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平成16年10月12日 堺市監査委員公表 第37号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第37号

 平成16年8月13日に提出のあった地方自治法第242条第1項の規定に基づく堺市職員措置請求について、同法同条第4項の規定に基づき監査を行ったのでその結果を次のとおり公表する。

平成16年10月12日

堺市監査委員 曽我部 篤爾
堺市監査委員 小田 久和

堺市職員措置請求に係る監査結果

平成16年8月13日請求

<政務調査費(調査旅費)の支出について>

目次

堺市監査委員公表第37号

第1 監査の請求

1 請求人

1法人(省略)

2 監査請求書の提出

平成16年8月13日

3 請求の要旨

(1) 公明党堺市議団の平成15年度の政務調査費収支報告書(市議改選後11か月分、平成16年4月28日付け報告)によると、「調査旅費」に793万5,637円も使っている。しかし、その内容は、事業実施報告書に「先進都市の施設及び政策の視察、研究」、「他都市の行政課題の視察、調査等」と記されているだけで、具体的な内容(個別の視察先、日程、人数、費用など)がさっぱり分からない。ホンマに調査旅費に使ったのかどうか、使途が不透明である。
(2) 木原敬介市長は、その収支報告書と事業実施報告書の写しの送付を受けたが、使途の裏付け(領収書等の証拠書類)を何ら確認せずに、その支出を黙認した。
(3) 市長は、地方自治法221条に基づき、調査費などの交付金を受けた者に対して、その状況を調査できる権限を有している。さらに、「堺市議会の会派等に対する政務調査費の交付に関する条例」の施行規則で、会派等に領収書等の証拠書類の3年間保管を義務付けている。これは、政務調査費の使途の透明性が強く求められているからである。
(4) しかしながら木原市長は、公明党市議団の多額の調査旅費の使途が不透明なのに、市長の責任と権限を放棄して支出を黙認したのは、違法支出である。
(5) 監査委員に対して、領収書等の証拠書類をチェックして、堺市に損害を与えた違法支出分を市長に賠償させるか公明党市議団に返還請求させるかの措置を講じるよう求める。もし、証拠書類をチェックして、全額が適正に使用されていることが判明したなら、監査委員は、証拠書類を公開して、適正使用を証明すべきだ。

(原文どおり)

事実証明書
 1 平成16年4月28日付けで公明党堺市議会議員団から堺市議会議長あてに提出された平成15年度(平成15年5月から平成16年3月まで)政務調査費に係る収支報告書及び事業実施報告書の写し

(掲載を省略)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第1項に規定する要件を具備しているものと認め、平成16年8月20日にこれを受理した。

2 監査委員の除斥

 吉川敏文監査委員及び辻宏雄監査委員は、自治法第199条の2の規定により除斥となっている。

3 監査対象事項

 監査請求書に記載された事項及び事実証明書を勘案し、監査対象事項を次のとおりとした。
 平成15年度(平成15年5月から平成16年3月まで)に公明党堺市議会議員団(以下「公明党市議団」という。)に交付した政務調査費のうち「調査旅費」として使用された7,935,637円の支出(精算を含む。)は違法又は不当であるのかどうか。違法又は不当であるとすれば、市に損害が生じており、市長がその損害を賠償するか又は公明党市議団に対して返還請求をすべきかどうか。
(注)本件政務調査費は、自治法第232条の5第2項及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第162条第3号による概算払(債務金額の確定前に、あらかじめ一定の金額をその債権者に交付し、後日金額が確定したときに精算する制度)の方法により支出されており、金額の確定後は、過渡し分については返納を行う必要などがある。このため、交付、返納等の事務を「支出(精算を含む。)」とした。

 なお、監査対象事項に関連して、政務調査費制度について包括的に検討する必要を認めたので、平成15年度及び平成13年度に交付を受けたすべての議会における会派及び会派等に属さない議員が結成した団体(以下「会派等」という。)の収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)並びに事業実施報告書を調査の対象とした。

4 請求人の証拠の提出及び陳述

 請求人から平成16年8月24日付けをもって自治法第242条第6項に規定する証拠の提出及び陳述を行わない旨の申出書が郵送され、8月25日にこれを収受した。

5 監査対象部局

財政局、議会事務局

第3 監査対象部局の説明

 本件について、市長に対して請求に係る意見書の提出及び監査対象部局の職員からの説明を求めた。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

 平成16年9月27日に監査対象部局の職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
 財政局 財政局長、財務部長、財政課長 ほか
 議会事務局 議会事務局長、議会事務局次長、総務課長 ほか

2 説明の概要について

(1) 政務調査費について

 議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として交付される政務
調査費は、自治法第100条第13項及び第14項において、交付の対象、額及び交付の方法は条例で定めなければならないこと並びに条例の定めるところにより収支報告書を議長に提出しなければならないことを定めている。

(2) 本市の政務調査費について

 本市においては、自治法に基づき、堺市議会の会派等に対する政務調査費の交付に関する条例(平成13年条例第2号。以下「政務調査費条例」という。)を制定し、交付対象、交付額及び交付の方法、収支報告書の提出、政務調査費の返還等に関して規定している。
 また、政務調査費条例に基づき、堺市議会の会派等に対する政務調査費の交付に関する条例施行規則(平成13年規則第27号。以下「政務調査費規則」という。)を制定し、具体的な使途基準、交付対象である会派等における会計処理方法、収支報告書提出時の事業実施報告書の添付等に関して規定している。
 なお、この条例及び規則には、会派等が政務調査費を支出したときの領収書等の証拠書類(以下「領収書等」という。)の添付を義務付ける規定は設けられていない。

(3) 請求人の主張に対する意見

 政務調査費条例第4条及び政務調査費規則第6条に政務調査費の使途基準が規定されているが、その使途項目が広範囲にわたっているのは、どのような調査研究をするかについては、会派等あるいはそこに所属する議員の自主的な判断を最大限尊重するという考えが根底にある。
 また、議会における会派等の市政に関する調査研究には、広範な分野での研究、研修、調査、視察及び資料購入などにより議員活動の活性化を図り、もって市政に反映されることが期待されている。
 したがって、現行の地方自治制度における議会と執行機関との関係に鑑みると、政務調査費の使途については、執行機関の干渉をできるだけ少なくし、会派等及び個々の議員の活動の自主性を損なわない方法でなされるべきものと考える。
 こうした考えの上に立って、制度運用の面においては、交付対象である会派等から、政務調査費条例第6条及び政務調査費規則第8条の規定に基づき、それぞれ収支報告書及び事業実施報告書(以下「収支報告書等」という。)が議長に提出されており、その写しは市長に送付されている。これらの書類の送付を受け、同条例第7条第1項及び第2項の規定に則して、「政務調査費の交付を受けた会派等がその年度において交付を受けた政務調査費の総額から当該会派等がその年度において市政の調査研究に資するため必要な経費として支出した総額を控除して残余の額がないこと」、また、「政務調査費の交付を受けた会派等の政務調査費の使途が第4条の規定に明らかに違反していると認められないこと」をそれぞれ確認しており、本件公明党市議団に関する政務調査費の支出は適正なものと考えている。したがって、自治法第221条第2項に基づく調査権を行使する必要はないと判断している。
 なお、政務調査費の使途については、会派等の自主的な判断を尊重し、議員の活動に対する干渉をできるだけ少なくするという本制度の趣旨に鑑み、政務調査費条例第8条第2項において、「議長が保存する収支報告書は堺市情報公開条例(平成14年条例第37号。以下「情報公開条例」という。)の定めるところにより公開する」という規定を設けており、透明性の確保が一定図られているものと考えている。

第4 監査の結果

1 本件調査旅費等に係る事実

関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 政務調査費制度について

 平成12年5月31日に地方自治法の一部を改正する法律(平成12年法律第89号)が公布され、政務調査費に関する項目が追加された。それは、「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない」(第100条第13項)及び「政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収支報告書を議長に提出するものとする」(同条第14項)という規定であり、平成13年4月1日から施行された。
 当該条項の追加は、「地方議会の活性化を図るためには、その審議能力を強化していくことが必要不可欠であり、地方議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、議会における会派等に対する調査研究費等の助成を制度化し、あわせて、情報公開を促進する観点から、その使途の透明性を確保することが重要になっている」(第147回通常国会 衆議院地方行政委員会(平成12年5月18日)会議録)ことから行われたものである。

(2) 本市政務調査費条例・規則の規定

ア 昭和56年10月から規則及び要綱を根拠として、現行の政務調査費と同趣旨の補助金を市政調査研究費の名称で支出していた。市政調査研究費の交付対象・方法等は、政務調査費とおおむね同じであったが、収支報告書等の提出先が、現行は議長であるのに対し、以前は市長であった。
イ 自治法の改正により、政務調査費条例及び政務調査費規則を制定し、平成13年4月1日から施行した。
 (ア) 政務調査費条例は、交付対象、交付額及び交付の方法、使途基準、収支報告書の提出、政務調査費の返還等に関して規定しているが、このうち、政務調査費の使途については、第4条において、「会派等は、政務調査費を、規則に定める使途基準に従って使用するものとし、市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならない」と規定している。
 政務調査費規則第6条において、政務調査費に充ててはならない経費として交際費及び党費その他の政党活動に関する経費が定められ(第2項)、「使途基準は、別表項目の欄に掲げる項目ごとにおおむね同表内容の欄に掲げるとおりとする」(第1項)と規定されている。この別表の内容は次のとおりである。

別表(政務調査費規則第6条関係)

政務調整費の使途基準
項目 内容
研究研修費 会派等が研究会又は研修会を開催するために必要な経費又は会派等の所属する議員等が他の団体の開催する研究会又は研修会に参加するために要する経費(会場費、講師謝礼金、出席者負担金・会費、交通費、旅費、宿泊費等)
調査旅費 会派等の行う調査研究活動のために必要な先進地調査又は現地調査に要する経費(交通費、旅費、宿泊費等)
資料作成費 会派等の行う調査研究活動のために必要な資料の作成に要する経費(印刷製本代、翻訳料、事務機器購入、リース代等)
資料購入費 会派等の行う調査研究活動のために必要な図書、資料等の購入に要する経費
広報費 会派等の調査研究活動、議会活動又は市の政策について住民に報告し、宣伝するために要する経費(広報紙、報告書印刷費、送料、会場費等)
広聴費 会派等が住民からの市政又は会派等の政策等に対する要望又は意見を聴取するための会議等の開催に要する経費(会場費、印刷費、茶菓子代等)
人件費 会派等の行う調査研究活動を補助する職員を雇用する経費
事務所費 会派等の行う調査研究活動のために必要な事務所の設置又は管理に要する経費(事務所の賃借料、維持管理費、備品、事務機器購入、リース代等)
その他の経費 上記以外の経費で会派等の行う調査研究活動に必要な経費

 (イ)また、収支報告書等の提出に関しては、政務調査費条例第6条第1項ないし第3項において、「政務調査費の交付を受けた会派等の代表者及び経理責任者は、収支報告書を作成し、毎年4月30日まで(会派等が解散したときは、解散した日から起算して30日以内)に議長に提出しなければならない」こと、また、政務調査費規則第8条第1項には「収支報告書を提出するときは、併せて事業実施報告書を提出しなければならない」ことを規定し、各報告書の様式を定めている。そして、政務調査費条例第6条第4項及び政務調査費規則第8条第2項には、収支報告書等の提出を受けた議長は、「速やかにその写しを市長に送付しなければならない」ことを規定している。
 (ウ)政務調査費の返還に関しては、政務調査費条例第7条第1項において、「市長は、交付額に残余の額がある場合は、当該額に相当する額の返還を当該会派等に命じなければならない」とし、同条第2項で、「市長は、使途が第4条の規定に明らかに違反していると認める場合は、当該違反して支出された額に相当する額の返還を当該会派等に命じなければならない」旨を規定している。
 (エ)政務調査費条例第5条において、「会派等は、所属議員のうちから代表者及び経理責任者を定めなければならない」と規定している。そして、会派等の会計処理については、政務調査費規則第7条において、政務調査費の支出は、会派等の代表者が決定すること(第1項)、支払手続は、所定の支払伝票によること(第2項)、経理責任者は、政務調査費を支出したときは、領収書等を徴さなければならない(これらを徴することができない場合は、支払証明書を作成する。)こと(第3項)、経理責任者は、旅行を伴う支出であるときは出張命令簿及び出張報告書を整理しなければならないこと(第4項)、会派等は政務調査費を管理するための預金口座を設けること(第5項)及び経理責任者は会計帳簿を調製するとともに、帳簿や書類等を収支報告書の提出期限の日から起算して3年を経過する日まで保管しなければならないこと(第6条)を規定し、必要な書類についての様式を定めている。
 このうち、出張命令簿には、代表者印、経理責任者印、受命者氏名、決裁日、調査事項、出張先、日程、旅費内訳(運賃、急行料金、グリーン、日当、宿泊料、合計、請求印、受領印)の項目がある。また、出張報告書は、年月日、議員氏名・印、目的、出張先、出張期間、てん末報告の項目がある。

(3) 交付等に関する事務

 市長と議長との間で「市長の権限に属する事務の一部を堺市議会事務局職員に専決処理させることについて」の確認書が交わされ(平成13年3月30日)、政務調査費に関する事務については、議会事務局長が堺市事務決裁規則(昭和36年規則第9号。以下「事務決裁規則」という。)第15条第2項第1号の規定に基づき、政務調査費交付申請書等の受理、政務調査費の額の決定等及び政務調査費交付請求書の受理に関する事務を専決処理している。また、毎月の交付にあたっては、各会派等から交付請求書の提出を受け、事務決裁規則第15条第2項第4号及び第5号の規定に基づき、支出額100万円以上は議会事務局総務課長が、100万円未満は議会事務局総務課経理係長が支出命令を専決処理し、概算払の方法により支出している。この支出は、堺市財務会計規則(昭和57年規則第15号。以下「財務会計規則」という。)第22条の規定に基づき、議会事務局総務課長が支出負担行為整理簿に整理している。
 一方、堺市事務分掌規則(昭和47年規則第14号)第2条第3項(別表第1)において「政務調査費に関すること(交付に関するものを除く。)」は財政課の分掌事務とされており、議長から送付された収支報告書等の写しは財政課が受け付け、交付した政務調査費に残余の額及び明らかな使途基準の違反がないかの確認事務を行っている。

(4) 監査請求の対象となる政務調査費

ア 平成15年度は、平成15年4月30日に市議会議員の任期が満了することに伴い4月27日に市議会議員選挙が行われ、改選後の議員により新たな会派等が結成されたため、平成15年4月は改選前の議員による会派等に交付し、平成15年5月から平成16年3月までは改選後の議員による会派等に対して交付している。したがって、収支報告書等も、各々の交付について作成し議長に提出され、その写しが市長に送付されている。
 平成15年度の政務調査費は、一般会計の第1款議会費、第1項議会費、第1目議会費、第19節負担金・補助及び交付金から支出されている。予算総額186,600,000円に対して183,600,000円(4月14,700,000円、5月から3月まで168,900,000円)を概算払し、3会派等から残余の額302,924円(4月交付分は2会派等から199,256円、5月から3月までの交付分は1会派等から103,668円)を戻入した結果、決算額は183,297,076円である。
イ このうち、平成15年5月から平成16年3月までに交付した政務調査費の事務についてみると、会派等から5月15日から5月21日までの間の日付けをもって、政務調査費交付申請書及び収支予算・事業計画書が議長に提出された後、議長から会派等のこれらの書類が一括して市長に送付されている。そして、市長は、5月28日に政務調査費の額を決定し各会派等に通知した。
 各会派等は、平成16年4月20日から4月30日までの間の日付けをもって収支報告書等を議長に提出した。議長から、4月30日に各会派等の収支報告書等の写しを収受した財政課は、市長に供覧するとともに1会派等を除き残余の額がないこと及び明らかな使途基準違反は認められなかったことを5月7日までに報告している。残余の額があった会派等に対しては、市長決裁により平成16年5月26日に当該額に相当する額の返還の通知を行い、翌日これを収納した。
ウ 監査請求の対象である「公明党市議団に平成15年5月から平成16年3月までに交付した政務調査費」の額は、同市議団の所属議員数に変動はなかったため、300,000円に所属議員の数13人を乗じた月額の11か月分42,900,000円である。
エ 請求人が違法と述べているのは、このうち、政務調査費規則第6条第1項の別表(使途基準)の項目のうち「調査旅費」として使用された7,935,637円についてである。
 公明党市議団が平成16年4月28日付けで議長に提出した収支報告書の「支出」欄の記載の一部を抜粋すると以下のとおりである(数字の単位は円。)。

収支報告書の画像1

また、事業実施報告書の「市政調査・研究のための視察事業」欄を抜粋すると以下のとおりである。

収支報告書の画像2

2 本件調査旅費の支出(精算を含む。)に係る判断

(1)政務調査費制度について
 ア 政務調査費は、地方分権の進展により地方議会の担う役割がますます重要となっているなかで、地方議会議員の調査活動基盤の充実を図る観点から必要な経費の一部を助成することを制度化したものである。
 また、関係局が行った説明のとおり、会派等の市政に関する調査研究は、広範な分野での研究、研修、調査、視察及び資料購入等により議員活動の活性化を図り市政に反映されることが期待されており、調査研究の目的、内容、方法等は、会派等あるいは当該会派等に所属する議員の自主的な判断を最大限尊重するというのが、政務調査費条例及び政務調査費規則の考え方の根底にあるものと思われる。
 したがって、政務調査費の使途については、明白に調査研究活動と認められないものを除き、会派等及び当該会派等に所属する個々の議員の自主的な判断に委ねられ、広範な裁量が認められているということができる。
 イ また、現行の地方自治制度において、議会と地方公共団体の執行機関である長とは並列対等の地位に立ち、相互のチェック・アンド・バランスの上に立脚して行政運営が行われている。このような地方自治制度における議会と長の緊張関係に鑑みると、議会及び議会を構成する議員は長から不当な支配・干渉を受けることなく独立して活動することが保証されなければならない。
 そうすると、本件政務調査費の使途に対するチェックは、市長の干渉をできるだけ少なくし、議会側において、会派等及びその所属議員の活動の自主性を損なわない方法でなされるべきものといえる。
 ウ 一方、収支報告書等の写しの送付を受けた市長には、予算執行権者として、政務調査費が適正に使用されているかどうかを確認する権限と責務がある。
 エ 政務調査費制度が法制化された趣旨は、地方議員の調査活動基盤の充実を図ることと合わせて情報公開を促進する観点からその使途の透明性を確保することにある。このことについては、自治省行政局行政課長から各都道府県総務部長及び各都道府県議会事務局長あての「地方自治法の一部を改正する法律の施行について(通知)」(自治行第32号 平成12年5月31日)においても、情報公開を促進する観点から「条例の制定にあたっては、例えば、政務調査費に係る収入及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすることを検討するなど透明性の確保に十分意を用いること」とされている。
 このように、政務調査費の使途について、議会及び長が透明性の確保に努める責任を負うものとされている。
(2)本件請求は、<1>収支報告書等に具体的な記載がなく、使途が不透明である、<2>市長は、精算にあたって領収書等を確認していない、<3>市長は、自治法第221条第2項の規定に基づく調査等の権限を放棄している の3点を理由として、公明党市議団に交付した政務調査費のうち調査旅費の全部又は一部が違法であり、当該額に相当する額の損害が市に生じているので、市長が損害を賠償するか公明党市議団に対して返還請求すべきであるとする趣旨と解される。
 請求人の主張については、上記(1)の政務調査費制度の特徴を十分勘案して検討すべきものと考える。
(3)収支報告書等に具体的な記載がなく、使途が不透明であるという主張について
 ア 収支報告書の支出欄には、「使途項目、決算額、決算額のうち政務調査費充当額、備考」の記載欄があり、事業実施報告書には、「主な事業・行事名、期日、内容の説明」の記載欄がある。公明党市議団の事業実施報告書は、「1 本件調査旅費等に係る事実」の(4)エのように包括的・概略的な記載になっており、「市政調査・研究のための視察事業」に、いつ、どのように使用されたのか具体的に示されたものではない。
 イ 請求人は、公開された収支報告書等の記載では本当に調査旅費に使用されたかどうか分からないから不透明であると主張するものであるが、関係局は事情聴取の際に、政務調査費条例第8条第2項において、「議長が保存する収支報告書は、情報公開条例の定めるところにより公開する」と規定されていることから、使途の透明性の確保が一定図られているものであると述べている。
 ウ 平成15年2月24日に提出のあった政務調査費に係る住民監査請求の監査結果(平成15年4月25日付け堺市監査委員公表第10号)において、事業実施報告書の記載内容の具体化など、政務調査費制度のより一層の透明性を高めることを要望したので、その後の対応や検討の状況を確認するため、平成15年度の全会派等の事業実施報告書と前回監査の対象とした平成13年度の同報告書を比較するなどの調査を行った。
 その結果、会派等により記載の方法は異なっていたが、全体としてみると平成15年度の事業実施報告書の記載内容がより具体的になった等の著しい変化は認められない。
 エ 前記のように各会派等の事業実施報告書の記載には、個々の事業・行事の実施日や実施概要が詳らかになっていないものがみられた。
 しかし、会派等あるいはその所属議員の活動は市長から不当に制限・干渉されてはならないのであるから、事業実施報告書をその制限や干渉を受けない範囲内の記載とすることも一定許容されるべきであると考えられる。また、会派等の代表者や経理責任者に適正な経理を行うことを委ねる一方、政務調査費条例及び政務調査費規則に経理責任者等の責務を明確に規定(特に旅行を伴う支出の場合は、出張命令簿、出張報告書を整理することなど、他の支出の場合よりも細かな規定がある。)し、会派等における内部管理を義務付けていることなどから、個々の使途内容が分からない記載がされていることをもって、会派等において適正な経理や支出が行われていないと推量する根拠とはなり得ず、使途基準に反した違法・不当な使用がなされているということはできない。
 オ 本件調査旅費についても、収支報告書等に具体的な記載がなく、いつ、どこへの出張等に使用されたか分からないものの、当該報告書等の記載方法としてまったく許容されないとまではいえず、また、そのような記載をもって使途基準に違反した使用が行われたという証左にもならない。したがって、収支報告書等に具体的な記載がなく、使途が不透明であり、市長の当該支出(精算を含む。)が違法又は不当であるという請求人の主張は認められない。
(4)市長は、精算にあたって領収書等を確認していないという主張について
 ア 領収書等が収支報告書等に添付されていないことが、違法、不当であるかどうかについて検討する。
 (ア)自治法、政務調査費条例及び政務調査費規則のいずれにも、収支報告書等に領収書等の添付を義務付ける規定はない。
 (イ)本市では、公金の支出にあたり財務会計規則等に基づき領収書等を徴しているが、それはあくまで本市が直接の支出対象としている者に対する支出行為についてであって、交付金や補助金の対象者が行う支出行為についてまで徴することとしているわけではない。
 また、本市の補助金においても、補助金の交付を受けた者から領収書等の支出を証する書類を徴する例は少なく、事業実施報告書や収支決算書等で支出の適正性を確認しているのが一般的である。
 (ウ)議会と市長との関係並びに会派等の市政に関する調査研究の特徴及び政務調査費の性質などを勘案すると、市長が収支報告書等とともに領収書等(写し)を徴することは、他の交付金や補助金に比べてより一層の慎重さが求められるべきものと思われる。
 (エ)収支報告書等に領収書等の添付を義務付けている地方公共団体は、平成16年9月現在で、政令指定都市13市のうち2市(いずれの市も一定以上の額等について添付を義務付け。)、中核市35市のうち12市(一定以上の額について添付を義務付ける1市と議会の申し合わせにより参考に添付する2市を含む。)、大阪府下の44市町村のうち19市町(議会の申し合わせにより参考に添付するなどの8市町を含む。)であり、領収書等の添付が常態となっているということはできない。
 (オ)これらのことから、領収書等が収支報告書等に添付されていないこと自体に、違法性及び不当性はないものと判断できる。
 イ 次に、市長が行った精算が、違法、不当であるかどうかについて検討する。
 (ア)政務調査費条例及び政務調査費規則には、領収書等について、会派等において整理し保管すべきことを規定しているが、会派等が議長へ提出することや議長又は会派等がその写し等を市長に送付することは規定されておらず、残余の額や使途基準の違反を確認するにあたって、市長が当然に領収書等を調査すべき制度にはなっていない。
 同条例及び同規則の規定に基づき、市長が収支報告書等によって、交付した本件政務調査費に残余の額がないこと及びその使途が政務調査費条例第4条の規定に明らかに違反していないことを確認していることは、前記「1 本件調査旅費等に係る事実」の(4)イのとおりである。
 (イ)政務調査費と同趣旨である調査研究費の概算払における精算については、「各会派の代表者と経理責任者により適正に審査されて実績報告書が作成されている以上、調査研究費が目的外に使用されていることをうかがわせる一般的、外形的な事情のない限り、その精算(確定)は適法であって、その研究費は本来の目的に使用されたものと推認されるというべきである」(津地方裁判所 平成11年(行ウ)第1号 平成16年2月26日 三重県調査研究費損害賠償請求事件)とする判決が出されている。
 これを本件調査旅費についてみると、公明党市議団の代表者と経理責任者による適正に審査された収支報告書等が作成されていないことや使途基準に従った使用がされていないことをうかがわせる一般的、外形的な事情は認められないのであるから、本来の目的に使用されたものと推認され、市長が行った精算は違法とはいえない。
 (ウ)これらのことから、市長が行った精算は違法とはいえず、政務調査費条例等に基づき必要な確認もなされていることから不当ともいえない。
 ウ したがって、市長に写しが送付される収支報告書等に領収書等の添付がないことに違法性、不当性はないし、本件の精算にあたって領収書等を確認していないことについても、必要な確認がなされていること、使途基準違反をうかがわせる一般的、外形的な事情は認められないことから、違法、不当とはいえない。
(5)市長は、自治法第221条第2項の規定に基づく調査等の権限を放棄しているという主張について
 ア 自治法第221条第2項は、「長は、補助金、交付金等の交付を受けた者に対して、その状況を調査し、又は報告を徴することができる」旨を規定している。本条項は、予算の執行の適正を期することを目的とするもので、調査や報告の徴収を行うか否かは長の裁量に委ねられている。
 イ 本件調査旅費については、前記(4)ウのとおり、使途基準に違反して使用された一般的、外形的な事情は認められず、精算は適法かつ妥当であることから、市長が公明党市議団に対して、領収書等を調査せず、または報告を求めないと判断したことに違法性、不当性はないといえる。
 ウ したがって、市長が自治法第221条第2項に規定する調査等の権限を放棄しているという請求人の主張は失当である。
(6)市長の損害賠償責任等について
 ア 前記のとおり、本件調査旅費について、使途基準に違反したとする事情は認められず、市に損害は生じていないことから、市長は公明党市議団に対する返還請求権を有していないといえる。
 イ また、使途に合理的な疑問がある場合は領収書等を調査すべき義務も生じると考えられるが、本件調査旅費においてそのような疑問はないから、市長が収支報告書等によって、残余の額がないこと及び明らかな使途基準違反がないことを確認している事実をもって、適正な精算が行われているといえるのであって、必要な調査を怠っているとはいえない。
 ウ 市長の損害賠償責任については、前記の津地方裁判所判決で、「知事において、精算(確定)に際し、〇〇議員団の団長及び経理責任者において適正に審査されていないことをうかがわせる事情があったとも認め難いから、知事において、〇〇議員団の研究費の精算(確定)につき故意又は過失があったということはできない」と判示されており、本件においても、公明党市議団の代表者及び経理責任者が適正に審査を行っていないことをうかがわせる事情があったとは認められないことから、市長において、概算払の精算につき故意・過失があったとはいえず、市長に損害賠償責任は生じないものである。
 エ したがって、市長が損害を賠償し又は公明党市議団に対して返還請求をすべき理由はない。
(7)職員の事務処理の適正性について
 本件政務調査費(調査旅費)の支出に係る事務(精算事務を含む。)についてみると、「1 本件調査旅費等に係る事実」のとおり、政務調査費条例、政務調査費規則、財務会計規則等の諸規定に基づいて適正に処理されていることが認められた。
(8)請求人が監査委員に求める事項について
 ア 請求人は、監査委員に対して、本件調査旅費に係る領収書等をチェックし、使途に違反がなければ当該領収書等を公開してその適正を証明すべきであると請求書に記載している。
 イ どのような方法を用いて監査を行うかは、監査委員の職務権限に属するものであり、請求人の申し出は監査請求として不適であると考えるが、請求人の求めを考慮したとしても、前記のとおり、政務調査費制度における議会と市長の関係を前提とする事務手続き及び現に行われた事務処理に、違法、不当とすべき点はみられず、領収書等を調査するまでの必要性はないものと判断した。
(9)結論
 以上を総合すると、本件調査旅費の支出(精算を含む。)について、違法性、不当性は認められず、市に損害は生じていないものと判断する。
 したがって、「堺市に損害を与えた違法支出分を市長に賠償させるか公明党市議団に返還請求させるかの措置を講じるよう求める」という請求人の主張には理由がないものと判断する。

監査結果に添える意見

 市長が平成15年度(平成15年5月から平成16年3月まで)に公明党市議団に交付した政務調査費のうち調査旅費の支出(精算を含む。)については、結論のとおり、違法性、不当性は認められないと判断した。
 行政の高度化、専門化などに加え、地方分権の進展のなかで、議会の果たす役割はますます重要となってきている。会派等あるいは会派等に属する議員には、これまで以上の広範で専門的な最新の情報や知識の修得が求められており、その必要から政務調査費が制度化されたものであると考える。
 平成15年2月24日に提出のあった政務調査費に係る住民監査請求の監査結果の付言において「事業実施報告書の記載内容の具体化など、本制度の運用の充実を図るとともに、より一層透明性を高めるよう、努力されること」を要望したのは、議会の積極的な活動が市民により理解されるべきであるという趣旨からである。
 政務調査費については会派等の自主性・自律性に委ねられた制度であるからこそ、得られた調査研究の成果を議会自らの責任において市民に説明し理解を得るべきであろう。
 また、市長においては、予算執行の責任者として、政務調査費の使途が適正であると判断したことについて市民に説明する責務があることから、議会との関係に配意しつつ、より一層運用の改善を図るべきである。
 議会と市長がそれぞれの権限と責任のもとで、政務調査費制度に対する市民の理解を得られるよう努められ、今後とも市民の信頼に応えられるよう期待する。

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