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4.幼児教育に関わる施策・動向と課題

更新日:2020年6月30日

(1)これまでの取組

 本市では、子どもたちが充実した幼児期を過ごし、幼児期の学びが小学校の学びへ円滑に移行できるよう、「幼児教育堺スタンダードカリキュラム」や「堺市立幼保連携型認定こども園全体的な計画(教育・保育課程)」の策定、就学前の5歳児が小学校で交流活動等を行う「ワクワクひろば事業」、「就学支援ノート」の配付などを実施してきた。また、公民の教員や保育者がともに学ぶ「保幼小合同研修会」を実施するなど、公民の連携強化にも力をいれてきた。配慮が必要な幼児への支援については、民間を含め、専門家による巡回相談などを実施するとともに、乳幼児期からの一貫した継続的な支援を目的とした「あい・ふぁいる」の活用も進めてきた。
 一方、近年幼児教育を取り巻く状況が急激に変化する中、新たな課題に柔軟に対応した幼児教育の充実が必要となっている。

(2)幼児教育を取り巻く状況の変化に伴う課題

■教育・保育施設の多様化と保育者の資質・能力の向上

 子ども・子育て支援新制度が、平成27年に開始され、認定こども園が普及するとともに、「家庭的保育」「小規模保育」「事業所内保育」などの地域型保育事業が創設された。
 教育・保育施設数が増加し、種別の多様化も進み、それぞれの施設で特色として打ち出している教育・保育内容や方法も様々であるが、各施設において「幼児教育の基本理念」を踏まえた教育・保育を進めていくことが必要である。また、それらを支える保育者の確保と、研修や管理職・中堅職員による技術継承などを通した資質・能力の向上が求められている。

教育・保育施設数の推移

■より円滑な小学校教育への接続

 幼稚園教育要領等や小学校学習指導要領の改訂により、環境を通して学ぶ幼児期の教育から、教科等の学習を中心とした小学校教育への接続の重要性が示された。保幼小合同研修会など、小学校教育への接続を円滑にする取組を行っているが、教育・保育施設における幼児の育ちや学びが、小学校教員に認識されにくい等の課題もある。子どもの発達と学びの連続性を踏まえ、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の共有や、小学校入学当初にスタートカリキュラムの編成による指導の工夫を行うことなどが求められている。

■特別な配慮を必要とする幼児への対応

 幼児数が減少している中、配慮を必要とする子どもの数は増加傾向にあり、また、児童虐待の通告受理件数は年々増えている。そして、適切な愛着の形成がなされなかったこと等により、課題を抱える幼児への支援や、国際化の進展により、海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児への支援なども求められている。幼稚園教育要領等にも特別な配慮を必要とする幼児への対応が明記されており、障害のある幼児、愛着の形成に課題のある幼児、虐待を受けている幼児、海外から帰国した幼児などへの、より専門的な理解や多面的な支援が必要となっている。
 このような状況にある幼児に対して、個々の幼児の実態に応じた支援を計画的かつ組織的に行っていくとともに、すべての幼児が安心できる集団づくりへの配慮や、保護者との連携も課題となっている。

■教育・保育ニーズの変化や幼児教育・保育の無償化に伴う対応

 平成17年から平成27年までの本市の労働力人口の推移は、全体として減少しているものの、男女別でみると、女性は増加傾向である。本市在住の1号認定子どもは減少傾向にあり、2、3号認定子どもは増加傾向にあるのも、このことが要因の一つと考えられる。
 また、幼児教育の重要性や少子化を背景に、国はこれまで段階的に推進してきた幼児教育・保育の無償化の取組を一気に加速させるとし、令和元年10月から、3歳から5歳までのすべての子ども及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子どもについて、幼児教育・保育の無償化を実施している。
 本市では、国が段階的に進めてきた無償化の取組に加え、独自に第3子以降の保育料無償化や無償化の第2子への拡充を実施しているが、令和元年10月からの国の無償化の実施も相まって、更なる保育ニーズの伸びが見込まれることから、これに対応すべく、平成30年度からの4年間で、3,600人分を超える保育の受け入れ枠を拡大する計画を進めている。
 一方、施設類型によっては、在園児数が減少し、集団における活動を基礎におく幼児教育の効果が十分に発揮できなくなることも想定される。

認定別保育・教育施設利用者数の推移

■更なる少子化・核家族化に伴う対応

 本市における出生率は、これまで全国や大阪府と比べると高い値で推移していたものの、平成30年では7.6‰と低下している。
 また、6歳未満の子どものいる世帯数について、平成17年と平成27年を比較すると、世帯数と核家族世帯数はいずれも減少しているが、世帯数に占める核家族の割合は、90.4%から92.4%に増加している。
 なお、母子世帯数や父子世帯数について、平成17年と平成27年を比較すると、父子世帯数と母子世帯数の合計数についても増加している。
 これらのことから、子ども同士の交流や異年齢交流の機会の減少や家庭での様々な生活体験の不足等が課題となっている。保護者にとっても子育ての不安や負担感、孤立感が生じやすくなる環境であり、これまで以上に保護者支援を推進していくことが必要である。

■スマートフォンやタブレットなどのメディア(IT機器)普及に伴う対応

 近年、幼児がスマートフォンやタブレットに接する機会が増えている。内閣府「低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査(平成29年5月)」によると、インターネット利用率(内訳は、スマホ、タブレットの利用率を順に示している。)は、1歳で9.1%(5.0%、2.5%)、2歳で28.2%(19.0%、13.5%)、3歳で35.8%(20.4%、14.8%)と、低年齢層からの利用が少しずつ顕著になってきている。
 このような低年齢層からの利用については、様々な背景が考えられる。例えば、なかなか泣き止まない赤ちゃんにアプリを見せる、保護者が用事をしている間に、動画やゲームアプリなどで待たせるなど、保護者によって、幼児が見たり触れたりする機会が増えていることもその一つである。また、保護者自身にとっても、子育ての情報や悩みにおいて頼るツールになっており、間違った情報に流されたり、情報収集に時間を割くことで子どもとのふれ合いが少なくなったりしているおそれがある。
 幼児期は、親や身近な人との触れ合いを通して人に対する信頼感をもち、愛着の形成へとつながる大切な時期である。しかし、スマートフォンやタブレットといったメディアを長時間利用することで、人と触れ合う機会や、様々な実体験を通じて感動したり、時には失敗したりといった経験などが少なくなっている。それにより、情緒の安定が図られなかったり、成長の過程で自然に培われる共感性や想像力が弱くなったりすることが危惧される。

インターネット利用率

■SDGsにおける教育関連目標への対応

 平成27年9月、国連サミットにおいて採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の大きな考え方の一つには、「誰一人取り残さない社会を実現する」ことが掲げられており、17のゴールのうち教育分野における目標には、「誰もが公平に、良い教育を受けられるように、また、一生にわたって学習できる機会を広げる」ことが掲げられている。これらの目標達成に向け、わが国におけるSDGs推進本部では、自治体においても取組を推進するため、29都市が「SDGs未来都市」として選定され、本市もその一つの市として選定された。
 推進本部が掲げる「SDGs実施指針」における8つの優先分野の一つに「あらゆる人々の活躍の推進」が掲げられている。その中の「次世代の教育振興」で、幼児教育の振興については「家庭の経済状況に左右されることなく、すべての子どもに質の高い幼児教育を受ける機会を保証すべく、幼児教育の無償化を一気に加速するとともに、その質の向上に取り組む」とされている。
 SDGsにおける考え方、また、教育関連の目標を理解し、幼児教育においても教育・保育施設の種別を問わず、すべての子どもがひとしく質の高い幼児教育を受けることができるようにする必要がある。

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