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平成15年8月19日 堺市監査委員公表 第25号

更新日:2012年12月19日

堺市監査委員公表第25号

 平成15年6月20日に提出のあった地方自治法第242条第1項の規定に基づく堺市職員措置請求について、同法同条第4項の規定に基づき監査を行ったのでその結果を次のとおり公表する。

平成15年8月19日

堺市監査委員 西村 昭三
堺市監査委員 松本 光治
堺市監査委員 曽我部 篤爾
堺市監査委員 小田 久和

堺市職員措置請求に係る監査結果

平成15年6月20日付け請求分

<生産緑地に係る市税の適正な徴収を求める請求>

目次

堺市監査委員公表第25号

(ホームページ掲載の本文中、町名等をA、b等と表示しています。)

第1 監査の請求

1 請求人

(法人1社 省略)

2 監査請求書の提出

平成15年6月20日

3 請求の要旨

 堺市都市計画部に確認したところ堺市A町b番地の一部、堺市A町c番地の一部、0.11haが生産緑地地区であることが確認された。(堺都計証第65号、第69号)
 税の特典を得ながら、生産緑地を商業施設に賃貸していた。
 平成13年6月1日に事業用定期借地権設定契約を締結するさい、賃借人に対して、賃貸人及び生産緑地所有者が、告知もせず、使用不可能な土地を契約した。
 生産緑地は、生産緑地法で農業以外の使用を禁じている。生産緑地の標識の設置義務を怠り、違法に営利目的で商業施設に賃貸した。
 上記の理由により、堺市に対して、税金および農政に対する損害を与えた。
 以上のことから、堺市長に対して本件の徴収を怠っている税金を適正に徴収することを請求する。

(原文の一部を省略)

事実証明書

  1. 堺市長名で発行した堺市A町b番地の一部及び同c番地の一部が堺都市計画生産緑地地区であることの証明書の写し(平成15年6月11日付け堺都計証第65号及び同日付け堺都計証第69号文書)
  2. 堺市A町b番地の一部及び同c番地の一部を含む土地について、賃貸人と賃借人との間で交わした事業用借地権設定契約公正証書の写し
  3. 堺市A町b番地及び同c番地の土地の位置図

(いずれも掲載を省略)

第2 監査の実施

1 要件審査及び請求の受理

本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条に規定する要件を具備しているものと認め、平成15年7月2日にこれを受理した。

2 監査対象事項

 監査請求書に記載されている事項及び事実証明書から、請求書の前段部分については、「生産緑地法は、生産緑地の農業以外の使用を禁じているにもかかわらず、生産緑地の標識の設置義務を怠り、賃貸人は違法に営利目的で商業施設に賃貸した。これらの理由により、堺市に対して、税金及び農政に対する損害を与えた」旨の記載であると解した。このうち、「税金に対する損害を与えた」の部分を除いては、監査請求の要件として自治法第242条第1項に規定する「地方公共団体の長、委員会、委員又は職員の財務会計上の行為」には該当しないものと判断し、監査対象事項としなかった。
 したがって、「税金に対する損害を与えた」及び請求書後段の「堺市長に対して徴収を怠っている税金を適正に徴収することを請求する」という記載事項等を総合的に勘案して、監査対象事項を次のとおりとした。
 堺市A町b番地の一部及び同c番地の一部の土地(以下「本件土地」という。)に係る市税の賦課・徴収を違法又は不当に怠る事実があるのかどうか。当該怠る事実によって、市に損害が生じているのかどうか。

3 請求人の証拠の提出及び陳述

 自治法第242条第6項の規定に基づき、平成15年7月30日、請求人に対して証拠の提出及び陳述の機会を設けた。
 請求人の代理人Dが、陳述において請求の要旨の補足等を行った。なお、新たな証拠の提出はなかった。

4 監査対象部局

 財政局、産業振興局及び建築都市局

第3 監査対象部局の説明

 本件について、市長に対して請求に係る意見書の提出及び監査対象部局の職員からの説明を求めた。その概要は以下のとおりである。

1 事情を聴取した者

 平成15年7月30日に監査対象部局の職員から事情を聴取したが、その者は次のとおりである。
 財政局 財政局理事、税務部長、税務部次長、税務部副理事兼資産税管理課長、資産税管理課参事 ほか
 産業振興局 農政部長、農政部次長、産業振興局副理事兼産業振興総務課長、農水産課長 ほか
 建築都市局 都市計画部長、都市計画部次長、都市計画部副理事兼都市計画課長 ほか

2 説明の概要について

(1) 事実関係の確認

ア 生産緑地地区の指定について
 本件土地は、平成4年11月30日に都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第14号に掲げる生産緑地地区の指定を受け、同指定を受けていることは、平成15年6月11日現在においても堺都計証第65号及び第69号で証明されている。
イ 生産緑地地区農地の固定資産税及び都市計画税の制度について
 固定資産の価格は、地方税法(昭和25年法律第226号)第403条第1項の規定により、同法第388条第1項の固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)によって決定しなければならない。
 生産緑地地区の区域内の農地(以下「生産緑地地区農地」という。)は、地方税法附則第19条の2第1項に規定する市街化区域農地に含まれないため、評価基準の田及び畑(以下「一般農地」という。)の評価方法とするとされている(以下「農地評価」という。)とともに、固定資産税の税額の求め方についても一般農地と同様(以下「農地課税」という。)となる。ただし、生産緑地地区農地は一般農地と異なり、都市計画税を課すことができる。
ウ 本件土地の固定資産税及び都市計画税の課税状況について
 平成5年度から平成15年度分までの固定資産税を農地評価及び農地課税としていた。併せて都市計画税についても、同様に課税していた。
エ 本件土地の利用状況について
 本件土地は、平成8年1月時点の空中写真(飛行中の航空機などから航空カメラにより地表面を撮影した写真)では、整地がされていることが確認され、平成8年度の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の賦課期日である平成8年1月1日において、既に農地としての利用の用に供されていないことは明らかである。

(2) 請求人の請求についての考え方及び意見

ア 本件土地の固定資産税等の課税について
 前記(1)エから本件土地に係る固定資産税等について、平成8年度から平成15年度までの現況地目の認定誤りが判明したため、地方税法第417条第1項及び第17条の5第3項の規定に基づき、平成11年度から平成15年度までの5年度分の固定資産税等について、現況地目の変更を行い、本年7月9日に増額の賦課決定を行った。
イ 今後の適正・公平な課税の取組みについて
 地方税法第408条では、固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査しなければならないとされているが、「固定資産税逐条解説」(自治省固定資産税課編)では、評価事務上の期間的な制約等を考慮すれば、必ずしも、全部の資産について、細部にわたってまで行われなくとも、その固定資産の状況を知り得る程度に行われれば足りるものと解すべきであるとされている。
 このことを踏まえ、本市では法務局から入手する登記申請書、固定資産税の電算データから抽出した建物を建築中の土地や空地のリスト等を活用することにより、利用状況が変わりやすい固定資産について重点的に実地調査を行い、利用状況及び異動状況を把握している。
 生産緑地地区は、生産緑地法(昭和49年法律第68号)において使用者等の管理義務や行為の制限等の厳しい制約が定められているため、生産緑地地区農地の利用状況が変更される可能性の高い、生産緑地法第14条の生産緑地地区内における行為の制限の解除(以下「地区内制限解除」という。)の適用があったものについて、都市計画課から地区内制限解除の適用の通知を受け、空中写真での確認及び実地調査を行い、現況を把握してきたところである。
 ただ、今回のように地区内制限解除の適用がないにもかかわらず、現況が変更されている事例があったことから、今後は固定資産税等の賦課期日である1月1日現在の生産緑地地区の現況把握について、改めて徹底するとともに、空中写真の利用方法を含めた調査・課税マニュアルを整備することにより、より一層適正・公平な課税に努めることとした。
 なお、市長から税務部長に対して、改めて実地調査の徹底について各支所固定資産税担当課長あてに文書で通知することを指示した。

(3) 生産緑地の適正管理に関する指導について

 生産緑地法第7条において「生産緑地の管理」について規定され、同法第8条において「生産緑地地区内における行為の制限」について規定されている。また、同法第6条において「標識の設置等」について規定されている。
 今後、本件生産緑地の管理については、農地等として適正に管理されるよう指導を行う。

第4 監査の結果

1 本件に係る事実

関係書類の調査等により、本件に係る事実については、おおむね次のように認められた。

(1) 生産緑地地区について

ア 生産緑地法の趣旨及び概要
 生産緑地法の制定趣旨及び概要は次のとおりである。
 生産緑地法はその目的として、「生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定め、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資すること」を掲げている(生産緑地法第1条)。
 生産緑地地区は、市街化区域内にある一団の農地等(現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地等をいう(同法第2条第1号)。)のうち、500平方メートル以上の規模の区域であること等の要件を満たすものを指定することができる(同法第3条第1項)。
 国及び地方公共団体は、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び将来の見通しを勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより良好な都市環境の形成に資するよう努めなければならない(同法第2条の2)。
 生産緑地地区に指定されると、生産緑地の使用又は収益をする権利を有する者は、当該生産緑地を農地等として管理しなければならない(同法第7条第1項)。また、生産緑地地区内では、建築物の新築、改築又は増築やそのための宅地造成等はできず、農産物の生産又は集荷の用に供する施設等について市町村長の許可を受けた場合にのみ建築等ができることになっている(同法第8条第1項及び同条第2項)。
 違反建築・造成等について、市町村長は違反した者等に対し、相当の期限を定めて、当該生産緑地の保全に対する障害を排除するため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置を採るべき旨を命ずることができる(同法第9条第1項)。当該命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(同法第18条)。
 なお、生産緑地の所有者は、生産緑地地区に指定された日から起算して30年を経過したとき、農業の主たる従事者が死亡したとき等は市町村長に対して当該生産緑地を買い取るべき旨を申し出ることができる(同法第10条)。この場合において、その申し出の日から起算して3月以内に当該生産緑地の所有権の移転が行われなかったときは、生産緑地の管理及び行為の制限等が適用されなくなり、生産緑地地区内の行為制限は解除される(同法第14条)。
イ 本市の生産緑地地区の概要
 平成15年7月30日現在における本市の生産緑地地区の指定は845地区、約183.58haである。
 平成15年5月下旬から6月上旬に都市計画課、農水産課、農業委員会事務局が合同で行った全地区の調査(以下「3局合同調査」という。)では、おおむね生産緑地地区農地として適正な管理が行われていたが、一部の土地については所有者等から事情を聴取するなど、調査を継続している。
ウ 生産緑地地区に係る本市の事務分掌等
 (ア) 建築都市局
 生産緑地地区の指定にあたっての土地所有者からの相談への対応、現地の確認、市都市計画審議会への付議、都市計画決定の告示等の事務は建築都市局都市計画部都市計画課において行っている。
 生産緑地法第6条第1項の規定に基づく指定された生産緑地地区内にその旨を表示する標識の設置及び同法第10条の規定に基づく生産緑地買取り申し出の受理等の事務も都市計画課で行っている。
 現地確認は生産緑地地区の指定の際に行っているが、指定後の調査は行っておらず、平成15年5月下旬から6月上旬に行った3局合同調査まで、実態を把握できていなかった。
 なお、生産緑地地区の指定又は指定解除若しくは地区内制限解除を行った土地については、農水産課、農業委員会及び資産税管理課へデータを通知している。
 (イ) 産業振興局
 都市計画課への買取り申し出に対する事前相談、生産緑地法第13条の規定による市農業委員会及び堺市農業協同組合に対する生産緑地の取得のあっせん依頼については、産業振興局農政部農水産課が所管している。
 また、同法第7条第2項の規定に基づく所有者等からの農地等として管理するための必要な助言等を行っている。
 同法第8条の規定に基づく施設の新築等に対する許可及び同法第9条第1項の規定に基づく原状回復等の命令も農水産課の所管となっている。
 生産緑地地区農地の現況把握は、平成15年5月下旬から6月上旬に行った3局合同調査まで十分には行われていなかった。
 (ウ) 農業委員会
 市長からの求めに応じて、生産緑地を農地等として管理するための助言、生産緑地の取得のあっせん等についての協力を行っている。
 また、生産緑地法施行規則(昭和49年建設省令第11号)第5条の規定に基づく生産緑地買取申出書に添付すべき「農業の主たる従事者に該当することについての証明書」の発行を行っている。

(2) 固定資産税及び都市計画税について

ア 固定資産税について
 固定資産税は、特例を除き市町村が普通税として固定資産の所有者に課する税である。
 地方税法第359条は、固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とすると規定し、1月1日現在において所在する固定資産に対し、同日現在の価格を課税標準として、同日現在の所有者に課すこととしている。また、同法第403条は、市町村長は、特別な場合を除き評価基準(総務大臣が定める固定資産の評価の基準並びに評価の方法及び手続き。)によって、固定資産の価格を決定しなければならない旨を規定している。評価基準の第1章第1節の「一 土地の評価の基本」には、「土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする」と規定している。したがって、固定資産税の賦課にあたっては、いわゆる「現況による認定、現況に基づく課税」が規定されている。
 生産緑地地区農地の固定資産税等は、地方税法附則第19条の2第1項の規定により、いわゆる「宅地並み評価」の適応を受ける市街化区域農地から除外されていることから、評価基準第1章第2節「田及び畑」の評価(農地評価)方法を採ることとされている。
 税額の算定方法についても、農地評価方法で算出した課税標準額と地方税法附則第19条の特例によって算出した課税標準額の低い方の額に対して税率を乗じることから、生産緑地地区農地の固定資産税は結果的に市街化農地と比べて大幅に低い税額になっている。
イ 都市計画税について
 都市計画税は、市町村が都市計画事業又は土地区画整理事業に要する費用に充てるため、市街化区域内の土地又は家屋の所有者に対して課する目的税である。
 賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日であり(地方税法第702条の6)、課税標準は、その土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準となるべき価格である(同法第702条第2項)。
 賦課・徴収は、固定資産税の賦課・徴収の例によるものとし、特別の場合を除き、固定資産税の賦課・徴収と合わせて行い、納税義務者は固定資産税と合わせて納付しなければならない(同法第702条の8第1項及び第3項)。
ウ 本市の固定資産税等の賦課・徴収について
 固定資産税の賦課期日現在の所有者や現況地目等の課税要件の確定を行い、地方税法第409条第4項の規定により固定資産評価員が評価調書を作成し、市長に提出する。市長は、評価調書を受理したときは、これに基づいて固定資産の価格等を毎年3月31日までに決定し、直ちに固定資産課税台帳に登録する。固定資産課税台帳に登録したもののうち、地番や価格等を記載した土地価格等縦覧帳簿及び家屋価格等縦覧帳簿を作成し、4月1日から5月末日までの間に当該土地又は家屋の納税者の縦覧に供するとともに、固定資産課税台帳に登録された内容に基づいて、賦課決定を行い、毎年5月上旬に納税通知書を送付している。
 本市の固定資産税の税率は100分の1.4(堺市市税条例(昭和41年条例第3号)第36条)であり、都市計画税の税率は100分の0.3(同条例第98条)である。都市計画税の納期は固定資産税の納期の例による(同条例第99条)ものであり、したがって、両税の納期は、特別の事情がある場合を除き、第1期が5月1日から同月31日まで、第2期が7月1日から同月31日まで、第3期が12月1日から同月25日まで、第4期が翌年2月1日から同月末日まで(同条例第39条)である。
 固定資産税等の賦課決定は、堺支所の固定資産税課長、中・東・西・南・北支所の税務課長が専決権限を有している(堺市役所支所事務分掌規則(平成4年規則第33号)第7条の固定資産税課長専決事項及び税務課長専決事項)。財政局税務部資産税管理課は、固定資産税等の賦課に係る事務の指導及び支援並びに企画調整に関する事務を分掌している(堺市事務分掌規則(昭和47年規則第14号)第2条第3項及び別表第1)。

(3) 本件土地について

 A町b番地1,080平方メートルのうち660平方メートル、同c番地803平方メートルのうち440平方メートルが、平成4年11月30日に生産緑地地区に指定されている。
 本件土地に係る市税は、固定資産税及び都市計画税である。固定資産税等の賦課・徴収については意見書等から次のことが確認された。
 平成5年度分から平成15年度分までの固定資産税について、当該土地を畑として評価、賦課し、都市計画税についても同様の賦課を行っていた。しかし、平成8年1月2日から同月8日までの間に撮影した空中写真では整地が行われており、平成8年度の固定資産税等の賦課期日である平成8年1月1日において既に農地としての利用の用に供されていないこと、各年の空中写真を見ても平成8年1月1日以降、農地としての利用の用には供されていないことが明らかとなった。そこで、市町村長に固定資産の価格等のすべてを登録した旨の公示の日以降における価格等の修正等の義務を課した地方税法第417条第1項の規定及び固定資産税等に係る賦課決定は法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後はすることができないことを定めた同法第17条の5第3項の規定により、平成11年度から平成15年度までの5年度分の固定資産税等について、現況地目を畑から宅地介在雑種地へ変更し、平成15年7月9日に増額の賦課決定を行い、納税通知書を送付した。そして、同年7月30日に納税されたことが確認できた。

2 本件賦課・徴収を怠る事実に係る判断

(1) 本件土地に係る固定資産税等の賦課・徴収について

 前記「1 本件に係る事実」のとおり、本件土地については、遅くとも平成4年11月30日に生産緑地地区に指定されて以降の平成5年度から平成15年度まで地目を畑と認定し、固定資産税等を賦課・徴収していた事実が認められる。他方、毎年1月上旬に撮影された空中写真からは、平成8年以降、本件土地が整地され農地としての利用の用に供されていないことが確認された。したがって、「土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置く」旨を規定した評価基準に反した地目認定により本件土地を評価し、固定資産税等の賦課・徴収を行っていたものといわざるを得ない。

(2) 固定資産の実地調査について

ア 実地調査の現状
 地方税法第408条は、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査させなければならない」と規定している。
 「固定資産税逐条解説」(自治省固定資産税課編)には、「評価事務上の期間的な制約等を考慮すれば、この実地調査は、必ずしも、全部の資産について、細部の一々にわたってまで行われなくとも、その固定資産の状況を知り得る程度に行われれば足りるものと解すべきである」と記載されている。意見書及び関係局職員の陳述によれば、現実に、固定資産評価補助員等は、土地については法務局から入手する登記申請書、固定資産税の電算データから抽出した建物を建築中の土地や空地のリスト等を活用することにより、利用状況が変更される可能性の高い固定資産について重点的に実地調査を行い、また、生産緑地については、生産緑地法において使用者等の管理義務や行為の制限等の厳しい制約が規定されており、制度上は農地等以外の用に供することは考えられないことから、都市計画課からの通知に基づいて地区内制限解除があった土地について重点的に実地調査を行ってきたものである。
イ 実地調査を怠る事実について
 地方税法第408条の規定が訓示規定と解する見解(「地方税質疑応答集」財団法人地方財務協会編)や判決(宇都宮地裁 昭和30年11月24日判決 昭和27年(行)第6号 南犬飼村固定資産評価決定取消請求事件)があり、また、「個々の固定資産を実地調査しなかった場合においても、当該価格の決定を直ちに無効又は取消し得べきものとする理由はない」とする旨の行政実例(昭和28年9月15日 自税市第228号)もみられる。
 また、本市には約30万筆の土地と約25万棟の家屋があり、これを124人(平成15年7月30日現在。うち土地に関する実務担当者は28人。)の固定資産評価員(財政局担当助役)及び固定資産評価補助員(財政局長、財政局理事、固定資産税担当職員等)が年1回実地に調査することは現実的には困難であること、生産緑地法における所有者等の農地等に対する管理義務規定によって、制度上、農地等以外の用に供していることは考えられないことから、地区内制限解除があった土地について重点的に実地調査を行ってきたという関係局職員の主張が行われている。
 しかし、平成8年度から本件土地の現況認定を誤っていた点を鑑みると、実地調査が「その固定資産の状況を知り得る程度に行われれば足りる」というためには、毎年撮影している空中写真を活用することなどによって利用実態の変化を把握する方法もあったと思われる。

(3) 本件土地に係る固定資産税等の賦課・徴収を怠る事実について

 以上のことから、少なくとも平成8年度から平成15年度の本件土地に係る固定資産税等について、実地調査若しくはそれに相当する調査等を行わず、現況が変化したことについての認識がなかったことにより、宅地介在雑種地を畑と認定し、これに基づく賦課・徴収を行ったことは、適正な賦課・徴収を怠っていたものといわざるを得ず、誤った地目認定に基づく賦課・徴収額と適正な地目認定に基づく賦課・徴収額との差額相当額の損害を市に生ぜしめたと判断する。

(4) 増額賦課・徴収を行ったことについて

 地方税法上の賦課決定についての期間制限は、同法第17条の5第3項において、「固定資産税若しくは都市計画税に係る賦課決定は、…法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後においては、することができない」と規定している。法定納期限については、地方税法第11条の4第1項に、「納期を分けているものの第2期以降の分については、その第1期分の納期限をいう」と規定されている。したがって、本市の固定資産税等の法定納期限については、堺市市税条例第39条及び地方税法第20条の5第2項(期限が休日等に該当するときはその翌日を期限とみなす規定。)の規定に基づき、平成8年度は平成8年5月31日、平成9年度は平成9年6月2日、平成10年度は平成10年6月1日、平成11年度は平成11年5月31日であることから、賦課権が存続しているのは、各々平成13年5月31日、平成14年6月2日、平成15年6月1日、平成16年5月31日までであり、監査請求のあった日において、平成8年度から平成10年度までの固定資産税等の賦課・徴収はできず、平成11年度以降の固定資産税等は賦課・徴収できるものである。
 よって、本件土地に係る固定資産税等については、平成15年7月9日に地目を畑から宅地介在雑種地へ認定変更し、平成11年度から平成15年度まで増額の賦課決定を行い、納税通知書を発送し、既に納税もされていることから、この各年度における賦課・徴収を怠る事実については是正されていると認めることができ、かつ、市に生じていた損害も回復されたものと判断する。

(5) 賦課権を消滅させたことに対する請求人の主張について

 請求人は陳述の場において、平成8年度から平成10年度分の賦課できなくなった市税について市に対応を求めているので、この点について検討する。
 市に生じた損害を補填する具体的な措置としては、土地所有者に対して不当利得の返還請求を行うこと、職員に対して損害賠償請求を行うことがこれにあたると考えられる。
ア 土地所有者に対する不当利得返還請求
 固定資産税等に係る賦課決定のできる期間は地方税法第17条の5第3項に規定されており、本件土地の所有者が平成8年度から平成10年度の固定資産税等の賦課を受けないのは、賦課権の消滅による利益であり法律に基づき確定するものであるから、不当利得の要件である「法律上の原因なくして他人の財産又は労務による利益を受けた」に該当しない。したがって、本件土地の所有者に対して不当利得の返還請求を行うことはできないものと解する。
イ 職員に対する損害賠償請求
 民法第709条や自治法第242条の2第1項の規定の趣旨等から、市が被った損害について、その行為を行った又は怠った職員に対して損害賠償を請求することができる。しかし、損害賠償請求権の成立要件として、当該職員に財務会計上の義務に違反する違法行為があること、当該職員に故意・過失があること、損害が発生していること、損害と行為(不作為)との間に相当因果関係があることなどが必要とされている。
 まず、故意・過失について検討すると、この場合の過失については、「地方公共団体の長の賠償責任はその職責に鑑みると民法の規定による」(最高裁 昭和61年2月27日判決 昭和58年(行ツ)第132号 市川市市長接待費損害賠償事件)と解し軽過失によるものとされており、長以外の職員については、国家賠償法(昭和22年法律第125号)第1条第2項、自治法第243条の2第1項及び前記昭和61年の最高裁判例がいずれも重大な過失を要件としている趣旨等から重過失があったときと解されている。
 これを本件についてみると、前記「2 本件賦課・徴収を怠る事実に係る判断」の(2)ア及びイで記載のとおり、地方税法第408条の規定は訓示規定と解することもできること、実地調査に基づかない固定資産の評価も直ちに無効又は取り消し得べきものではないとする行政実例があること及び約30万筆の土地を実質30人程度の人数で実地調査をすることは現実的には非常に困難であり、生産緑地については、法上、農地等以外の用に供していることは考えられないことから、地区内制限解除された土地を重点的に調査してきたという関係局職員の主張も理解できるところである。
 これらのことを斟酌すると、実地調査を行わず、現況地目に基づく固定資産税等の賦課・徴収を怠った事実があった点は認められるものの、本件土地に係る賦課・徴収の専決権限を有する職員及びこれらに携わった職員(以下「関係職員」という。)並びに幡谷豪男前市長及び木原敬介現市長に当該怠った事実について故意は認められず、過失を問うことは酷に過ぎるものと判断する。
 よって、関係職員並びに幡谷豪男前市長及び木原敬介現市長には、故意・過失がないものと判断できることから、その余について検討するまでもなく、平成8年度から平成10年度までの本件土地に係る畑の地目に基づき賦課・徴収した固定資産税等と現況地目に基づき賦課・徴収すべきであった固定資産税等との差額相当額の損害賠償請求権は成立しないものと判断する。
ウ 平成8年度から平成10年度までの本件固定資産税等について
 請求人の主張を「平成8年度から平成10年度までの本件土地に係る固定資産税等について適切な措置を求める」と広く解釈したとしても、当該年度の本件土地に係る固定資産税等について、関係職員並びに幡谷豪男前市長及び木原敬介現市長は、賦課・徴収を怠った事実に対して損害賠償すべき責任を有せず、土地所有者に不当利得の返還請求も行えないことから、その主張について容認できない。

(6) 結論

 以上のことを総合すると、平成11年度から平成15年度までの本件土地に係る固定資産税等は、既に増額賦課が行われ納税もされていることから、市に生じた損害は回復され、「市税の適正な徴収を求める」という請求人の主張は、本件監査の結果を決定した時点においては理由がないものと判断する。また、平成8年度から平成10年度までの本件土地に係る固定資産税等については、関係職員並びに幡谷豪男前市長及び木原敬介現市長に損害賠償すべき責任は有せず、土地所有者に不当利得の返還請求も行えないことから、この「各年度の固定資産税等について適切な措置を求める」という請求人の主張にも理由がないものと判断する。

付言

 本件監査請求については、結論のとおり、請求人の主張には理由がないものと判断した。
 しかし、今回の監査請求において、税務行政の適正、公平さに対する市民の信頼を損ねたことは否定できない。また、生産緑地地区に対する市政の対応も問われることになった。
 このような事態が生じたのは、生産緑地地区について、指定を行った都市計画課と営農指導を行う農水産課が現況を把握してこなかったこと、固定資産税担当課と都市計画課、農水産課との連携が十分取られていなかったことが挙げられる。
 本件土地の所有者に対して生産緑地法に基づき厳格・迅速に対処するとともに、今後は、生産緑地に関わる担当部課が連携して、生産緑地法の趣旨に沿った指導を厳正に行い、かつ、的確な現況把握を行うことにより適正、公平な賦課・徴収のできる体制を作られたい。このことによって市民の市政に対するより一層の信頼回復に努められることを要望する。

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