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堺市
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平成17年6月16日 堺市監査委員公表 第27号

更新日:2012年12月19日

 地方自治法第242条第1項の規定に基づき平成17年4月20日に監査委員に 提出された住民監査請求(大阪府市町村職員互助会の退会給付金等に係る請求) について、同法同条第4項の規定に基づきその結果を次のとおり公表する。

平成17年6月16日

堺市監査委員 西 惠司
同 星原 卓次
同 西林 里子

住民監査請求に係る監査結果

(平成17年4月20日請求)

<大阪府市町村職員互助会の退会給付金等に係る請求>

目次

堺市監査委員公表第27号

第1 監査の請求

1 請求人

1人(省略)

2 監査請求書及び同補正書の提出

監査請求書 平成17年4月20日
補正書 平成17年6月 6 日

3 請求の要旨

 各報道機関は、大阪府市町村職員互助会(以下「互助会」という。)が支給している「生業資金」「退会給付金」について、「第二退職金」「ヤミ退職金」と批判している。
 このような批判にもかかわらず、堺市長及び支出手続担当者らは今日に至るまで漫然と互助会に補給金を支出している。しかし、退会給付金について大阪高等裁判所第13民事部・平成16年2月24日判決は、吹田市が互助会に支出した補助金は違法であると判断した。この判決書によれば、互助会が退職者に支給する退会給付金の概ね7割は補給金を原資としていることがわかる。
 この状況は吹田市と同じ互助会に所属する堺市についても同様であるが、退会給付金や生業資金は、実際上の趣旨、金額、給付の時期からみて、その相当性を超える部分については、実質的に退職手当の上乗せを図っているといわざるを得ない。このような退会給付金等の支出は地方自治法第204条の2の趣旨を潜脱するものであって、補助金の支給として公益上の必要性が認められないから、同法第232条の2に違反する。
 以上から、地方自治法第242条第1項の規定により、堺市監査委員に対し下記の内容の措置を求める。
 なお、退会給付金や生業資金の額は互助会の任意の協力によらねば特定できず、これらの制度の内容についても広く市民が知るところではない。制度の内容が広く知られるきっかけになったのは、平成16年末に行われた大阪市の「ヤミ手当事件」や「カラ超過勤務手当事件」の報道である。このような状況では一般の市民は本件の住民監査請求を行うことができないから、本件請求の期間の徒過については「正当な理由」がある。

 記
1  平成5年度から平成16年度までの退会給付金・生業資金の額のうち、堺市が支出した補給金相当額を堺市長、支出手続担当者、受給した職員個人及び互助会に対して連帯して返還を求めること。
(1) 退会給付金(平成5年度から平成16年度に支払われた金員)(支給した同給付金の7割が違法支出にあたる。)
(2) 生業資金(平成5年度から平成16年度に支払われた金員)(支給した同給付金の7割が違法支出にあたる。)
2  退会給付金・生業資金を各年度において支給した日の翌日から起算して、上記期間の退会給付金・生業資金に含まれる公費相当分につき、堺市長、支出手続担当者、受給した職員個人及び互助会は、連帯して完済にいたるまでの年5分の遅延損害金を堺市に対し支払うこと。

事実証明書

  1. 産経新聞社インターネット記事(2005年3月15日付)
  2. YOMIURI ON LINEインターネット記事(2005年3月18日付)
  3. 日経ネット関西版インターネット記事(2005年3月19日付)
  4. 平成16年2月24日大阪高裁判決書別紙9の「会費累計表」
  5. 堺市職員に対する生業資金の支給額一覧表(平成17年5月18日提出)
    (いずれも掲載を省略)

4 補正書の提出

 本件の住民監査請求書については、平成17年6月6日に請求人から補正書が提出された。補正の内容は以下のとおりであり、請求の要旨については補正後の内容により記載した。

(1) 平成16年度分の退会給付金・生業資金の差止を求める部分を削除。

(2) 返還を求める期間について、「平成11年度~平成15年度」を「平成5年度~平成16年度」に変更。

(3) 遅延損害金の算定の始期について、「平成17年4月20日の翌日」を「退会給付金・生業資金を各年度において支給した日の翌日」に変更。

第2 監査の実施

1  要件審査及び請求の受理

 本件の請求は、互助会が同会の退会者に支給する退会給付金・生業資金のうちの違法な支出分(支給額の7割相当分)について、堺市長・支出手続担当者・退会給付金等の受給者・互助会に返還を求める趣旨と解される。
 しかし、住民監査請求は、地方公共団体の長、若しくは委員会、若しくは委員又は職員について、違法若しくは不当な財務会計行為又は財務会計上の怠る事実があると認める場合に請求できるものである(地方自治法第242条第1項)。
 請求人は、退会給付金及び生業資金の支払いに当てられた部分に係る補給金の支出を違法な補助金の支出であると主張するから、違法な公金の支出から生じる地方公共団体の損害の是正等を求める趣旨と理解される。しかし、退会給付金等は互助会が支出する金員であって公金ではない。よって返還を求める対象が退会給付金等のうちの違法な支出分であるとすれば、本件の請求は住民監査請求の要件を欠くと考えられる。
 また、退会給付金等の受給者や互助会に返還を求めることについても、これらの者は違法若しくは不当な財務会計行為を行うことができる者ではないから、同様に請求の要件を充たさないと考えざるを得ない。
 以上のように考察した結果、本件の請求は、堺市が互助会に支出した補給金の支出は違法な公金の支出であり、この違法な支出から生じた損害の回復を堺市長及び支出手続担当者に求める趣旨であると理解し、この理解を前提として地方自治法第242条に規定する要件を具備しているものと認め、平成17年4月27日にこれを受理した。

2 監査を行った監査委員

 平成17年4月27日から同年5月30日までは吉川敏文、辻宏雄、西林里子が監査を行った。平成17年5月31日から同年6月16日までは西惠司、星原卓次、西林里子が監査を行い、合議により監査の結果を決定した。
 なお、曽我部篤爾はその経歴等から、本件請求は自己の一身上に関する事件にあたると解されるため、地方自治法第199条の2の規定により除斥された。

3 監査対象事項

 住民監査請求書に記載されている事項及び事実証明書を勘案し、監査対象事項を次のとおりとした。
(1) 本件の請求に地方自治法第242条第2項(期間徒過規定)は適用されるか。
(2) 互助会に対する補給金の支出は違法な公金の支出か。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

 請求人から、平成17年5月7日付けで自治法第242条第6項に規定する証拠の提出及び陳述を行わない旨の申出書が提出され、同日、これを収受した。

5 監査対象部局

 補給金の支出事務は次の3部局に分担されているため、これらの部局を監査対象部局とした。
 総務局 健康福祉局(市立堺病院) 上下水道局

第3 監査対象部局の説明

 本件について、市長及び堺市上下水道事業管理者に対して請求に係る意見書(以下「意見書」という。)の提出を求めるとともに監査対象部局の職員(以下「関係局職員」という。)から事情を聴取した。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

 平成17年5月18日に総務局、健康福祉局(市立堺病院)及び上下水道局職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
総務局 総務局長、人事部長、人事部理事、人事部副理事兼厚生担当課長、人事部主幹
健康福祉局 市立堺病院総務課主幹
上下水道局 総務課主査

なお、この事情の聴取に際して請求人が立ち会いをした。

2 説明の概要について

(1)  互助会制度の説明

ア 互助会の目的、構成員、機関、及び活動内容
イ 互助会の運営経費
ウ 補給金の支出根拠
エ 補給金の支払時期及び支払方法

(2)  請求人の主張に対する意見

ア  補給金が違法な公金の支出であるとの主張について
 補給金は、地方公務員法第42条を受けて制定された堺市職員の厚生制度に関する条例(以下「厚生条例」という。)第3条及び第4条の規定に基づき議会の議決を経て支出しており、法的な支出根拠がある。
 したがって、違法な公金の支出とはいえない。
イ  地方自治法第232条の2の適用について
 補給金は、特定の事業経費に充てるよう使途が特定されたものではなく、互助会の実施するすべての事業に充当されている。
 また、その負担割合は互助会の規程により定められているものであり、堺市が補給金の使途を特定し、支出額を決定しうる性質のものではない。
 よって補給金は、本市が職員の厚生制度の実施を互助会に委ねるにあたっての負担金的な支出金であり、予算上も共済組合負担金等のいわゆる法定福利と同じ「共済費」として計上している。
 このように補給金は、負担金としての性質を有するもので、寄付または補助について規定した地方自治法第232条の2の規定に当てはまらず、この規定は適用されないものと考える。
ウ 地方自治法第204条の2(給与条例主義)の趣旨を潜脱するとの主張について
 給与条例主義の趣旨は、地方公共団体がその職員に対して支給する給与その他の給付は、法律に直接根拠を有するか、または法律の具体的根拠に基づく条例によって給与を支給する場合に限るものとし、それ以外の一切の給与その他の給付の支給を禁じたものである。
 退会給付金等は互助会が自ら規程を定めて退会者に給付しているもので、退会給付金等の給付が給与条例主義の趣旨に反することはない。
 また、補給金は、堺市が互助会に支出する負担金であり、職員に支給されるものではないから給与条例主義の趣旨に反しない。
 請求人は、補給金が退職手当の上乗せを図るために互助会に支出されているから、補給金の支出は給与条例主義の趣旨を潜脱すると主張するが、退会給付金等は職員とその家族の生活の充実安定を図ることにより、在職中の勤労意欲を高め、公務の能率化に寄与するという意味で地方公務員法42条を根拠とする職員の厚生制度の一環であるのに対し、退職手当は地方公共団体が退職する職員に支給する勤続報償としての給与であり、両者は制度の趣旨が異なる。このような両者の趣旨の違いからして、一方が他方の上乗せを図るために支給されているという主張は失当である。
 また、請求人は退会給付金等の原資の7割は補給金であると主張するが、退会給付金等の原資に補給金がどれだけの割合を占めているかについては明確ではない。補給金が互助会に対する負担金であり、互助会の事業全体に対して支給されている以上、退会給付金等の原資にどの程度の補給金が使われているかを判断することは困難である。
 以上のことから、補給金の支出が給与条例主義の趣旨を潜脱するとの請求人の主張は認められない。
エ  市民の批判に対する認識及び改善への取り組みについて
 生業資金・退会給付金は、地方公務員法第42条に基づく厚生制度の一環であり、制度そのものとして職員の勤労意欲の向上ひいては公務の能率化を目的とするものとして有益なものと考える。
 しかしながら、現在の社会情勢の中、その財源の一部に補給金という税金が含まれていることについて、市民の批判があるということは十分認識している。
 職員の福利厚生事業については市民の理解と納得が必要である。平成16年12月13日付で会費と補給金の負担割合の適正化について互助会に要望書を提出し、平成17年4月28日付で、会費と補給金の負担割合の適正化、退会給付金等を含む給付事業の抜本的改善、その他福利厚生事業の効率的な実施について同じく要望書を提出しているのは、このような認識を有するがためである。
 また、互助会は、退会給付金等の給付額や会費と補給金の負担割合については独自に改善を図っている。市補給金については、平成11年度は給料月額の1,000分の26であったところ、平成16年度には1,000分の23にまで引き下げられた。その結果、会費と補給金の負担割合は、平成11年度では1:1.85であったが、平成16年度では1:1.64となった。今後も負担割合を改善し、平成18年度には1:1となるよう、互助会において検討されているとのことである。
 さらに、平成16年度から退会給付金は「退会餞別金」に制度が変更され、給付額が削減されている。(表1参照)
 以上のような改善は、互助会自体の努力であるとともに、堺市が行ってきた要望書の提出等の成果でもある。
 職員の福利厚生制度については市民の理解と納得が必要であり、今後もこの認識を前提として、市民の批判を真摯に受け止めつつ、福利厚生制度の一層の改善に向けて取り組んでいきたいと考えている。

第4 監査の結果

1 本件に係る事実の概要

 本件請求は、請求の要旨を前述のとおり理解した上で受理し、監査対象事項を決定したものである。
 したがって、本件に係る事実は、互助会の制度及び運営の実態と、補給金支出行為の状況とに大別される。
 これらの事項について、監査対象部局の陳述を聴取し各種の資料を用いて監査の資料を収集した結果、本件に係る事実を以下のとおり認めた。

2 本件に係る事実の内容

(1) 互助会の制度について

ア  互助会の目的、構成員、機関、及び活動内容
(ア)  互助会は、互助共済の精神に基づき、会員の共助制度を確立し実施することにより、会員の福利増進、生活の向上を期し、もって執務の公正、能率化を増進し、進んで地方自治の本旨の実現に協力することを目的とした団体である。 
(イ)  互助会の構成員は、大阪市を除く大阪府下の42市町村及びその他一部事務組合等の職員である。構成員は定款上会員と称される。会員の数は平成16年3月現在において60,009名となっている。
(ウ)  互助会の主な機関は、理事会、評議員会、総会である。理事会は、定款・規程や評議員会及び総会の決定に従って会務を執行し、評議員会は、諸規程の制定改廃や決算の認定を行い、総会に提出する予算案などの議案を審議決定する。総会は、互助会の最高意思決定機関として評議員会から提出された議案について審議決定する。
(エ)  互助会の活動内容は、見舞金、弔慰金、祝金などの給付事業、生活資金、進学資金などの貸付事業と、互助会館の運営、宿泊補助、契約施設の利用割引などの福利厚生事業、その他互助会の目的達成のため必要な事業の実施である。
 なお、本件で取り上げられた、退会給付金・生業資金については表1のとおり制度の見直しがなされてきている。

(表1・在会年数別退会給付金等の給付日数)
制度の名称 実施期間 10年 20年 30年 40年
生業資金 昭和26年4月~ 200日 540日 940日 1,140日
退会給付金 昭和55年4月~ 70日 220日 400日 400日
平成11年4月~ 62日 160日 310日 400日
退会餞別金 平成16年4月~ 50日 100日 150日 200日

(注1)給付額=給付日額×在会年数別給付日数
(注2)給付日額=給与月額×1/30
イ 互助会の運営経費
 互助会の事業運営資金は、会員が納付する会費(定款第15条)各市町村等が負担する補給金(定款第31条)と、これらの運用益によって賄われている。
 会費の月額は給料月額(上限42万4,000円)に互助会の規程に定める割合を乗じて計算される。各年度におけるこの割合、会費と補給金の負担割合は表2のとおり。

期間

会費
(月給に対する割合)

市補給金
(月給に対する割合)

負担割合
(会費:市補給金)

昭和23年8月から 14/1000 56/1000 1:4
昭和54年4月から 14/1000 42/1000 1:3
昭和55年4月から 14/1000 35/1000 1:2.5
平成元年4月から 14/1000 28/1000 1:2
平成11年4月から 14/1000 26/1000 1:1.85
平成16年4月から 14/1000 23/1000 1:1.64
平成17年4月から 14/1000 21/1000 1:1.5

ウ 補給金の支出根拠
 補給金の支出根拠は、互助会の定款及び規程と厚生条例である。
 まず、補給金の定義について、「社団法人大阪府市町村職員互助会 会費・補給金規程」(以下「補給金規程」という。)の第3条は「補給金とは、この会の行う事業につき、構成する市町村等が、その事業を育成助長するために交付する経費負担をいう。」と定める。そして、互助会の定款第30条は「この会の資産は、次の各号をもって構成する。」と定め、同条の第2号に補給金が規定され、補給金の支給額については、補給金規程の第4条において定められている。
 厚生条例は、地方公共団体に職員の福利厚生に関する事項の実施を義務づける地方公務員法第42条を受けて、その第3条及び第4条において「本市職員の厚生事業を互助会に行わせ予算の範囲内でその費用を補助することができる。」と定め、堺市における福利厚生事業のひとつを互助会への費用負担を通じて行う旨を規定する。ここにいう「その費用」を具体化したものが補給金の支出額であって、このような補給金について互助会の定款第31条は「市町村等は、別に定める規程によりこの会に補給金を払込むものとする。」と定め、補給金規程の第5条は「市町村等は、毎月前条に定める額の補給金をこの会に払込まなければならない。」と定める。
エ  補給金の支払時期及び支払方法
 堺市が負担する補給金は、毎月全ての会員の給与月額に負担率を乗じて得た額を、会員の給与から控除した会費とともに、月末に一括して互助会へ納入している。

3 本件請求に係る判断

先に定めた監査対象事項について、次のとおり判断する。

(1)本件の請求に地方自治法第242条第2項(期間徒過規定)は適用されるか。

ア 問題の所在
 請求の要旨において述べたとおり、請求人は、堺市の互助会に対する補給金の支出が違法な公金の支出にあたると主張して本件の住民監査請求を行ったものと理解される。
 地方自治法第242条第2項は「前項の規定による請求は、当該行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは、これをすることができない。」と定めるが、本件における「当該行為」は補給金の支出行為であると判断される。
 本件に係る事実によれば、堺市から互助会への補給金は、毎月職員に対して支払われる給与に互助会の定款及び補給金規程に定められた負担率を乗じて得た額を、全職員分一括して当該月の末日に互助会に納入していたとのことである。
 すると、平成15年度における補給金の最終の支出は平成16年3月31日に行われており、本件住民監査請求がなされたのは受付をした平成17年4月20日であるから、平成15年度以前の補給金の支出については行為のあった日から一年を経過しており、同条同項但書にいう「正当な理由」がない限り請求を行うことができない。
 そこで、本件の請求において、「当該行為」のあった日から一年を経過したことについて「正当な理由」が認められるかが問題となる。
イ 「正当な理由」の検討
 ここにいう「正当な理由」とは、期間徒過規定を適用して法的安定を貫くことが正義に反すると判断されるような特別の事情を意味し、住民が当該状況の下で住民監査請求をなし得たかどうかが判断基準になると解される。
 この点、請求人は、退会給付金や生業資金の支出額は互助会の任意の協力によらなければ明らかにならず、一般の市民はこれらの額を容易に知り得ない旨を主張する。そして、一般の市民が互助会の退会給付金や生業資金の制度を知るきっかけとなったのは平成16年末に行われた大阪市の「ヤミ手当事件」や「カラ超過勤務手当事件」の報道であり、このような状況では本件の住民監査請求を行うことができず、本件請求の期間の徒過については「正当な理由」があるという。
 しかし、本件の請求は補給金の支出が違法な公金の支出であるとして違法に支出された部分の返還を求める趣旨と理解されるので、期間を経過したことについて正当な理由があるかどうかが検討されるのは補給金の支出行為についてであって、退会給付金や生業資金の制度やそれらの支給額ではないと考えられる。
 そこで、補給金の支出について「正当な理由」があるかどうかを検討すると、補給金の予算の執行は共済費の互助会負担金の名称で行われているから、予算書を閲覧して互助会負担金の支出科目を確認し、互助会負担金に関する支出負担行為伺書や支出命令書を情報公開制度を利用する等して調査することは可能であり、請求人は補給金の支出がなされた事実を知り得たものと評価される。
 また、請求人は平成16年3月31日に、美原町の監査委員に対して本件とほぼ同趣旨の住民監査請求を行っており、当時から退会給付金の支出が違法であるとの意見を持っていたことは明らかである。このような意見をもつ請求人が行った監査請求について、行為のあった日から一年を経過した行為について監査請求を認めることは、住民監査請求に関する法的安定を図った法の趣旨に反し妥当ではない。
 したがって、補給金の支出があった日から一年を経過したことについて「正当な理由」があるとは解されず、「正当な理由」があるとの請求人の主張には理由がない。
ウ 地方自治法第242条第2項(期間徒過規定)の適用
 以上から、平成16年3月31日以前に行われた補給金の支出については、住民監査請求を行うことができないと考える。

(2)互助会に対する補給金の支出は違法な公金の支出か。

ア 検討の範囲
 以上のように地方自治法第242条第2項を適用すると、本件の請求において、違法な公金の支出が行われたかどうかを検討すべき範囲は、平成16年4月から平成17年3月の期間において毎月月末に、堺市から互助会に対して行われた補給金の支出行為となる。
イ 問題の所在
 請求人が補給金の支出を違法と主張する理由は、普通地方公共団体が補助をするための要件である「公益上必要な場合(地方自治法第232条の2)」とはいえない、というにある。
 地方自治法が補助の要件として公益上の必要性を規定するのは、何ら公益性がない事業に公金を支出させない趣旨である。とすれば、互助会が行う事業に公益性があるかどうかが問題となる。
ウ 「公益上の必要性」の検討
 この点、互助会の目的は会員の福利増進、生活の向上を期してもって執務の公正、能率化を増進し、進んで地方自治の本旨の実現に協力することとされている。このような目的は、公務員の執務の能率化が住民の利益にかなうという考えによるもので正当である。
 また、この考えは、職員の福利厚生制度の実施を自治体の責務とする地方公務員法第42条の趣旨に適合し、厚生条例第3条が職員の厚生制度の実施のための事業を互助会に行わせることができると定め、同条例第4条が予算の範囲内でその費用を補助することができると規定していることもこの趣旨に合致するものといえる。
 このような目的をもつ互助会の活動は、職員の生活資金などの貸付事業、互助会館の運営や宿泊補助などの福利厚生事業、災害見舞金などの給付事業その他互助会の目的達成のために必要な事業を行うというもので、職員の執務の能率化に資するものと認められる。
 また、退会給付金等の給付についても、職員の退会後における職員とその家族の生活の充実、安定を図ることにより、在職中の勤労意欲を高めるものであるから、同様に公務の能率化に役立つものといえる。
 以上から、互助会が行う事業には公益性があり、互助会への補給金の支出は、公益上必要な補助であって地方自治法第232条の2に合致した適法な支出であると判断される。
エ 請求人の主張について
 これに対し、請求人は補給金の支給について公益上の必要性は認められないから違法であると主張するので、これについて検討する。
 請求人の主張は次のように要約される。
(ア) 互助会が退会する会員に支給する退会給付金等は、実際上の趣旨、金額、給付の時期からみて、職員の退職手当と同じ趣旨で支給されるものである。
(イ) 互助会が行う給付事業に対する退会給付金等の割合は、約90%という高率であり、かつ、退会給付金等の原資の7割が補給金から支出されている事実からみて、堺市は補給金を互助会に支出することによって、退職手当と同じ趣旨をもつ退会給付金等を支給させ、実質的に退職手当の上乗せを図っている。
(ウ) 退職手当は職員の給与であり、当然に地方自治法第204条の2(給与条例主義)の対象となることからすると、退職手当の上乗せが図られた部分は同条の趣旨を潜脱するものであって、このような脱法的趣旨を有する補助金の支出には公益上の必要性は認められない。
しかし、これらの主張については、それぞれ次のように考える。
  (ア) について
 退職手当の趣旨は長期勤続の職員に対する勤続報償であり、職員の福利厚生制度の一環として支給される退会給付金等とは趣旨が異なる。
  (イ)について
 互助会の給付事業に対する退会給付金等の割合が高率であり、補給金の7割が退会給付金等の原資になっているとしても、そのことがただちに自治体が補給金の支出を通じて退職手当の上乗せを図っているという根拠になるものではない。
 また、退職手当と退会給付金等は支給の趣旨が異なる。趣旨が異なる制度によって一方が他方の上乗せであると評価するのは不自然である。
  (ウ)について
 補給金の支出が補助をするための公益上の必要性を有することは前述のとおりである。
 また、補給金の支出が退職手当の上乗せを図っているという主張自体の根拠が明確ではないことも前述のとおりであるから、脱法的趣旨を有することもない。
 互助会の給付事業に対する退会給付金等の割合が高率であるとか、補給金の7割が退会給付金等の原資になっているといった事情は、福利厚生制度の妥当性に関する問題にはなり得るが、違法性にかかわる問題ではないと考えられる。
 したがって、請求人の主張には理由はないものと考える。
オ  結論
 以上のとおり、補給金の支出は公益上必要がある場合における支出であって、補助金の支出として適法であると判断する。

監査結果に付する意見

 本件における補給金の支出は適法な支出であると判断されるが、互助会を補助して実施する福利厚生制度のあり方には、現在、様々な批判がある。
 福利厚生制度は地方公務員法第42条によって要請されるものであり、制度の具体的な内容はそれぞれの地方公共団体の創意工夫に委ねられていると解されるが、公費を用いて実施される以上、納税者である市民の批判には率直に耳を傾けて制度の内容を検討し、改めるべき点について改善を図ることは地方公共団体としての責務であろう。
 これらの批判の主な原因は、制度の発足当初においては当時の勤務条件における官民格差の是正の観点から一定の合理性を有したと思われる公務員の福利厚生制度が、その後の社会経済情勢の変化等によって事業の合理性の基礎となる状況が変化したことによって生じたものと理解される。
 市長においては、このような福利厚生制度をめぐる状況の変化を十分認識し、制度を利用してきた職員の公平を確保する見地を踏まえつつ改善の方法を充分検討し、福利厚生制度全体のより望ましいあり方を模索して、実効性のある制度の改善に努められたい。
 なお、互助会を利用した福利厚生制度について、具体的に検討すべき課題は次のとおりであるから、制度の検討において参考とされたい。

1 福利厚生制度の実施は地方公共団体の責務であり、地方公共団体の支出する補給金は特定の事業に対する補助であることから、補助金の額は自治体の主体的な判断によって決定され支出されるべきである。 
 この観点から、補給金の額が一律に決められている実態を見直し、補給金の額の決定に自治体の主体性がより発揮されるような制度に改められるよう働きかけるべきである。
2 本件の請求で取り上げられた退会給付金等の給付については、表1のとおり、昭和55年4月から段階的に改善が図られている。このような改善の手法については制度を利用する者への配慮として相当でありその方向性はおおむね評価できるが、なお市民の批判が大きい制度であるから、さらなる改善を促す必要がある。
 また、退会給付金等以外の「成年祝金」や「在会慰労金」などの会員に金員を支給する給付事業についても、支給された現金の使途が明らかでないという意味で、福利厚生事業との関連が比較的薄いものが見受けられる。
 よってこのような給付についても、今後その是非、程度の見直しについて、互助会に積極的に働きかけを行うべきであろう。
3 福利厚生事業を実施する団体としては、互助会の他に堺市職員厚生会(以下「厚生会」という。)があり、互助会と同様に厚生条例において規定されている。今後、福利厚生制度の検討においては、互助会と厚生会が制度として重複することのないように注意すべきである。

以上

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