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平成16年4月8日 堺市監査委員公表 第18号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第18号

 平成16年3月8日に提出のあった地方自治法第242条第1項の規定に基づく堺市職員措置請求について、同法同条第4項の規定に基づき監査を行ったのでその結果を次のとおり公表する。

平成16年4月8日

堺市監査委員 西村 昭三
堺市監査委員 松本 光治
堺市監査委員 曽我部 篤爾
堺市監査委員 小田 久和

堺市職員措置請求に係る監査結果

平成16年3月8日請求

<第2期庁舎の喫煙場所設置工事の差し止めについて>

目次

堺市監査委員公表第18号

第1 監査の請求

1 請求人

2名(省略)

2 監査請求書の提出

平成16年3月8日

3 請求の要旨

 堺市長は、2004年4月1日に供用開始予定の新市庁舎内にある市議会スペースに喫煙場所を設置するため、190万円の予算で工事を実施しようとしています。
 他方、堺市広報(2004年3月1日号)によれば、新庁舎の供用開始と同時に市庁舎及び市施設を全面禁煙にするとの方針を発表しました。
 同広報には、「この法律(注:健康増進法)の趣旨を踏まえ、健康づくりの先進都市として、市庁舎や市の施設では建物内を禁煙とし、学校、幼稚園、保育所(園)では敷地内を禁煙とします。」との記載があります。
 にもかかわらず、市庁舎内の一部に喫煙場所を設けることは、健康増進法(平成14年法律第103号)第25条に定める受動喫煙防止のための措置を講ずべき努力義務に反するものです。また、全市施設において禁煙を実施しながら、市議会内に「治外法権」とも言える場所を設けることは、同法第3条に定める「教育活動及び広報活動を通じた健康の増進に関する正しい知識の普及」に努めるという地方公共団体の責務にももとり、違法です。
 さらに、市役所に勤務する職員や市役所を訪れる市民などには「禁煙」を求めながら、市議会議員だけが特別に「喫煙」を認められるという考え方は、あまりにも非常識です。議員を特別扱いしたり、議員が多く利用する場所にだけ禁煙除外の設備をつくることは極めて不当な公金支出です。
 上記各理由により、本件工事の実施は、堺市及び堺市民に多大の損害を与えるものであり、当該工事に係る今後の公金支出を停止するために必要な措置を講ずべきことを求めます。
 また、当該工事は2004年3月15日に着工が予定されており、地方自治法第242条第3項に規定する「暫定的停止勧告」を行うことも併せて求めます。

(原文どおり)

事実証明書

  1. 本件工事について、請求人が庁舎管理担当職員、市議会へ事実確認を行った日にち等を記した文書
  2. 堺市議会議員の個人ホームページから本件工事の関連部分をプリントアウトしたもの
  3. 第2期庁舎の11階平面図
  4. 分煙室の設計図

(いずれも掲載を省略)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成16年3月11日にこれを受理した。
 なお、受理の決定に併せて、本件工事が健康増進法(平成14年法律第103号)に直ちに違反するとはいえず、また、原状回復が不可能になるとは認められないことから、自治法第242条第3項の規定に基づく停止勧告は行わないことを決定し、同日、請求人に通知した。

2 監査対象事項

 請求人は、監査請求書において、「本件工事に係る今後の公金支出を停止するために必要な措置を講ずべきこと」を求めているが、監査請求書及び事実証明書を勘案すると、自治法第242条第1項に規定する「契約の締結・履行及び公金の支出を防止するために必要な措置」として、本件工事の施工の差し止め及び当該工事費の支出の差し止めを求めているものと解されるので、監査対象事項を次のとおりとした。
 第2期庁舎の11階に分煙室を設置する工事の契約を締結し履行すること及び当該工事費を支出することが違法、不当であるのかどうか。違法、不当であるとすれば、工事の施工及び工事費の支出を防止すべきであるのかどうか。

3 請求人の証拠の提出及び陳述

 自治法第242条第6項の規定に基づき、平成16年3月26日、請求人に対して証拠の提出及び陳述の機会を設けた。この陳述に際し、自治法第242条第7項の規定に基づく関係局職員の立ち会いはなかった。
 請求人2名は、陳述において、本件工事が健康増進法に違反し、全国的、国際的な受動喫煙防止の流れに反すること、議会の例外的特権は認められないことなど、請求の要旨の補足を行った。
 また、新たな証拠として、「堺市議会に喫煙室を設置する件についての監査請求の根拠と陳述」と題する文書、健康増進法第25条、未成年者喫煙禁止法本則、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約第8条、「受動喫煙防止対策について」(平成15年4月30日付け厚生労働省健康局長)と題する文書、「『職場における喫煙対策に関する指針』について」(平成15年7月10日付け人事院勤務条件局)と題する文書、当該監査請求や公共施設での喫煙への対応等について報じた新聞記事が提出された。
 なお、陳述日以降の提出を認めた他都市の庁舎における喫煙への対応状況が分かる資料について、新聞記事等を平成16年3月29日に、発言の訂正や追加を求める文書を同月30日にファックスにより受信した。

4 監査対象部局

総務局

第3 監査対象部局の説明

 本件について、市長に対して請求に係る意見書の提出及び監査対象部局の職員からの説明を求めた。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

 平成16年3月26日に監査対象部局の職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
 総務局 総務局長、総務部長、総務部次長兼総務課長、総務部副理事兼庁舎管理担当課長 ほか
 なお、この事情の聴取に際し、自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人2名の立ち会いを認めた。

2 説明の概要について

(1) 第2期庁舎の分煙室設置(工事)の経緯について

 平成15年5月1日に施行された健康増進法により、学校、官公庁施設など多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならないとされた。
 本市では、平成8年から受動喫煙防止の観点にたち、喫煙対策に取り組んできたが、平成16年1月の調査時点で、既に半数を超える市の施設において建物内禁煙を実施している。
 健康増進法の施行を機に、健康づくりの先進都市として本市の喫煙対策の実施状況を踏まえ、平成16年4月1日から、受動喫煙による市民や職員の健康への影響を防止するため、本市の公共施設の建物内では禁煙を実施し、健康都市・堺を推進する方針を定めた。
 一方、議会は、自治法に基づき市長から独立した権限を有する自律機関であり、そのことから、その事務執行に係るスペースは、議会が第一次的な管理権を有し、その範囲においては議会の自律権に基づく判断を尊重すべきものであると考える。
 今般の喫煙対策についても、庁舎内禁煙とした経緯や方針について十分説明を行い、議会の自律権の範囲でどう対応されるか検討を依頼した。議会として、受動喫煙防止の趣旨を十分踏まえた検討が行われた結果、既に禁煙としている議場、傍聴席、委員会室に加え、議員控室、会議室、応接室等の場所を禁煙とするが、段階的な措置として、1か所分煙スペースを設けられたいとの申し入れがなされた。
 受動喫煙防止の趣旨に沿った申し入れであることから、議会の自律権を尊重して、これを受け入れ、分煙室を設置することとしたものである。

(2) 請求人の主張に対する意見

ア 健康増進法第25条及び同法第3条に違反するということについて
 健康増進法第25条は、多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならないと規定している。
本件分煙室は、健康増進法を受けて示された都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知「職場における喫煙対策のためのガイドラインについて」(平成15年5月9日基発第0509001号。以下「職場ガイドライン」という。)により整備しており、同法の趣旨に沿うものである。
 なお、本件分煙室の規格や構造等は、同ガイドラインに準拠したもので、通常多数見られる分煙室の仕様と同程度のものである。
 分煙室設置後の日常の清掃は、本庁舎全体の清掃業務の範囲として行い、小規模な修繕も本庁舎の設備運転管理業務のなかで行う。浮遊粉じん濃度等の空気環境の管理についても、これまで2か月に1回行ってきた本庁舎の測定に含めて行う。
 健康増進法第3条では、地方公共団体の責務が定められているが、本件分煙室の設置は同法の趣旨に沿っており、これに違反するものではない。
イ 庁舎内全面禁煙の方針と分煙室の設置について
 市の施設では、受動喫煙防止の取り組みにより、平成16年1月時点で、半数を超える施設が建物内禁煙を実施している現状に鑑み、あえてこれらの施設に分煙室を設置することは、せっかくの到達点を後退させ、そのための予算措置を講ずることはそれこそ市民の理解を得られず、一方、本庁舎のみに分煙室を設けることは、他の施設との整合性を欠くこととなることから、議会棟以外にも分煙室を設置することは適当でないと判断したものである。
 議会棟に分煙室を設置することについては、前記のとおり、議会の自律権を尊重し、かつ、分煙室は受動喫煙防止の趣旨に沿ったものであると判断している。
ウ 議員が多く利用する場所にだけ禁煙除外の設備を作るという主張について
 今般の喫煙対策についても受動喫煙防止の観点から、庁舎内禁煙とした経緯や方針について十分説明を行い、議会の自律権の範囲でどう対応されるか検討を依頼した。
 議会として受動喫煙防止の趣旨を十分踏まえた検討が行われた結果、既に禁煙としている議場、傍聴席、委員会室に加え、今般、議会として統一的に議員控室、会議室、応接室等の場所を禁煙とするが、段階的な措置として、1か所分煙スペースを設けられたいとの申し入れを受けたものである。
 そして、この申し入れが受動喫煙防止の趣旨に沿ったものであることから、議会の自律権を尊重して、これを受け入れ、分煙室を設置することとしたものである。

第4 監査の結果

1 本件に係る事実

関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 健康増進法について

 健康増進法は、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ること(第1条)を目的として、平成14年8月2日に公布、平成15年5月1日から施行された。
 同法第3条は、「国及び地方公共団体は、教育活動及び広報活動を通じた健康の増進に関する正しい知識の普及、健康の増進に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに研究の推進並びに健康の増進に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、健康増進事業実施者その他の関係者に対し、必要な技術的援助を与えることに努めなければならない」と規定している。また、同法第25条は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と規定している。

(2) 本市の喫煙に対する取り組みについて

ア 本庁舎の喫煙対策として、平成8年12月から高層館の各フロアに空気清浄機を取り付けた喫煙コーナーを設けた。平成13年7月には、本庁舎共用部分(待合、廊下、トイレ等)を禁煙とし、同年11月には高層館1階に分煙機を設置するなどの対策を講じてきた。
イ 市民に対しては、保健衛生部(当時。現在の健康部)が15,000名を対象とする喫煙等に関するアンケート調査(平成13年2月)を行ったほか、「世界禁煙デー」を中心とした禁煙・分煙についての情報提供・相談なども実施している。
 また、本市は、平成10年3月に「一人ひとりが健やかでいきいきと暮らせるまち」を築くことを誓い、「健康都市・堺」とすることを宣言した。
 平成14年1月には、「健康さかい21」(基本計画)を策定し、たばこへの取り組みとして、「吸う時は分煙を心掛け、必ずマナーを守ること」などを市民自身の行動目標とし、「公共の場や職場・家庭での禁煙・分煙の推進」などを関係機関の事業目標として掲げた。
ウ 職員に対しては、喫煙に関するアンケート調査の実施(平成10年11月、平成15年2月)や禁煙のためのサポート体制を作る(平成13年8月から)など、喫煙対策を進めてきた。
エ 平成14年7月に関係局の総務担当課長等で構成する庁内喫煙対策検討会議を設置し、全庁的な喫煙に対する方針について検討を始めた。この検討会議の議論やこれまで実施してきた喫煙対策を踏まえて、平成16年2月6日に、受動喫煙による市民や職員の健康への影響を防止するため、同年4月1日から第2期庁舎を含む本市施設の建物内では禁煙を実施することを基本方針とする「本市施設における喫煙対策」(以下「市喫煙対策方針」という。)及びその実施にあたっての具体の対策を示した「本市施設における喫煙対策実施要領」を策定した。
 そして、広報さかい(2004年3月1日号)や本市のホームページ、ポスター等で、市施設を禁煙とすることについて、市民に理解と協力を求めた。
 この市喫煙対策方針に基づき、平成16年4月1日から、本庁舎、市民会館などの115施設を建物内禁煙とし、公用車570台の全車禁煙、146の学校・幼稚園での敷地内禁煙を実施している。

(3) 議会への対応について

ア 平成15年8月に、総務局長が議長、副議長や各会派等に対して受動喫煙防止のために市施設の建物内での禁煙を検討している旨を説明し、議会棟における対応について検討の依頼を行った。平成16年1月28日には、総務部長が市喫煙対策方針案を説明し、議会として自律権の範囲内での対応について取りまとめを議長に依頼した。翌日、「既に禁煙としている議場、傍聴席、委員会室に加え、統一的に議員控室、会議室、応接室等を禁煙とするが、段階的な措置として、1か所分煙スペースを設けられたい」旨の申し入れが行われた。
イ 平成16年2月6日に開催された定例庁議において、当該申し入れは受動喫煙防止の趣旨に沿ったものであることから、議会の自律権を尊重して、これを了承したものである。

(4) 本件分煙室の設置工事について

ア 本件工事は、平成12年9月に着工し平成16年4月5日から使用を開始した第2期庁舎11階にある議場の南東ロビー部分に、約20平方メートルの分煙室を設けるために行ったものである。「第2期庁舎11階議場ロビー間仕切工事」(以下「間仕切工事」という。)と「第2期庁舎11階議場ロビー換気設備工事」(以下「換気設備工事」という。)の2件の名称の工事が施工された。間仕切工事は、パーテイションでロビーを間仕切り、通風用の窓を設けたドアの取り付けなどを行い、換気設備工事は、換気扇、排気ダクト設備等を取り付けたものである。
イ 両工事の施行起案は総務課長が決裁し、平成16年2月6日に随意契約の方法によって、間仕切工事は、竹中・戸田・国誉・堺建設工事共同企業体と契約金額955,500円、換気設備工事は、きんでん・クリハラント・富田電機建設工事共同企業体と契約金額854,333円で契約を締結した。契約上の履行期間は、いずれも平成16年2月6日から同年3月31日までであった。
 監査請求の受理決定日(平成16年3月11日)には、排気ダクト設備工事の一部が施工されており、また、監査請求書記載の「2004年3月15日に着工が予定されており」という点については、11階ロビーに資材等を持ち込んで作業を開始する予定日であり、現に作業が行われていたことが確認できた。
 本件工事の完成検査は、平成16年3月30日に行われたが、監査の結果を決定した時点においては、工事費の支出の事務手続きは完了していない。

2 本件工事の契約の締結及び履行並びに工事費の支出に係る判断

(1)健康増進法第25条に違反することについて

ア 請求人は、広報さかい2004年3月1日号において、「この法律(注:健康増進法)の趣旨を踏まえ、健康づくりの先進都市として、市庁舎や市の施設では建物内を禁煙とし、学校、幼稚園、保育所(園)では敷地内を禁煙とします」との記載があるにもかかわらず、市庁舎内の一部に喫煙場所を設けることは、健康増進法第25条に定める受動喫煙防止のための措置を講ずべき努力義務に反すると主張しているので、このことについて検討する。
イ 健康増進法第25条は、官公庁施設等の多数の者が利用する施設を管理する者に、利用者について、受動喫煙防止のために必要な措置を講ずるよう努めることを規定したものである。本条は努力義務を課した規定であり法文の解釈上は、本件工事の施工が本条に直ちに違反するものではないことは受理決定の通知に併せて記載したとおりである。
ウ しかし、健康増進法の制定趣旨などから、本件分煙室の設置が本条に違反するのか否かについてさらに検討を加える。
 (ア)健康増進法の目的は、国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図る(第1条)ことにある。
 また、同法第25条の制定趣旨については、都道府県知事・政令市長・特別区長あて厚生労働省健康局長通知「受動喫煙防止対策について」(平成15年4月30日健発第0430003号。以下「受動喫煙防止対策通知」という。)において、「受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである」とされている。さらに同通知は、受動喫煙防止の措置について、「当該施設内を全面禁煙とする方法と施設内の喫煙場所と非喫煙場所を喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないように分割(分煙)する方法がある。全面禁煙は、受動喫煙防止対策として極めて有効であるが、施設の規模・構造、利用状況等は、各施設により様々であるため、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進める必要がある」と記載している。
 (イ)健康増進法第25条に規定する施設を管理する者とは、「2 本件工事の契約の締結及び履行並びに工事費の支出に係る判断」の(3)のアで記載するように、本件第2期庁舎を含む市庁舎については、物的に公有財産の管理権を有する市長を指すものである。
 (ウ)受動喫煙防止対策通知から健康増進法においても、受動喫煙防止のための方法として全面禁煙と分煙が認められており、全面禁煙の措置を課しているものではないことは明らかである。よって、分煙の具体策として設置した本件分煙室が受動喫煙防止対策として適切であれば、本条の目的・趣旨に反するものではなく、受動喫煙防止のための努力を怠っているともいえないと解することができる。
 (エ)受動喫煙防止対策として適切かどうかの目安として、受動喫煙防止対策通知は、分煙する際には、公共性等の当該施設の社会的な役割も十分に考慮に入れて、「分煙効果判定基準策定検討会報告書」(平成14年6月。以下「分煙判定基準報告書」という。)などを参考にしながら、喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないよう、適切な受動喫煙防止措置の方法を採用する必要があること、また、労働者のための受動喫煙防止措置については、職場ガイドラインに即して対策が講じられることが望ましいことを記載している。
 職場ガイドラインでは、施設・設備面の対策として、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策機器を設置し、これを適切に稼動させるとともに、その点検等を行い、適切に維持管理すること、また、職場の空気環境について、浮遊粉じんの濃度を0.15mg/立方メートル以下及び一酸化炭素の濃度を10ppm以下並びに非喫煙場所と喫煙室等との境界において喫煙室等へ向かう気流の風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずることが記載されている。分煙判定基準報告書にも同じ基準値が用いられている。
 本件分煙室は、喫煙場所と非喫煙場所をパーテイションで間仕切り、煙を拡散する前に吸引して屋外に排気する換気装置を取り付けたもので、職場ガイドライン等に沿った施設・設備ということができる。また、空気環境については、浮遊粉じん濃度等が実測されていないため、上記の数値を満たすかどうかについては不明であるが、施設・設備が職場ガイドライン等に沿ったものであり、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第4条第1項に規定する建築物環境衛生管理基準に基づき、本庁舎の各地点で浮遊粉じん濃度等を2か月に1回測定することになっており、そのなかに本件分煙室の測定も予定されていることから、適切な管理がなされるものと推察できる。
 よって、本件分煙室は、分煙のあり方としても職場ガイドライン等に沿っており、健康増進法第25条の趣旨・目的に反したものではない。
エ なお、健康増進法第25条は、官公庁等の施設管理者に受動喫煙防止のための措置を講ずる努力義務を課した規定であって、広報さかいに建物内を禁煙とするという記載があるにもかかわらず、本件分煙室を設けることは本条の規定に反するという請求人の主張については何ら理由がない。
オ したがって、本件分煙室を設置することが、健康増進法第25条に違反するものとはいえない。

(2)健康増進法第3条に違反することについて

ア 請求人は、全施設において禁煙を実施しながら、議会内に「治外法権」ともいえる場所を設けることは、健康増進法第3条に定める地方公共団体の責務にももとり、違法であると主張しているので、このことについて検討する。
イ 健康増進法第3条は、国及び地方公共団体が、(1)健康の増進に関する正しい知識の普及を図ること、(2)健康の増進に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに研究の推進を図ること、(3)健康の増進に係る人材の養成及び資質の向上を図ること、(4)健康増進事業実施者等に対し、必要な技術的援助を与えることに努めなければならない旨を規定したものである。
ウ 分煙の方法として、分煙室を設けることは前記のように健康増進法の趣旨や同法第25条に違反するものではなく、したがって、仮に分煙室を設置した場合であっても、分煙室の設置自体が健康増進の正しい知識の普及を妨げるとはいえないこと、情報の収集・提供や人材の養成、技術的援助の供与を何ら阻害するものではないことから、上記イの(1)ないし(4)のいずれの努力義務にも反するものではなく、健康増進法第3条に違反するという理由にはなり得ない。
エ したがって、本件分煙室の設置が、健康増進法第3条に違反するとはいえない。

(3)庁舎内の禁煙方針と本件分煙室設置の違法性・不当性について

ア 財産の管理は、自治法第149条第6号に長の担任事務の一つとして挙げられている。ここにいう「財産の管理」とは、「その財産の移転又は消滅を生ずることなくその性質を変更しない範囲内において使用し、収益し、維持改良し、信託し、時効を中断する等の法律上及び事実上の行為をいう」とされている(逐条地方自治法(新版第1次改訂版) 松本英昭著)。また、公有財産としての議事堂の管理権は首長に属するという行政実例(昭和37年3月27日 自治丁行発第10号 和歌山県議会事務局長あて行政課長回答)もあることから、本件議会棟(議場、委員会室、議員控室、議長及び副議長室、応接室、議会事務局の事務室、図書室その他議会活動のために存在する物理的施設・場所をいう。)を含む市庁舎の物的な面からする管理権は市長の権限に属するといえる。
 本市庁舎の管理は、堺市事務分掌規則(昭和47年規則第14号)第2条第3項及び別表第1により、「庁舎及び附帯施設の維持管理に関すること」は総務局総務部総務課の事務と規定されている。
イ 市庁舎の喫煙対策として、本件分煙室を設置するか否かについては、公有財産の管理権を有する市長の裁量に委ねられていると考えるのが相当である。そこで、本件分煙室の設置の経過や態様、設置実態等が建物内を禁煙とする市喫煙対策方針に照らして、著しく妥当性を欠くときは、裁量権の行使に逸脱又は濫用があるものと解されるので、このことについて検討する。
 (ア)地方公共団体の執行機関である長と議決機関である議会は、ともに住民を直接代表する機関であるとともに、両者は並列対等の立場にあり、相互のチェック・アンド・バランスにより適切な行政運営が期待されているものである。このようなことから、議会には、長その他の執行機関等から干渉を受けず、その内部運営について、自治的措置をとり得る自治・自律権(内部組織権、内部運営権、内部規則制定権等)を有している。
 このことは、国権の最高機関たる国会と同様の議会自治・自律の原則は認められないものの、地方議会についても、法律の定めるところにより、その権能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められている旨の最高裁判決(昭和42年5月24日大法廷判決 昭和38年(あ)第1184号 佐賀県議会公務執行妨害監禁職務強要被告事件)においても確認することができる。
 (イ)議会は一定の自治・自律権を有しており、議会棟の使用上又は運営上の管理は議会内部の運営に係るものであることから、その権限は議会にあると解するのが相当である。
 運用として、堺市議会事務局規則(昭和46年議会規則第3号)第2条には、堺市議会事務局の総務課庶務係の事務分掌の一つとして、議場その他議会関係各室の管理に関することが挙げられている。
 (ウ)長等の執行機関と議会とは、双方が、各々の機能とその分担を尊重し、認め合う良識ある相互関係を保ち、確立することが、適切な行政運営に必要なことはいうまでもない。
 市長が、このような議会との関係を斟酌し、かつ議会が有する自治・自律権を尊重しながら、市の施策について判断することは当然のことといえる。
 (エ)本件分煙室の設置については、総務局長や総務部長が議会に対して、建物内禁煙という方針について説明を行い、議会としての対応について検討を依頼した結果、既に禁煙としている議場、傍聴席、委員会室に加え、議員控室、会議室、応接室等の場所を禁煙とするが、段階的な措置として、1か所分煙スペースを設けられたい旨の申し入れがあり、分煙室を設置することは健康増進法の趣旨に反しないことから、これを受け入れたものである。
 議会の意思は、各議員間の合意により形成されるものである。建物内禁煙の方針を理解しつつも段階的措置として1か所喫煙スペースを設けられたいとの申し入れは、現時点ではやむを得ない到達点と推察され、市長が議会の自治・自律権を尊重して円満な解決を目指して、本件分煙室の設置を認めた判断も一定理解できる。
 (オ)平成16年1月に総務課が行った調査では、教育委員会の所管を除く95施設のうち55施設(57.9%)が執務室内を禁煙とし、この95施設のうちロビーなど市民が利用する部分を有する89施設では51施設(57.3%)が当該部分を禁煙としていた。
 (カ)上記のことを勘案すると、半数を超える施設で建物内禁煙を実施している現状から、あえてこれらの施設に分煙室を設置することはせっかくの到達点を後退させることになり、そのための予算措置を講ずることは市民の理解を得られず、一方、本庁舎のみに分煙室を設けることは他の施設との整合性を欠くものとなることから、議会棟以外にも分煙室を設置することは適当でないと判断したという関係局職員の主張は理解できるものである。
 (キ)受動喫煙防止対策通知においても、「施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進める必要がある」と記載されており、施設の利用状況等も考慮されるものである。
 (ク)本件分煙室の設置そのものは、施設・設備等が職場ガイドライン等に沿ったものであり、設置後の空気環境の測定も予定されていることなどから、健康増進法の趣旨に反するものではない。また、分煙室の清掃費や設備の修繕料等についても、庁舎全体の清掃や修繕として計上されるため、新たに特段の維持管理の経費を要するものではない。
 (ケ)一方、広報さかい2004年3月1日号や本市のホームページにおける「4月1日から市庁舎や市の施設が禁煙になります」、「市庁舎や市の施設では建物内を禁煙とし……ます」として、「受動喫煙防止のため、市民の皆さんの理解と協力をお願いします」という記載は、健康増進法の趣旨の実現に向けた市の強い決意を示したものであるが、本件分煙室の設置により、市の意思に疑念を生じさせ、建物内全面禁煙という方針について市民や職員の理解と協力が得にくくなるのではないかとの危惧もある。
 (コ)以上のことから、議場ロビーへの分煙室の設置は、議会の「段階的な措置として設けられたい」旨の申し入れを議会の有する自治・自律権を尊重して行ったものであること、分煙室の施設・設備の状況や今後の維持管理が健康増進法の趣旨に反しないこと及び設置の決定に至る経過や態様などを総合的に勘案すると、段階的な措置として分煙室を1か所設けられたいという議会の申し入れを受けた市長の判断は著しく妥当性を欠いたものとはいえず、市長の裁量権の行使に違法性又は不当性はないものと判断する。

(4) 工事請負契約の事務手続きについて

 本件分煙室の設置に係る工事請負契約については、前記「1 本件に係る事実」の(4)のとおりであり、その事務手続きについて関係書類を調査した結果、堺市契約規則(昭和50年規則第27号)等の関係規定に基づき適正に行われており、違法又は不当な点は認められなかった。

(5) 結論

 以上のことを総合的に検討すると、本件分煙室設置工事の契約を締結し履行すること及び当該工事費を支出することが違法又は不当であるとはいえず、本件工事費の支出の差し止めを求めるという請求人の主張には理由がないものと判断する。
 なお、請求人が求めている本件工事の施工の差し止めについては、平成16年3月30日に当該工事の完成検査を終えており、請求そのものの理由が失われたものと判断する。

監査結果に添える意見

 本件監査の結果は結論のとおり、請求人の主張に理由はない(一部は請求そのものに理由がない)ものと判断した。
 しかし、全国的にも極めて先進的な英断であると高く評価されるべき本庁舎の建物内禁煙の実施に際し、一部例外措置を残さざるを得なかったことは残念であり、このことについては市民に対して説明責任を果たす必要があると考える。
 今後は、分煙室の使用状況を十分掌握し適切に管理するととともに、議会自身の自主的な判断を得て、早期に庁内一致の建物内禁煙を実現されることを期待する。

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