤務形態(随時(週5日程度))、職務内容(新市のまちづくりの方向性を決めるにあたり、各分野についての助言)及び報酬額(基本報酬は月額76万円とし、増額報酬・付加報酬は支給しない。)等を決定するための決裁を市長が行っている。
 平成17年2月1日に市長から高岡寛・旧美原町長に辞令書が交付されている。
 報酬は、毎月20日(平成17年2月、3月は当該日が日曜日であったので各月の18日)に支給している(元職員等勤務条件要綱第8条)。

(2) 非常勤職員の任用について

ア 本市の非常勤職員の任命権者は、市長(自治法第172条第2項)、上下水道事業管理者(公営企業法第15条第1項)、教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第19条第7項など)、農業委員会(農業委員会等に関する法律(昭和26年法律第88号)第20条第3項)、代表監査委員(自治法第200条第5項)、選挙管理委員会(自治法第193条)、公平委員会(地公法第12条第7項)、議長(自治法第138条第5項)である。
イ 地方公共団体は非常勤職員に対して報酬を支給しなければならない(自治法第203条第1項)。また、報酬は、議員を除き、その勤務日数に応じて支給するものであるが、条例で特別の定めをした場合はこの限りでない(同条第2項)。報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない(同条第5項)と規定されている。
 報酬等条例では第6条第5項において「委員等以外の非常勤の職員の報酬及び費用弁償の額は、任命権者が市長の承認を得て定める」と規定している。そして、同条及び第11条の「必要事項について市長へ委任する規定」に基づき、非常勤報酬要綱等において、各職種について報酬額又はその算出方法を定めている。
ウ 各任命権者(上下水道事業管理者を除く。)における非常勤職員の任用、報酬等に関する規程などは次のようになっている。
 教育委員会は、教委非常勤要綱を制定し、法令等に定めるものを除き市長事務部局の非常勤職員の例によると規定している。また、平成12年4月1日に、教育委員会の任用する非常勤職員の報酬及び費用弁償の額は、市長事務部局において任用する非常勤職員の例によることについて一括して市長の承認を得ている。
 農業委員会、代表監査委員、選挙管理委員会、公平委員会及び議長は、各委員会、議会等が制定する規程等で、事務局職員の給与等について、法令等に定めがあるものを除くほか、市長事務部局の例による旨の規定を設けている。
 なお、非常勤報酬要綱等の規定によることが適当でない場合は、いずれの任命権者も任用の都度、市長の承認を得て報酬額を決定することとしている。
エ 堺市の水道事業は公営企業法第2条第1項第1号の規定により、また、下水道事業は同条第3項並びに堺市水道事業及び下水道事業の設置等に関する条例(昭和41年条例第33号)第2条に基づき、公営企業法の規定の全部を適用している。したがって、非常勤職員の任命権者は上下水道事業管理者である(公営企業法第15条第1項)。
 公営企業法は、自治法、地方財政法(昭和23年法律第109号)、地公法に対する特例を定めたものであり(第6条)、公営企業法の規定が優先して適用されるが、本法に規定のない事項については、これらの法律が適用される。
 公営企業法では、企業職員の給与(非常勤職員の報酬を含む。)は給料及び手当であり(第38条第1項)、その種類及び基準は条例で定めるとされている(同条第4項)。本市上下水道局における非常勤職員の報酬の種類及び基準は報酬等条例第6条第5項に規定され、また、その額及び支給方法は、上下水道局非常勤要綱において法令等に定めがあるものを除くほか、市長事務部局の非常勤職員の例によることが規定されている。
オ 基本報酬、増額報酬(時間外勤務等に対する報酬分)及び付加報酬は毎月20日(当該日が土曜日、日曜日、国民の祝日にあたる場合を除く。)に支給し、増額報酬(期末・勤勉手当相当の報酬分)は6月及び12月に支給している(非常勤報酬要綱第4条第1項第1号及び第14条、元職員等勤務条件要綱第6条第1項、第7条及び第8条)。

(3) 報酬の支出額

 任命権者別の非常勤職員の報酬の支出額は次表のとおりである。

非常勤報酬要綱の適用による非常勤職員の報酬の支出額
_____________________ 平成16年度
(4月から3月)
平成17年度
(4月)
人数 支出額 人数 支出額
市長 448人 1,168,241,657円 462人 81,771,718円
教育委員会 72人 166,432,020円 71人 11,640,593円
上下水道事業管理者、
農業委員会、代表監査委員、
選挙管理委員会、
公平委員会、議長
元職員等勤務条件要綱の適用による非常勤職員の報酬の支出額
_____________________ 平成16年度
(4月から3月)
平成17年度
(4月)
人数 支出額 人数 支出額
市長 183人 451,786,008円 182人 33,638,081円
上下水道事業管理者 16人 37,131,818円 11人 2,006,219円
教育委員会 27人 73,322,401円 27人 5,416,355円
農業委員会 1人 (*)円 1人 (*)円
代表監査委員 2人 5,912,210円 2人 419,410円
選挙管理委員会、
公平委員会、議長

(* 農業委員会の1人の報酬額については、当該職員の個人に関する情報であると認められるので記載を省略した。)

(4) 非常勤報酬要綱について

 本件要綱は、報酬等条例第6条第5項の規定に基づき、堺市非常勤職員の任用及び勤務条件等に関する要綱(平成12年制定。以下「非常勤任用要綱」という。)第2条に規定する非常勤職員の報酬及び費用弁償について必要な事項を定めたもの(第1条)であり、平成12年4月1日から施行された。なお、非常勤任用要綱第2条に規定する非常勤職員とは、地公法第3条第3項第3号に規定する特別職の職員(本市の常勤職員であった者等で定年若しくは特別退職して任用される非常勤職員等を除く。)として任用した者で、1週間の勤務時間が堺市職員定数条例(昭和29年条例第3号)第1条の職員のおおむね4分の3未満のものをいう。
 要綱の主な規定は次のとおりである。
 非常勤職員に支給できる報酬の種類は、基本報酬、付加報酬及び増額報酬である(第2条)。
 基本報酬は、別表第1に定める報酬額に別表第2に掲げる経験加算率を乗じて得た額(基礎報酬額)に週勤務時間を乗じ、その額に52を乗じたものを12で除して得た額(当該額に100円未満の端数があるときは、当該端数を切り上げる)を支給する(第3条第1項、第2項)。
 なお、特に高度な専門知識若しくは技術を必要とする職又は勤務が特殊である職に就く者で、市長が特に認めたものの基本報酬については、別に定める(第3条第3項)。

別表第1
職種 報酬額
事務 1,220
技術・調理・介護員・要介護認定等調査員 1,320
准看護師・医療技術 1,410
保育士・児童指導員 1,470
相談員・看護師 1,530
保健師・助産師 1,710
薬剤師 1,770
上記以外の職種で市長が別に定める職種 2,000以内において市長が別に定める額

(単位:円/1時間)

別表第2
経験年数の区分 経験加算率
3年未満 100分の100
3年以上から6年未満 100分の103
6年以上から9年未満 100分の106
9年以上から12年未満 100分の109
12年以上から15年未満 100分の112
15年以上 100分の115

(備考 省略)

 また、増額報酬(期末・勤勉手当相当の報酬、時間外勤務・年末年始の勤務に対する報酬)の支給対象者、報酬額又は報酬額の算出方法、支給日に関する規定(第4条)、報酬の減額に関する規定(第6条)、付加報酬(通勤手当相当の報酬)の支給対象者、支給額等に関する規定(第7条から第13条まで)などがある。

(5) 元職員等勤務条件要綱について

 本件要綱は、本市の常勤職員(特別職、医師及び歯科医師を除く。)、府費負担教職員又は堺市高石市消防組合職員であった者で、定年又は特別退職(特例退職を含む。)により当該団体を退職したもの及び市長が別に定める者のうち、本市の非常勤職員として雇用する者の勤務条件等について必要な事項を定めたもの(第1条)であり、平成14年4月1日から施行された。
 要綱の主な規定は次のとおりである。
 基本報酬は、格付額(堺市職員の給与に関する条例(昭和29年条例第6号)別表第1の2に規定する再任用職員に係る4等級の給料月額に相当する額)に、その者の1週間当たりの正規の勤務時間を38時間45分で除して得た数を乗じて得た額(当該額に100円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り上げる。)を支給する(第5条第1項、第2項)。なお、特に高度な専門知識、技術等を必要とする職又は勤務が特殊である職に就く職員で、市長が特に認めたものに係る基本報酬については、別に市長が定める(第5条第3項)。
 また、増額報酬の支給対象者、支給額、支給方法等に関する規定(第6条)、付加報酬の支給対象者、支給額等に関する規定(第7条)などが設けられている。

(6) 堺市非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例等の議会提案について

ア 平成17年6月3日、平成17年第3回市議会(定例会)に「堺市非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例(以下「非常勤報酬等条例」という。)」が提案された。この条例案の主な内容は、次のとおりである。
 非常勤職員の報酬の額は別表(17ページに掲載)のとおりとする(第2条第1項)。
 報酬額が月額により定められている者のうち常勤職員とほぼ同様の勤務を行っているものとして規則で定めるものについては、常勤職員の給与の額との権衡を考慮して、報酬月額に規則で定める額を加算することができる(第2条第2項)。
 このほか、支給方法についての規定(第3条)などがある。
 なお、改正前の報酬等条例(非常勤報酬要綱等その他これらに類する規程を含む。)の規定に基づいて、この条例の施行の日の前日までに支給された報酬及び費用弁償は、この条例及びこれに基づく規則の規定に基づき支給された報酬及び費用弁償とみなす経過措置規定がある(附則第2項)。
 報酬等条例第6条が削除されている(附則第3項)。
イ また、「堺市公営企業職員の給与の種類及び基準を定める条例の一部を改正する条例」も提案された。その主な内容は、非常勤職員については、第2条第1項に規定する常時勤務を要する職員に係る給与との権衡を考慮し、予算の範囲内において管理者が別に定める給与を支給する旨の規定を追加したものである。
 なお、非常勤報酬等条例案と同内容の経過措置規定がある(附則第2項)。

別表
区分 報酬額
附属機関の委員(附属機関の専門委員を含む。) 日額 10,200円
上記の委員に準ずるもののうち任命権者が特に認めるもの 日額 37,900円を超えない範囲内において、任命権者が市長の承認を得て定める額
選挙長 選挙立会人 日額 15,000円
投票管理者 投票立会人 日額 15,000円
開票管理者 開票立会人 一選挙につき 15,000円
顧問 ア 日額 37,900円を超えない範囲内において、任命権者が市長の承認を得て定める額
イ 月額 760,000円を超えない範囲内において、上記日額の職員の報酬額との権衡を考慮して任命権者が市長の承認を得て定める額
参与 月額 400,000円を超えない範囲内において、任命権者が市長の承認を得て定める額
医師 ア 月額 750,000円を超えない範囲内において、任命権者が市長の承認を得て定める額
イ 日額及び年額 上記月額の職員の報酬額との権衡を考慮して任命権者が市長の承認を得て定める額
上記以外の調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずるもの ア 月額 350,000円を超えない範囲内において、任命権者が市長の承認を得て定める額
イ 日額及び年額 上記月額の職員の報酬額との権衡を考慮して任命権者が市長の承認を得て定める額

(備考 省略)

2 本件に係る判断

(1) 非常勤職員の報酬の支出について

 請求人は、非常勤報酬要綱等が対象とする非常勤職員の報酬は、額及び支給方法を明記していない報酬等条例の規定に基づき支給されているので自治法の給与条例主義に違反しており、このような報酬の支出は違法・不当なものであると述べているので、このことについて検討する。
ア 給与条例主義の趣旨
 職員の給与(報酬、給料、手当等)は、条例で定めなければならず(地公法第24条第6項、自治法第203条第5項、第204条第3項)、また、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには支給することができないこととされており(地公法第25条第1項、自治法第204条の2)、これらの規定が給与条例主義といわれている。
 この給与条例主義の趣旨は、第1に、地方公共団体の職員に対する給与の支給については住民自治の原則に基づく住民の同意が必要であるところ、住民の代表者からなる議会がこれについて条例に定めることをもって住民の同意に代えることができるので、職員の給与については条例で定める必要があるということであり、また、第2に、職員に対し給与条件を保障するためには、これを地方公共団体の最高規範たる条例によって定める必要があるということである(昭和61年10月29日 横浜地裁判決 昭和60年(行ウ)第25号 神奈川県職員期末手当上乗せ支給事件)。
イ 報酬等条例と給与条例主義について
 (ア) 地方公務員は、一般職と特別職とに分けられ(地公法第3条第1項)、本件監査の対象となる非常勤職員は、特別職として掲げられた「非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職」(同条第3項第3号)として位置付けられている。
 非常勤報酬要綱等が適用の対象とする者は、非常勤職員のうち、[1]1週間の勤務時間が常勤職員のおおむね4分の3未満のもの、[2]本市の常勤職員、府費負担教職員又は堺市高石市消防組合職員であった者で、定年等により退職したもの、[3]市長が別に定める者(顧問、参与など)である。
 (イ) 地方公共団体が制定する条例は、法令に違反してはならず(自治法第14条第1項)、条例が法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるか否かによって判断することが必要であると解されている(昭和50年9月10日 最高裁判決 昭和48年(あ)第910号 徳島市公安条例違反事件)。
 そこで、報酬等条例第6条第5項の規定が自治法第203条第5項及び第204条の2の規定に反するかどうかについて検討する。
 a 給与に係る条例の規定については、単に給与の支給根拠のみを定め、具体的な額、支給要件等の基本的事項をすべて長又は規則に委任するようなことは給与条例主義の趣旨に反するものであり、その内容は条例に明確に定めること(昭和54年8月31日 各都道府県知事等あて行政局公務員部長通知)とされている。
 b 本市の報酬等条例は、附属機関の委員等は報酬額を明記している(第2条及び第6条第1項)が、委員等以外の非常勤の職員の報酬額は、任命権者が市長の承認を得て定める(第6条第5項)と規定し、本件の監査対象となる「委員等以外の非常勤の職員」の報酬額等の決定については任命権者に委ねている。
 一方、政令指定都市、中核市の条例では、すべての非常勤職員の報酬額を規定した例はみられないが、多くの市は、附属機関の委員等について額又は上限額を定めるほか、「委員等以外の非常勤の職員」に区分される非常勤職員についても報酬の上限額を定めている。
 c 報酬等条例の規定は、報酬額の決定を任命権者に包括的に委任したもので、自治法第203条第5項及び第204条の2が条例に規定することを求めていると考えられる内容からすれば十分な規定方法であるとはいえないし、他都市の条例規定と比較しても委任の程度が包括的に過ぎるものと思われる。
 d このような条例上の委任規定は、条例の制定、改正に際して議会の審議がなされる場合に比べて、報酬額等について決定過程の透明性や市民への説明が十分確保されていないなどの懸念がある。
 e しかし、非常勤職員の報酬額を職務内容、勤務時間などによって区分し条例に網羅しようとすれば、100種類程度になり、職種の変更や報酬額の改訂も頻繁に行われていること、また、状況に応じた機動的な任用を必要とする場合があることなどから、あらかじめすべての職種の報酬額や支給方法を詳らかに記載することは困難であるという関係局職員の主張は理解できるものである。前記のとおり、すべての非常勤職員の報酬額を条例に記載した市は見当たらないことも、そのような詳細にいたる記載の難しさを示すものと思われる。
 f また、地方公共団体の職員等が事務の参考とする市町村例規準則集(地方自治法規実務研究会編集)に掲載された「特別職の職員の給与に関する条例〔市の事例〕」には、別表に議員、附属機関の委員など主な職の報酬額記載欄を設け、備考に「この表に掲げた以外の特別職の職員の報酬は、別に市長が定める額とする」と記載されており、すべての職について報酬額を記載することまでを予定するものとはいえず、当該準則が給与条例主義に違背したものとは考えられない。
 g 報酬等条例は、報酬の額を任命権者の決定に委ねているが、その決定にあたっては市長の承認を必要としている。これは、同じ堺市の職員でありながら、任命権者を異にすることによって報酬額その他の身分取扱いに差異が生じることは望ましいことではないため、市長が複数の任命権者の権限の行使を相互に調整し均衡を図ろうとするものであるといえる。
 h 非常勤報酬要綱等には、具体的な報酬額又は額の算出方法が記載されていることから、お手盛りや恣意的な支給を防止し、適正かつ公正、公平な支給を確保できるものといえる。
 i 条例制定権を有する議会の権能を否定しない限度において、議会自らが他の機関にある程度までの決定を委ねることは必ずしも許されないものではないと解される。報酬等条例は、あらゆる非常勤職員の報酬額を個別に規定することは困難であるため、議員や附属機関の委員等については具体的に記載し、それ以外の非常勤職員の報酬については職務の内容、他の非常勤職員の報酬額との均衡等を考慮することを前提として、その額を任命権者が市長の承認を得て定めることを許容したものと考えられ、これは、議会の権能を否定するものとはいえない。よって、報酬等条例第6条第5項の規定は、委任立法として許される範囲内のものと考えられる。
 j したがって、議会によるコントロール、職員に対する給与条件の保障、適正かつ公正・公平な支出という自治法の趣旨、目的、内容及び効果と、報酬等条例及び条例の規定を受けた要綱の規定とは、実質的には矛盾抵触するものではないと考える。よって、本市の非常勤職員の報酬に関する規定全体をみると、給与条例主義の趣旨に反したものではないと考えられる。
 k 以上のことから、報酬等条例第6条第5項の規定は、自治法第203条第5項及び第204条の2の規定に違反するとまではいえないものと判断する。
 なお、公営企業法は、職員の給与(報酬)の「種類及び基準」は条例で定めなければならない(第38条第4項)が、「額及び支給方法」については条例によらず管理者が定めることができる(公営企業法第6条、第9条第2号)としており、自治法と公営企業法では条例で規定すべき事項が異なっている。本市上下水道局の非常勤職員の報酬の「種類及び基準」は報酬等条例第6条第5項の規定によっている(「額及び支給方法」については、上下水道局非常勤要綱に規定されている。)ので、この「種類及び基準」を定める規定が給与条例主義の趣旨に反しているかについての判断は、上記の結論と異なるものではない。
ウ したがって、報酬等条例は自治法の給与条例主義に反するとまではいえないことから、本件非常勤職員(名誉顧問、上下水道局の非常勤職員を含む。)の報酬の支出が違法・不当であるとする理由はないものと判断する。

(2) 名誉顧問の報酬の支出について

 次に、請求人は、他の非常勤職員と区別して特に名誉顧問の報酬の支出について、その前提である任用、報酬額に違法性、不当性があると述べているので、このことについて検討する。
ア 名誉顧問の任用について
 (ア) 任命権者が行使する権限については、合理的な範囲内において、裁量が認められるものと解される。特別職の非常勤職員には地公法が適用されず(地公法第4条第2項)、競争試験や選考による一般職の常勤職員の任用の場合に比べて裁量の余地が大きいものと考えられる。また、特別職の非常勤職員は、「地方公共団体の事務にもっぱら従事するのではなく特定の知識、経験に基づき、随時、地方公共団体の行政に参画する者または他に生業を有することを前提として、一定の場合に限り地方公共団体の業務を行うものの職をいう」と解されている(地方公務員任用制度研究会編著「自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱<第一次改訂版>」)。
 (イ) 名誉顧問は、合併後の円滑な新市建設を進めるために、旧美原町長の職にあった高岡氏の経験や見識を活用し各分野でアドバイスを受けることが必要であるとの判断がなされ、事務分掌規則第3条第1項に規定する「市行政に係る特に重要な事項で高度の学識経験その他知識経験を要する専門的事項について意見を聴くため置くことができる顧問」として任用されたものである。このことは、地公法の非常勤特別職に関する規定や事務分掌規則第3条第1項の規定の趣旨、目的に反するものとはいえない。
 (ウ) 名誉顧問は、その職の重要性から「名誉」を冠したもので、本市では、「学術顧問」と呼称する顧問も置かれている。請求人は、「名誉顧問」の設置に関する根拠規定がないと述べているが、これはその呼称を形式的にとらえた主張といわざるをえない。
 (エ) 任用手続きは、市長の決裁、辞令書の交付などが行われており、適正であると認められる。
 (オ) なお、請求人は、旧美原町長を名誉顧問として任用することが適当ではないという理由の一つとして、平成17年4月7日付けの住民監査請求の監査結果を挙げている。
 住民監査請求は、地方公共団体の職員等による違法、不当な財務会計上の行為等の予防、是正等を図り、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするもので、地方公共団体の一般的行政事務の執行の適否や責任の所在を明白にすること自体を本来の目的とするものではない。
 当該の監査結果は、旧美原町の国民健康保険料の不適正な徴収を原因とする還付加算金の支出が美原町(堺市)に損害を生じさせたものであるとして、市長に対して還付加算金相当額の返還を旧美原町長に請求することを求めたものである。したがって、国民健康保険料の徴収事務という限られた財務会計行為上の一部の違法性を指摘したのであって、その他の財務会計上の行為や事務執行にまで及んで旧美原町長の自治法上の義務違反や責任を問うたものではない。
 (カ) 以上のことから、高岡・旧美原町長の名誉顧問の任用について、市長の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。
イ 名誉顧問の報酬について
 (ア) 名誉顧問の報酬については、自治法第203条第1項、第5項及び報酬等条例第6条第5項の規定が適用される。そして、名誉顧問は、元職員等勤務条件要綱第1条の「市長が別に定める者」に該当し、同要綱第5条第3項の「特に高度な専門知識、技術等を必要とする職又は職務が特殊である職に就く元市職員等非常勤職員で、市長が特に認めたものに係る基本報酬については、別に市長が定める」規定に基づき、報酬額を決定したものである。
 (イ) 名誉顧問の報酬額の決定は、他の非常勤職員の報酬額が非常勤報酬要綱等で相当程度に規定されているのに比べて、市長の裁量の余地があるので、その額の妥当性についてより説明が求められると思われる。
 報酬額を76万円と決定するにあたっては、一般職給与法第22条第1項に規定する国家公務員の非常勤顧問等の勤務1日に対する支給限度額37,900円や、報酬等条例別表の議員等の報酬額などを参考にしたとのことであり、その職務内容の必要性・重要性や任用者に代替性がない職であることなどを考えると、報酬額に妥当性を欠くというまでの理由はないと思われる。
 (ウ) 任用に際し、報酬額についての市長決裁が行われ、報酬の支出事務は堺市財務会計規則(昭57年規則第15号)等に基づき行われており、いずれも事務手続きは適正であると判断される。
 (エ) 以上のことから、名誉顧問の報酬額について、違法性は認められず、また、妥当性がないとまではいえない。
ウ よって、名誉顧問の任用について市長の裁量権の行使に逸脱はなく、また、報酬額について違法、不当であるというまでの理由はないものと判断する。

(3) 結論

 以上のことから、名誉顧問を含む非常勤職員の報酬の支出に違法性、不当性は認められないので、請求人が具体の措置として挙げる[1]市長は名誉顧問の平成17年2月分及び3月分の報酬相当額を返還すること、[2]名誉顧問の解職など必要な措置をとり、今後の報酬の支出を差し止めること、[3]報酬等条例第6条第5項を削除すること、[4]市長は、非常勤職員に支給した基本報酬、増額報酬、付加報酬の過去1年分について、返還を行うこと、[5]非常勤報酬要綱等の規定を条例化することという主張にはいずれも理由はないものと判断する。
 なお、判断に関して次のことを付記する。
ア [4]の増額報酬のうち期末手当、勤勉手当に相当する報酬部分は、特別職の非常勤職員には支給できないこととされている(自治法第203条第1項、第2項、第5項及び第204条の2。また、昭和31年9月28日付け都道府県総務部長あて自治省行政課長通知(自丁行発第82号)など。)。
 このことについて、非常勤職員の任用や処遇の実態と現行法上の非常勤職員に関する規定との間に乖離があることは認められているところであり(地方公務員制度調査研究会報告-地方自治・新時代の地方公務員制度-平成11年4月27日)、一般職の常勤職員と非常勤職員の勤務実態等から一般職の常勤職員の給与との権衡を考慮して、期末・勤勉手当に相当する報酬の支給を条例で規定している都市もみられる。
 市長をはじめとする任命権者には、社会情勢を見極めて、更に非常勤職員の報酬制度について検討を重ねることを要望する。
イ 請求人の主張のうち、[3]の報酬等条例第6条第5項の削除及び[5]の非常勤報酬要綱等の規定の条例化については、既述のとおり、平成17年第3回市議会に条例案が提案されていることを申し添える。

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