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平成17年3月28日 堺市監査委員公表 第14号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第14号

 地方自治法第242条第1項の規定に基づき平成17年1月31日に美原町監査委員に提出され、同年2月1日堺市と美原町との合併により、堺市監査委員が事務を引き継いだ住民監査請求(美原町の固定資産税に関する件)について、同法同条第4項の規定に基づきその結果を次のとおり公表する。

平成17年3月28日

堺市監査委員 吉川 敏文
堺市監査委員 辻 宏雄
堺市監査委員 曽我部 篤爾
堺市監査委員 西林 里子

住民監査請求に係る監査結果

平成17年1月31日請求

<美原町の固定資産税について>

目次

堺市監査委員公表第14号

第1 監査の請求

1 請求人

 1人(省略)

2 監査請求書の提出

 平成17年1月31日

3 請求の要旨等

 1月26日、「編入目前 課税か否か 悩む美原町、基準に差」「特別事情」で税減免のビル」と朝日新聞が報道した(疎甲第1号証)。
 地区有財産の非課税措置は違法である。
 現に、堺市条例第42条第1項(固定資産税の減免)15号「定期的に行われる地域の伝統行事で地域住民が主体となって行うものにおいて、地域住民が共同で使用する祭具その他の道具(営利を目的として使用される道具を除く。)を保管するために設置された施設で専ら当該道具の保管の用に供されているもの 免除」とある(疎甲第2号証)。その一方で、同条第2項で「前項各号に掲げる固定資産を有料で借り受けた者が使用する場合は、前項の規定にかかわらず、固定資産税を減免しない。」とされている(疎甲第2号証)。
 これに対し、現美原町条例第35条第1項(法第367条の固定資産税の減免)第6号「前各号に類するもののほか特別の事情がある者」と規定されている(疎甲第3号証)。これについて、美原町税務課は、「賃料は地区の祭りやビル改修に役立てられている。近くに眼科や歯科がなく、地区が誘致してきた事情も配慮してきた。」などと主張している(疎甲第1号証)。
 税の賦課徴収の原則は、「租税法律(条例)主義」と言われるものである。
 美原町条例第35条第1項に定める要件は、いわゆる経済困窮、災害等の被害者で、担税力がない者、また、その事業の目的が公益を図るものであって、「地区の祭りやビル改修」は、間接的には、地区振興という公益に類するものと見られたとしても、それは、固定資産税等の賦課・徴収とは無関係であって、失当である。百歩譲って、その美原町税務課の主張を容れたとしても、それは、美原町における法人住民税の計算において、考慮されるべき事情であって、固定資産税の計算とは無関係である。
 A社美原店(南河内郡美原町b 株式会社 A社 代表者 代表取締役社長 C 大阪府d市e町)の家屋敷地の非課税も違法である。
 自治省資産評価室編『固定資産評価基準解説』(土地編)(財団法人 地方税務協会 平成6年7月発行)P.311によれば、池沼の一部について分筆・所有権移転登記がなされた後、事務所用建物が新築された例を引き、この場合の評価方法については、当該土地は、通常の宅地としての用途に供することができる他の宅地と比較して、地形的に自ら制限があることに起因する減価要因を内在しているものとしているが、補正率を用いて、宅地として評価するとしている(疎甲第4号証)。
 当該ため池が収益用建物の用に供する地盤であることには、間違いはない。
 この点、相手方からは、池沼の機能(農業用水灌漑)をもって、抗弁することが考えられるが、この点の減価すべき要因・事情を、総務省は、崖地補正率表の適用をもってすることを求めているのであって、同主張も失当である。
 したがって、請求人は、f地区2箇所のビル、bのA社美原店池沼敷地の固定資産税の賦課徴収を怠る事実を指摘する。
 美原町監査委員は、5年ないし7年間にさかのぼり、f地区、b地区会等に対して、納付を怠った固定資産税の相当額を美原町に納付することを請求する事を美原町長に勧告しなければならない。
 以上、地方自治法第242条第1項に基づき請求する。
以上

(原文中、事業者名や地名等は、当該事業者の権利や正当な利益を保護するなどの趣旨から、「A社」、「b」などと置き換え、所在地のうち「番地」は省略した。以下同じ。)

事実証明書

  1. 平成17年1月26日付け「編入目前 課税か否か 悩む美原町、基準に差」などの見出しがある朝日新聞の写し(疎甲第1号証)
  2. 堺市市税条例の抜粋(疎甲第2号証)
  3. 美原町税条例の抜粋(疎甲第3号証)
  4. 固定資産評価基準解説(土地篇)の写し(疎甲第4号証)

(いずれも掲載を省略。)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成17年2月14日にこれを受理した。
 なお、本件は美原町監査委員に対して請求があったものであるが、平成17年2月1日付け堺市と美原町の合併に伴い、堺市監査委員が事務を引き継ぎ、受理決定し監査を実施したものである。

2 監査を行った監査委員

 平成17年2月14日から同年3月6日までは、吉川敏文、辻宏雄、曽我部篤爾、小田久和が監査を行った。平成17年3月7日から同年3月28日までは、吉川敏文、辻宏雄、曽我部篤爾、西林里子が監査を行い、合議により監査の結果を決定した。

3 監査対象事項

 監査請求書に記載された事項等を勘案して、監査対象を次のとおりとした。
 旧美原町fに所在する地区共有財産とされる2件の建物及びbに所在する土地(貯留池敷地)に対して、固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の賦課徴収を違法又は不当に怠る事実があるのかどうか。当該怠る事実によって、堺市(旧美原町)に損害が生じているのかどうか。
 なお、請求人は、固定資産税の賦課徴収を違法又は不当に怠る事実について是正を求めて本件監査請求を行っているが、地方税法(昭和25年法律第226号。以下「地税法」という。)第702条の8第1項は、都市計画税の賦課徴収は固定資産税の徴収の例によるものとし、同税の賦課徴収とあわせて行うことを規定しているので、都市計画税についても監査の対象とした。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

 請求人から、平成17年2月18日付けで自治法第242条第6項に規定する証拠の提出及び陳述を行わない旨の申出書が提出され、同日、これを収受した。

5 監査対象部局

 美原支所及び財政局(本件に係る事務は、合併前の美原町(総務部税務課)が所掌していたが、堺市と美原町との合併により、美原支所(総務部税務課)が所掌し、財政局(税務部資産税管理課)が固定資産税等の賦課に係る事務の指導及び支援並びに企画調整に関することを所掌しているので、美原支所及び財政局を監査の対象部局とした。)

第3 監査対象部局の説明

 本件について、市長に対して請求に係る意見書(以下「意見書」という。)の提出を求めるとともに監査対象部局の職員(以下「関係局職員」という。)から事情を聴取した。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

 平成17年3月2日に関係局職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
美原支所 総務部長、税務課長 ほか
財政局 財政局長、税務部長、税務部副理事兼資産税管理課長、資産税管理課参事 ほか
 なお、本件は平成17年2月1日に提出があった住民監査請求(堺市の固定資産税に関する件)と関連する事案であるので併合して事情を聴取した。
 また、この事情の聴取に際し請求人の立ち会いはなかった。

2 説明の概要について

(1) 事実関係の確認

 請求人が指摘するf地区の2件の家屋(以下それぞれを「f1地区会館」、「f2地区会館」という。)及びbの土地について、次の事実関係(請求人が賦課徴収を求めていると考えられる平成10年度から平成16年度までの期間(以下「請求期間」という。)を対象とした。)の確認を行った。
ア 本件家屋及び土地の所有者及び利用状況等
 (ア) f1地区会館の家屋
 美原町fの土地(土地の登記名義人は旧美原町)に所在する未登記のf地区共有財産である。
 昭和43年竣工の鉄筋コンクリート造3階建てで、1階は地区住民の福祉の増進に利用されている施設(以下「会館施設」という。)と賃貸の共同住宅に利用されている施設(以下「賃貸アパート」という。)がある。2階及び3階は賃貸アパートとして利用されている。
 会館施設の使用料及び賃貸アパートの賃貸料は、すべてf区会の収入となっており、地区の発展及び地区住民の福祉増進のために支出されている。
 (イ) f2地区会館の家屋
 美原町fの土地(土地の登記名義人は旧美原町)に所在する未登記のf地区共有財産である。
 平成12年竣工の鉄骨造3階建てで、1階は会館施設と喫茶コーナーがある。2階は会館施設と眼科医院があり、3階には眼科医院と歯科医院がある。
 会館施設の使用料並びに喫茶コーナー、眼科医院及び歯科医院の賃貸料は、すべてf区会の収入となっており、地区の発展及び地区住民の福祉増進のために支出されている。
 (ウ) bに所在する土地(G池敷地)
 本件土地は、G池という耕地かんがい用の用水貯留池である。登記名義人は、大字h(共有地)と大字b(共有地)(持分は各2分の1)である。
 耕地かんがい用として広く一般の利用に供することができる状態にあり、現に貯留用水を利用して耕作を行っている者がある。
 なお、平成17年2月14日に行った現地確認では、貯留池の一部にデッキプレートが構築され、当該構築物上にA社美原店の店舗が建築されているが、当該建物は平成16年9月の新築家屋であり、平成16年度の賦課期日(平成16年1月1日)においては、デッキプレート及び家屋は存在していない。
イ f1地区会館及びf2地区会館の建設の経緯等
 (ア) f1地区会館
 本件会館は、当時、地区内に地区公民館的な施設が木造の小規模なもののみであったため建設されたもので、1階にコミュニティ施設部分が設けられた。
 賃貸アパートは、建設当時、府営住宅の入居資格を満たさない地元住民を優先的に入居させるため設けられたものであり、家賃は低額に設定され、公営住宅を補完する役割や福祉住宅的な性格を有していた。現在においても、基本的な役割、性格に変化はない。
 (イ) f2地区会館
 f区会は、当初、老人福祉センターを建設し、地区公民館的な施設のほか、当時美原町内にはなかった眼科及び耳鼻咽喉科の医療施設を設ける予定であった。眼科医院は、f区会が会館内に招致することができた。この間に耳鼻咽喉科医院が美原町内に開設されたため、他の診療科目の医療施設を招致することに変更した。このとき、町内の歯科医院が府道建設に伴い移転先を探していたが、遠方へ移転することは地元患者の利便性を低下させるものであると考え、会館での開院を招致したものである。
 本件会館は、高齢者や障害者に優しい施設であり、旧美原町ふれあいバスの停留所を会館前に設置するなど、地区住民を含む町民全体の福祉の増進につながる施設として利用されている。
 喫茶コーナーは、建設の目的から会館内で飲食も賄えることが必須であると考え設置されたものである。また、同コーナーは、飲食客以外であっても、高齢者が語らい、囲碁や将棋等で和やかに過ごせる場及び住民の会議スペースとして開放されている。
ウ 固定資産税等の課税状況
 (ア) f1地区会館である家屋
 請求期間の各年度において、旧美原町税条例(昭和38年条例第1号。以下「旧町税条例」という。)第35条第1項第6号の規定を適用し、固定資産税等を全額減免している。
 (イ) f2地区会館である家屋
 平成12年の竣工のため初年度課税が平成13年度であり、同年度から平成16年度までの各年度において、旧町税条例第35条第1項第6号の規定を適用し、固定資産税等を全額減免している。
 (ウ) G池敷地
 請求期間の各年度において、公共の用に供するため池であるとして地税法第348条第2項第6号及び第702条の2第2項の規定により固定資産税等を非課税としている。

(2) 請求についての考え方及び意見

ア f1地区会館である家屋
 旧町税条例第35条第1項第6号は、地税法第367条で「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる」とされていることを受けて、規定されたものである。
 また、地税法第367条の「特別の事情がある」として市町村長に減免の対象を委任した条例の規定は法に反するとはいえないとされている(東京地方裁判所 平成4年(行ウ)第100号 平成5年7月16日 東村山市私立幼稚園固定資産税免除損害賠償等請求事件)ため、旧町税条例第35条第1項第6号の規定については適法であると考える。
 固定資産税の減免は公益性の観点から行うことも可能であり、公益性をどのように判断するかは市町村長の裁量であるとされている。ただし、裁量権の行使に逸脱又は濫用があったと認められるときに限り違法となるとされている(上記東京地裁判決)。
 本件家屋は、請求期間の各年度において、上記(1)のア(ア)及びイ(ア)の事由から当時の美原町としての様々な諸状況を勘案し全体の公益性を判断して、旧町税条例第35条第1項第6号の規定を適用し固定資産税等の減免を行ったものである。
 以上から、本件家屋について、請求期間の各年度において固定資産税等の賦課徴収を怠る事実はないものである。
イ f2地区会館である家屋
 旧町税条例第35条第1項第6号の規定の適法性、長の裁量権の行使の範囲については上記(2)のアと同様である。
 本件は平成13年度から平成16年度までの各年度において、上記(1)のア(イ)及びイ(イ)の事由から当時の美原町としての様々な諸状況を勘案し全体の公益性を判断して、旧町税条例第35条第1項第6号の規定を適用し固定資産税等の減免を行ったものである。
 以上から、本件家屋について、平成13年度から平成16年度までの各年度において固定資産税等の賦課徴収を怠る事実はないものである。
ウ G池敷地
 ため池とは、耕地かんがい用の用水貯留池であるとされており、地税法で非課税とされているのは「公共の用に供するため池」である。本件土地は、上記(1)のア(ウ)の利用状況から耕地かんがい用の用水貯留池であるとともに、広く一般の利用に供することができる状態にあり、現に当該貯留用水を利用して耕作を行っている者があることから、「公共の用に供するため池」となる。
 以上から、地税法第348条第2項第6号及び第702条の2第2項の規定を適用して非課税認定したことは適法であり、請求期間の各年度において固定資産税等の賦課徴収を怠る事実はないものである。

第4 監査の結果

1 本件に係る事実

関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 固定資産税について

ア 概要
 固定資産税は、固定資産(土地、家屋、償却資産)に対して当該固定資産所在の市町村がその所有者に課すことのできる普通税である(地税法第5条第2項第2号、第342条第1項、第343条)。
 旧美原町では、旧町税条例第2条第1項第2号で本税を課するものと規定している。旧美原町の固定資産税の税額は、当該固定資産の課税標準額に100分の1.4を乗じた額である。
イ 減免に関する規定
 地税法上の減免とは、地方団体が法令及び条例の定めるところにより課税権を行使したものについて、その税額の全部又は一部を免除することをいう(自治省固定資産税課編「固定資産税逐条解説」)。
 地税法第367条は、「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる」と規定している。
 旧町税条例第35条第1項は、第1号から第6号までの一に該当する者であって町長が特に必要があると認めるときは、固定資産税を減免することができると規定し、貧困により生活のため公私の扶助を受ける者などを該当する者として列挙している。このうち、同項第6号に「前各号に類するもののほか特別の事情がある者」とする規定がある。
 旧美原町事務決裁規程(昭和61年訓令第1号)第4条別表第1は、「町収入の減免に関すること」のうち、比較的重要なものは助役、軽易なもの又は定形的なものは部長が専決することができると規定している。
ウ 非課税に関する規定
 地税法上の非課税とは、地方団体が課税することを禁止していることをいい、地方団体の意思のいかんにかかわらず、課税することができないものである点において減免とはその性格を異にする(自治省税務局編集「地方税用語辞典」を要約。)ものである。
 地税法第348条第2項は、固定資産税を課すことができない固定資産を列挙し、第6号において「公共の用に供する用悪水路、ため池、堤とう及び井溝」が規定されている。

(2) 都市計画税について

ア 概要
 都市計画税は市町村が課することのできる目的税の一つであって(地税法第5条第6項第1号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づいて行う都市計画事業等に要する費用に充てるため、都市計画区域のうち、同法に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、当該土地又は家屋の所有者に課するものである(地税法第702条第1項)。
 旧美原町では、旧町税条例第2条第2項第1号で本税を課するものと規定している。旧美原町の都市計画税の税額は、当該土地又は家屋の課税標準額に税率100分の0.2を乗じた額である。
イ 減免に関する規定
 地税法第702条の8第7項は、都市計画税を固定資産税とあわせて賦課徴収する場合において、市町村長が第367条の規定によって固定資産税を減免したときは、当該納税者に係る都市計画税についても、当該固定資産税に対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものとすることを規定している。
 旧町税条例第81条第1項及び第2項は、都市計画税は、特別の事情がある場合を除いて固定資産税とあわせて賦課徴収すると規定している。
ウ 非課税に関する規定
 地税法第702条の2第2項は、「地税法第348条第2項…の規定により、固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない」と規定している。

(3) 本件家屋及び土地について

ア f1地区会館の家屋
 本件家屋は未登記の建物であり、納税義務者をf区長としている。
 本件会館内の賃貸アパートが公営住宅を補完する役割を有するなど、会館の公益性、公共性を判断し、旧町税条例第35条第1項第6号の規定を適用し、固定資産税等を全額減免している。過去の課税台帳兼名寄帳の評価額、固定資産税額欄等が0円に更正されているという関係局職員の陳述などからすると、少なくとも請求期間の各年度において全額減免が行われているものと思われる。
 なお、関係局職員の陳述によれば、納税義務者から旧町税条例第35条第2項に規定する固定資産税(都市計画税)減免申請書(以下「減免申請書」という。)は提出されていないとのことである。
イ f2地区会館の家屋
 本件家屋は未登記の建物であり、家屋新築届により納税義務者をf区長としている。
 当時の美原町にはなかった眼科医院の招致は地元のみならず町全体のメリットであることなど、会館の公益性、公共性を判断し、平成13年度の初年度課税分から旧町税条例第35条第1項第6号の規定を適用し、固定資産税等を全額減免している。
 減免申請書は、f区長名による平成15年度分についてのみ提出されていることが確認された。
ウ G池敷地
 本件土地の登記名義人は、大字h(共有地)と大字b(共有地)で持分は各2分の1であり、地目はため池である。
 固定資産税は「公共の用に供するため池」として地税法第348条第2項第6号の規定により非課税とし、都市計画税も同法第702条の2第2項の規定により非課税としている。いつの時点から非課税とされているかは明確ではないが、相当以前から当該の取り扱いがなされており、毎年撮影する航空写真を活用して現況確認が行われている。また、平成16年度は、本件土地に新築された家屋の調査時に土地についても現況確認が行われている。
 本件土地は、利用状況から耕地かんがい用の用水貯留池であるとともに、広く一般の利用に供することができる状態にあり、現に当該貯留用水を利用して耕作を行っている者がある。
 また、本件土地に建設されたA社美原店の家屋は平成16年9月に新築されたもので、平成16年度の賦課期日である平成16年1月1日においては、デッキプレート及び家屋は存在していない。このことは、意見書に添付された平成16年1月撮影の航空写真によって確認することができる。

2 本件に係る判断

(1) f1地区会館及びf2地区会館の家屋について

ア 固定資産税の減免については、地税法第367条の「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる」とする規定を受け、旧町税条例第35条第1項が規定されている。
 本件は、会館が有する公益性、公共性を判断し、旧町税条例第35条第1項第6号の「特別の事情がある者」に該当するものとして、全額減免を行ったというものである。
イ 地税法第367条に規定する「その他特別の事情がある者」には、公益上の必要があると認められる者も含まれるとされており(前掲「固定資産税逐条解説」)、その範囲を定める規定もないことから、公益上の必要があるかどうかは、当該市町村における自主的な判断に委ねられているものと考えられる。そして、旧町税条例の規定に減免における公益上の必要がある者を具体的に挙げていないのは、社会経済情勢により公益性の有無の判断も変化していくことなどを考慮して、その決定をその都度の町長の判断に委ねたものと解するのが相当である。
 したがって、町長が公益性の有無を認めるかどうかについては、当該固定資産税の減免という手段によって達成しようとする行政目的のもとにおいて行使される町長の裁量権に委ねられていたものと考えられるから、町長の裁量権の行使に逸脱又は濫用があったと認められる場合には減免決定が違法とされるというべきである。
ウ これを本件についてみると、f1地区会館においては賃貸アパートが公営住宅を補完し福祉的性格を有していること、f2地区会館においては、眼科医院の招致が町全体の利益になっていることや高齢者の憩いの場として機能していることなどを総合的に検討されたことがうかがえる。そして、本件会館の役割や機能などが公益に資するものであり、公共性を有するものであると判断した当時の美原町長の決定は理解できるものである。
エ よって、本件2件の会館に公益性を認めた町長の裁量権の行使に逸脱又は濫用は認められないことから、本件家屋について全額減免を行っていることに違法性・不当性はないものと判断する。

(2) G池敷地について

ア 本件土地は、意見書及び関係局職員の陳述によれば、耕地かんがい用の用水貯留池としての機能を有しているとともに、広く一般の利用に供することができる状態にあり、現に当該用水を利用して耕作している者があるという。
 地税法第348条第2項第6号は、「公共の用に供する用悪水路、ため池、堤とう及び井溝」に対しては固定資産税を課することができない旨を規定している。同条同項は、その固定資産の性格及びその固定資産が供されている用途にかんがみ、非課税とすべきものを定めたものとされている(前掲「固定資産税逐条解説」)。「公共の用に供する」とは「その所有者が何らの制約を設けず、広く不特定多数人の利用に供すものをいう(昭和28年7月30日 自税市発第180号 三重県総務部長あて自治庁市町村税課長回答)と解されている。また、「ため池」とは耕地かんがい用の用水貯留池をいう(前掲「固定資産税逐条解説」)とされている。
イ 請求人は、自治省資産評価室編「固定資産評価基準解説」(土地篇)に記載された「分断し建物が新築された池沼の一部の地目と評価について」を引用している(以下「引用事例」という。)が、これは、池沼の一部に、分筆後、デッキプレートが構築され、その上に家屋に該当する建物が建築された場合は、地形的な制限による減価要因を考慮するとしても当該部分を「宅地」としての地目認定し価格評価をしなければならず、本件G池が耕地かんがい用の貯留池であることをもって非課税とすることは違法であると述べているものと解される。
 引用事例が対象とする固定資産は、「池沼」である。池沼とは「水の貯留池をいうものである。池沼は、自然のもの人工のものの別を問わず、堀、養魚池(食用、観賞用)、蓮池、ダム建設による水没地等をも含むものである」とされ、具体的な認定基準として、「公共の用に供さないため池については、登記上の地目はため池となっているが、評価に当たっては池沼とする」ことが示されている(前掲「固定資産評価基準解説(土地篇)」)。すなわち、地税法上は、「公共の用に供するため池」以外のため池は「池沼」として評価され、「ため池」と「池沼」は区別されるべきものである。引用事例は「池沼」について評価等の基準を示したものであり、「公共の用に供されるため池」である本件G池には適用されないものと考える。
 さらに、本件G池のデッキプレート及び家屋は、少なくとも平成16年度の賦課期日である平成16年1月1日までには構築又は建築されていなかったのであるから、請求人の引用事例は本件について該当しないものである。
ウ また、請求人は上記の引用事例に続けて、「当該ため池が収益用建物の用に供する地盤であることには、間違いはない」と述べている。これは、上記引用事例における建物と本件デッキプレート上の建物が、いずれも収益を目的とする地税法上の「家屋」に該当すること及び本件土地(貯留池敷地)から使用収益があるので非課税とすることは違法であるとの主張であると思われる。
 そこでこれを検討すると、地税法第348条第2項の非課税規定は、既述のとおり、固定資産の性格及び用途にかんがみて非課税とすべきものを定めたものとされており、公共の用に供される固定資産についても、まったく収益がない場合にのみ非課税とするというような限定はされていない。本件土地は、耕地かんがい用として公共の用に供されているとのことであるから、仮に本件土地から使用収益があったとしても、そのことがこれまで有していた当該土地の性格及び用途に変更をもたらすものではないから、非課税とすることに違法性はなく、妥当性を欠くものとはいえない。加えて、本件G池のデッキプレート及び家屋は、少なくとも平成16年度の賦課期日である平成16年1月1日までには構築又は建築されておらず、これらからの使用収益もなかったものと考えられるから、請求人の主張は採用することができない。
エ したがって、本件土地は、「公共の用に供するため池」に該当することから、固定資産税等を課していないことに違法性、不当性はないものと判断する。

(3) 結論

 以上のことから判断すると、f1地区会館及びf2地区会館の家屋に係る固定資産税等を全額減免とし、G池の土地に係る同税等を課していないことについては、いずれも適正であるということができ、違法・不当に賦課徴収を怠っている事実は認められない。
 請求人は5年(地税法第18条に規定する地方税の徴収権の時効消滅までの期間をいうものと考えられる。)又は7年(地税法第17条の5第4項に規定する不正の行為により税額を免れた地方税について賦課決定等が可能である期間をいうものと考えられる。)にさかのぼって関係者らに対して、納付を怠った固定資産税等の相当額を請求することを求めているが、上記のとおり、賦課徴収を怠る事実はなく、また、納税義務者が不正の行為により税額を免れたという事実もない。
 よって、請求人の主張には理由がないものと判断する。

監査結果に添える意見

1 減免決定に係る事務について
 本件監査において、減免に係る事務処理を調査したところ、条例や規則に規定された手続きに遺漏があるものがあった。
 これらの事務処理は、特に裁量判断に係る事務であることから、住民の税負担の公正性、公平性に対する信頼を失いかねないものである。
 よって、関係部局は一連の事務処理方法を再点検のうえ、早急に改善策を講じられ、税行政の信頼の確保に努められたい。

2 地税法第367条の規定の適用による公益上の必要性に基づく減免の判断は、個々の事情を考慮し長の裁量権の範囲内で行われてきたものである。しかし、社会情勢等の変化や政策目的の遂行状況に照らして、現在の減免が真に必要であるかを検証するとともに、市民にとって減免の基準がより分かりやすくなるような工夫をされたい。
 また、今後、旧堺市住民と旧美原町住民との間で税負担の公平性を欠くことのないよう十分な配意をされたい。

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