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堺市
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平成16年12月2日 堺市監査委員公表 第42号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第42号

 平成16年10月5日に提出のあった地方自治法第242条第1項の規定に基づく堺市職員措置請求について、同法同条第4項の規定に基づき監査を行ったのでその結果を次のとおり公表する。

平成16年12月2日

堺市監査委員 吉川 敏文
堺市監査委員 辻 宏雄
堺市監査委員 曽我部 篤爾
堺市監査委員 小田 久和

堺市職員措置請求に係る監査結果

平成16年10月5日請求

 <下水汚泥コンポスト化事業業務委託について>

目次

堺市監査委員公表第42号

第1 監査の請求

1 請求人

3名(省略)

2 監査請求書の提出

平成16年10月5日

3 請求の要旨等

I.請求の要旨

●はじめに
1.堺市では、石津下水処理場で発生する下水汚泥の処理方法について、現状の焼却処理から超高温発酵菌によるコンポスト化に変更し、その業務を民間に委託することとした。そこで平成15年10月14日に上下水道局下水道部は、「堺市バイオソリッドコンポスト化事業」(石津下水処理場におけるバイオソリッドコンポスト化事業委託業務)を計画・実施することとし、市が本事業を委託する事業者は公募型プロポーザル方式により選定する旨の報道発表(別添資料1)を行った。その後、平成16年1月9日に堺市のホームページで募集要項を公表(別添資料2)し、公募を開始した。
 上記業務の募集要項には、以下の理念が明記されている。

*コンポスト事業化を図る事で、各種の有機物資源との融合コンポストにより、低コスト、省エネルギーで環境に優しい循環型システムが構築され、地球温暖化対策にも寄与するものである。
*現在、食品廃棄物、下水汚泥の処理方法は、焼却処分によるため、施設の建設費、焼却エネルギーは莫大となり、処理コストも高くなり、その問題解決が急務とされている。

2.参加表明提出8社の内、1社は書類不備につき不合格、最終的にX社、Y社、Z社が書類審査に合格した。
3.平成16年3月23日に庁内審査委員会において、提案内容38項目について総合評価(100点満点)を行った結果、Z社が第一位優先交渉事業者に決定された。
4.計画予定では、平成16年4月には本契約、平成16年10月より小規模稼動となっているが、現時点でも契約に至っていない。
●誰が
堺市上下水道局下水道部下水道計画課
●いつ、どのような財務会計行為を行なっているのか
1.本事業計画の準備段階として、堺市では平成13年度より超高温発酵菌なるものを購入しこれを用いて堆肥化の実験を実施している。この超高温発酵菌の購入先は今回の募集・選定で第一優先交渉者に選ばれたZ社であり、さらにZ社には堺市の元下水道OBが就職している。
 本計画の準備段階においては堺市とZ社が共同で実験を実施し、堺市はZ社等に対し、平成13年度に9,765千円、平成14年度に24,150千円支払っている。このような経緯のもと、その後の選定では以下に示すようにZ社が優位となるように処遇されていることから、堺市は当初からZ社との契約の意図があったと判断できる。
2.平成16年1月28日石津下水処理場において、現地見学説明会が開催された。説明会では入場時、参加者は所定の駐車場に車を駐車するよう指示を受けたが、Z社の関係者の1人だけは、駐車禁止区域である処理場内にある玄関直前の作業用道路に横付けして説明会に参加するとともに、車はアイドリングストップ厳守にもかかわらずエンジンをかけたまま待機していた。また説明に当たった下水道部のE課長・F主幹は気にする様子も無くその人と親しげに会話していた。
 「地球温暖化対策」を掲げるなかでのこのような振る舞い・特別扱いは、本計画の理念をも無視した不謹慎なものであり、応募者・選定者双方の倫理観・見識を疑うばかりでなく、癒着が感じられる。
3.本計画のもう一方の理念は「堺市の厳しい財政のもと処理コストの削減、初期投資の民間資金の活用」とされており、コストにおける評価を重要なポイントとしている。本措置請求書提出までの経過のなかで知り得た(応募者が下水道部に要請しても公表されなかった)事業者決定基準(別添資料3)及び評価配点表(別添資料4)によると、100点満点中、汚泥処理料金評価に30点、発酵棟建設費用評価に10点、発酵棟建設面積評価に2点の合計42点が配点されており、コスト削減を謳いながらもコスト面に対する配点の比重が小さい。また、他の事業の安全性、技術力等の項目の評価(残りの58点)については2から5段階評価(例:3段階2点満点の場合1位が2点、2位が1点、3位が0点)が行われたのに、コスト面に関する項目についてはZ社にとって有利になるよう以下のような比率計算による減点方式を用いており、コスト面の項目のみ減点方式によって点差幅を縮めようと企てている。
●その行為は、どのような理由で違法・不当なのか
 技術点等他の項目は段階評価が行なわれ点数の格差を明確にしている。しかしコスト面に関する評価については減点評価が行なわれ、たとえ多大の差額があっても僅少の点差にしか反映しないように操作されている。
1.下水汚泥処理料金に関する評価(満点30点)の不当性(添付資料5)

下水汚泥処理料金項目に関する評価(満点30点、減点評価)

X社 Y社 Z社
処理料金単価 1,000円/立方メートル 924円/立方メートル 997円/立方メートル
計算式 30×(924/1,000)
30×(924/997)
得点差 -2.28点 (基準)0点 -2.197点
得点 27.72点 30.00点 27.803点
15ヶ年間の総額 5,149,420千円 4,758,064千円 5,133,971千円
15ヶ年間の差額 +391,356千円 (基準)0円 +375,907千円

(下水汚泥処理料金条件1,000円/立方メートル以下)

 上記表のように15ヶ年の総額をみると、最高値と最安値の金額差が391,356千円にもかかわらず、配点30点中に占める得点差が僅か2.3点以下であり、コスト削減を図る目的のなかこの評価は不当である。
2.発酵棟建設計画及び発酵棟建設費用に関する評価(満点12点)の不当性

発酵棟建設計画項目に関する評価項目(2点満点、3段階評価)

X社 Y社 Z社
計画面積 4325平方メートル 2481平方メートル 4024平方メートル
評価 C A C
得点 1点 2点 1点

 発酵棟建設計画の評価では、上記のように段階評価が行われている。

発酵棟建設費用項目に関する評価(10点満点、減点評価)

X社 Y社 Z社
建設費用 119,597千円 203,164千円 296,450千円
建設単価 27,653円/平方メートル 81,888円/平方メートル 73,670円/平方メートル
計算式
10×
(119,597/203,164)
10×
(119,597/296,450)
得点差 (基準)0点 -4.113点 -5.966点
得点 10.00点 5.887点 4.034点

 <1> 発酵棟建設費用のX社の提案金額については、発酵棟を堺市の仕様で建設し堺市有資産とするには不適切な金額であり、評価10点は不適当である。
 <2> 発酵棟建設費用については、募集要項2/10ページに発酵棟(付帯設備は含まず)については事業者において計画、設計し、堺市の費用で建設することとなっている。また付帯設備(管理棟、事務所等)の建設費用については受託事業者負担とされ、この金額は付帯設備の建設費用として15ヶ年の財務計画に表記することとされており、X社・Y社の両社は募集要項通りに提案している。
 しかしながらZ社の提案書では、本来の計画面積・建設費に加え、堺市が負担する必要の無い付帯工事(管理棟、事務所等)の面積・費用が加算されており、書類不備は明らかである。今回の審査では書類不備により失格者とされた応募者があるなか、このようにZ社だけが問題なく受け付けられていることは不当である。
 さらに堺市は、このZ社の提案書を受け付けるため内密に募集要項を変更し、X社・Y社が事業者負担として提出した金額を堺市負担の発酵棟建設費に加えていた。
 このように募集終了後、内密に応募者の了解も無く選考方法を変更し、さらには応募者に通知も無く無断で数字を改ざんし、最後にはZ社の出費を低減化することは文書偽造の違法な行為である。
3.コスト面以外の項目における評価の不明瞭さ
 最終的な総合得点(満点100点)においては、Z社が1位、Y社が2位であり、総合得点差は3点前後ということであった。すなわちコスト面ではY社がZ社に約6点リードしていることから、コスト面以外の評価項目の残りの58点分については、逆にZ社がY社に約9点リードしていることになる。
 しかしながら事業者選定終了後のE課長・F主幹からは技術面等の他の項目の評価(残りの58点)については僅差であったとの説明があり、結果とは大きな不合理が生じている。
 その後コスト面以外の項目における評価基準についての公表を求めたが応じる様子も無く、これらの項目についての評価も不当なものと考えられる。
●その結果どのような損害が市に生じているのか
 総コスト(下水汚泥処理料金+発酵棟建設費用:満点42点)からみた評価の不当性
下水汚泥処理料金+発酵棟建設費用(42点満点)


X社 Y社 Z社
下水汚泥処理料 5,149,420千円 4,758,064千円 5,133,971千円
発酵棟建設費用 119,597千円 203,164千円 296,450千円
総コスト 5,269,017千円 4,961,228千円 5,430,421千円
差額 +307,789千円 (基準)0千円 +469,193千円
得点差 (基準)0点 -0.833点 -5.883点
得点 38.72点 37.887点 32.837点

 Y社は、発酵棟は多少高価にはなるものの機械化することで省力化を図り、その結果として下水汚泥処理料金を低減化し、最終的にはトータルコストの縮減を達成しようとしている。これは上記の表に示すように、堺市の支払う総コストが最も安いことでも明らかである。
 しかし堺市上下水道局下水道部下水道計画課は
<1> コストに対する評価のみを意図的に僅差の幅となるよう操作したこと
<2> その結果、最終選考過程(100点満点)では、総コストを最も安く算出した応募者を2位とし、次に安い応募者を3位にしたこと
<3> コスト面以外の項目における評価(残りの58点)基準を公表しないこと
等の企てによってZ社を第一位優先交渉者として選出した。
 以上、Z社を選出することにより、最終的には、堺市に計約4億7千万円の損害を与えることになる。
●どのような措置を要求するのか
再度、公平な審査と評価が実施されるようお願い致します。

II.監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求める理由

(1) 下水汚泥処理料金の評価方法について有識者の判断を求めます。
(2) 発酵棟建設計画・建築費用について専門家の判断を求めます。

 地方自治法第242条第1項の規定により別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。併せて、同法第252条の43第1項の規定により、当該請求に係る監査について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めます。

事実証明書

  1. 「下水汚泥等の肥料化事業を開始」と題する堺市報道提供資料(平成15年10月14日提供)の写し
  2. 「堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務募集要項」の写し
  3. 「堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務事業者決定基準」の写し
  4. 「<参考>定量化審査における評価項目・評価基準と対応様式等」の写し
  5. 「堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務の経過」と題する書類の写し及び「堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務 御提案書」と題する書類の一部の写し

(請求の要旨中の別添資料1から4まで及び添付資料5。いずれも掲載を省略。)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成16年10月18日にこれを受理した。

2 個別外部監査契約に基づく監査によることが相当であると認められない理由

 本件は、請求の趣旨が公募型プロポーザル方式(*)における事業者の選定基準など契約事務の手続きに係るものであると解して受理したものである。したがって、当該財務会計行為に係る違法性等を判断するにあたって、特に監査委員に代わる外部の者の判断を必要とし、あるいは、特に専門的な知識や判断等を必要とする事案ではないものと考える。
 また、監査委員の監査において、必要があると認めるときは、学識経験を有する者等から意見を聴くことができるものである(自治法第199条第8項)。
 以上のことから、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査を実施することが相当であるとは認められないので、市長に自治法第252条の43第2項前段の規定による通知を行わなかったものである。

* プロポーザル方式
 自治法第234条第2項及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の2に規定する随意契約のひとつの方法であり、受託者の企画力やノウハウによるところが大きい業務を委託する場合などに用い、業務を行うにあたっての企画、手法等についての提案内容を比較検討して最も優秀なものを決定する。

3 監査対象事項

 本件は、監査請求書に記載された事項等を勘案し、公募型プロポーザル方式における事業者の選定基準など契約事務の手続きに係るものであると解して受理したものであるので、監査対象を以下に掲げる契約事務の手続きに係る事項とした。
 事業者選定のための事務手続きが、堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務募集要項(以下「募集要項」という。)、堺市バイオソリッドコンポスト化事業委託業務事業者決定基準(以下「事業者決定基準」という。)等に基づき、適正かつ妥当であったか。当該事務手続きが違法・不当である場合、事業者選定をやり直すべきかどうか。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

 自治法第242条第6項の規定に基づき、平成16年11月5日、請求人に
対して証拠の提出及び陳述の機会を設けた。なお、この陳述に際し、自治法第242条第7項の規定に基づき関係局職員3名の立ち会いを認めた。
 請求人3名は、陳述において、使用される発酵菌の安全性が確認されていないこと、経営の健全性の評価方法に疑問があることなど請求の要旨の補足を行った。
 また、新たな証拠として、「微生物資材について」、「下水汚泥処理料金の評価方法の不合理」、「発酵槽棟計画面積・建設費用の評価方法の不合理」、「発酵槽棟を堺市発注に変更した経緯について」、「堺市下水道部の平成13年から平成15年にかけての下水脱水汚泥のコンポスト化に係る調査実験業務の膨大な支出について」と題する書面及びこれらの説明資料として、Z社に対する「下水脱水汚泥等コンポスト実験および調査研究業務」に係る市の支出伝票の写しなど31点が提出された。なお、この資料には、監査請求書の写し及び請求時に事実証明書として提出のあった堺市報道提供資料の写しなど4点が含まれていた。
 さらに、平成16年11月11日に、陳述の際に、「きょう、堺市情報公開条例の規定に基づいて得たばかりである」と述べられた下水脱水汚泥等コンポスト実験および調査研究業務に係る堺市とZ社との委託契約書・設計書等の写しのほか、大阪府立大学とZ社との共同研究契約書の写しなど合計11点が提出された。

5 監査対象部局

 上下水道局(本件業務委託の業者選定は、平成15年度に建設局下水道部が所管したものであるが、平成16年4月、組織改革により、下水道部及び水道局が統合され、上下水道局下水道部となったものである。)

第3 監査対象部局の説明

 本件について、上下水道事業管理者に対して請求に係る意見書の提出を求めるとともに監査対象部局の職員から事情を聴取した。事情の聴取後、再度の説明や補足資料等の提出を求めた。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

平成16年11月5日に監査対象部局の職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
 上下水道局長
 上下水道局経理課参事
 下水道部長、下水道部理事、下水道監理課長、下水道計画課長 ほか
 なお、この事情の聴取に際し、自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人3名の立ち会いを認めた。

2 説明の概要について

(1) 堺市のOB職員の就職について

 Z社に元下水道部等のOB職員が就職していたことは事実であるが、すでに退職している。国・府・市のOB職員が在職期間中の経験を民間企業に認められ、再就職している例はまれなことではない。
 誰が就職していようが手心を加えることはなく、公平・透明に審査を行っている。

(2) 第1位契約優先交渉者と契約する意図があったということについて

ア 下水汚泥のコンポストについては、種々の方法により、民間事業者及び地方公共団体で事業化されている。
イ 本市から発生する下水汚泥の処理は、日本下水道事業団(以下「事業団」という。)が主体となる下水汚泥広域処理事業(以下「旧エース事業」という。)のなかで、岸和田市、和泉市、忠岡町などとともに同事業団に委託し、その全量を忠岡町にある大阪南エースセンター(以下「旧エースセンター」という。)で脱水、焼却、溶融している。なお、平成16年度からは、構造改革の一環として、本事業は大阪府に移管され、「南大阪湾岸流域下水汚泥処理事業」として実施されている。
ウ 本市の旧エースセンターでの処理量は1日約3,000立方メートルであり、事業団への委託料は約24億円(平成13年度決算)になっている。
エ 旧エース事業の目的は、集中処理(スケールメリット)による汚泥処理のコスト縮減を実現することにあった。しかし、年々高騰を続ける委託料の縮減を図ることや、約1,400度の高温処理に伴うCO2の発生など環境への影響を配慮する観点から、処理に係る技術を含めた抜本的な事業の見直しを図る必要があった。
オ 以上のような状況のなかで、平成13年度に発酵菌による下水汚泥の処理方法について、法人Dから超高温菌による発酵であることなどの興味深い提案が下水道部にあった。
カ 本市では、環境事業部における生ごみや農政部における家畜排せつ物の処理・処分について、コスト高、焼却によるCO2の発生等の対応に苦慮している実情にあった。
 提案のあった処理方法では下水汚泥から生成されたコンポストを種菌として、牛・豚・鶏などの排せつ物と生ごみを混合して発酵させることによっても、優良な肥料となるということであったので、下水汚泥処理にとどまらない有効な方法であると考えられた。
キ また、この処理方法はダイオキシン等の削減や消臭効果にも特長がみられた。
ク これらのことからこの処理方法は、環境面への配慮、新たな行財政改革につながるものと考えられることから、本市の下水汚泥になじむ発酵手法か、気候・風土による違いはないか、コンポストは安全なものかなどを検証するために調査・実験を行ったものである。
 この調査・実験は、平成13年度に、超高温発酵菌であるYM菌の特許に係る使用権を有する法人D、平成14年度は使用権が移ったZ社と委託契約により行ったものである。また、平成14年度には、大阪府立大学にも調査・実験に参加してもらっている。
 この結果、肥料取締法(昭和25年法律第127号)の基準を満たすコンポストが生成されるなど満足した成果が得られた。
ケ 調査・実験の成功例をもって、この処理方法を旧エース事業へ導入することを検討したが、周辺市町から送られてくる旧エースセンターの汚泥は重金属類の含有率からみてコンポスト化にはなじまないことが分かったので、本市のみによる事業化を進めることとした。
コ 事業実施にあたっては、ほかにもいろいろな発酵菌によるコンポスト化の方法が考えられることから、プロポーザル方式により事業者を選定するため、平成16年1月19日に、市のホームページにおいて広く公募したものである。

(3) 現場説明会時の職員の対応について

 下水道部の職員はZ社とあいさつを交わした程度であり、アイドリングした駐車については、すぐに移動するものと思い、注意をしなかったことは事実である。

(4) コスト面に対する配点比重について

ア 本件委託業務は、PFI事業(*)の手法を可能な範囲で活用したものである。今回は、あらかじめ下水汚泥処理料金の単価(以下「下水汚泥処理単価」という。)の上限を提示し、当該単価の範囲内の金額を提案した事業者について、コスト面(*)に加えて技術・手法、ハード購入費、メンテナンス費用及び長期事業の経営体力等を総合的に評価(以下「総合評価方式」という。)し、どの事業者の提案が市にとって一番有利であるかを判断する方法を採ったものである。

 * PFI(Private Finance Initiative)事業
 民間の資金やノウハウを活用し、公民の適切な役割分担による新たなパートナーシップの形成によって事業実施する手法。「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号)が平成11年9月に施行され、国や地方公共団体に本格的に導入され始めている。本市では、平成15年6月に「堺市PFI等ガイドライン」が作成された。

 * コスト面
 請求人は請求書などにおいて、下水汚泥処理単価、発酵槽棟建設費用及び発酵槽棟建設延べ面積を合わせて「コスト面」と称しているので、以下、同様に定義し記載する。

イ 本事業はPFI事業によるものとはいえないものの、一般的なPFI事業における総合評価方式の場合、コスト面の配点は30%から70%を中心に分布していることからも、本事業のコスト面への点数配分42点は、妥当であり、比重が小さいとは考えない。
ウ 金額による提案は、(配点)×(提案事業者のうちの最低提案金額)/(当該事業者の提案金額)で算出(以下「比例計算減点方式」という。)し、評価している。この方式は最低提案価格を満点とし、価格に応じた公平な算術的な計算方法であり、恣意的に操作することはできない方法となっている。また、この方式は、他の地方公共団体のPFI事業でも広く用いられている。

(5) コスト面の評価が僅差になるよう操作されているということについて

ア 他の地方公共団体のPFI事業における総合評価方式でも、金額による提案項目は比例計算減点方式、その他の項目は数段階に分けて評価する方法(以下「段階評価方式」という。)が多く採用されており、比例計算減点方式を採ることは妥当であると判断した。
イ 仮に、提案単価が900円、901円、902円である場合、比例計算減点方式では評価差がほとんどつかず、公平な評価となる。他方、30点の配分を900円=30点、901円=15点、902円=0点として評価した場合は、1円の差が評価に大きく反映されることになり、この考え方には問題があると思われる。

(6) 第3位契約優先交渉者の発酵槽棟の評価について

ア 第3位契約優先交渉者となった事業者に構造等の内容を確認したところ、実績もあり、建築できる金額であるということであったので、評価基準に基づき満点の評価をした。
イ 建築基準法(昭和25年法律201号)に適合する建築物かの検証は行っていないが、各事業者の発酵手法の違いにより発酵槽棟の構造が異なることから、ノウハウと実績を踏まえ建築可能と判断し評価したものである。
 また、提案型のプロポーザル方式としたことから、各事業者による提案内容は、事業者の責任において実施可能な提案であると判断した。

(7) 発酵槽棟の付帯設備について

ア 付帯設備を建物に付帯する電気、機械をイメージしており、建物はすべて、市が発注する予定であったので、管理棟などの発酵槽棟以外の建物(以下「管理棟等」という。)も含めて建設費用と延べ面積について評価したものである。
イ 応募事業者の了解を取っていないことは、不適切であったと思われる。しかしながら、審査が公正・公平になるよう、応募事業者の提案をもとに見直したものであり、特定の事業者に配慮したものではない。

(8) コスト面以外の評価の不明瞭さについて

ア 技術面などコスト面以外の評価(合計58点)について、応募事業者間の評価差を個々具体的に説明できるものではないので、総合点として僅差であったということを請求人に伝えた。
イ また、評価基準の公表については、市の情報公開制度による公文書公開請求をお願いし、その時点で検討したいと伝えたが、理解を得られなかった。

(9) 市に生じる損害について

ア 本件事業の発注手法及び内容等は、現行の委託契約に関する規定を逸脱したものではない。事業者の選定は、コスト面の評価に加え、技術、経営体力等を総合的に評価して順位を決定したものであり、コスト面で1位であっても総合評価で1位になるとは限らない。
イ コスト縮減については、公募時に処理単価を1,000円/立方メートル以下(消費税等を含む。以下同じ。)としたことにより、旧エース事業の処理費用に比べ、大幅な削減につながるものと考えている。

(10) 庁内審査委員会の設置目的及び審議内容等について

ア 提案に対する評価方法を調整し、事業者の選定等を行うため、土木、建築、法律、契約等に関する所管部長など計11名の職員で構成する堺市バイオソリッドコンポスト化事業に伴う庁内審査委員会(以下「庁内審査委員会」という。)を設けた。評価方法などは、法律事務所のアドバイスも受けながら審議を重ね、まとめたものである。
イ 契約優先交渉者の順位は、平成16年3月23日に庁内審査委員会の委員により決定した。

(11) YM菌及びコンポストの安全性の確認について

ア YM菌は、鹿児島市の下水汚泥処理に使用され、25年以上にわたる実績があり、その間、周辺環境を阻害することなく、また、従業員や付近住民への健康被害も報告されていないことや食品廃棄物・産業廃棄物をYM菌により発酵・生成されたコンポストを使った農作物についても、問題が生じていないことから、安全であると判断している。
 また、平成13、14年度の調査・実験において、雑菌等が死滅した有用な菌のみが多数存在する良質で肥料取締法の基準を満たす完熟肥料であることを確認している。
イ しかし、DNA・RNAレベルでの確認はしていない。これは、既述のとおり、長年の実績のなかで問題が生じていないこと、下水汚泥はYM菌1種だけでなく、複数の菌で発酵されており、単体の評価はむしろ無意味と判断したからである。
ウ 今回のYM菌によるコンポスト化事業の安全性については、過去の実績、大阪府立大学との共同研究結果、他都市における重金属類及びダイオキシン類の研究結果等からして、問題はないものと判断している。

第4 監査の結果

1 本件委託業務に係る事実

関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 堺市バイオソリッドコンポスト化事業について

ア 本市から発生する下水汚泥は、その全量を忠岡町にある大阪府南大阪湾岸北部処理場(平成15年度までは、事業団が旧エースセンターとして運営)で脱水、焼却、溶融している。下水汚泥は年々増加する傾向にあり、その処理費用も約24億円(平成13年度決算)になっている。旧エース事業の目的は、広域からの集中処理による汚泥処理コストの縮減を図ることにあったが、処理費用の増加や環境への負荷などの点から、抜本的な事業の見直しが必要となっていた。
イ このようなときに、法人Dから超高温発酵菌による下水汚泥のコンポスト化についての提案があり、検討する価値があるものと考え、超高温発酵菌の特許に係る使用権を有する法人(平成13年度は法人D(委託料9,765,000円)、平成14年度はZ社(委託料24,150,000円))と委託契約をし、実験・調査研究を行ってきた。平成14年度には大阪府立大学の協力も得て、肥料取締法の基準に適合した肥料が生成されることを確認した。
ウ 下水汚泥のコンポスト化事業は、下水汚泥の一層の有効利用を図るとともに、「環境負荷低減を実現する循環型システムの確立」、「汚泥処理コストの削減」を目的とするものである。本市の行財政改革計画(平成16年4月改訂版)においても、本事業を「新たな事業手法や技術の導入と活用」として位置付けている。

(2) 本件事業委託に係る経過

ア これまでの実験成果と旧エースセンターの汚泥の状況なども踏まえて、本市独自の事業として石津下水処理場から発生する汚泥をコンポスト化する事業を委託により実施することとした。民間の資金や技術を活用して、下水汚泥脱水施設及びコンポスト施設の計画・設計から維持管理、コンポストの品質管理、販売などを含めた事業の運営までを平成16年度から平成30年度まで業務委託するもので、事業者を公募型プロポーザル方式により選定しようとしたものである。
イ 事業者の選定にあたっては、募集要項の調整や事業者の選定審査などを行うため、技監を座長とする庁内審査委員会(11名)を設けた。
ウ 募集要項は、平成15年12月17日の第1回庁内審査委員会で決定された。
 この募集要項には、事業者の選定方法として、「応募者から超高温発酵菌による本業務の実施に係る計画の提案を受け、公募型プロポーザル方式により、優先交渉者を選定するものとする。また、選定方法として、応募者の提案に基づく本市の収支及び事業提案内容等について、総合評価型の手法により評価を行う」とする記載がある。また、評価項目は、以下の基準を想定しているとし、「下水汚泥処理料金 1,000円/立方メートル以下(汚泥濃度1%換算)」、「プラントに係る計画、設計、建設、運営又は維持管理に係る実績」、「施設建設計画」、「維持管理計画」、「運営計画(特に事業の実現性)」、「事業収支計画(資金調達可能性、特定目的会社の財務健全性)」が挙げられている。
エ また、事業者決定基準は、平成16年3月8日に開催された第2回庁内審査委員会で決定された。
 この事業者決定基準では、下水汚泥処理料金や環境配慮に関する事項など8項目の審査区分とその区分の細目として下水汚泥処理単価や周辺環境への配慮など計25の評価項目を設けている。さらに各項目を評価するために38の基準を設定し、それぞれについて評価方法と配点が記載されている。また、評価は、提案された金額を比較する場合は、比例計算減点方式で行い、それ以外の場合は、2または3もしくは5段階で評価する段階評価方式によることなどが記載されている。
オ 事業者の募集は、平成16年1月19日から同年2月20日まで行われ、4事業者の応募があった。
カ 事業者の決定は、平成16年3月23日に庁内審査委員会の委員の合意によって決定された。4事業者のうち、1事業者は失格となり、3事業者に1位から3位までの契約優先交渉順位がつけられた。
キ 第1位契約優先交渉者は、特別目的会社(*)を設立し、平成16年9月24日に本市と「バイオソリッドコンポスト化事業委託業務」契約を締結した。

 * 特別目的会社
 PFI事業などにおいて事業主体となる当該事業のみを営む組織。

ク 本事業の実施に係る主な経過は次のとおりである。

日付 経過
平成14年1月7日 法人Dと「下水脱水汚泥等のコンポスト化に係る調査実験業務」委託契約を締結
平成14年9月10日 Z社と「下水脱水汚泥等コンポスト実験および調査研究業務」委託契約を締結
平成15年6月 「堺市PFI等ガイドライン」が策定される
平成15年10月14日 下水汚泥等の肥料化事業の開始について報道発表
平成15年11月1日 広報さかい11月号に「下水汚泥の肥料化処理事業者を募集」する旨の記事を掲載
平成15年12月17日 第1回庁内審査委員会(募集要項を決定)
平成16年1月19日 募集要項を公表(事業者の募集を開始)
平成16年2月20日 事業者の募集を締め切り
平成16年3月8日 第2回庁内審査委員会(事業者決定基準を決定)
平成16年3月23日 庁内審査委員会委員による審査(第1位契約優先交渉者を決定)
平成16年9月24日 特別目的会社と「バイオソリッドコンポスト化事業委託業務」契約を締結

2 本件に係る判断

(1)コスト面の評価に対する配点について

ア 請求人は、処理費用の削減を目的とする事業であるにもかかわらず、コスト面に対する評価の配点(下水汚泥処理単価に30点、発酵槽棟建設費用に10点及び発酵槽棟建設延べ面積に2点の合計42点)が少ないと述べているので、このことについて検討する。
イ どのような評価項目を設けるか、どの項目にどの程度の点数を配し審査するかは、審査を行う市の裁量によるものである。評価項目や配点等については、平成16年3月8日の庁内審査委員会で決定されたもので、決定手続きに違法、不当な点は認められない。
ウ 他の地方公共団体のPFI事業における総合評価方式による事業者選定において、100点のうちコスト面に30点から70点までの間に配点する事例が多くみられ、本件の42点の配点が、低いとはいえず妥当性を欠くものではない。
エ したがって、コスト面に対する評価の配点は裁量の範囲を逸脱したものではなく、その決定に係る事務手続きにも違法性、不当性はないと判断する。

(2)下水汚泥処理単価及び発酵槽棟建設費用に対する評価方法について

ア 下水汚泥処理単価及び発酵槽棟建設費用に対する評価は、比例計算減点方式で行われている。請求人は、
 (ア)当該評価の方式は、処理単価や建設費用以外の評価項目が2または3もしくは5段階の段階評価方式で行われていることと比べて、点差がつきにくい方法である。
 (イ)発酵槽棟建設費用の評価について、応募事業者の間で提案金額に約8,000万円の違いがあり、その評価には約4点の差がついている。一方、下水汚泥処理単価の評価については、提案金額を事業期間である15年間の総額で比較すると約4億円の違いがあり、これに対しての評価点の差は2点程度しかない。
という理由を挙げて、比例計算減点方式を採ったことが違法、不当であると述べているので、このことについて検討する。
イ どのような評価方法で審査するかは、審査を行う市の裁量によるものである。評価方法についても平成16年3月8日の庁内審査委員会で決定されたもので、決定手続きに違法、不当な点は認められない。また、他の地方公共団体のPFI事業における総合評価方式による事業者選定においても、コストを評価する項目と事業の創意性や経営の安定性を評価するなどの項目で評価の方法を変え、コストを評価する場合に比例計算減点方式を採用している事例も多くみられる。よって、比例計算減点方式を採用したことは、裁量の範囲を逸脱したものでなく、違法、不当とはいえない。
ウ 下水汚泥処理単価及び発酵槽棟建設費用に係る金額差と評価点の差との関係については、金額の多寡により評価する項目の間で、提案金額や提案単価から予定される費用総額の違いがどのような評価差を生じるかをシミュレーションするなど、評価方法が十分検討されたとはいえない。
 しかし、発酵槽棟建設費用の評価に10点、下水汚泥処理単価の評価に30点を配点したこと及び比例計算減点方式を採用したことの各々については上記のとおり妥当性を欠くものでない以上、両者を組み合わせて算出した本件評価点についても妥当性がないとはいえない。また、金額の多寡に対する評価であっても、汚泥処理単価は1,000円/立方メートル以下という条件をつけるなど、内容や性質が異なることから、両項目の評価結果について同列に論じることはできない。
エ したがって、下水汚泥処理単価及び発酵槽棟建設費用に対する評価に係る事務手続きに違法性、不当性はないと判断する。

(3)第3位契約優先交渉者の発酵槽棟建設に係る評価について

ア 請求人は、第3位契約優先交渉者となった事業者の発酵槽棟建設に係る提案金額が通常考えられるよりも低いにもかかわらず、最高点と評価したことは違法、不当であると述べているので、これについて検討する。
 (ア)上下水道局からの聴取によると、庁内審査委員会においても、通常の建設コストと比較して単価が低いという指摘があったので、当該事業者に電話し、過去の実績等を確認したうえで、本件の建設は可能であると判断したということである。
 (イ)事業者決定基準には、「建設費用が最も低いものを満点とし」と記載されていることから、建設費用の妥当性を的確に判断することが必要である。しかし、発酵槽棟の形状や材質等は提案事業者の発酵手法に応じた創意工夫に任されたものであり、市の仕様や積算単価に準拠するものではない。
 (ウ)建設費用の妥当性について審査するには、詳細な設計図を求める必要があるが、応募時における提案事業者の負担等を考慮し、概略の図面等の提出にとどめることはやむを得ないことといえる。また、「提案型のプロポーザル方式への応募であり、事業者の責任において建設可能な提案がなされたものと判断される」という上下水道局の主張も理解できるものである。
 したがって、発酵槽棟の建設費用について審査するにあたり、通常考えられるよりも低額の提案がなされた場合に、当該事業者に提案価格と同程度の価格による同程度の建物の建設実績などを確認したことは、採り得る方法としては適切であり、このようなもとで心象を含めた評価をせざるを得なかった事情も一定理解できるものである。
 (エ)これらのことを考慮すると、当該事業者の発酵槽棟建設費用の評価に係る事務手続きはおおむね適正、妥当であると判断できる。
イ また、請求人は、第3位契約優先交渉者となった事業者が提案した発酵槽棟が建築基準に準拠していないのではないかと述べている。建築基準の準拠性などの適法性については、建物の審査・評価をするうえでの前提であり、事務手続きに密接にかかわることであるので検討を加える。
 (ア)上下水道局からの聴取によれば、応募事業者から提案された建物について、建築基準法に適合するかどうかの検証は行われていない。
 (イ)しかし、上記アのとおり、図面等の提出を概略にとどめたことに合理性があり、この図面から建築基準法等の建築関係法令に違反するかどうかまでを審査できないこともやむを得ないものと考えられる。
 (ウ)また、募集要項には遵守すべき法令等として、建築基準法やその他関係する法令等が挙げられており、これらの法令等に基づいて図面等が作成されていると判断したとしてもあながち不適正であるとはいえない。
 (エ)これらのことを考えると、審査の際に提案された発酵槽棟が建築関係法令に違反するかどうかなど、個々の法令に対する適法性までを確認していないことをもって審査に係る事務手続きが違法、不当とまではいえない。

(4) 建設費用・建設面積の評価方法の変更について

ア 請求人は、応募事業者に無断で管理棟等の建設費用や面積を加えて評価したことは選考方法が変更されたということであり、提案した数値が改ざんされたのであるから、違法、不当であると述べているのでこのことについて検討する。
イ 募集要項には、「発酵槽棟(付帯設備は含まず)は事業者にて計画、設計し、堺市が付帯工事として建設する」と記載されている。市は、「建物すべては市の費用で建設するが、電気、機械等の設備は事業者の負担により設置する」と考えていた。応募事業者の問い合わせに対する職員の回答が異なっていたこともあり、応募事業者のうち2者は発酵槽棟のみを、1者は発酵槽棟に管理棟等を加えたものを市が負担するものとして提案を行った。建物の建設費用は市が負担するという募集要項のとおりに審査するため、発酵槽棟のみを市の負担とした事業者の提案に提案書の記載に基づいて管理棟等を加え、応募事業者の条件を同一にしようとしたものである。この際、管理棟等を加えて評価した事業者にその旨を連絡し了承を得ることは行っていない。
ウ また、管理棟等を加算する際、市が負担するか、事業者が負担するかにより、建設費用の提案額が異なることが考えられるが、これを考慮せずに管理棟等の建設費用を単に加算して評価していること、事務所など一部の建物を加算していないものがあることから、提案をまったくの同一条件で審査したとはいえない点が認められる。
エ さらに、管理棟等を市が負担するか事業者が負担するかによる事業者の提案金額は、建物の建設費用のみならず、下水汚泥処理単価などを含めた事業全体の経費等にかかわるのではないかとの懸念も生じる。
オ これらのことは、事務手続きとして不適切であるといわざるを得ない。しかし、可能な限り審査条件をそろえるために提案書の記載に基づいて発酵槽棟に管理棟等の建設費用と面積を加算することは、費用の負担者が変わることにより提案金額に影響を及ぼすかもしれないとの配慮に欠けていたとしても、なお審査権を有する市の裁量の範囲内であると思われる。
カ なお、仮に、市の負担する建物について、第1位契約優先交渉者に決定した事業者の提案を発酵槽棟に管理棟等を加え、他の事業者の提案を発酵槽棟のみとして評価した場合であっても、第1位契約優先交渉者の順位に影響を与えるものではないことが確認できた。
キ 管理棟等を加算して審査したことは募集要項に沿った評価を行うために、条件をできるだけ同一にしようとしたもので、選考方法の変更とはいえないし、提案書に記載された数値を改ざんしたということは認められない。
ク したがって、一部に不適切な事務手続きがあったものの、できる限り同一の審査条件にしようとしたもので、恣意性、作為性などは認められないことから、違法、不当であるとまではいえない。

(5) 資金計画、収支計画等の評価について

ア 請求人は、第2位契約優先交渉者となった事業者の財務の健全性に対する評価が違法、不当であると述べているのでこのことについて検討する。
イ 事業の安全性を審査するため、設立を応募の条件にしている特別目的会社に係る資金計画書及び長期収支計画(損益計算書、キャッシュフロー計算書及び採算性指標)の提出を求めている。請求人のいう財務の健全性に対する評価とは、これらに基づいて行った評価のことであると解せられる。
ウ 審査、評価にあたっては、資金調達計画の確実性などについて法人Gの指導、助言を受けていることが認められる。
エ 事業者決定基準では事業の安全性を評価の重点項目としているので、提出された損益計算書等に基づいて厳正に評価する必要があるが、応募事業者が責任を持って提出した同計算書等に基づいて、専門家のアドバイスも受け主体的に評価したものであるので、本件評価に係る事務手続きに公正性、公平性を欠くとはいえず、違法性、不当性はないものと判断する。

(6) コスト面以外の評価について

ア 請求人は、職員の説明が十分でないことや評価基準が非公開であることから、コスト面以外の評価も不当なものであると述べているので、このことについて検討する。
イ コスト面以外を評価するものとして、設計・建設及び施設能力、脱水処理・コンポスト化業務、コンポスト利用、環境配慮などの項目がある。
ウ 上記(1)イ及び(2)イのとおり、どのような評価項目を設けるか、どの項目にどの程度の点数を配しどのような観点から審査するかは、審査を行う市の裁量によるものである。評価項目や配点等については、平成16年3月8日の庁内審査委員会で決定されたもので、決定手続きに違法、不当な点は認められない。
エ 請求人が不当とする理由は、請求人の推測に基づくものに過ぎず、職員の説明や情報の公開は、事業遂行上の留意すべき事項であるが、本件監査の対象とはならない。
 評価項目や配点等については、庁内審査委員会の決定に基づいて行われており裁量の範囲を逸脱しているとは認められないことから、コスト面以外の評価に係る事務手続きに違法性、不当性は認められない。

(7) 市に生じる損害について

ア 請求人は、下水汚泥処理費用(処理単価×処理予想量)及び発酵槽棟建設費用を合計した金額(請求人のいう「総コスト」)が最も高い事業者を第1位契約優先交渉者に決定したことにより、最も低価で提案した事業者を選定した場合と約4億7,000万円の差が生じ、この差額が市の損害となると述べているので、このことについて検討する。
イ 本件事業者の選定は、「価格面のみならず事業の安全性やコンポスト利用に係る長期安定性等、様々な視点から応募者の提案を評価」(事業者決定基準)するため、「応募者の提案に基づく本市の収支及び事業提案内容等について、総合評価型の手法により評価を行う」(募集要項)ものであった。すなわち、価格に対する評価を含めて総合的に評価するものであり、「総コスト」の評価が1位であっても総合評価で1位になるとは限らない評価の方法である。
ウ 他都市のPFI事業の総合評価方式においても、コスト点が1位であっても、第1位契約優先交渉者とならない事例がみられる。
エ コスト面及びそれ以外の各項目の評価に係る事務手続きについては、これまで記載のとおり、違法性、不当性は認められない。
オ また、提案価格の最高額と最低額を「総コスト」でみると、請求人の述べるような差額が生じるが、<1>本件は下水汚泥処理の経費を削減することを目的のひとつとするが、コストに対する評価のみで事業者を選定すべき事業ではないこと、<2>コストに対する考え方として、本件コンポスト化事業により、旧エース事業に要する経費に比べて数十億円の削減が見込まれ、行財政改革計画の趣旨は十分実現されるものであることから、削減の大きさによって市に生じる損害とみることは一面的であり妥当とはいえない。
カ したがって、第1位契約優先交渉者決定に係る事務手続きに違法性、不当性は認められず、本件優先交渉者を選定したことが市に損害を与えることにはならないと判断する。

(8) 発酵菌、コンポストの安全性について

ア 請求人は、下水汚泥をコンポスト化するために使用する発酵菌の安全性について確認されていないと述べている。発酵菌や生成されたコンポストの安全性は、提案事業の内容を審査・評価をするうえでの前提となるものであり、事務手続きと密接にかかわるものとして検討する。
イ 上下水道局からの聴取によると、発酵菌の安全性については、「第1位契約優先交渉者が使用するYM菌は、鹿児島市で下水汚泥の処理に使用され、25年以上の実績を有し、その間に周辺環境への影響もなく、付近住民や従業員の健康被害も報告されていないことから、安全であると判断している。しかし、DNA・RNAレベルでの安全性の確認は行っていない。下水汚泥は複数の菌で発酵されており、1種類の菌の安全性を評価することは意味のないことであると考えた」ということである。また、コンポストの安全性については、「YM菌を使用し生成された肥料で育った農作物に問題があったとの報告がないこと、大阪府立大学等との共同調査研究の結果においても、肥料取締法及び金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令(昭和48年総理府令第5号)に規定する基準を満たしていることが確認されている」と述べている。
ウ 発酵菌については、経験則に基づく一定の安全性が示されており、また、コンポストについては、肥料取締法等に基づいていることの確認がなされていると述べられているが、十分な科学的な証拠は提出されていない。これらのことから、現時点においては事業を中止するような重大かつ喫緊な危険性は認められないものの、常に同一の環境、同一の条件にはない発酵菌やそれを使用して生成されるコンポストの安全性の確保などについて十分な説明がなされているとはいえない。

(9) その他の請求理由について

 請求人は、上記のほか、第1位契約優先交渉者と決定した事業者と平成14年度にコンポスト化実験や調査研究を委託していること、同事業者に市役所のOB職員が在職していること、現場説明会での下水道部職員と同事業者のかかわり方などが、本件の審査項目、配点や評価の決定に影響しており、評価そのものが違法、不当であると述べている。しかし、これらのことは、請求人が市の公正性を疑うことになった状況の主張であるが、評価等に係る事務手続きにはあたらず、監査の対象とはならない。

(10) 総合判断

 以上のことから判断すると、事務手続きの一部に不適切な点は見受けられるものの、恣意的、作為的なものとは認められず、また、審査権者としての裁量の範囲を逸脱したものとはいえない。したがって、本件事業者選定のための事務手続きが、違法、不当であるとはいえず、請求人の主張には理由がないものと判断する。
 しかし、上記は費用の削減、環境負荷の低減を実現するための必要な事業を推進するという観点をも含めて総合的に判断したものであって、事業経営の審査や発酵菌等の安全性の確認については、十分になされたとはいえない部分が残されているので、別添の意見を付し定期的に資料の提出などを求め、事業の推移を注視することとする。

監査結果に添える意見

1 本件監査において事業の安全性に関する審査や発酵菌及びコンポストの安全性の確認が十分に行われたとする確証を得るにはいたらなかったので、特に以下のことについて要望する。
 (1) 今後ともYM菌を含め事業に使用する発酵菌や生成されるコンポストの安全性について、定期的に検証し明らかにされたい。
 (2) 受託事業者に経営状況について必要な報告を求めるなど本事業の経営の安定性に絶えず配意されたい。

2 PFI事業など民間の資金やノウハウを活用した事業は、今後、さらに効果的に推進されるべきものと考える。しかし、今回、PFI事業の手法を一部取り入れた本事業について事業者選定に係る事務手続きを主眼に監査を行ったが、事務手続きや事業のあり方としての課題がみられた。
 したがって、今後の同様の事業実施にあたっては、事業の実施目的を明確にするとともに、計画段階から公正性、公平性を疑われることのないような実施手続きや方法を十分検討されたい。特に事業者選定にあっては、外部の有識者の意見を聞くなど極力透明性を確保し、評価については説明責任に十分留意されたい。

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電話:072-228-7899 ファックス:072-222-0333
〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所高層館19階

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